著者
村杉 健 三木 信一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.44-50, 1983-04-15 (Released:2018-12-17)

本研究は, HerzbergのM-H理論の理論的前提としてMaslowの欲求理論を実証的に検討したものである.Maslow理論の構造から, 基本的欲求(basic needs)の性質と種類, 欲求階層性(need hierarchy), 欲求先行性(need priorities)等の問題について提起し, desire-provision方式のモラール・サーベイを実施した3社400名について, desireとprovisionの関係を分析することで, それらの問題を検討した.その結果, 生理的欲求と安全の欲求は欠如欲求といえ, しかも両者の間に階層性も先行性も認められないので欲求のH因子とし, 尊重の欲求と自己実現欲求は成長欲求といえ欲求のM因子とし, 社会的欲求はどちらともいえず別の欲求であるR因子と考えられる.それゆえ, 本研究は, 欲求のM-R-H仮説を提起するものである.
著者
中村 信人 新宮 哲郎
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.38-43, 1983

本研究では, MRPにおいて重要な意志決定問題の一つであるロット・サイズ・スケジューリング問題に対して, まず残業時間制約付の問題として定式化を行い, それが残業時間制約のないロット・サイズ・スケジューリング問題と残業時間問題の二つの部分問題に分割可能であることを示す.そして両問題のトレード・オフを考えながら, 最適解よりもむしろ実用的な良好解の導出を目的とした一つのヒューリスティック・アプローチを提案する.
著者
松井 正之
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.83-87, 1988
被引用文献数
4

受注選択問題の純理論的モデルの解析については, いずれも生産能力が一定の場合に限定されている.他方, 生産能力が可変な能力切換問題は, 別個に論じられている.本研究は, 生産能力の切換えが可能な受注選択方策を持つジョブ・ショップの受注残数の制御方策について一考察を行っている.すなわち, 注文がポアソン到着に従うM<G, G>;/1(N)型生産モデルを提示し, セミ・マルコフ決定過程による定式化によって利得の最適化を行い, 能力切換えと受注選択の結合方策の2レベル構造に関する知見を示している.簡単のために, 受注選択には静的選択方策を採用し, 能力切り替えに要する時間と費用はゼロとしているが, 今後の展望としてこのモデルの拡張のみならず, 本研究と製品利益管理との関係を指摘している.
著者
平野 敏也
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.31-37, 1986-04-15

色のみが異なり他の品質特性が同じ製品群を色違い製品群という.複数組の色違い製品群によりなる製品系列の部品構成の指標による共用性の定量的評価はすでに発表した一般の製品系列に対する評価法を発展させることによって得られる.本論文はこのような色違い製品の部品共用性の評価方法を提案するものである.この方法では, (1)どのような共用程度の部品がどれだけの数量存在するかの部品構成の詳細構造を評価する基本指標, (2)基本指標より導かれる指標で比較評価を可能とする比率や平均値などで表わされる誘導指標, (3)一般の製品系列と部品構成特質の相異を評価する応用指標, の3種の指標を用いて評価する.本方法によれば詳細で総合的な評価が可能であり, かつ一般製品との部品の活用状態の相違を明らかにすることができる
著者
有薗 育生 邵 俊 太田 宏
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.145-150, 1992-08-15

近年, 古川・太田・加瀬は計数規準型逐次抜取検査の検査履歴が最短格子経路で表される点に着目して, これに基づく計数規準型逐次抜取検査の新しい設計法を提案している.この設計法によれば, 従来の逐次確率比検定に基づくWaldの設計法による計数規準型遂次抜取検査方式の生産者危険と消費者危険が指定値を近似的に満足するものであるのに対して, 両者の危険を確実に指定値以下におさえる検査方式が得られるばかりでなく, 任意の不良率についての検査特性も厳密に算出できるといった特徴がある.本研究では, この最短格子経路に基づく計数規準型逐次抜取検査方式の設計法の特徴を利用して, これまで規定されていなかった計数選別型逐次抜取検査の設計法を新たに提案し, その有効性について考察する.
著者
角倉 敏彦
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.264-269, 1981-10-15

それぞれ納入すべき製品品種, 数量が決まり, かつ, 同一納入の日の, 指定された複数注文に対する経済的生産計画を検討する.前報において明かにした"優先席取り法"の原則を応用するが, 本報では定時生産と残業生産または2直生産を含む生産のやり方について, 経済的な最適解を求める方法を検討し、その際に役立ついくつかの基本的な原則を明らかにするとともに, 最適解を求める方法を明らかにした.
著者
細野 泰彦 加瀬 滋男
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.81-87, 1980-06-30
被引用文献数
1

信頼性試験などで測定される品質特性は, しばしば二重指数分布に従う.本稿では, 新たに二重指数特性に対する標準偏差既知の計量規準型1回抜取方式の設計法を論じるとともに, 設計手順を簡単にするための抜取表を与える.統計量としてモードの最小分散線形不偏推定量を用いた提案法は, つぎのような利点をもつ.1)実用上計算の簡便さを失わずに, 定数打切試験による信頼性保証の検査にも適用でき, 2)試料平均を用いた抜取方式より格段に効率のよい抜取方式が得られる.なおこれらの利点は, 数値例によって検証されている.
著者
葛山 康典 大野 高裕 尾関 守
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.371-376, 1993-12-15
被引用文献数
2

