著者
吉田 俊一
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.27-35, 1972-04-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
11

以上の諸実験から飼育上の条件を要約すると1.飼育水はできるだけ高塩分のものを用いるのがよい。2.飼料はウナギ用のようににおいの強い, 粉末もしくは粒状の魚粉を主体としたものがよい。3.投餌は少量づつ, 回数多く与え, 投餌後しばらくは止水, そのほかは極少量の流水とする。4.全期間を通じて干出による支障はないが, 酸素補給面から通気は不可欠である。
著者
中辻 伸嘉 秋田 もなみ 林 芳弘 野村 晋平 足立 亨介 森岡 克司
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.309-315, 2018 (Released:2019-12-20)
参考文献数
26

本研究は加太産天然マダイ(RK)及び養殖マダイ(RC)の物性(破断強度)を比較し,生化学及び組織学的アプローチから物性の決定要因を検討した。RK 及び RC の肉の破断強度はそれぞれ55.6及び34.9 gw であり,RK で有意に高い値を示した。従来から知られている破断強度と関係性がある筋肉中のコラーゲン含量は RK で高い傾向があったが,有意差はなかった。一方,組織学的観察から RK 及び RC の筋繊維面積はそれぞれ6299.5及び9524.5 µm2 であり,RK の筋繊維面積は RC より有意に小さく,筋繊維の結合組織である筋内膜の網目構造が密であることが観察された。以上のことより,RK の物性は RC より硬く,これには筋肉中の結合組織の構造が主に関与することが示唆された。
著者
中村 智幸
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.85-87, 2018 (Released:2019-03-20)
参考文献数
21

A total of 800 hatchery-reared white-spotted charr Salvelinus leucomaenis fry (underyearlings) were stocked into a study site in the Nakatagiri River, central Japan, during autumn of every study year from 2011 to 2015 and 22 stocked charr were recaptured from 2013 to 2016. Of the recaptured charr, 20 charr (90.9%) were age 1+, 2 charr (9.1%) were age 2+, and no > age 3+ charr was recaptured. The results suggest low effectiveness of fry stocking to enhance the > age 2+ charr population.
著者
東 健作
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.401-410, 2010-09-20 (Released:2012-10-05)
参考文献数
43
被引用文献数
1

四万十川流域における,⌈上流⌋,⌈中流⌋,⌈下流⌋の3市場での約30年間にわたるアユの入荷量(1977-2009年)を解析することによって,当河川におけるアユ入荷量の動向と近年の特徴を明らかにした。アユの入荷量変動は流域全体で概ね同調しており,特に2003年以降の不漁が顕著であった。その一方,⌈中流⌋で年毎の変動が大きく,⌈下流⌋で入荷量の減少度合が大きいといった市場間の違いもみられ,遡上量と産卵親魚の双方が減少したことによって資源が縮小している現状が示唆された。当資料の解析から,10月の漁獲と同月の少雨が翌年の入荷量に対して負の相関を示すことが分かった。それゆえ,アユ資源の持続的利用のためには,降雨条件を考慮に入れながら産卵初期の親魚を保護することが重要であることを指摘した。
著者
村田 修 家戸 敬太郎 石谷 大 那須 敏朗 宮下 盛 山本 眞司 熊井 英水
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.75-80, 1997-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
15

1990年3月に作出した交雑魚マダイ♀×クロダイ♂およびマダイ♀×ヘダイ♂を4年間飼育した後, 2月から6月までの生殖腺成熟の様相を, 同様に4年間飼育した両親魚種 (マダイ, クロダイおよびヘダイ) と比較した。その結果, 両交雑魚から摘出した生殖腺は外観的に同時期の両親魚種のそれらに比較して明らかに未成熟であった。両親魚種の生殖腺指数はいずれも4月に最大値となり, その平均値はいずれも8以上の高い値であったのに対し, 両交雑魚のそれは1以下であった。生殖腺組織像から両交雑魚とも精原細胞, 精母細胞, 精細胞および精子形成は観察できたが卵母細胞は認められなかった。以上より, 両交雑魚は雌雄ともに生殖不能すなわち雑種不妊であることが明らかにされた。
著者
甲本 亮太 工藤 裕紀 髙津 哲也
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.615-630, 2011-12-20

秋田県沿岸におけるハタハタ仔稚魚の水深別分布と摂餌生態を調べるため、2009年2-5月に仔稚魚の分布密度と食物組成および餌サイズ組成を調査した。仔稚魚は水温7.3-12.2℃の底層に分布し、水深0.5-5mの産卵場から個体発生的に水深60m以深に移動した。また稚魚は、水温13.2℃以上の底層には分布しなかった。ハタハタの孵化仔魚は脊索長が約12mmあり、他の海産魚類の仔魚に比べて口器および形態が発達した段階で孵化していた。体長12-30mmの仔魚の餌は浮遊性あるいは底生性のカイアシ類コペポダイトが高い割合を占め、40mm以上ではアミ類が優占した。コブヒゲハマアミはハタハタ稚魚の成育場に同期的に出現し、他の浮遊性あるいは底生性の甲殻類に比べて大型であることから、稚魚の重要な餌生物の一つであると考えられた。
著者
Mitsuhiro Nakaya Yuhei Takeya Ryo Suzuki Kyosei Noro Weifeng Gao Tetsuya Takatsu
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.251-254, 2017-09-20 (Released:2018-09-20)
参考文献数
30

