著者
犬塚 則久 笹川 一郎 吉岡 敏雄 高橋 正志
出版者
歯科基礎医学会
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.552-561, 1979

従来, 長鼻類の脱落した臼歯に関する記載が乏しかったので, その形態的特徴を明らかにするためにおこなった。<BR>アジアゾウ4頭からえられた臼歯11点について, 計測, 記載した。<BR>脱落歯の特徴は, 咬板数が少ない, 歯冠長が短い, 歯冠高が低い, 歯根が吸収されている, 近心の咬合面が滑らかで, 象牙質彎入が浅い, エナメル摺曲が不明瞭で, 遠心面の接磨面が広い点にある。<BR>歯根の吸収は, 遠心より近心, 中央部より頬舌両側, 上顎歯では頬側, 下顎歯では舌側の方が対側より顕著である。<BR>脱落歯のなかには, 3年間で歯冠高が14-15mm減少した例 (P1. I, 1-4) がみられた。また, 通常は近心から脱落するはずの臼歯において, 遠心の咬板の一部が3カ月早く脱落した例 (P1. 1, 5-7) がみられた。
著者
市田 篤郎 小田島 武志 水野 守道 西風 脩
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.372-376, 1979 (Released:2010-10-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

生後4週の雌マウスにビタミンAパルミテート1万単位を毎日投与して, 顎下腺におけるシアル酸含量, CMP-シアル酸合成酵素 (CSS) 及びシアル酸転移酵素 (ST) 活性の変動を追及した。ビタミンA過剰投与は糖タンパク合成を亢進させるという従来の報告に反してシアル酸含量, ST活性は投与日数の経過と共に低下した。これに対してCSS活性は初期に低下がみられたが7~9週目には対照群のレベルに回復した。9週目においてはNeuraminidase活性は対照群との間に差が認められなかった。シアル酸含量の低下はST活性の低下によることが示唆された。
著者
畑 礼子
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.118-122, 1972 (Released:2010-11-30)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

基底頭蓋長が95~110mmの間にある, 永久歯列をもった野生のエゾタヌキ (Nyctereutes procyomides albus) 64例128顎を用いて歯牙の調査を行ったところ, 完全顎60例中35例に歯数の変化が見られた。このうち, 萠出後の変化を除くと, 先天的に歯数に異常が見られたのは27例であった。歯数異常のうち過剰歯はいずれもP3の位置に4例 (5顎) 出現した。さらに欠如歯で先天的に欠如していたと思われるのは, P1: 1例 (2顎), P2: 2例 (2顎), P2: 3例 (4顎), M3: 21例 (39顎) であった。P2, P2は前臼歯部における最前方にある歯という点で, またM3は, 咬合上の役割と顔面頭蓋 (吻) の短縮する傾同があるという点で興味ある所見である。さらに, 歯根の変化が観察され, 3根化がP3に8.8%, P4に1.6%, 2根化がM2に27.0%, 単根化がP2とM2にそれぞれ28.5%, 35.8%に現われた。これらの歯根の変化は, 咬合および歯数の変化と関連性があるものと思われる。
著者
津田 理子 蒲池 元春 飯塚 進 桐村 和子
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-26, 1975-12-31 (Released:2010-10-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

唾液カルシウム量と年齢, 性別, う蝕の有無との関係をしらべ, 次の結果を得た。唾液カルシウム量は個人差はかなりあるが, 同一人においては, 採取時による差は比較的小さいことがわかった。唾液総カルシウム量の経年的な変動をみると, 生後6歳位まで増量し, 以後11歳位まで減少し, 成人 (19~23歳) に至るまではほぼ一定値を保っていた。特に生後9カ月未満のもの (歯が萠出していないもの) と, 1歳~1歳5カ月のもの (歯が1本以上萠出したもの) で唾液カルシウム含有量に大きな差がみとめられた。性別による差は11歳, 14歳でみられ, 男子の方が高い値をしめした。3~4歳, 5~6歳児について唾液カルシウム量と, う蝕との関係をしらべたが, 相関関係はみられなかった。
著者
小杉 憲吾 阿部 伸一 井出 吉信
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.67-78, 2000-02-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

