著者
伊丹 宏三
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.119-125, 1964-10-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8

明石瀬戸西部鹿ノ瀬において, 昭和38年7月5日~17日の間4回にわたり, マダコの標識放流を行ない, その移動について検討し, また標識について簡単な実験を試みた。1) 平均体重3419のマダコ約1, 600個体について焼印により標識し, 9月2日までに14個体を再捕, その全再捕率は0.9%成長率は1ケ月半で約3倍に達した。2) 放流点から最遠隔地点で再捕されたのは, 播摩灘で48km, 大阪湾で30kmのところであった。3) 鹿ノ瀬と大阪湾北西部の横瀬との関連は密接のようで, この時期における瀬と瀬への渡りはかなり存在するようである。4) point表示による焼印標識は, 施術後の減粍は殆んどないが, その標識の識別は時日の経過と共にかなり熟練を要するので, 標識の明確化を図る上に更らに検討を加える必要がある。
著者
河原 辰夫 皆川 哲夫
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.17-24, 1970-05-30 (Released:2010-03-10)
参考文献数
11

1) 瀬戸田におけるマテ突きの漁具と漁法を記載説明した。2) 瀬戸田のマテ突きは, かなりの効率をもって, 深所に住むマテの漁獲を可能にしている。3) 漁獲物の大部分はほとんど傷んでいないため, 商品として良好な状態にある。4) アカマテガイは生態的, 形態的に瀬戸田式のマテ突きによる漁獲に適している。5) マテは美味で, 食品としての用途が豊富で, 生息場所活用の見地からも, その増殖を考慮してよいと思われる。6) 浅海でマテを増殖するには, アカマテガイを選び, 瀬戸田式のマテ突きによって漁獲するのが適当であろう。
著者
平野 克己 河野 浩俊
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.245-252, 1988

ワムシの摂餌に及ぼすクロレラ細胞の大きさについて検討し, 次のような結果を得た。<BR>1) クロレラ細胞数は明期ではほとんど増加せず, 暗期で著しく増加した。<BR>2) クロレラの平均細胞体積は, 明期で10~18μm<SUP>3</SUP>と大きく, 暗期では8~9μm<SUP>3</SUP>と小型化した。<BR>3) クロレラの平均細胞体積は, 培養水のpHが7.5~8.0で9.78μm<SUP>3</SUP>, pHが9.0~9.5で12.90μm<SUP>3</SUP>あった。<BR>4) クロレラに対するワムシの摂餌量 (細胞数/ワムシ1個体/6時間) は, 8μm<SUP>3</SUP>のクロレラに対して5, 200細胞, 12μm<SUP>3</SUP>で8, 100細胞であった。<BR>5) クロレラの平均細胞体積が大きく変化すると摂餌率は低下し, 変化率が106%の時, 摂餌率は最高の52.8%となった。<BR>6) ワムシとクロレラからなる培養槽内では, クロレラの大きさは常に変化し, この変化に応じて, 適当な大きさのクロレラを最も多く摂餌していると考えられた。<BR>7) クロレラに対する摂餌量は, ワムシ密度とクロレラ平均細胞体積が関与した。
著者
樋口 真理可 古屋野 太一 伊藤 篤 和田 哲
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.251-258, 2004-09-20
参考文献数
28
被引用文献数
2

高知県浦ノ内湾及び沖ノ島周辺で採集されたマガキガイの捕食者防御行動について室内実験をおこなった。本種は成長に伴い貝殻外唇部が肥厚するので、外唇部が厚さと防御行動の関係に着目した。ほぼ同一サイズの個体を用いた室内実験の結果、捕食者であるソメンヤドカリは外唇部の薄い個体を選択的に捕食したが、外唇部の肥厚によって捕食者防御行動に対する明瞭な影響は認められなかった。また、本種の行動に対する同一水槽内のソメンヤドカリの影響は認められなかった。ソメンヤドカリに捕らえられたマガキガイは多量の粘液を分泌したが、粘液の有無による本種の行動においても有意な違いは認められなかった。一方、つぶしたマガキガイが入った水槽では、コントロール条件に比べて本種が有意に早く完全埋没(自分の貝殻が底質表面から見えなくなるまで潜砂した状態)に至った。
著者
上出 貴士 高橋 芳明 山内 信 井関 和夫
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.061-072, 2013-03-20 (Released:2015-03-23)
参考文献数
62

