著者
谷 敬志 川越 力 松本 世津子 水田 浩之 安井 肇
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.235-244, 2015

函館市根崎沿岸において,ガゴメの季節的消長と形態形成について詳細に観察した。その結果,1~7月に発生したガゴメの1年目幼胞子体は10月までゆっくりと生長して約10 cm になり,10月~翌年1月に全てが再生した。再生現象が見られるまでに成熟する胞子体は見られなかった。2年目胞子体は1~7月の期間,著しい生長を示し7月には葉長が 2 m を超える大形体となった。8~10月には腐朽が見られ,約100 cm となるが10~11月に成熟した。標識をつけた2年目胞子体400個体のうち,約40%の胞子体で12月~翌年2月に再生が確認されたがほとんどが4月までに流失し,7月まで生長した胞子体は400個体のうち約2%だけであった。3年目胞子体は8~10月に腐朽したが10~11月には成熟した。その後,12月には全ての胞子体が流失した。
著者
竹内 俊郎 廣田 哲也 吉崎 悟朗 酒井 清
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.547-555, 1998-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

循環濾過飼育におけるティラピアの成長と水質変動との関係を調べた。循環濾過において, サンゴ砂を用いなければ, pHが急速に6を下回り, 亜硝酸化成細菌の働きの低下に伴い, アンモニア態窒素が漸増し, その状態が持続されることにより, 硝酸化成細菌の活動も鈍り, 亜硝酸態窒素も蓄積すること, 水質の悪化に伴い, 飼育水の着色が目立つことが明らかになった。一方, サンゴ砂を用いることは, pHの低下を防止でき, 硝化細菌全般の活動の活発化に極めて有効に作用することが判明した。なお, 水質悪化に伴い助長される着色成分 (黄色色素) は, 8時間程度の活性炭による処理により速やかに吸着・除去できた。濾材を比較検討した結果, バイオアルファ, シポラックス, ゼオライトとも, 魚体に影響を及ぼすほどの大きな差は認められなかった。また, 本実験においてアンモニア態窒素の増加による, ティラピアの増重率や日間成長率の低下は認められなかった。なお, 成長と総窒素濃度との間に相関がみられたが, 今後更なる検討が必要である。今回の結果から, ティラピアを循環濾過式水槽で飼育する場合には, アンモニア態窒素濃度81mg/l, または硝酸態窒素濃度616mg/lまでに達する飼育水中 (初期値はそれぞれ0) で70日間ほぼ正常に飼育できることが明らかとなった。
著者
白石 一成
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.119-120, 2003-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Many scientific papers and reports state that the spotted halibut, Verasper variegatus, preys on crustaceans selectively, and the oral organs are formed suitably for taking crustaceans creeping along the bottom surface. In Shizugawa Bay, we are tracing released halibuts which were artificially produced and reared. To study the feeding habit of the halibut, prey items found in their stomachs were investigated, and the sipunchroid, Sipunculus nudus, was found to be the main prey item. This result shows that the halibut preys on various species available, including sipunchroids.
著者
岩田 雄治 杉田 治男 出口 吉昭 Fred I. KAMEMOTO
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.183-188, 1992-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
11

1984年11月に駿河湾から採集されたサガミアカザ抱卵雌より得た幼生を飼育し, その形態を観察した。採集時に発眼卵であった卵は, 40日後に孵化を開始した。幼生はプレゾエア, 2期のゾエアを経てメガロパに達した。ゾエアは摂餌が観察されず, メガロパにおいて摂餌が観察された。同属の幼生との比較ではミナミアカザエビ幼生と類似していたが, ゾエアの生時の体色および腹節の背棘が無いことによって同種との判別が可能であることが判った。
著者
山本 昌幸 小路 淳
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.53-61, 2016

瀬戸内海中央部の砂浜海岸(調査時の水深1.0~5.7 m)で小型底びき網調査を2002年5月から2005年9月まで37回実施し,39種以上14,013尾の魚類を採集した。水温は9.0(2月)から30.3℃(8月)の間で変動した。一曳網あたりの魚種数は1.25(1月)から9.50尾/曳網(6月)の間で,個体数密度は0.6(1月)から103.5尾/100 m<SUP>2</SUP>(10月)の間で変動した。魚種数と個体数密度は春から夏に増加して秋から冬にかけて減少し,水温との間に有意な正の相関が認められた。優占上位6種(個体数%)はヒメハゼ(62.6%),アラメガレイ(11.4%),シロギス(6.7%),ネズッポ属(6.4%),ササウシノシタ(3.3%),ヒラメ(3.2%)であった。
著者
宮下 盛 村田 修 澤田 好史 岡田 貴彦 久保 喜計 石谷 大 瀬岡 学 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.475-488, 2000-09-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
42
被引用文献数
2

