- 著者
 
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             黄 舜範
             
             村田 厚夫
             
             脇坂 晟
             
             吉江 利香
             
             土屋 克巳
             
             斉藤 喬士
             
             武市 俊明
             
             阪井 哲男
             
             高見 佳宏
             
             林 潤一
             
             会沢 勝夫
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 杏林医学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.35, no.4, pp.391-399, 2004 
 
          
          
          - 参考文献数
 
          - 28
 
          
          
        
        
        
        レーザー光照射装置と光増感物質の進歩により,Photodynamic therapy(PDT)は近年,癌などの治療に用いられるようになってきた。その細胞に及ぼす影響を分子生物学的に解明することは,本療法の副作用を防止して,その効果を充分に引き出す上で重要であろう。そこでヒト培養細胞にPDTを施行した際に生ずる遺伝子発現の変動をcDNA発現アレーによって解析することを試みた。健常成人皮膚より調製した線維芽細胞を,光増感剤talaporphin(mono-L-aspartylchlorin e6,NPe6)10mg/dlとともに37℃1時間培養し,ダイオード,イオン,レーザー照射装置を用いて,664nmの可視光により1.00J/cm^2の線量で照射し,その後,さらに37℃で10分間培養した。この細胞からRNAを抽出し,逆転写反応により[^33P]標識cDNAプローブを調製した。このプローブとNylon membrane arrayとをハイブリダイズし,その結果をイメージング,プレートおよびイメージ,スキャナーを用いて解析した。その結果,PDTを受けた直後の線維芽細胞においては,アポトーシス関連遺伝子では,RARB(retinoic acid receptor beta)以外には有意の発現増大を示す遺伝子は見られず,むしろ膜輸送,細胞増殖,細胞内シグナル伝達および転写などに関連する遺伝子,特にCキナーゼ,S6キナーゼおよびCREBなどの発現増大が特徴的であった。この結果はPDT処理直後の細胞においては,細胞内シグナリング,カスケードが活性化されていることを示唆するものと考えられる。