著者
Kazuto MISUMI
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.5-25, 2005 (Released:2007-07-06)
参考文献数
21

Social capital works on whole networks and its process (chance of investment and return) is structured along with the configuration of them. However, in an ordinary survey design, it is quite difficult to locate respondents' personal networks on such macro configurations. Here we introduce a concept of whole-net base. It is as a shared attribute that indicates a latent whole network behind it. Keeping contact with a schoolmate, for example, indicates that the tie is a part of a whole network that consists of latently all graduates of the school. Under a question how social capital is built in the stratification process, we analyze a personal network data from the viewpoint of investment-return through various friends-net bases. The results show that; 1) the upper stratum invests and gets return more than the lower, especially on job-net and school-net bases that directly correspond to socio-economic status, however, 2) it is the lower stratum in which efficient investment (the tendency that more investment correspond to more return) is observed clearly, moreover, the observation is not limited to the specific whole-net base. These suggest a dynamic opportunity structure of social capital: while it reinforces the advantageous socio-economic positioning for the upper stratum, at the same time, it also makes their life chances greater for the lower stratum. However, we have to pay attention to those elder people in the lower of lower strata who do not have any access to social capital.
著者
浜田 宏
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.53-69, 2002-06-30 (Released:2009-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本稿ではハッソーによって定式化された公正指標(Jasso 1980, 1999)と相対的剥奪の数理モデル(Boudon 1982; Kosaka 1986)を接合することによって,古典的な相対的剥奪論(Stouffer et al. 1949; Merton 1957=1961)のフォーマライゼーションを試みる.提唱された新しい単純なモデルは,ハッソーの議論に欠落していた主観的な公正配分の決定メカニズムに関する問題に言及し,これを期待値という形で再定義することで理論的な公正指標の挙動を明確化する.このことにより「相対的剥奪率」と「相対的剥奪度」という二つの水準の異なる概念の同時分析が可能となり,その結果,通常言語のみによって表現された古典的理論において必ずしも明示されていなかった両者の関係,すなわち,「集団の中で相対的剥奪を感じる者の割合」と「個人が感じる不満の強さ」との間にある関係が明らかになった.さらに,相対的剥奪数理モデルにおいて,ハッソーの条件を満たす任意の公正指標関数が持つ性質を特定した.
著者
富山 慶典
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-16, 2004-03-31 (Released:2008-12-22)
参考文献数
60
被引用文献数
3

民主的な社会には、2つの異なる集合的意思決定問題がある。ひとつは、人々の選好をいかに集約して社会的選好を導き出すかという問題である。もうひとつは、人々の判断にもとづいていかにして社会的判断を形成するかという問題である。これらの問題を解決するためには、それぞれに相応しい理論と方法が必要となる。これまでの集合的意思決定研究は選好集約論の探求に偏りすぎていた。置き去りにされてきた判断形成論の探求をすすめなければならない。そうだとすれば、選好集約論と判断形成論の基本的な特徴は何か、判断形成論の探求は民主的決定の隣接領域における最近の研究動向といかなる関連性をみてとれるのか、それは現代社会にとってどのような意義があるのか。本稿の目的は、古代ギリシャから現代までの集合的意思決定研究の歴史を概観することにより、これらの問いにたいする展望的な答えを得ようとすることにある。本稿の主張は、選好集約論の探求がもはや不要であるという点にはない。判断形成論の探求をすすめる必要があり、これらの理論が民主的決定にとって相補的な関係にあるという点にある。
著者
七條 達弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.169-183, 2003-09-30 (Released:2009-01-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1

進化ゲーム理論には、「生物系」「経済系」、「文化進化系」の三つの理論体系がある。「文化進化系」は、「経済系」の進化ゲーム理論を発展させたものである。「経済系」の進化ゲーム理論では、利得が高い戦略が広まっていくと仮定するが、「文化進化系」では、この仮定が成立しない場合についても取り扱うことができ、多数派同調の効果や、戦略表明の効果が存在する場合も考慮する。本論文では、それぞれの効果をもちいて、社会的ジレンマ状況における協力の発生を示すモデルを作成する。このモデルにより、繰り返しゲーム特有の戦略を考慮しなくても、協力が進化しえることが示される。
著者
フィリップ ボナシーチ 渡部 幹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.33-52, 2003-03-31 (Released:2009-01-20)
参考文献数
22

