著者
増沢 力 竹中 况三 藤本 好恵 鍵和田 賢一
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-52, 1978

イオン交換膜法による食塩の固結傾向と一貫パレチゼイション輸送導入による固結への影響とを検討するため, Z, W, P3製塩工場の食塩を, それぞれ生産地と中継地計6場所において, 3と6ヵ月間3パレット36段レンガ積みを対象に, 積付け試験を行ない, 次の結果を得た.<BR>1) 積付け塩のマグネシウムは, ZとWがとくに少なくPは平均, 平均粒径はZとPが小さくWは平均であった. なお, 各工場とも日間, 年間の変動は相当に大きく, これらを小さくする必要があった.<BR>2) 積付け試験結果をみると, Pは3と6ヵ月経過とも固結強さが1kg/cm<SUP>2</SUP>以下で問題ないが, ZとWは, 期間と場所により固結強さが2-5kg/cm<SUP>2</SUP>となり, 注意を要する.<BR>3) すべての積付け場所の食塩の水分は, 保存中に増加した.<BR>4) 固結強さは, マグネシウム量が少ないと, 乾燥吸湿などの気象条件が大きく影響するが, マグネシウムがある程度多いと, 気象条件に関係なく, 固結傾向を小さくすることができた.<BR>5) 約3,700mmある食塩5k93パレット積付け塩袋は, 3カ月経過すると, 積付け時の高さに対して生産地で3.8%, 中継地で2.1%, 6カ月経過すると生産地で同じく4~5%, 中継地で2~3%沈下した. 塩の場合は, 3パレット積みでも倒壊のおそれはほとんどなかった.<BR>6) 固結強さ1.3~3.5kg/cm<SUP>2</SUP>に固結した食塩5kgを, 1mの高さから水平に2回落下させると, 60%以上が砕塊した. それ以上落下させてもあまり効果が増加しなかった.<BR>7) 一般に, イオン交換膜法による食塩の固結傾向は, 塩田法による食塩より小さいが, この原因は, 両者の液組成の差と, 前者が後者にくらべてバラツキ幅が小さくなり, マグネシウムが極端に少ないもの, 粒径が極端に小さいものがなくなったたためと推定された.<BR>8) 一貫パレチゼイション輸送導入以前の食塩の固結強さは1.5kg/cm<SUP>2</SUP>以下であるが, この試験では, 0.3~4kg/cm<SUP>2</SUP>であった. 一貫パレチゼイション輸送導入以降の食塩の固結傾向は大きいようであるが, マグネシウムをあるレベル以上にコントロールすれば, 食塩の固結傾向を低くおさえることができた.<BR>本研究を行なうにあたり, 種々ご協力をいただいた本社塩事業本部, 支部局塩事業部ならびに関係製塩工場の方々に厚く感謝する.
著者
加野 直平 青野 求
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.230-234, 1968 (Released:2013-02-19)
参考文献数
6

New procedure for the gravimetric determination of either phophorus or magnesium was proposed. In this procedure, the magnesium ammonium phosphate (MAP) is filtered on glass filter, and then in this state it is ignited to the magnesium pyrophosphate (MPP) at 570-590°C.In order to compare the new procedure with the ordinary gravimetric procedure, 10 samples of the MAP precipitated from a certain ammonium phosphate solution were adopted for each procedure, and the operation was examined from the beginning of the filtration of the MAP to the ending of the weighing of the MPP. Results were as follows.(1) Estimated value of the new procedure agrees with that of the ordinary.(2) Hours required for the two procedure are nearly equal, but actual working hours for the new procedure is 1/3 of that of the ordinary.(3) The standard deviations of the estimated value in the new procedure and the ordinary are 1.34 ppt and 1.68 ppt to the arithmetic mean, respectively.The new procedure offers much saving in time and tedium over the ordinary gravimetric procedure, and is more precise.
著者
角田 出 佐藤 利夫 川口 明廣
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.51-57, 1997