The effect of temperature (15, 18, and 21°C) on the early development and starvation tolerance of yellow goosefish Lophius litulon was investigated. The periods of initiation of first feeding and starvation tolerance were shortened with increasing temperature. The period of first feeding varied from 5 days after hatching (DAH) at 15°C to 3 DAH at 21°C. Yellow goosefish larvae can survive for approximately 9-15 DAH (50% mortality period) without feeding in 15-21°C, but such an extended period of starvation is considered to increase the cumulative mortality.
著者
村田 修 板倉 壮太 山本 眞司 服部 亘宏 倉田 道雄 太田 博巳 升間 主計
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.93-95, 2017-03-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
11

In order to breed a faster-growing grouper, the longtooth grouper, Epinephelus bruneus (LG), was hybridized with the giant grouper, E. lanceolatus (GG). Eggs from a female LG that was injected with HCG were inseminated by the fresh sperm of LG and cryopreserved sperm of GG obtained from a fish in Malaysia. Normal hatching rate was 8.8% (LGGG) and 18.6% (LG), respectively. The LGGG and LG larvae were raised for 61 days after hatching; the survival and mean size were 17.5, 42.0% and 63.6±11.3, 36.2±8.7 mm, respectively. This new hybrid grouper would be a promising-breed for aquaculture.
著者
門脇 秀策 田中 啓陽
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.61-65, 1993-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
9

本研究は熊本県天草郡のクルマエビ養殖場で得た1988年および1991年のそれぞれ4月から11月までの観測資料を解析して, クルマエビ養殖場の水温および透明度に視点を置いて, クルマエビの成長速度との関係から水質評価を試み, 次の知見を得た。1) クルマエビの成長が通常の成長曲線として, ブリの成長解析に用いた井上・田中の式を用いて解析し, 種類によって決まる定数γ=0.50を定めた。2) 水質要因に係わる定数λ値の上限値を対象にみれば, λ値は水温とともに高くなり, 水温27~28℃で最大値が得られ, 29℃以上では急減する傾向がみられた。これらの結果は現場における経験的な知見とよく合致する。3) 透明度が50cm以下ではλ値は大きな変化はないが, 50cm以上ではλ値は減少の傾向を示した。この結果から, クルマエビ養殖池の透明度は50cm以下に保持することがクルマエビの良好な成長を期待し得ると考えられる。以上の結果から, クルマエビ養殖現場における透明度の測定は水質評価のうえで有効な指標になり得ると思われる。
著者
四井 敏雄 前迫 信彦
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.67-70, 1993-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13
被引用文献数
12

対馬東岸の磯焼け帯においてウニ類と巻貝類を駆除し, アラメの母藻を投入するという方法で藻場回復実験を行った。その結果, 1年半後には自己増殖が可能なアラメの群落が出現した。方法は, 1988年6月にダイバーによって巻貝類を取り上げ, ウニ類はハンマーで潰した。アラメ母藻は11月にタマネギ袋に発泡スチロールの小塊と共に入れ, 3~4m毎に海底に設置した。1989年の3月にはアラメの幼体がフクロノリ等と共に現れ, 1990年5月には1才と2才のアラメが2: 1の割合をもつアラメ群落が形成された。
著者
浜野 龍夫 坪井 俊三 今井 厚 星野 尚重 沖本 博 陣之内 征龍 林 健一
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.127-133, 1994-03-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6

陸上植物の育苗培地用資材であるロックウールは自然砂に比較して軽く, 作業性にすぐれている。このため, ロックウールを潜孔・埋在性動物の飼育に利用することを目的にその水質保全効果を確かめた。循環水槽にロックウール・イワムシ・クルマエビを組み合わせて収容し水質の経時的変化を観察したところ, ロックウールを使用した飼育ではアンモニア態窒素濃度が抑えられた。とくに, イワムシとロックウールを組み合わせて飼育した水槽のアンモニア濃度は低かった。また, ロックウールか自然砂を入れたビンに海水と配合飼料を加え黒色還元層の発現状況を観察したところ, ロックウール中の還元層の発達速度は天然砂よりも有意に小さかった。これらのことから, ロックウールには水質保全効果があり天然砂に代わる底質材として有効であると判断した。
著者
加藤文男
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.61-69, 1991-04
被引用文献数
1
著者
野村稔
雑誌
水産増殖
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.14-20, 1958
被引用文献数
1
著者
竹丸 巌 加塩 信広 前野 幸二
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.255-264, 2009-06-20 (Released:2012-09-26)
参考文献数
16

