著者
Jun Kobayashi Carola Hommerich
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.49-63, 2017 (Released:2017-07-19)
参考文献数
33

Within the booming field of research on subjective well-being, happiness and unhappiness have so far been treated as two ends of a continuum with causes and mechanisms being the same for both. Still, this is not self-evident. We here use the SSP2015 survey data to investigate whether happiness and unhappiness have the same determinants. To do so, we classify the respondents into three well-being groups: the “happier than average,” the “average,” and the “less happy than average.” We conduct a multinomial logistic regression analysis to disentangle the effects of education depending on the level of happiness. Our results imply that (1) more education promotes happiness of unhappy people. At the same time, however, we find that (2) an increase in education reduces the happiness of happy people. This means that the impact of education on happiness is by no means straightforward, but that it can have opposing effects depending on the happiness level. This supports our hypothesis that some determinants have different effects on different happiness levels. It also implies that an enhancement of subjective well-being cannot be achieved in the same way for happy and unhappy people. Therefore, happiness and unhappiness turn out not to be two sides of the same coin.
著者
野家 啓一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-17, 2001

「実証主義」および「実証的方法」の起源、歴史的展開、現状を科学史・科学哲学の観点から概観する。科学における実証的方法は、17世紀の科学革命を推進した「実験哲学」の精神に由来し、19世紀半ばに「観察-実験」および「検証-反証」の手続きを組み合わせた「仮説演繹法」として定式化された。社会科学の領域に実証的方法が導入され、古典的実証主義が成立するのも、この19世紀半ばのことである。20世紀に入ると、「論理実証主義」を標榜するウィーン学団が「統一科学」を目標に掲げ、自然科学と社会科学の方法的統合を試みた。しかし、物理学の統一言語によって社会科学をも自然科学に同化吸収しようとするラディカルな還元主義は、種々の困難から中途で挫折せざるをえなかった。論理実証主義に代わって登場した「ポスト実証主義」の潮流は、「観察の理論負荷性」や「決定実験の不可能性」などのテーゼを提起することによって、「実証性」の理解に重大な変更を迫った。それを踏まえるならば、自然科学と社会科学の関係もまた、「階層関係」ではなく「多元的共存」の形で捉え直されねばならない。
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.103-119, 1992-04-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1

この論考では、情報が役に立つとはどのようなことなのか、このことの解明を目的にしている。人々は、情報を活用することで、事を有利に運ぼうとする。しかし、情報は、それだけで何らかの有用性を持っているわけでない。特に、他者との関わりの中で情報を用いようとする場合、情報は用いられ方次第で、有用にも、有害にもなりうる。そして、人は、与えられた情報を有用なものとして扱おうとする限り、その情報が状況に導入されることで、自分の判断にだけでなく、他者の判断にもどのような変更が生じうるかを検討しなければならなくなる。この事実は、二つの点で重要である。一つは、この事実は、情報を得ることで状況の展開の読みが容易になり、手の決定にいたるまでの負担が軽減される、という常識が誤っていることを示唆している。もう一つは、この事実は、状況に関係する不確定的な要因を確定してくれる情報が他者というより根源的な不確定性への意識的な注意を喚起するということを明らかにしている。つまり、状況の中の不確定性を減少させるはずの情報は、同時に、行為者をして異なる不確定性の存在に意識を向けさせる。これは、情報の逆説的な性格の一つであろう。
著者
鈴木 努
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.421-428, 2011 (Released:2012-09-01)
参考文献数
14
著者
小森田 龍生
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.211-225, 2016

本稿の目的は,いわゆる過労「死」と過労「自殺」の比較を通じて,過労自殺に特有の原因条件を明らかにすることである. 原因条件の導出にあたっては,クリスプ集合論に基づく質的比較分析(Qualitative Comparative Analysis, QCA)を採用し, 分析対象は労災認定請求・損害賠償請求裁判に係る判例58件を用いた. 過労死, 過労自殺とも, 複数の原因条件が複雑に絡み合い生じる現象であるが, 本稿では具体的にどのような原因条件の組合せが過労死ではなく過労自殺の特徴を構成しているのかという点に焦点を定めて分析を実施した. 分析の結果からは, 過労自殺を特色づけるもっとも基礎的な原因条件はノルマを達成できなかったという出来事であり, そこに職場における人間関係上の問題が重なることで過労死ではなく過労自殺が生じやすくなることが示された. この結果は, これまで過労自殺と呼ばれてきた現象が, 実際には通常の意味における過労=働きすぎによってではなく, ノルマを達成できなかった場合に加えられるパワーハラスメント等, 職場における人間関係上の問題によって特徴づけられるものであることを明らかにするものである.
著者
都筑 一治
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.131-145, 1986-11-20 (Released:2009-03-01)
参考文献数
11