田辺湾の潮間帯の砂泥域でコアマモ群落の底質環境とベントス群集の関係を明らかにした。底質環境では,コアマモ群落の AVS が裸地よりも高く,群落内での嫌気分解の卓越が示唆された。コアマモ群落のベントス群集は,裸地との類似度が高いものの,種数や個体数,現存量が高く,コアマモ群落の生育場所に応じて多様であった。また,優占種の上位10種のうち,7~8 種が埋在性の堆積物食者および懸濁物食者であった。以上のことから,コアマモ群落は埋在性種を中心としたベントス群集の好適な生息場所になっていると考えられ,コアマモ群落は多様な動物群集を支える沿岸生態系の基盤種として重要であり,コアマモ自身の保全が重要な意義を持つと考えられた。また,コアマモ群落は生息場所に応じた多様なベントス類に好適な生息・餌料環境を提供していると考えられたことから,保全すべき沿岸生態系としてのコアマモ群落の意義は極めて高いことが示唆された。
著者
片野 修 中村 智幸 山本 祥一郎 阿部 信一郎
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.115-119, 2005-06-20
被引用文献数
4

外来魚ブルーギルは日本全国の湖沼や河川に拡まっており、水産有用魚種や生態系への影響が危惧されている。しかし日本の河川上中流域におけるブルーギルの生態についてはほとんど報告がない。著者らは長野県の千曲川の1支流である浦野川のAa-Bb移行型の河川形態区間で、2003年の6月及び7月に75個体のブルーギルを電気ショッカーによって採捕した。すべてのブルーギルは岸から1m以内で採捕され、その空胃個体は75個体中8個体にすぎなかった。胃内容物充満度は平均0.63%で、最大で2.86%に達した。ブルーギルは主にユスリカ科の幼虫を摂食し、そのほかカゲロウ科やトビケラ科の幼虫及び陸生昆虫を捕食していた。ブルーギルの食性は浦野川の在来魚の何種かといちじるしく重複していた。ブルーギルは河川の魚類群集に負の影響を与えると考えられ、根絶される必要がある。
著者
藤井 明彦
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.123-128, 1991-06-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
9
被引用文献数
2

12種の海産動物を用いてサザエ稚貝に対する捕食実験を行った。1) 9種の海産動物が殻高40mm以下のサザエを捕食し, 捕食された数は20mm以下で多かった。2) ヤツデヒトデの巻貝6種に対する捕食実験から, サザエ稚貝とオオコシダカガンガラに対する選択性が認められた。3) 底面の形状は, サザエ稚貝に対するヤツデヒトデの捕食に影響し, 溝状の底面で最も短期間に捕食された。
著者
渡 修明 井上 博之 平田 八郎
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.511-517, 1993-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10

1.水産増養殖の重要魚介類11種に対する農薬の有機リン剤MEPとカーバメイト剤NACの急性毒性を流水式魚毒試験装置を用いた流水式試験法によって調べた。2.MEPの魚介類に対する急性毒性はクルマエビで極端に強く, ついで魚類のマダイ, ブリ, ボラで比較的強い応答であった。マハゼやアユでは中程度の毒性応答であり, ウナギは低い毒性であった。これに対して, アサリやアコヤガイは最も低い毒性であった。3.NACの魚介類に対する急性毒性はクルマエビで極めて強く, ついで魚類のブリおよびマハゼで比較的強い応答であった。マダイ, ヒラメ, クロダイ, ボラおよびアユでは中程度の毒性応答であり, ウナギは低い毒性であった。これに対して, アサリやアコヤガイは最も低い毒性であった。4.MEPおよびNACによる中毒症状は, クルマエビで刺激に対する反応過敏, 狂奔状態および自発性運動低下がみられ, 魚類では, これに加えて体色変化, 遊泳姿勢不安定, 鼻上げ症状, 刺激に対する反応鈍化, 痙攣, 脊椎骨変形が認められた。これらの症状の多くが神経毒性に特有なものであり, 中毒症状の観察によって薬剤の毒性の特徴や薬剤の推定ができるものと考えられた。
著者
平川 和正
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.157-163, 1990

1) チリ南部のアイセン・フィヨルドに放流されたシロザケ幼魚の餌料環境特性を明らかにするため, 胃内容物組成, 主要餌料生物の分布性状およびそれらの相互関係が野外採集試料に基づき調べられた。<BR>2) 胃内容物は動物プランクトンの他に陸棲昆虫 (成虫, 幼虫) および表在性底棲動物から構成されるが, 動物プランクトンはフィヨルドに隣接するカナルで主要餌となった。<BR>3) 動物プランクトンのうち, 大型かいあし類4種 (<I>C.chilensis</I>, <I>C. patagoniensis</I>, <I>R. nasutus</I>および<I>M. lucens</I>) , 特に成体雌はフィヨルド出口からカナルで常食される餌として量的に重要であることが明らかとなった。<BR>4) フィヨルドおよびカナルにおけるこれらかいあし類の成体雌の日周鉛直移動習性と海洋構造との関連から, カナルでは放流幼魚と大型動物プランクトン浮上集団との遭遇がより円滑に行なわれつつあるものと推察された。
著者
谷 敬志 川越 力 松本 世津子 水田 浩之 安井 肇
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.235-244, 2015-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
32

