著者
岩井 敏 熊澤 蕃 石田 健二 高木 俊治 猪狩 貴史 早川 信博
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.399-404, 2021 (Released:2021-05-10)
参考文献数
14

モンテカルロ法は解析的に取り扱うことが困難な確率分布や尤度関数を扱う計算に有効に活用できる数値解法である。本稿では,別稿(連載Ⅱ)で定式化したベイズ推定法の解法として2種類のモンテカルロ法とアンフォールディング法の適用方法を解説する。
著者
服部 徹
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.79-83, 2020 (Released:2020-08-08)
参考文献数
4
被引用文献数
1

海外では,電力市場における競争の中で収支が厳しい原子力発電に対し,政府が支援策を講じる例がある。自由な競争が行われるはずの市場において,政府が特定の電源を支援することは避けるべきと考えられているが,電力市場の制度設計が完全である保証もない。その場合,エネルギー政策の目標をより効率的に達成できる手段を政府が提供しうる可能性は否定できない。市場メカニズムを活用するメリットをできる限り損なわずに,原子力の新増設や既設炉の維持を促していくことが模索されている。
著者
永崎 隆雄
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.677-681, 2013 (Released:2019-10-31)
参考文献数
6

中国は世界一のエネルギー消費大国で,日本の6倍を消費し,エネルギー源は石炭に70%も過度依存であり,PM2.5問題などの厳しい環境問題に直面,水力,風力,原子力等の非化石エネルギーの導入を加速している。原子力は割合が1%程度と少なく,急拡大中であったがその矢先,東電事故が発生。中国はどのような進路を採ったのだろうか?
著者
秋山 信将
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.96-101, 2016 (Released:2020-02-19)
参考文献数
16

2015年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議は,中東非大量破壊兵器地帯をめぐるアメリカと中東の対立から最終文書の採択に失敗したこと,核の非人道性をめぐる議論の盛り上がりの中で核軍縮に関する議論が盛り上がったことがハイライトであると評価される。他方,福島原発事故後初めてのNPT再検討会議であったが,平和利用については大きな注意が払われたわけではないが,それでも,核軍縮,核不拡散,平和利用というNPTの三本柱の間の「グランド・バーゲン」という構造の重要性が改めて認識され,また,非発電分野における平和利用が,途上国など必ずしも原子力の大規模利用をしていない国々のNPTへの関与を維持するという点で意義があることが示された。今後,開発分野との関係,途上国と先進国の間の平等性という点でも原子力平和利用の重要性は高まるであろう。
著者
黒川 清
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.146-151, 2013 (Released:2019-10-31)
参考文献数
24
被引用文献数
3 4

福島原発事故を受けて憲政史上初といわれる「国会事故調」が成立した。その必要性の認識,成立の経過,ほぼゼロからの出発とおおむね6か月の期限と時間の枠組みの委員会とその調査を進めるにあっての基本的考え方と多くの障害と苦労,委員会の公開とウェブ上で発信と同時通訳の意味,報告書に対する基本的な考え方について記述した。さらにこの国会事故調の民主制度での意義と報告書の評価等について記述した。さらに日本の三権分立の課題として,この国会事故調の投げかける課題,そしてこれからの事故調の評価と,国家統治機構の課題,さらに科学者の社会的責任についても少々の考察を加えた。この大事故を契機に変わらなければ日本の将来は危うい。
著者
笠田 竜太
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.409-413, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
17

材料の局所的な機械的強度を調べるために広く用いられているナノインデンテーション法の現状と課題について概説し,原子力・核融合材料研究への応用について述べる。
著者
八木 絵香
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.546-549, 2011 (Released:2019-09-06)
参考文献数
6

3月11日以降,「社会に信頼されるためには何が必要か」と考える原子力専門家は少なくないだろう。しかし今は何を語っても,それだけでは信頼されないという前提からすべてを考え直すしかない。原子力の問題を,専門家主導の科学技術理解増進の観点でとらえるのではなく,科学に問うことはできるが,科学(だけ)では答えることのできない問題,すなわち「トランス・サイエンス(trans-science)」の課題としてとらえ直すという観点から,解説を加える。
著者
飯田 哲也
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.97-100, 2012 (Released:2019-10-31)

東日本大震災と福島原発事故は,日本の近現代史にとって第三の転換期となる。これを機に「ベストミックス」から「持続可能なエネルギー」へと大きな方向性を転換し,経済合理性,民主主義,そして正義や倫理を反映したエネルギー政策に転換することが望まれる。持続可能なエネルギーではない原子力は縮小・廃止を目指し,その道のりは市場と民主主義に委ねるべきだろう。環境ディスコースなき日本の知と政治の退廃という現実から出発し,私たち国民自らの手で,まともな環境エネルギー政策に改革すべきときだろう。
著者
住吉 光介 千葉 敏
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.754-758, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
9

天空にとつぜん現れ他の星々を圧倒して急激に輝きやがて消えて行く超新星。その名に反し超新星は新しい星の誕生ではなく星の終焉をかざる大爆発である。宇宙に存在する重い元素の多くはこの時合成される。われわれの世界は超新星爆発の残滓からできている。鍵を握るのは素粒子ニュートリノであり,星が進化し超新星爆発に至る道筋は原子核や核力の性質から理解できる。高度な計算機シミュレーションによりこの道筋の理解が進んでいる。中核を担うのはニュートリノ輸送計算であり,この計算は原子力における中性子輸送計算と多くを共有する。
著者
遠藤 典子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.329-334, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
2

福島第一原子力発電所事故(以下,福島第一事故)による損害の賠償を求める訴訟が,全国の地方裁判所(支部を含む。以下,地裁)で提起されている。これらの訴訟の多くは,東京電力と並んで,国を被告としている。その最初の判決は,平成29年3月17日の前橋地裁が言い渡した東京電力と国の一部敗訴である。これに加え,続く9月22日の千葉地裁判決,10月10日の福島地裁判決を通じ,国の違法性について,「津波の予見可能性」,「結果回避可能性」などの争点が浮かび上がってきた。前橋地裁と福島地裁は,規制権限を行使しなかったとして国の違法性を認め,3地裁ともに国の予見可能性を認めた。東京電力に対しては,中間指針等ⅰを上回る精神損害の増額を求めるものとなった。本論考は,国家賠償を中心にこれらの争点を整理し,原子力損害賠償制度や安全規制へ及ぼす影響を検討するものである。