オトガイ神経の走行形態を立体的に保存し観察するため, シリコン含浸標本を作製した。試料として東京歯科大学解剖学教室所蔵10%ホルマリン固定成人遺体24体45側を用いた。オトガイ神経の断端より末梢側に向かい剖出し, 口角枝, 下唇枝, オトガイ枝の走行の観察, 分類を行ったところ以下の結果を得た。口角枝は, オトガイ孔より出現後ただちに口角部の皮膚または粘膜に停止するもの (I型) と下唇内に侵入し下唇外側粘膜下を彎曲して走行するもの (II型) に大別された。下唇枝は, オトガイ孔より下唇正中に向かい斜走するもの (I型) とその上外方を軽度に彎曲して走行するもの (II型) に分かれた。オトガイ枝は, オトガイ孔より横走しオトガイ部に停止するもの (I型) と正中付近にて下唇方向に転じ上方に向かうもの (II型) が認められた。これらの分布領域および走行方向を検討したところ, 分布密度が低く安全性が高い部位が示唆された。
著者
山下 靖雄
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.188-238, 1976-06-30 (Released:2010-10-28)
参考文献数
100
被引用文献数
3 3

爬虫類は, 魚類や両生類から哺乳類への移行として, 系統発生学的に重要な位置づけがなされている。したがって, 歯の形成機構を究明するための比較発生学的研究の一端として, 爬虫類のワニを材料とし, 内エナメル上皮の初期段階から, エナメル質基質形成期末期にいたるエナメル芽細胞の形態と構造に関する時期的な推移について, 透過電子顕微鏡を用いて観察をおこなった。内エナメル上皮は, エナメル芽細胞に分化をおこすにしたがって伸長するが, ワニでは細胞の伸長が緩慢で, 象牙質基質形成の後期に, 核とGolgiの移動が行なわれ, さらにエナメル質基質の形成がやや進行した後に, 細胞長が最大となる。芽細胞が分化をおこす過程や形態と構造の推移に関しては, 魚類とは多少異なる点もあり, 基本的に哺乳類のそれと類似し, 中胚葉エナメル質の魚類から哺乳類への移行を示している。
著者
尾崎 雅征
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.264-275, 1977
被引用文献数
2

口輪筋と顎筋との間に存在する機能的相関関係とその背後にある神経-筋機構を明らかにするためヒトについて種々の口顎運動時の口輪筋および顎筋活動の相互関係を分析した。咀嚼の際, 口唇の筋活動は特に開口および閉口動作時に生じその活動パターンおよび活動の時間経過は舌骨上筋群の筋活動に類似した。口唇は閉口動作時に比べ開口動作時により著明に活動した。なお開口動作, 口角をひく動作, 口をすぼめる動作および筒を吹く動作等の口顎運動の際, 口唇のみならず舌骨上筋群も活動に参加した。咬筋活動はその間, 微弱であるか或いは認められなかった。咬みしめた状態で口唇に力を入れると咬筋活動は著明に減少し, 逆に口唇に力を入れた状態で咬みしめると口唇の筋活動は著明に減少した。<BR>以上より, 口唇は開口筋 (舌骨上筋群) と協調的に働き, 閉口筋 (咬筋および側頭筋) とは相反的に働く傾向が存在することが明らかとなった。
著者
奈良 美夫 柴田 治雄 森岡 俊夫
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.443-448, 1978 (Released:2010-10-28)
参考文献数
19

蔗糖56%含有のdiet #2000で長期間飼育されたハムスター (実験群) は, 普通飼料で飼育されたハムスター (対照群) と比較して, 全身の発育や糖代謝にどのように影響があるかを血液, 尿, 唾液などの検査によって検索した。一般発育は実験群が劣り, 血球成分では白血球が実験群に少ないことを除き両群間に差異はなかった。血液生化学検査では実験群に血中Ca++, およびグルコース値が高く, 尿酸が低かった他は有意差が認められなかった。血液ガス測定結果は両群に有意差はなく, 実験群に酸血症の傾向がみられた。空腹時血糖は両群に差はなく, 飼料摂取時血糖は実験群が有意に高かった。なお唾液および尿中の糖量は両群共極めて低く差異は認められなかった。糖負荷試験では60分値が実験群に有意に高く, 120分値も同群に高かった。このことは実験群において明らかに糖代謝異常があることを示唆するものである。
著者
祐川 励起 山道 祥郎 久米田 哲 佐藤 功二 西山 和彦 池野谷 達雄
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.156-163, 1988-04-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1