(1) ラクトフェリン (LF) をブリ, マダイ, ヒラメ, メバミル, マハゼの稚魚に経口投与し (0.2mg, 2mg, 20mg, 200mg/kg体重/日), 12日間の体表粘液分泌活性 (単位体表面積当たりい分泌されるタンパク質量) の変化を調べた. 実験水温は20℃であった。<BR>(2) LF投与区, 特に1日当たり2mg~200mg/kg体重のLFを投与した区では, 各魚種とも, 対照区に比べて飼育期間中の死亡魚数は減少する傾向を示した.<BR>(3) 試験開始時の単位体表面積当たりに分泌されるタンパク質量は, プリで1.47±0.25μg/mm<SUP>2</SUP>,マダイで1.73±0.24μg/mm<SUP>2</SUP>,ヒラメで1.54±0.27μg/mm<SUP>2</SUP>,メバルで1.69±0.34μg/mm<SUP>2</SUP>,マハゼでは1.45±0.31μg/mm<SUP>2</SUP>であり, 各魚種とも, 試験期間を通じて対照区の体表粘液分泌活性に有意な変化は認められなかった.<BR>(4) 海産魚の体表粘液分泌活性を有意に上昇させるのに必要なLFの投与量は, マダイのようなLFに対する感受性の高い魚 (0.2mg/kg体重/日のLF投与でも粘液分泌活性は上昇する) を除くと, 養殖魚・天然魚の区別無く, 2mg/kg体重/日以上であった.<BR>(2) 20mgまたは200mg/kg体重/日のLFの経口投与により5魚種の体表粘液分泌活性は3日から6日で有意に上昇した.<BR>(6) LFの投与によって上昇した体表粘液の最大分泌活性値は, マダイでは通常分泌活性値の約2倍, 他の4魚種では1.4~1.7倍程度であった.<BR>(7) LFの投与による体表粘液分泌の亢進効果は, 調査した5魚種中ではマダイで最も高く, 次いでヒラメ, マハゼ, ブリ, メバミルの順に低くなった。
著者
高村 弘毅 丸井 敦尚
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.86-90, 2006 (Released:2013-02-19)
参考文献数
16

Groundwater is well known as a natural resource that includes dissolved solution according to the geology, origin, flow route and storage condition. The calling code of the deep groundwater is divided by the saline concentration and condition, in usual. Brine, saline, brackish are the technical words of groundwater depended by the salinity, on the other hand, fresh and fossil are the words of groundwater condition. The study is introducing the previous studies and makes a scientific define of the Brine Water in the field of groundwater hydrology. The study also shows the sample of brine water in the Kanto basin, which is the largest and deepest deposit basin in Japan.
著者
原田 武
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.291-299, 1985 (Released:2013-02-19)
参考文献数
34

The elemental constitution of organisms, rocks and metals was found to have linear relations to that of the earth crust.Logarithms of the ratios of sample concentration to those of seawater were used as ordinate, Y=log (CSA/CWA), and those of the earth crust as abscissa, X=log (CEC/CSW).Regression lines, Y=A+BX, describe “omnipresence of elements” semiquantitatively.These samples were classined into 3 groups according to the inclination of the regression lines, B: i) B=1 (0.8 to 1.02);rocks, oxides, carbonate, phosphate, coal, ii) B=0.5 (0.4 to 0.7);organisms, metals, river water, petroleum, iii) B=0;seawater.The author used two parallel lines to the regression line instead of curves which were used usually, to express the 90% confidence interval. The elemental constitution of the samples composed of cells: microorganisms, plants, animals, muscle, bone, liver, was described by only one regression line.The inclination of regression lines changed in line with chemical reactions;e.g.values of B were decreased as much as 1 or 0.5 by dissolution, where seawater or river water formed from rocks, decreased ca by 0.5 by metal formation from oxide, and they were incresed by 1 or 0.5 by precipitation, where sediments or organisms formed from seawater.
著者
湊 太郎 宮内 宣宏 山崎 正一 佐藤 義夫 福江 正治
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.181-186, 2006 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10

本研究では, 大阪湾の湾奥に位置する尼崎港と尼崎運河において行った実証実験の結果をもとにして, 海水浄化船による水質汚濁物質の削減の可能性について検討した. その結果, 海水中のSSの中で粒状態有機物の占める割合が大きいほど, 海水浄化船を稼動させてSSを除去することによって, 海水中から水質汚濁物質である有機物を除去することが可能であるということが判明した. また, 植物プランクトンは, 海水中に溶存する無機栄養塩類を取り込み固定している. つまり, SSとして植物プランクトンをより多く除去することができれば, それに伴って海水中の栄養塩類の濃度をある程度まで低減させることが可能になると思われる. これらのことから, 大阪湾の湾奥のように, 植物プランクトンが大規模に増殖する海域では, 海水浄化船によるSSの除去に伴う水質改善が, より効果的に行われると考えられる.
著者
佐藤 利夫 野中 資博 山本 廣基 高田 竜一 福田 康伴
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.469-480, 2003 (Released:2013-02-19)
参考文献数
41

