著者
鬼倉 徳雄 松井 誠一 竹下 直彦 古市 政幸
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.367-370, 1998-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10
被引用文献数
1

カマキリとヤマノカミの成長および生残率と水温の関係を明らかにするために, 天然河川で採集した供試魚を用いて短期間の飼育を行った。カマキリの場合, 低水温区の20℃区が最も優れた成長と生残率を示した。逆に高水温区の27℃区は短期間で生残率が急減し, 成長も他の水温区に劣った。ヤマノカミの場合, 20~28℃の全区で生残率の急減は認められなかった。しかし, 成長では明らかに差が認められ, 20℃区と24℃区が28℃区に比べ優れていた。したがって, 生存可能な限界水温はカマキリでは24~27℃に, ヤマノカミでは28℃以上にあり, 成長のための至適水温は3区の中では20℃前後であると推察された。
著者
田原 大輔 羽田野 亮 岩谷 芳自
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.37-43, 2008-03-20 (Released:2012-09-04)
参考文献数
26
被引用文献数
1

カマキリ養成2才親魚の卵巣成熟度を,外観および組織観察から周年調査した。卵母細胞の発達段階,残留卵の状態と再吸収の進行状況を基に,卵巣成熟度を6段階(前卵黄形成期,卵黄形成期,成熟期,退縮前・中・後期)に分類した。残留卵の出現は産卵期が近づくにつれ低くなったが,ほとんどの養成親魚の卵巣内にほぼ周年残留卵は認められた。残留卵の長期滞留の発生は,親魚が過熟卵を放卵できず,卵巣での再吸収に長期間を要することによる。また,残留卵をもっていた親魚でも排卵し良質卵が得られた場合があり,残留卵の長期滞留と翌年の成熟への影響は明確ではない。
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎 阿部 信一郎
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.115-119, 2005-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
15
被引用文献数
3

外来魚ブルーギルは日本全国の湖沼や河川に拡まっており, 水産有用魚種や生態系への影響が危惧されている。しかし日本の河川上中流域におけるブルーギルの生態についてはほとんど報告がない。著者らは長野県の千曲川の1支流である浦野川のAa-Bb移行型の河川形態区間で, 2003年の6月及び7月に75個体のブルーギルを電気ショッカーによって採捕した。すべてのブルーギルは岸から1m以内で採捕され, その空胃個体は75個体中8個体にすぎなかった。胃内容物充満度は平均0.63%で, 最大で2.86%に達した。ブルーギルは主にユスリカ科の幼虫を摂食し, そのほかカゲロウ科やトビケラ科の幼虫及び陸生昆虫を捕食していた。ブルーギルの食性は浦野川の在来魚の何種かといちじるしく重複していた。ブルーギルは河川の魚類群集に負の影響を与えると考えられ, 根絶される必要がある。
著者
Lideman Gregory N. Nishihara 野呂 忠秀 寺田 竜太
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.563-571, 2011-09-20 (Released:2012-12-27)
参考文献数
35

カタメンキリンサイ,トゲキリンサイ,トサカノリ(紅色植物門ミリン科)は,熱帯・亜熱帯域に生育する有用海藻であり,日本では南西諸島や九州でよく見られる。本研究では,これら3種の養殖技術を確立する上で必要な至適光・温度条件を検討することを目的とした。温度(16,20,24,28,32°C)が生長や光合成に与える影響については,培養による生長試験と溶存酸素計を用いた光合成試験の2つの実験で行った。また,水温24°C,光量0から536μmol photon m-2 s-1 の条件で光合成速度を測定し,光合成-温度曲線を作成した。光量90μmol photon m-2 s-1 における最適生長率はカタメンキリンサイとトゲキリンサイで24°Cと28°C,トサカノリで20°Cと24°Cの範囲だった。最大光合成速度はカタメンキリンサイで135.0,トゲキリンサイで65.0,トサカノリで52.4μg O2 (mg chl-a)-1 min-1であり,それぞれ94.9,69.4,35.4μmol photon m-2 s-1 以上で飽和した。これらの結果は各種の生育水深と日本南部における分布と密接に関連しており,各種の養殖可能時期について考察を行った。
著者
丸 邦義 山崎 真 中井 純子
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.251-255, 2005-09-20
参考文献数
16
被引用文献数
4

石狩川で採集したヤマトシジミを2001年7月25日から8月25日まで、0、1、2、3、4、5、6、9、12、15、18、19、20、21psuの各塩分濃度で飼育した結果、産卵がみられたのは2psuから12psuの水槽で、再度産卵がみられたのは2、3、5、6psuである。したがって、産卵に好適な塩分濃度は2~12psuで、最適濃度は2~6psuである。
著者
橋本 徳蔵
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.61-66, 1961-08-25 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

利根川下流で, 越冬前のソウギョ (全長4.5-7.6cm, 体重1.1-4.9g), レンギョ (全長4.9-6.3cm, 体重1.0-2.2g) の天然餌料を調査した結果, ソウギョの消化管内はSpirogyraと若干の水生植物の繊維によってほとんど満たされていることがわかった。レンギョの消化管内からは, ランソウ類, ケイソウ類, 緑藻類, ベンソウ類等の植物性プランクトンが見出されたが, ケイソウ類が特に多く, Navicula, Nitzschia, Achnanthes, Bacillariaが多く見出された。 他の水域でもケイソウ類が優占することがわかった。
著者
立原 一憲 Obara Emi
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.295-306, 2003-09-20

カワスズメOreochromiss mossambicusは、1954年に沖縄島に移入された後、野外に逃げ出して定着し、現在では多くの河川で優占種となっている。ここでは本種の卵内発生の経過と飼育条件下における稚魚への成長に伴う外部形態および骨格系の発達を記載した。カワスズメ卵は、1997年6月4日に沖縄島の小那覇川で採集した口内保育中の親から得た。卵は平均長径2.72mm、平均短径1.96mmの楕円型で、受精後88時間30分で孵化した。孵化後6日、体長4.0mmで遊泳し始め、12日後に稚魚に達した。本種の骨格の主要な要素は、孵化後25日には全て形成された。