人間集団では、すべての個々人が他者に同じように接するわけではない。ある者は、他者に差別的な行為をとり、ある者は非差別的行為をとるかも知れない。こうした集団内での差別的行為は、時として、特定の個人あるいは少数者に集中することがあることは良く知られている。いわゆる、「いじめ」とか「スケープゴート」はこうした状態につけられた名称である。本論は、集団内においてこの差別的行為の集中が生じるメカニズムを探ることを目的としている。 この目的のために、ここでは人々が差別的行為をとるか否かが、集団内の他者の差別的・非差別的行為のありかたに依存することを仮定したモデルを用いる。これは、ハンター(1978)の、集団内の他者への情緒的指向のネットワークの変化モデルを簡略化したものである。モデルの定式化ののち、さらにここでは、シミュレーションによって次の2つのタイプの集団の比較を行い、どのような特性を持つ集団で差別的行為の集中が生ずるかに検討を加えた。第1の集団は、集団内の第3者(K)への行為の違いが当該2者(I)(J)の間に差異をもたらす集団、もうひとつは、第3者(K)からの行為の違いが当該2者(I)(J)の間に差異をもたらす集団である。 シミュレーションの結果は、両集団いずれにも差別的行為の集中がみられることを示している。ただし、被差別集中者が誰になるかは両集団で異なっている。上に述べた第1の集団では、はじめにひとりに対して差別的行為をとっていた者に差別的行為が集中するが、彼が集団内他者への差別的行為を止めれば、差別の集中状態は解消するのに対して、第2の集団では、はじめにひとりから差別されていた者に差別的行為が集中し、さらに、彼の行為の変更によっては差別の集中状態は解消しないという違いが見られ、固定的な差別的行為の集中が、他者からの行為の違いによって対人行為を決定する個々人からなる集団で生ずるのではないかという示唆が得られた。
著者
瀧川 裕貴
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.132-148, 2018

<p> 近年の情報コミュニケーション技術の発展により,われわれの社会的世界は劇的な変容を遂げている.また,これらの発展により,社会的世界についてのデジタルデータが急速に蓄積されつつある.デジタルデータを用いて社会現象のリアリティとメカニズムの解明を試みる新しい社会科学のことを計算社会科学と呼ぶ.本稿では計算社会科学の現状と課題について,特に社会学との関係を中心に概観する.計算社会科学に対して独自の定義を試みた後,計算社会科学がなぜ社会学にとって特別な意味をもつのかを説明する.また,計算社会科学のデータの新しさがどこにあるのかを明らかにし,計算社会科学の分析手法について解説する.最後に,計算社会科学の課題について述べる.</p>
著者
白波瀬 佐和子
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.5-18, 1999-03-31 (Released:2016-09-30)
参考文献数
9
被引用文献数
3

本研究の主たる目的は、様々な社会的背景を持つ一組の男女が結婚に至る階層結合のパターンを検討することにある。社会的背景として出身階級と学歴に焦点をあてて、前者を属性的背景、後者を業績的背景とした。ここでの分析は大きく分けて2段階からなっており、(1)社会的背景と結婚に至る関係に着目し、未婚の割合を出身階級・学歴別に時系列的に検討し、(2)結婚した者のなかで、男女の社会的背景の結びつきがどのように変化していったのか検討した。 まず、未婚の割合について、男性の未婚割合は出身階級と関連し、女性の場合は学歴との関係が強い傾向にあることは見いだせた。しかし、一貫した時系列的な変化及び明らかな男女未婚者間での出身階級別、学歴別ミスマッチのパターンは認められなかった。社会的背景の結合パターンについて、同類婚的結びつきが一貫して優勢で、特に高学歴者同士と低学歴者同士が結びつく同類婚が顕著であった。配偶者選択における教育の持つ意味は高く、教育が配偶者選択の幅を広めるというよりは、特に高学歴同士、低学歴同士での同類婚的結合を促す役割を持ち合わせていた。
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.153-165, 1989-03-24 (Released:2009-03-31)
著者
朱 安新
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.307-317, 2015

中国社会では家族の急激な小規模化が進んでいるため,若い世代の世代間同居に関する意識が,今後の家族形態を予測するうえで注目されはじめている.しかし,まだ全国レベルの統計データが欠如している.そこで,本稿では2013年に中国大陸と台湾で大学生を対象に量的調査を実施し,大学生の世代間同居意識の現状と規定要因を明らかにすることを試みた.分析の結果,(1)世代間同居意識は低い水準にあるものの,伝統的規範のうち父系規範が同居意識の促進要因となっていた.ただし,親孝行規範は同居意識を促進するという傾向は見られなかった.(2)台湾に比して大陸においては都市に戸籍をもつ大学生が農業戸籍の大学生よりも,親世代と同居しようとする意識が顕著に低かった.したがって,大陸の都市と農村の二元社会構造がいまだに世代間同居意識に影響を与えていた.(3)大陸では男子学生が女子学生より世代間同居を意識する点で,台湾と異なることを明らかにした.
著者
大浦 宏邦
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.145-156, 2013 (Released:2014-09-01)
参考文献数
1
著者
永田 えり子
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.261-272, 2000-10-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
14
被引用文献数
2