2030年頃に予測されている世界食料危機に対応するためには, 日本は海産資源に頼らざるを得ない. 特に生産力が高い沿岸浅海域の増殖環境の整備が不可欠である. しかし, 日本の沿岸浅海域では環境破壊や水質汚濁等により水産資源の増殖に重要な藻場の消失が進行している. よって沿岸浅海域の環境保全と藻場の回復を行う技術開発が極めて重要である.沿岸環境を劣化させている一因として, 火力発電所から排出されるフライアッシュ (FA), クリンカーアッシュ (CL) の沿岸域への投棄, および, コンクリートの基本材料となる骨材 (砂利および砂) の沿岸域からの過量な採取がある.本研究の目的はFAおよびCLをコンクリートに混合して再利用し, さらに地場産業からの廃棄物である低品質ゼオライトおよび鉄分含量が多い鋳物廃砂 (鉄分) も混合して, 生物易付着性を付与した廃棄物利用コンクリートを開発し, これを人工藻礁として活用することである. これが成功すれば, 浅海生産環境の保全・修復および廃棄物の再資源化を同時に解決することが可能となる.まず, 配合材料が異なるPlain (通常のモルタル), FA & CL FA & CL+ゼオライト, FA & CL+鋳物廃砂, FA & CL+ゼオライト+鋳物廃砂モルタル供試体の5種類を作製し, 人工藻礁としての利用性を検討するため, 耐久性・強度を評価した・次にFA & CLモルタル供試体について有害物質の溶出試験を行い, 海洋環境や生物に対する安全性を評価した. 次いで各モルタル供試体を海水に浸漬し, 表面に形成された生物膜のバイオマスをATP量, クロロフィルa量およびFDA分解活性を測定することにより評価した.強度試験の結果, FA・CLおよび鋳物廃砂やゼオライトを混合した廃棄物利用コンクリートは, 人工藻礁として十分な強度を有することが明らかとなった. また溶出試験を行った結果, FAとCLを混合したモルタル供試体から重金属類および有機リンの溶出はほとんど認められず, 廃棄物利用コンクリートを藻礁として利用する上で安全性を確認する第一歩を踏み出すことができた.生物易付着性試験を行った結果, ゼオライトと鋳物廃砂 (鉄分) を配合した3系 (FA & CL+ゼオライト, EA & CL+鋳物廃砂, FA & CL+ゼオライト+鋳物廃砂) のATP量は, Plainと同等か多かった. クロロフィルa量は, FA & CL+鋳物廃砂>FA & CL+ゼオライト>FA & CL+ゼオライト+鋳物廃砂=FAamp;CL>Plainの順に多かった. FDA分解活性はPlainと各系に有意な差は見られなかった. 以上の結果から, FA・CLおよび鋳物廃砂 (鉄分) やゼオライトを混合した廃棄物利用コンクリートは, 生物の付着性も良好であり, 特に藻類の著しい増加が見られ, 人工藻礁として利用できる可能性が高いことが示された.
著者
橋本 寿夫
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.p222-237, 1991-07
著者
大羽 和子 山本 淳子 伊藤 幸子 藤江 歩巳 竹内 若子
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.234-240, 2002-05-24
被引用文献数
1

日常, 果実や野菜の褐変防止に食塩が用いられる. 酵素的褐変を触媒するポリフェノールオキシダーゼ (PPO) の活性は食塩により阻害されるといわれている. 本研究では, 市販のりんご果肉, ジャガイモ塊茎, 黒緑豆もやし胚軸の粗酵素液中に複数の異なるPPOアイソザイムが存在することを, SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で明らかにした. また各アイソザイムの食塩に対する感受性には若干の差異がみられた. 次に, 食塩によるPPOの阻害様式を明らかにするために, 黒緑豆もやし胚軸からpI 6.7のPPOアイソザイムを硫酸アンモニウム分画, 2種類のカラムクロマトグラフィーにより426倍に精製した. 本酵素は分子量約40kDaのほぼ単一なたんぱく質にまで精製された. 精製酵素のクロロゲン酸 (基質) に対する見かけのKm値は1.3mMであり, 食塩による阻害様式は非拮抗型で, その阻害定数 (Ki) は0.22Mであった.