1987年に採捕したクロマグロ幼魚を親魚まで養成し,成熟年齢と想定した満5歳以降,生殖腺体指数(GSI)の周年変動を調べるとともに,毎年6~8月にかけて自然産卵を観察し,産卵条件を検討した。また,産卵盛期における産卵時刻直前の生殖腺の性状を調べるとともに,卵および精子の構造を電子顕微鏡を用いて観察した。GSIは雌雄とも7月を中心に最大となる傾向を示した。産卵時刻直前の雌個体は,体重21.3kgと小型ながら熟卵を有し,卵巣内の卵径組成は0.8mm以上の卵を約25%含む多峰型を示し,産卵多回性を認めた。自然産卵は満7歳以降,延べ4年にわたり認められた。串本での産卵期は,6月中旬から8月中旬の約2カ月間と推定された。産卵が認められた水温範囲は21.6~29.2℃であり,50%正常孵化率で示す孵化限界水温範囲に対応した。本種の精子は,全長約35μmで,頭部,中片部および尾部から構成され,硬骨魚類の一般的な形態を示した。卵の動物極と思われる位置には直径5μmの卵門が観察され,卵膜表面全体に多数のpit(小孔)が認められた。
著者
宮腰 靖之 竹内 勝巳 安藤 大成 北村 隆也 永田 光博
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.407-408, 2006-09-20
参考文献数
5

In the fall of 1999-2001, hatchery-reared masu salmon <I>Oncorhynchus masou</I> juveniles were stocked in southwestern Hokkaido rivers. Catches of these fish in coastal commercial fisheries were estimated by sampling landings during 2001-2003. Recovery rate estimates ranged between 0.67 and 0.84% (mean of 0.75%), approximately 1.8 times and 0.36 times those reported previously for fry and smolts, respectively.
著者
山形 陽一 丹羽 誠
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.5-11, 1979-05-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13

1) 水温25℃におけるウナギに対する亜硝酸の急性毒性と低濃度の亜硝酸溶液中でウナギを長期間飼育した場合の成長および生理状態におよぼす影響について検討した。2) A.japonicaおよびA.anguillaに対する亜硝酸態窒素の24時間TLmは, 460mg/lおよび351mg/lとなり, 0いずれの魚種も亜硝酸に対して強い抵抗性を示した。また, これら致死濃度の亜硝酸溶液中においたウナギは, 鰓および肝臓組織に変性がみられた。3) 9週間の飼育結果から, A.japonicaの成長を阻害する亜硝酸の濃度は30mg/lNO2-Nであることが判った。この濃度ではヘマトクリット値・血色素量・赤血球数が著しく低下し, 鰓組織にも変性がみられた。4) A.japonicaに対する亜硝酸の安全濃度は, 本実験条件では10mg/l NO2-Nと考えられる。
著者
今井 正 齋藤 寛 秋山 信彦
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.349-351, 2015-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
5

Larvae of freshwater prawn Macrobrachium nipponense reared in tap water dechlorinated with sodium thiosulfate (STS) have reduced survival time and retarded development, compared with other dechlorination methods. We examined the effects of STS and sodium tetrathionate (STT), which is produced by residual chlorine and STS, on survival and molts of larvae. STT had the same effect on larvae as the positive control (aerated tap water), however, larvae were susceptible to STS, onset of death was rapid at STS concentrations of >2 mg/l. Therefore, further clarification of appropriate concentration of STS for dechlorination is necessary.
著者
切田 正憲 松井 敏夫
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.281-286, 1993-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1.ノリ幼芽が乾燥によって受ける障害は1時間では極めて少ないが, 乾燥時間がより長くなるにつれて, しだいに大きくなった。2.ノリ幼芽を淡水に浸漬すると, 30時間浸漬より影響があらわれ, 72時間浸漬ですべての幼芽が枯死した。3.乾燥前に浸る海水比重が1.015からノリ幼芽に障害がではじめ, 1.012では障害が大きくなり, 1.010以下では比重が低くなるにしたがって, 障害がさらに大きくなった。4.乾燥前後に浸る海水比重のうち, 乾燥前に浸漬する海水比重の影響のほうが極めて大きかった。5.ノリ幼芽の生長は, 乾燥前後に浸漬する海水比重が正常海水の1.024よりも, やや低い側で効果的であった。
著者
渡辺 研一 高橋 誠 中川 雅弘 太田 健吾 佐藤 純 堀田 卓朗
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.255-263, 2006-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
17