証券市場での資金運用方法を構築したH.Markowitzのポートフォリオ理論は, 多数の投資可能証券が存在する場合, その適用が困難であることが指摘されている.本研究では, ポートフォリオ理論において, 収益率の分布パラメータである平均収益率と分散・共分散が一般には推定量であることに着目し, より簡易に投資方法を決定するためのモデルを提案する.すなわち, サンプル時点数が所与の場合, 分散共分散行列のランクを考慮し, 空売りの存在下で高速に有効フロンティアをもとめるモデル, および各時点での次期の市場指標収益率を, バックテストの意味で予測可能な証券を投資対象にすることにより, 投資対象証券数の増加を抑制するモデル, の2つのモデルを提案する.
著者
小黒 芳男 大久保 堯夫
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.141-146, 1986
被引用文献数
1

人力による片手持ち型運搬作業における取り扱う運搬物の至適重量, 作業後の回復時間などの作業条件を検討するための基礎的資料を得る目的で, 青年男子10人を被験者として, 取り扱う運搬物の重量の違う7通りの片手持ち型運搬作業を行わせ, 作業時の心拍数, 体温, 血圧, 疲労感調査などを測定し, 取り扱う運搬物の重量の違いと作業負担との関係を明らかにした.その結果, 心拍数, 最高血圧値およびおよび疲労感調査は取り扱う運搬物の重量とは密な相関関係があり, それぞれ回帰方程式が得られた.また, これらの指標を基にして, 総合的な判断を行うと, 取り扱う運搬物の重量については, 被験者の体重に対する30〜35%程度以下までは許容できるものと考えられる.そして, 作業後の回復時間については, 重量の5%増ごとに作業の実働時間に対して23%程度増の休憩時間が必要であることがわかった.
著者
塹江 清志
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.185-192, 1990-08-15

本論文の目的は, 日本人の根源的・根底的心理特性が, 「一体感」の心理であることを明らかにすることである.本居, 中根, 小此木, 土居, 源, そして木村の理論がとりあげられた.諸家の主張する日本人の心理特性について検討された結果, それらの特性が「一体感」の心理に基づいて成立することが確認された.それゆえ, 日本人の根源的・根底的心理特性が「一体感」の心理であると結論された.
著者
泉井 力 森 健一
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.346-354, 1995-12-15
被引用文献数
2

小集団活動の活性化要因を検証する.サークルリーダーの行動スタイルとして, PM理論の課題遂行型と集団維持型に新しい2次元が追加される.自己規律のS型と知識技術教示のT型の有効性が検証される.製造業6社から166サークルの有効回答を得た.有効性の検証には集団凝集性, 集団規範, 凝集性×規範, 自主性, 職制との関係, 成果を用いた.状況変数として, 6次元のリーダーの気質の他に9変数が検討された.
著者
加藤 貞夫
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.424-427, 1981-03-31
被引用文献数
1

この報告は, 筆圧を用いた事務作業負荷の測定方法を開発するために行なった基礎的な実験の結果について述べている.実験では転記・暗算・電卓操作の3種類の作業が, 12名の被験者に課せられ, 各被験者の筆圧が各作業の前後で測定された.実験で得られた筆圧の変化率を分析した結果, 筆圧の変化率は肉体的負荷が強い転記作業では正の値を示し, 精神的負荷が強い暗算作業では負の値を示すことが認められた.電卓作業では両作業の間の値を示した.この結果は事務作業負荷を測定する方法を開発するさいの重要な手掛りとなる.
著者
圓川 隆夫 曹 徳弼
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.501-509, 1994-02-15
被引用文献数
5

本研究では, 多段階のロジスティクスシステムにおいて, 理想的なロジスティクス, すなわち, ジャスト・イン・タイムを阻害している要因として, リードタイム, 需要の不確実性の大きさ, 意思決定段階数の3つを取り上げ, システム平均在庫を尺度として, これら3つの阻害要因とシステム平均在庫との関係およびその相乗的効果を定量的に示すものである.そのために, 情報の利用形態により, 独立型, 情報共有型, および統合型の3つのタイプのモデルについて, サービス水準が同一のもとでのシステム平均在庫の定式化を行うとともに, その効果の評価を行った.その結果, リードタイム等の条件の障害が大きいときほど情報の共有化による在庫削減効果が大きいこと, さらにリードタイムについて, サイクルリードタイムと補充リードタイムに概念区分をした上で, その中のボトルネックとなるサイクルリードタイムの削減が最も本質的な意味をもつことを示唆した.
著者
小林 秀明 大成 尚
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.17-23, 1989-04-15

近年, 多種少量生産文野におけるフレキシブルな生産を指向した工場一貫自動化システムとして, FA生産システムが急増している.このようなシステムでは, 初工程への投入制御によるライン稼働率の向上が重要であり, 生産変動に即応して短時間でリスケジュール可能なフローショップ・スケジューリングの実用解法を提案する.本スケジューリングは, 総所要時間を最小化する投入順序を決定するもので, 各機械間の中間バッファに制約があり, ジョブ間の追い抜きのないフローショップを対象としている.本スケジューリングは, (1)全工程を最大負荷機械の後で2分割し, Johnsonルールを適用する.(2)(1)で得られたジョブの配列を部分的に並べ替え, 各機械ごとのブロッキング時間と遊休時間を最小化するジョブの配列を求める, という2段階の処理を行うことにより, 短時間で精度の高い近似解を得るヒューリスティック・アルゴリズムである.