函館市根崎沿岸において,ガゴメの季節的消長と形態形成について詳細に観察した。その結果,1~7月に発生したガゴメの1年目幼胞子体は10月までゆっくりと生長して約10 cm になり,10月~翌年1月に全てが再生した。再生現象が見られるまでに成熟する胞子体は見られなかった。2年目胞子体は1~7月の期間,著しい生長を示し7月には葉長が 2 m を超える大形体となった。8~10月には腐朽が見られ,約100 cm となるが10~11月に成熟した。標識をつけた2年目胞子体400個体のうち,約40%の胞子体で12月~翌年2月に再生が確認されたがほとんどが4月までに流失し,7月まで生長した胞子体は400個体のうち約2%だけであった。3年目胞子体は8~10月に腐朽したが10~11月には成熟した。その後,12月には全ての胞子体が流失した。
著者
田子 泰彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.225-226, 2003-06-20
被引用文献数
3

北陸地方で有数のアユ、Plecoglossus altivelis、漁場が存在する庄川では、アユ漁の盛期である夏季のアユ漁場の流量は、合口ダムから分水路を経て多くの水(約60トン/秒)が和田川に流れるため、約10トン/秒と著しく少なくなっている。また、低水護岸の建設や砂利採取などの河川工事の影響も加わり、庄川では20㎞に及ぶ漁場に最大水深2mを越える淵はわずか3個しかなく、瀬は水深の浅い平瀬が多くを占めるようになった。このようにアユの隠れ場や休息場である淵の喪失や瀬の平均水深が浅くなることによって、アユ網漁の漁獲圧力が高まったと推察されている。一方、余暇時間の増大や交通の利便性の向上などに伴い、近年アユ漁を行う人は急激に増加した。庄川では漁獲能力の高い投網とテンカラ網(投げ刺網の一種)の承認件数は、1978年にはそれぞれ145統と678統であったが、1998年には192統(1.3倍)と1364統(2.0倍)に増加し、アユに対する漁獲圧力は以前と比べ著しく高くなった。しかし、庄川では新規申請者では網漁の許可が得にくいことや網漁の解禁日が釣りよりも5日遅いこと(富山県内でアユ網漁が可能な河川に一様に適用)以外に網漁の漁業規制は実施されていない。本研究では、人為的な理由で流量が少なくなった河川(区域)において、流量の増加がアユの資源管理に及ぼす影響の一つを明らかにするために、庄川に放流される湖産アユを用いて、飼育池において水深別にアユの漁獲試験を行い、その漁獲効率の差を明らかにした。
著者
古川 厚 塚原 宏子
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.31-34, 1965-08-30 (Released:2010-03-09)
参考文献数
6

従来, 水棲生物飼育のために, 多くのコンクリート池が使用されているが, 新らしくコンクリート池を造成した場合, その直後に生物を入れると, へい死するという事実は各所で知られている。この原因がいわゆるコンクリートの“アク”といわれる物による事もよく知られている。しかし各所で種々な方法によって“アク抜き”が行なわれているにもかかわらず, 公開されている文献は極めて少ない (1) (2) (3) 。我々は新らしくコンクリート池を造成した際に, pH変化及び温度変化を自記々録させたのでその結果を紹介する。
著者
藤川 裕司 片山 知史 安木 茂
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-11, 2014-03-20 (Released:2015-04-02)
参考文献数
21
被引用文献数
1

宍道湖のワカサギは1994年漁期に激減し,その後不漁が継続している。今後,資源の増大策を検討する必要があるが,そのためには生活史を通した生息場所と回遊パターンを明らかにしておくことが基本的に重要な課題である。耳石のストロンチウム,カルシウム比の分析結果,ます網調査およびひき網調査結果から回遊パターンを調べた。その結果,主たる産卵場である宍道湖流入河川の斐伊川で孵化したワカサギは速やかに流下し,5 ~ 8 月を中心に大部分が中海かあるいは海へ降下し,産卵期の 1 ~ 2 月になると産卵のために宍道湖へ遡上するものと考えられる。その降海前の生息場としては,流入河川が重要であると推測された。以前の豊漁時代に資源の主体であった湖内残留群は,現在は低位水準にあると考えられる。
著者
橘川 宗彦 大場 基夫 工藤 盛徳
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.231-236, 2006-06-20