東北歯科大学解剖学教室所蔵の乳歯列期から永久歯列期までのインド人頭蓋101顆を歯牙の萠出状況により5期に分けた。そして, 口蓋各部位を計測して各期ごとの平均値と1期から5期の成長率を求めて口蓋の成長変化を推定した。さらに, 口蓋を構成する上顎骨口蓋突起の長さと口蓋骨水平板の長さについいては相関関係も調べた。切歯骨口蓋部の長さと前方口蓋の幅はそれぞれ中切歯もしくは犬歯の萠出により変動するが, 最終的に1期から5期で1.01倍と1.08倍の成長率であった。上顎骨口蓋突起の長さ, 骨口蓋の長さそして歯槽突起の長さは大臼歯の萠出に伴って増大し, 最終的に1期から5期で1.57倍, 1.37倍さらに1.42倍の成長率であった。口蓋骨水平板の長さと幅, さらに後方口蓋の幅は比較的スムーズに成長し最終的に1期から5期の成長率はそれぞれ1.40倍, 1.27倍さらに1.23倍であった。以上の結果から, 口蓋の形態は成長に伴って前後に長くなることが分かった。特に, 口蓋の後方部の成長には大臼歯の萠出が関与していると思われた。さらに, 上顎骨口蓋突起の長さと口蓋骨水平板の長さはすべての期で相関係数が負であったことから, 互いに口蓋の長さを一定に保つような関係にあると思われた。
著者
大野 紀和
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.389-399, 1986
被引用文献数
1

インド人 (Hindus) 家族17組 (両親と子供2人) の口腔内石膏模型を用い, 複シャベル型切歯, シャベル型切歯, Carabellr's trait, 介在結節および舌側副咬頭の5形質8歯別について観察し, その形質の遺伝形式を分析した結果, 以下の結論を得た。<BR>1. 親子間および同胞間の歯冠形質出現一致率は第一大臼歯のCarabelli's traitおよび側切歯のシャベル型切歯において同胞間で一致率が高い。<BR>2. 各組み合せにおける点相関係数を算出すると, 複シャベル型切歯における父親と子供間, 第一大臼歯のCarabelli's traitにおける母親と子供間とで有意な正相関が認められた。それ以外には認められない。<BR>3. 歯冠形質の表現型を遺伝子型に対応分類し, 両親の遺伝子型別の交配より子供に出現する遺伝子型をみると, 中切歯のシャベル型切歯において劣性ホモ接合体どうしの交配では子供は全てが劣性ホモ接合体となり, 第一大臼歯のCarabelli's traitにおいて優性ホモ接合体どうしの交配では子供にはヘテロ接合体と劣性ホモ接合体は出現しない。ヘテロ接合体どうしの交配では, 第一大臼歯のCarabelli'straitは劣性ホモ接合体, 介在結節および舌側副咬頭では優性ホモ接合体は出現しない。<BR>以上の結果より, 歯冠諸形質の遺伝形式は遺伝的要因と非遺伝的要因の相互作用によると考えられる。
著者
永井 明子 松野 昌展 葛西 一貴 網干 博文 川村 全 佐竹 隆 金澤 英作
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.232-240, 1998-08-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
16

アジア太平洋モンゴロイド集団の下顎小臼歯についてその舌側咬頭数を調べ, 出現頻度を各集団ごとに比較した。第1小臼歯については舌側1咬頭性のものが日本で54.9%と半数以上を占めており, 2咬頭性のものは41.5%であった。1咬頭性の頻度を集団ごとに比較すると, モンゴルでは68.1%と高く, ついで日本が54.9%, ミクロネシアのキリバスは51.9%, 台湾のヤミでは半数以下の44.1%, 太平洋集団のサモア, フィジー, そしてオーストラリア先住民は40%以下の低い頻度であった。2咬頭性のものはモンゴルでは29.8%と低い頻度を示すが, サモア, フィジー, オーストラリア先住民は50%以上を占めていた。第2小臼歯では舌側2咬頭性のものがどの集団でも70%以上を占めている。1咬頭性のものはモンゴル, 日本, ヤミ, キリバスでは10%以上の頻度でみられるが, サモア, フィジー, オーストラリア先住民での頻度は低い。また3咬頭性のものがフィジー, オーストラリア先住民では20%以上の頻度であった。第1小臼歯と第2小臼歯を比較すると, 第2小臼歯の方が舌側咬頭数の変異は少ない。集団間では太平洋集団で第1・第2小臼歯ともに舌側咬頭数が多いものの頻度が高いことがわかった。