2-フェノキシエタノールの麻酔剤としての効果を, 9種の主要な増養殖対象種 (ブリ, マダイ, マアジ, カンパチ, シマアジ, ヒラメ, トラフグ, メバル, クロソイ) について, 水産用医薬品であるFA100と比較, 検討した。網で掬っても魚が暴れない程度に麻酔が罹り, 麻酔後清水に移して一晩経過後に死亡個体が認められない2-フェノキシエタノール濃度は, おおむね200~1, 000μl/lであった。一方, FA100の効果的で安全な濃度はおおむね100~500μl/lであり, 2-フェノキシエタノールの場合と比較して範囲が狭かった。2-フェノキシエタノールで麻酔すると, FA100の場合より麻酔からの覚醒時間が短く, 麻酔翌日の生残状況が優れた。さらに, 2-フェノキシエタノールでは観察されなかった麻酔液表面の泡立ちがFA100で観察された。以上のことから, 2-フェノキシエタノールは増養殖における麻酔剤として優れていることが示唆された。
著者
塩出 雄亮 中田 和義
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.203-208, 2017-09-20 (Released:2018-09-20)
参考文献数
17

観賞魚の“楊貴妃メダカ”は,朱赤色のミナミメダカの変異体である。楊貴妃メダカの発色メカニズムを解明するため,鱗の色素胞,体内のカロテノイドの定量,カロテノイドを含む飼料による体色変化について,楊貴妃メダカとヒメダカを比較し検討した。体表の色素胞は,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに黄色素胞が主体で,黒色素胞はほとんど存在しなかった。一方,黄色素胞内の色素顆粒は楊貴妃メダカが橙赤色で,ヒメダカは淡黄色であった。アスタキサンチン,ゼアキサンチン,ルテインの濃度は楊貴妃メダカがヒメダカよりも高く,とりわけアスタキサンチンは楊貴妃メダカがヒメダカの10倍以上高かった。アスタキサンチンを添加した飼料を給餌したところ,楊貴妃メダカ,ヒメダカともに頭頂部の色相値が有意に低下した。これらの結果は,楊貴妃メダカの朱赤色はカロテノイドと関連があること,カロテノイドの摂取により赤みが強くなることを示している。
著者
赤崎 正人 時任 明男
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.218-228, 1982-03-25 (Released:2010-09-07)
参考文献数
6

1975年9月25日から12月4日まで, 宮崎大学農学部付属水産実験所において, タイ科魚類のキチヌにシナホリンを投与して人工受精を行い, 卵発生を観察するとともに, ふ化仔魚の形態変化について調べた。1.キチヌ卵の平均卵径は0.787±0.022mm (10粒) であり, 油球径は平均0.20±0.005mmであった。2.受精卵は1時間23分で2細胞, 2時間10分で16細胞となり, 4時間35分後には桑実期に達し, 12時間33分後には胚体の形成が始まる。23時間35分後には心臓搏動が確認され, 筋節数25となる。25時間40分後には胚体は卵黄をほぼ2/3周する。29時間後には胚体は卵黄をほぼ1周し, ふ化が始まる。3.キチヌ卵は水温26℃で21時間30分, 16℃で43時間5分, 常温21.5~23.2℃ (平均22.6℃) で29時間でふ化した。水温 (X) とふ化所要時間 (Y) の間にはY=79.072-2.223Xの関係がみられる。4.キチヌのふ化仔魚は全長1.8~1.95mm, 平均1.89mmである。卵黄径は0.84mmで, 油球は大部分の個体で卵黄の中央よりやや後下方に位置する。肛門は卵黄の直後にあり, 体のほぼ中央に位置する。5.ふ化後2日目の仔魚は全長2.75~3.0mmで, 卵黄はほとんど吸収される。肛門は体の前部1/3に移動し, 第5筋節目に開く。3日目には全長2.9~3.1mmに達し, 開口するとともに腸は2回転する。6.ふ化後32日目の仔魚は全長10.0mmとなり, ほぼ鰭条数も定数に達し, 稚魚期に移行したものと考えられる。
著者
A.B. ABOL-MUNAFI 楳田 晋
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.135-144, 1994-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
17