1999年に鹿児島湾内で上湾症が高率に発生した養殖場のブリおよびカンパチについて,形態異常の特徴とその原因について調べた。両魚種ともに上湾症発生の原因と考えられる細菌や寄生虫の感染は認められず,ブリについては形態異常を起こす可能性のある農薬であるカーバメート系殺虫剤の残留検査を行ったが,検出されなかった。体型および脊椎骨の形態的特長として,ブリでは魚体の中央部または中央からやや後方部における腹側の方向への形態異常(後湾)と,尾部における背側の方向への形態異常(前湾)が複合的に発生しているものが多く認められた。カンパチではブリと同様の形態異常も見られたが,ブリよりも形態異常の程度が小さく,形態異常部位はやや前方に位置していた。また,カンパチではこのような形態異常以外に,ブリにはなかった魚体中央よりやや前方における著しい背側の方向への形態異常(前湾)が認められた。ブリとカンパチとの間に見られる形態異常の特徴の違いは,脊椎骨の構造の違いあるいは種苗の由来(天然・人工)によるものと推察された。
著者
小川 泰樹 角田 俊平
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.151-156, 1988-09-10 (Released:2010-03-09)
参考文献数
43

1986年5月6日から6月29日までの間, 研究室内でスジエビ (Palaemon paucidens) の雌雄の交尾前の行動と交尾行動, および雌の放卵行動を観察した。1) 本種の交尾行動は夕刻4時頃から夜9時頃までの間に行われることが多く, 交尾の約2時間前頃から雌雄の動きが活発になり, 雄が雌を追尾する。しかし雌雄が特定のペアを形成することはない。2) 雌が一時的に水槽底面に静止した際には, 雄が近付き, 腹部と尾部を底面からやや上方に持ち上げて全腹肢を激しく前後に振動させたり, 腹肢を“く”の字状に曲げたりする。3) 交尾が行われる直前に雌は脱皮をするが, 脱皮は1, 2秒間で終わる。この脱皮の間や, 脱皮中から脱皮直後までの間に雄が雌の腹部背面に乗るマウンティングが観察される。しかしこのマウンティングをしない雄もいるので, 交尾にとって雄のマウンティングは必ずしも必要条件ではない。4) 交尾行動には, 雌の体に対して水平 (十字状) に雄が巻きつく姿勢と, 雌雄が平行に並ぶようにして腹面を相接する姿勢の2通りがあり, 両者とも一瞬のうちに終わる。5) 放卵行動は夜7時または8時頃から始まり, 9時から11時頃まで断続的に行われる。この行動は雌が腹部を水槽底面に対して40~60°の角度で上方に持ち上げ, 全腹肢を数秒間激しく前後に振動させるもので, 数分から約10分間隔で数十回繰り返される。
著者
大貫 貴清 田中 彰 鈴木 伸洋 秋山 信彦
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-66, 2008-03-20 (Released:2012-09-04)
参考文献数
30

静岡県におけるスジエビの生殖活動を調べるために2002年12月から2004年10月にかけて,静岡県静岡市三保半島の水路におけるスジエビの雌の生殖周期を調べた。また,この結果を基に本種の成熟と水温および日長時間との関係を飼育実験により検討した。生殖腺の組織学的観察により,卵巣卵の発達過程を6期に分類した。さらに卵巣卵の発達過程や卵巣の内部構造,生鮮時の色調やGSIから,増殖相,卵黄蓄積相,成熟相,排卵相の4相の成熟段階に分類した。静岡県三保半島におけるスジエビの生殖周期は,産卵開始1~2カ月前である11~1月に雌の卵巣卵に卵黄蓄積がおこり,1~6月のおよそ4カ月間に産卵を数回行うことが明らかとなった。さらに小型個体の出現や大型個体の減少から,本種は産卵期の終了後に多くの個体が死亡するが一部は生残することが示唆された。また,本種の雌の生殖腺の成熟には秋分点以降の降温,短日化が関与しており,水温17~20℃,日長時間9~12時間の範囲内に雌の成熟を開始する要因があると考えられた。また,短日条件においても高水温では成熟に至らないことや,長日条件でも低水温で卵黄蓄積が確認されたことから,本種の雌の成熟は日長時間よりも水温に強く依存していることが示唆された。
著者
網田 健次郎 岡田 稔
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.62-64, 1973-09-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
2

サケ稚魚の河川内減耗要因である食害魚ウキゴリについて生態的知見を得た。1) ウキゴリは水生昆虫・シロウオ・サケ稚魚などの動物性のものを多く捕食している。2) ウキゴリは夜間に多く捕獲され, 昼間は殆んど捕獲されない。また夜間にサケ稚魚を捕食している。3) ウキゴリは川の川岸部よりは中心部でその大部分が捕獲された。