ワカサギ卵を水生菌の発生を抑え効率よく孵化させるため、陶土を用いて不粘着処理した受精卵を高密度で収容できる孵化器を用いる方法と従来の屋外飼育池に敷設した着卵基質に付着孵化させる方法とで孵化管理の比較試験を試みた。孵化器では屋外飼育池に比較し今回の試験では約5分の1省スペース化され、使用水量も約3分の1に節水された。発眼率では有意差は認められなかったが、飼育池で観察された卵の脱落による減耗も孵化器では防止できたことや、受精卵の収容から孵化までの死卵の分離除去が容易であり、薬剤等を使用せずに水生菌の抑制ができる等の利点があった。一度に多量の受精卵収容作業では不粘着処理に多少時間を要するが、不粘着処理した受精卵を孵化器に収容する新たなワカサギ受精卵の効率的な孵化管理法を紹介した。
著者
山川 紘 林 育夫
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.57-63, 2004-03-20
被引用文献数
2

新潟県粟島の浅海岩礁域に生息するサザエの消化管内容物と藻類植生の関係を解明するために、冬期の波浪条件が異なる2水域に調査区を設け、スキューバ潜水により消化管内容物調査(2、6m)、同所で藻類の現存量調査(2、6、10m)、および底質調査(2、6、10、14m)を行った。(1)冬期の波浪の影響が少ない調査区では水深2mで多種類のホンダワラ類が分布し、水深6mではノコギリモクが主に優占した。他方、冬期の波浪が激しい調査区では、アミジグサ類とモロイトグサが優占し、物理的な環境特性により対照的に異なった植生となることが示された。(2)消化管内容物と藻類現存量の摂餌の選択性の傾向を解析した結果から、種類により選択性がある(摂餌は藻類の現存量と関係していない)という検定結果が得られた。(3)調査区のうち、摂食阻害物質を含有する藻類が優占する調査区では、それらの藻類が消化管から高率に検出されたことから、それらの物質はサザエの食性に影響を与えていないと考えられた。(4)調査区間別、水深別に調査区のサザエの肥満度を比較したところ、それらの間で差異は認められなかった。
著者
白藤 徳夫 村上 直人 森岡 泰三 市川 卓 福永 恭平 安藤 忠
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.403-410, 2011-09-20 (Released:2012-10-08)
参考文献数
48

春季の沿岸海域におけるサケ稚魚とニシン仔魚の捕食-被食に関する実態解明のための基礎的知見を得ることを目的に,実験水槽内においてサケ稚魚によるニシン仔魚の捕食実験を行った。解凍した大型,小型ニシン仔魚および生きた仔魚をサケ稚魚に与えたところ,いずれの状態の仔魚も活発に捕食された。したがって両者が同所的に分布していればサケ稚魚はニシン仔魚の捕食者になることがわかった。また,ニシン仔魚を摂餌した際のサケ稚魚の飽食量は体重の4.7~7.4%であること,摂餌後2~4時間で胃内容物の50%が消化されること,捕食されたニシン仔魚は摂餌後3~6時間までは形態学的手法による同定が可能であることがわかった。今後,サケ稚魚の仔稚魚捕食の実態を理解するためには,サケの摂餌時間と消化速度を考慮に入れた採集時間帯設定や捕食量推定法の検討を行う必要がある。
著者
白藤 徳夫 和田 洋藏 西垣 友和 八谷 光介 竹野 功璽
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.203-209, 2008-06-20 (Released:2012-09-10)
参考文献数
24

外海域でのイワガキ養殖を可能とする「鋼製魚礁を用いた浮体式養殖法」を考案し,その有効性を実証するため,2003年 2 月に鋼製魚礁を府下沿岸の水深約10 m の外海域に設置し,長期養殖試験を実施した。養殖されたイワガキは,養殖 3 年後(生後満 4 年)には,平均殻高(±SD)が103.1±16.3 mm となり,約 6 割の個体が200 g 以上の出荷サイズに成長した。浮体式養殖法では,養殖施設全体が海面下 4 m 以深にあり,波浪の影響を受けにくいため,試験期間中に台風や冬季の波浪によって施設が破損することはなかった。また,付着生物の着生量が少なく,それらの除去作業は不要であった。さらに,養殖施設には20種の魚類の蝟集が観察され,魚礁としての機能も確認された。これらの結果より,浮体式養殖法の有効性が実証された。