著者
南 和彦 長谷川 直子 福岡 修 宮島 千枝 角田 玲子 深谷 卓
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.112, no.7, pp.550-553, 2009 (Released:2010-10-26)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

頭頸部進行癌で皮膚浸潤を呈した症例では出血, 疼痛, 感染などを伴い, 著しくQOLを損なうが, 有効な治療手段がないのが現状である. 特に腫瘍の皮膚浸潤による自壊, 出血例では止血に難渋することが多く, 輸血を必要とすることもある.今回, われわれは皮膚科領域で使用されてきたMohs軟膏を使用した処置を頭頸部癌皮膚浸潤2症例に適応した. この治療法は病変を化学的に固定することで, 腫瘍出血, 疼痛, 感染, 滲出液を制御するとされる. 実際, いずれの症例においても出血と疼痛を制御し, QOLの改善に有効であった.Mohs軟膏による処置は頭頸部癌の皮膚浸潤および皮膚転移を伴う症例における局所合併症の制御目的に非常に有用な治療法と考えられる. 頭頸部癌進行例のQOLの改善目的にMohs軟膏を使用して局所合併症を制御し得た2症例を経験したので若干の考察とともに報告する.
著者
樋口 博行
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1119-1128, 1971

(目的) ウサギの外眼筋の自己受容器に由来するインパルスを中脳被蓋部から誘導し, 視運動眼振解発機序解明の一端に資するため本実験を行った.<BR>(実験方法) 有色のウサギを用いて, 左側上丘経由で中脳被蓋部に色素充填微小電極を定位的に刺入, 単一神経活動を誘導した.<BR>ウサギの同側6外眼筋を剥離し, 刺激として20g~30gの張力を滑車を介してそれぞれの筋に与えた. 誘導部位は実験後誘導電極を通じて生体染色を行い組織学的に同定した.<BR>(結果) 562ユニットの外眼筋伸展に対する中脳被蓋部から誘導した単一神経活動中419ユニット (74%) は無反応で, 反応を認めたのは39ユニット (7%) に過ぎず, 104ユニット (19%) ではいずれとも断定できなかった. 反応を示した39ユニットのほとんどは, 傍水道中心灰白質外側縁から誘導された. 反応を示したユニットの各外眼筋伸展刺激に対する反応様式を個々に分類し, (i) 放電数増加型, (ii) 放電数減少型, (iii) 長潜時放電数増加型の3型とした. 反応を示した39ユニット中, 23ユニットは総ての外眼筋の伸展刺激に反応を示し, しかもそれぞれのユニットはいずれの外眼筋伸展刺激に対する反応も同一の反応型を示した. 10ユニットでは全眼筋の伸展刺激を行い, そのうち少くとも一筋に対する反応が確認されているが, 他の筋に対してはそれと異なる型の反応が認められているか, あるいはそれが疑われるものであった. 6ユニットでは6外眼筋中の一部の筋に対する試行しか観察できなかったが, 試みた刺激に対しては確実に反応していた.<BR>以上の結果から, 本実験で観察した外眼筋伸展刺激に反応を示すユニットは, いずれも外眼筋の自己受容器の刺激に対して反応したものと考えられたが, 自己受容器の求心性一次ネウロンから誘導されたものではないと考えられた.
著者
伊藤 健
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.929-936, 2016-07-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
11

音響生理学的プロセスを解説した上で, 聴覚検査において観察している現象について述べた. 対象としては専門医資格取得前後の耳鼻咽喉科医師を想定した. 中耳は空気中から外リンパに音波を伝えるためのインピーダンス整合器の働きを持つ. 内耳 (蝸牛) は音響受容器であるとともに内部に増幅機能 (amplifier) を持ち, さらに周波数分解をも行う. 検査としては基本となるもののみ (インピーダンス・オージオメトリ, 耳音響放射, 脳電図, 音叉による検査, 純音聴力検査, 聴性定常反応) に限った. 実際の検査結果を評価するに当たっては, どのような音響生理学的現象を観察しているのかを常に考えるようにすると学習効果が高まる.
著者
牧島 和見
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.1225-1228_2, 1972-11-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
12
被引用文献数
1

1. 目的: 一酸化炭素中毒による耳神経学的症状と全身症状との関連, およびその背景となる形態学的変化については, 未だ充分に把握されていない. 急性一酸化炭素中毒屍剖検例を中心として, これらの疑問点の解明を試みた.2. 方法: 54才, 男性の急性一酸化炭素中毒患者の死後, その内耳および中枢伝導路を病理組織学的に検索し, 本症例と同時被災の症例群の諸症状との関連について考察を加えた.3. 結果: 剖検例の病理組織学的所見.(1) 両淡蒼球の軟化巣のほか, 一般に大脳, 小脳, 脳幹部, 第8脳神経には著変がなかった.(2) 内耳では, ラセン神経節には萎縮が認められたが, 血管条, コルチ器などには著変がなかった. また前庭神経節, 球形のう, 卵形のう, 半規管にも著変がなかった.(3) 一酸化炭素中毒による耳神経学的症状は中枢伝導路における病変により惹起されるものと推察した.
著者
岸 澄子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.386-400, 1973-03-20 (Released:2008-12-16)
参考文献数
32
被引用文献数
4