生簀網で飼育したキチヌの生殖巣の発育周期について調べた。体長14.0~33.0cmの機能的雄はすべて雌雄同体で, 全体の魚の39%であった。雌の体長は23.0~38.0cmであった。 GSIは10月に増大し始め, 11月に最高値を示した。産卵は10月末から11月末に生じた。総抱卵数は, 26.4cmの魚で629×104粒, 35cmの魚で1445×104粒であった。
著者
中村 智幸
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.265-269, 2019-09-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
15

全国の15歳から79歳の1,000人(男女各500人)を対象にしたインターネットアンケート調査により,内水面の漁業協同組合に対する国民の認知率(組合の存在が国民の何%に知られているか)と認識(組合の存在が国民にどのように思われているか)を調査した。 62.2%の人々が内水面の組合の存在を知っていた。認知率は男女ともに高齢者ほど高く,男性の方が高かった。多くの人々が組合に対して好印象を持っており,今後も組合はあったほうが良いと思っていた。組合があった方が良いおもな理由は,組合が「水産資源を管理しているから」,「川や湖の環境を保全しているから」であった。しかし,高齢の男性ほど組合はない方が良いと思っていた。組合がない方が良いおもな理由は,組合が「既得権を主張するから」,「川や湖を独占しているから」,「自分たちだけ良ければ良いと考えているから」であった。
著者
横川 浩治 中井 克樹 藤田 建太郎
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.145-155, 2005-06-20
参考文献数
46

北米原産のオオクチバス<I>Micropterus salmoides</I>が沿岸域で優占していた琵琶湖に, 近年, 近縁種のフロリダバス<I>M. floridanus</I>の侵入が確認された。琵琶湖沿岸の4地域から2000~2003年に得られた合計194個体のアイソザイムを調べた。オオクチバスとフロリダバスは<I>AAT-1</I>, <I>IDHP-1</I>, <I>MDH-1</I>, <I>SOD</I>の4遺伝子座において識別されるが, 調べたすべての標本群のこれら遺伝子座においてフロリダバスを特徴づける遺伝子が頻繁に出現し, 概略, 全体の半分がフロリダバスの遺伝子で占められていた。すべての標本群においてHardy-Weinbergの遺伝平衡からのずれは認められず, 大部分はヘテロ過剰傾向を示した。マーカー座における個体ごとの遺伝子型から判断して, 雑種F<SUB>2</SUB>以降あるいは戻し交雑個体が大半であると推定され, 琵琶湖内ではオオクチバスとフロリダバスの交雑が既にかなり進行していることが示唆された。以上の結果は, 従来生息していたオオクチバスに匹敵する数量のフロリダバスが琵琶湖に侵入したことを示し, 人為的な大規模放流があったものと推定される。
著者
浜渦 敬三 山中 弘雄
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.357-363, 1997-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13

ブリの成長や生理に及ぼす不稔性アオサ添加飼料の効果をみる目的で, ブリ0歳魚で添加率を検討したのち, 0歳魚と1歳魚を, 0および3%不稔性アオサ添加飼料で長期間飼育を行い, 成長, 飼料効率, 体色, 低酸素耐性などを比較した。1) 不稔性アオサ3%添加区で最大の成長と飼料効率がみられ, それ以上の添加区では, 添加率の増加とともに飼育成績は低下した。2) 0歳魚の長期飼育では, 3%不稔性アオサ添加により成長が若干劣ったものの, 飼料効率, タンパク質効率, エネルギー効率, タンパク質蓄積率およびエネルギー蓄積率が向上し, 過剰な脂質の蓄積が抑制された。さらに, 不稔性アオサ添加により, 体色の明化と連鎖球菌症に対する抗病性の増大も観察されたが, 低酸素耐性の向上は認められなかった。3) 1歳魚の長期飼育では, 不稔性アオサの添加により摂餌活性が低下し, 0歳魚でみられたほどの顕著な差異は認められなかった。