個人に合理性のみならず倫理性を求める。具体的には、他者危害原則に従う合理的な個人を想定し、かれらによる非協力ゲームのナッシュ均衡点は必ずパレート最適となることを確認する。すなわち「人に迷惑をかけない限り何をしてもよい」という倫理原則は、個人の自由よりもむしろ全員一致性、全体合理性を意味するものであることがわかる。
著者
佐藤 嘉倫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-14, 1987-10-01 (Released:2009-03-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本稿の目的は媒介主体と被媒介主体の関係と相互作用に関する対抗的分業論を2人チキン・ゲームとして定式化することである。このための準備作業として、初めに次のことを明らかにする。すなわち媒介主体は(指導,支配)という戦略を取ることができ、被媒介主体は(異議申し立て,防衛)という戦略を取ることができる。そして媒介主体が指導戦略を選択し被媒介主体が異議申し立て戦略を選択する時、対抗的分業が成立する。 しかし対抗的分業はつねに成立するわけではない。このことは(指導,異議申し立て)という状態が両プレイヤーによってつねに選択されるわけではないことを意味する。つまり対抗的分業ゲームは支配戦略のないゲームである。そこで本稿ではこの対抗的分業ゲームをチキン・ゲームとして定式化する。 通常のゲームの規則では、対抗的分業は成立しない。そこで通常のゲームの規則とプレイヤーの行動基準を変更したS. J. Bramsの継起的ゲームを対抗的分業ゲームに適用する。そして東京ゴミ戦争、排ガス規制問題という事例の分析を通じて、対抗的分業が成立・失敗するメカニズムを明らかにする。

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出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.241-252, 1999-01-31 (Released:2016-09-30)
著者
林 直保子
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.19-32, 1993-04-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
3
被引用文献数
4

これまで行われてきた囚人のジレンマ(PD)研究は、PDを孤立した2者関係として捉えるにとどまり、集団内に存在する2者間におこる状況として捉えることをしてこなかった。本稿では、3者以上の集団と、その中に生れる複数のPD関係を考えることにより、従来のPD研究の限界を克服することを目指している。そのために本稿では、集団の各成員が自分のつきあう相手を選択し、相互指名によってPD関係が成立するという状況――「ネットワーク型囚人のジレンマ」を設定する。このような状況では、特定の2者間に将来の関係が保証されていないために、PDにおける戦略的行動によって相互協力関係を築くことは難しくなる。従ってこのような選択的交際状況においては、孤立した2者PDにおける相互協力達成のためには最も有効であるとされてきたtit-for-tat(TFT)戦略は、そのままの形で有効性を発揮することはない。本稿では、ネットワーク型PD状況ではどのような戦略が可能で、また有効なのかということを調べるために、Axelrod(1984)が同一相手との反復PDにおいて行った「戦略のコンピュータ選手権」という方法をネットワーク型PDに用いた。その結果ネットワーク型PD状況で最も有効な戦略は、相手の裏切りに対しては非指名という形で対応するout-for-tat(OFT)戦略であることが明らかにされた。このOFT戦略は、TFTと非常に良く似た性質をもつ戦略であり、対象選択レベルに適用されたTFTと言うことができる。
著者
武藤 正義
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.63-76, 2006

本稿の目的は2つある。第1に、合理的選択理論において利己性について扱いうる4つの立場を区別する基準を示し、そのひとつである社会的動機アプローチの位置を明らかにする。第2に、二者関係における多様な社会的動機(配慮の仕方)を「利他性」と「平等性」という2変数によって表現することにより、13個の典型的な社会的動機間の相互関係を明らかにする。たとえば、「負けず嫌い」は反利他的かつ平等的な動機、「マクシミン主義」は利他的かつ平等的な動機の弱い形態、等がわかる。これらの知見はボランティアや友人関係の分析などに役立つだろう。
著者
内藤 準
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.155-175, 2009

リベラリズムの制度的秩序の基礎である「自由と責任のルール」は,われわれの社会的世界を構成する日常言語に組み込まれている.そのルールに依拠するわれわれの社会は,いかなる秩序のあり方を示すのか.本稿ではまず,リベラル・パラドクスの枠組みを応用して,自由と責任のルールおよび契約の自由からなる制度が,相互行為を規範的に秩序づける仕組みをまとめる.そのうえで,(1)リベラリズムに立脚する「近代市民社会の秩序」の基本的性格を検討する.そして,(2)貧困や格差の文脈における自由と責任のルールの意味と,いわゆる「自己責任論」の問題点を,社会の規範的な秩序形成という観点から,全国調査データの知見もふまえて検討する.分析の結果,(1)近代市民社会の秩序は人びとの十分な自由を前提とすること,その秩序は排除的な性格を持つことが明らかになる.さらに,(2)社会の規範的な秩序形成という観点からみると,拡大する貧困や格差の文脈において自己責任を理由に弱者支援や再分配政策を拒絶することが,むしろ秩序の基礎である自由と責任のルールそのものを掘り崩す可能性があることが分かる.