[目的]メニエール病の臨床症状は多種多様で,かつその経過も長短まちまちである.そこでメニエール病の臨床的経過を明らかにすると共に,その臨床症状ならびに検査成績から予後に関係する因子を知る目的から研究を行なつた.[対象]昭和42年1月から45年12月までの4年間に当科を受診したメニエール病78例,および原因不明の耳性眩暈98例の内,外来観察ないしはアンケートによつて受診後少なくとも1年以上の経過を知ることのできたメニエール病67例,耳性眩暈78例をえらんだ.[結果]アンケートの結果,めまいが治癒あるいはほぼ治癒した例は約90%以上あつたが,その罹病期間はメニエール病では平均4年4ヵ月であつた.初発年令はメニエール病,耳性眩暈ともに20代から40代に多く,初発年令が高令化するにつれて罹病期間が短かくなる傾向がみられた.初回眩暈発作時に耳鳴,難聴を加えて3主徴をもつたものは42例(63%),さらに耳閉塞感を加えて4主徴を伴つたものは24例(36%)であった.まためまい発作がcluster groupingを示す傾向は耳性眩暈例には少なく,メニエール病に特徴的であつた.CMI (Cornell Medical Index)検査では,メニエール病が精神身体疾患の傾向をもつことが確かめられた.初診時の純音聴力検査では,平均聴力損失が40dB以内の軽度難聴者と40dB以上の難聴者の2つのグループに分けることができた.患側耳の聴力型は水平型が最も多く,次いで斜昇型,高音急墜および斜降型,山型,正常,聾の順であつた.このうち,水平型は発病よりの期間が長い例に多く認められ,一方斜昇型はその逆に経過の短い例に多かつた.温度刺激検査と発病から初診までの期間との関係はNo Response群が他群に比し,明らかに長い経過を示した.臨床症状のうち予後に関係すると思われた因子は,初発年令,めまい発作におけるcluster groupingの有無であり,若年者に初発した場合,発作にcluster groupingをみとめる場合,初回発作時にすでに難聴を自覚した場合に治癒までの期間が長くなる傾向があった.検査成績と予後との関係をみると,純音聴力検査で平均聴力損失が40dB以上か,あるいは患側耳の聴力型が高音急墜あるいは斜降型の場合に短い予後期間を示した.温度刺激検査成績では正常型か,あるいは著しい半規管機能の低下例に予後期間の短い例を多くみとめた.
著者
井口 福一郎 谷口 善知 草野 純子 髙橋 由佳 村井 紀彦
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.8, pp.1108-1114, 2014-08-20 (Released:2014-10-07)
参考文献数
14
被引用文献数
5

唾液腺導管癌は予後不良な唾液腺悪性腫瘍であり, 遠隔転移再発後の有効な治療法はこれまで知られていなかった. HER2 過剰発現する本腫瘍へトラスツズマブを含む分子標的治療が著効した症例を経験したので報告する. 症例は69歳男性, 原発巣と所属リンパ節への手術, 術後照射の初回治療から半年後に肝, 椎骨への遠隔転移を来した. パクリタキセルとトラスツズマブによる化学療法を行ったところ, 転移巣は肝, 椎骨ともに著明に縮小した. パクリタキセルによる四肢の末梢神経障害が認められた後はトラスツズマブのみの投与を続けているが, 心障害は生じていない. 遠隔転移から3年経過するが再増大は認められず, 在宅で日常生活を送っている.
著者
中村 英樹
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.1605-1627, 1969-09-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
58

過去3年間における頭部外傷例について考察, 本稿では耳科学的並びに聴力検査の結果を報告した.1) 自覚症状, 耳鏡所見, レ線所見, 性及び年令, 受傷原因, 受傷部位及び受傷程度 (荒木氏の分類) につき統計的に検討した.2) 外傷による聴力障害の性質を上記の点につき総体的に検討した.3) 110例に対し自記オージオメトリーを施行し, 2, 3の知見を得た.結論としての要旨は次の如くである.1) 純音聴力検査では対象例 (160例) 中136例85.0%に難聴をみた. 伝音性及び感音性障害の両者がみられた.2) 聴力損失の程度及び性質は受傷部位とは関係なく, 受傷程度とは関係がみられた.3) 自記オージオメトリーではJergerの分類基準に従つて5型に分類, 対象例110例中, I型が52.7%, II型31.4%, III, IV型が15.9%であり, V型はみられなかつた.4) 自記オージオメトリーで, III, IV型の出現は受傷部位とは関係なく, 受傷程度とは関係がみとめられた.5) 頭部外傷による聴力障害の特長は, その性質, 程度に多様性を示し, 他の原因による難聴のごとく一定の傾向がみられなかつた.
著者
大橋 敬司 佐田 憲映
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.81-86, 2016-02-20 (Released:2016-03-10)
参考文献数
31
被引用文献数
1

ANCA 関連血管炎は全身の中小型血管の炎症と血中への ANCA の出現を特徴とする希少な難治性疾患である. 以前は予後不良とされていたが治療法の発展により, 予後は改善されてきている. 欧米では再燃や副作用の問題解決のため盛んに臨床研究が行われ, それをもとに診療ガイドラインが策定されている. しかし, わが国における ANCA 関連血管炎は, 高齢発症, 顕微鏡的多発血管炎の比率が高いといった特徴を持ち, 多発血管炎性肉芽腫症が大半を占める欧米とは疫学的, 病態的に大きく異なるため, わが国独自の ANCA 関連血管炎診療ガイドラインが長年求められてきた. そして, 日本人患者における治療法確立のため厚生労働省研究班を中心に行われた前向き臨床研究や欧米のガイドライン, 関連学会からの意見をもとに ANCA 関連血管炎の診療ガイドラインが2011年策定された. その後, Chapel Hill 分類の改定に伴い名称変更された疾患名を反映させ, 新たな知見を盛り込んだ改訂版診療ガイドラインが2014年に発行されている. 今回は, この診療ガイドラインをもとに ANCA 関連血管炎について概説し, 新たに開発されている治療法や近年提唱された ANCA 関連血管炎性中耳炎などについても触れたい.
著者
高橋 里沙 大淵 豊明 寳地 信介 竹内 頌子 大久保 淳一 池嵜 祥司 鈴木 秀明
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.789-792, 2013-07-20 (Released:2013-09-14)
参考文献数
7
被引用文献数
1 5

閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) において, 鼻腔抵抗はその病態と密接に関与している. 今回われわれはOSASに対する鼻中隔矯正術および粘膜下下鼻甲介骨切除術の効果について検討した.対象は, 鼻中隔彎曲症と肥厚性鼻炎による鼻閉を伴い, 内視鏡下鼻中隔矯正術と両側粘膜下下鼻甲介骨切除術を施行したOSAS患者9例 (男性8例, 女性1例; 平均年齢53.2歳) である. 術前後に終夜睡眠ポリグラフ検査と鼻腔通気度検査を行い, (1)無呼吸・低呼吸指数 (AHI), (2)最長無呼吸時間, (3)平均無呼吸時間, (4)最低血中酸素飽和度, (5)平均血中酸素飽和度, (6)血中酸素飽和度低下指数, (7)覚醒反応指数, (8)睡眠時間に対するいびき時間の割合の8つの無呼吸指標, および(9)鼻腔通気度について比較検討した. その結果, 術前に比して術後に, AHIの有意な低下 (27.6±5.3/時 vs. 20.7±5.5/時; p=0.033), 平均血中酸素飽和度の有意な上昇 (95.1±0.7% vs. 96.0±0.7%; p=0.023), および覚醒反応指数の有意な低下 (30.5±3.3/時 vs. 21.2±5.3/時; p=0.028) が認められた. また, 鼻腔通気度V (P100) は吸気呼気ともに有意に改善した (吸気: 474.4±49.0cm3/s vs. 842.7±50.2cm3/s; p=0.002, 呼気: 467.3±57.3cm3/s vs. 866.0±80.6cm3/s; p=0.004). 他の項目については変化がなく, また術前後のbody mass indexにも変化はみられなかった. 以上より, 鼻中隔矯正術と両側粘膜下下鼻甲介骨切除術は, 鼻閉を伴うOSAS患者の睡眠時呼吸動態を改善させることが示された. このような鼻内手術の効果はOSASの治療に積極的に応用されるべきであると考えられた.
著者
浜井 行夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.84-89, 1994-01-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
21
被引用文献数
1

The growth process of tracheal epithelia was observed by primary cell culture method using BrdU. Cells stained with BrdU, that showed mitotic activity, were nonciliary cells and BrdU was not found in ciliated (differentiated) cells. The dividing cells and the mature cells could be distinguished by BrdU. Thus, it was demonstrated that BrdU could be used as an index for investigating the growth process of basal cells. .Tissue culture of the tracheal rings after mucosal injury was performed. On the third day post -injury, the cells stained with BrdU and the migrating epithelia were observed in the border region between the non-injury and injury site. On the seventh day post-injury, healing was completed. The tissue culture method using BrdU is useful for observing the healing process of the tracheal mucous membrane.