個人の意思決定に関する、少数のシンプルかつ妥当な仮定から、負結合の交換ネットワークにおける権力の分布を予測するための構造的・代数的理論を示す。まず、示されたモデルから、複数の式が生成されることを論じる。そして、それらの式の解の特性から、交換ネットワークの類型化を示す。式の解には4つの可能性がある:(1)ネットワーク内のいくつかのポジションがすべての権力を持つような解が1つ存在する場合、(2)全てのポジションが同じ権力を持つような解が1つ存在する場合、(3)解が無限に存在し、構造的な分析では権力の分布を決定できない場合、(4)解がなく、権力が安定しない場合。 次に、通常、実験で検討されるような交換ネットワークよりもさらに多くの種類のネットワークに適用できるように、このモデルの様々な拡張を提唱する。提示されたモデルを、そのまま使用するか、わずかに変えるだけで、ネットワーク内の交換資源の価値が異なっている場合、ポジションによって行える交換の回数が異なる場合、交換が発生するためには3人またはそれ以上の参加者が必要な場合、の3つの状況において、権力の予測が可能となることを示す。
著者
富山 慶典
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.2_125-2_142, 1989-10-20 (Released:2009-03-31)
参考文献数
9
著者
坂本 佳鶴恵
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.89-100, 2000

本稿は、ポストモダン・フェミニズムの理論枠組みの特徴とその展開の可能性を具体的に論じたものである。ポストモダン・フェミニズムは、デリダなどのポストモダニズムの思想の影響を受けながら、反本質主義と差異の重視を特徴として、独自に展開した90 年代の新しいフェミニズムの流れである。具体的には、意味カテゴリーや表象の問題に、新しい観点の分析をおこなっている。日本もふくめて、先進諸国では、自由主義の立場からフェミニズムに対する疑問や、フェミニズムがうまく取り組めていないさまざまなマイノリティの問題が提起されているが、ポストモダン・フェミニズムは、そうした問題に対処するための枠組みを提供しようとしている。ポストモダン・フェミニズムは、日本では、たとえば、近年のミスコンテスト、売買春をめぐる論争に対して、新しい観点を提供しうる。まだ多くの課題を抱えているが、これからの展開が期待される。
著者
盛山 和夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.2_1-2_23, 1992-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
48
被引用文献数
2

近年の合理的選択理論の隆盛は、それらが制度や秩序を説明しうる可能性に動機づけられている。合理的選択理論に対しては従来から種々の本質的ではない批判が加えられているが、制度や秩序の説明に関してはそれらとは異なる観点から合理的選択理論の意義と限界が画定されなければならない。 合理性の概念には、選好の合理性、強い合理性、弱い合理性、および創造的合理性という4種類のものがあるが、合理的選択理論において意味を有するのは弱い合理性だけである。合理的選択理論は、行為者の抱く主観的選好と主観的知識とから彼の行為を理論的に導出することによってそれを説明するが、これらの主観的なものは理論家によって推測的に仮定されるのである。行為者の主観的知識はそれを対象として位置づける理論家の理論と区別して「一次理論」と呼ばれる。 一方、制度と秩序は、単なる行為の集積ではなく、人々の主観的知識=一次理論に基礎をおいている。ところが、行為とちがって知識は合理的に選択されるものではない。したがって、制度と秩序は、究極的なところでは、合理的選択理論によっては説明されざるものとして残らざるをえないのである。
著者
鹿又 伸夫 小林 淳一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.115-130, 1986-11-20 (Released:2009-03-01)
参考文献数
14

P. V. Marsdenは差別的交際を分析する手法を提示した。この手法はログリニア・モデルを応用して、社会的交際パターンについてのいくつかの仮説を検証しようとするものである。かれの分析手法に含まれる「集団内交際の優越」仮説は、各人の所属する集団内での交際のほうが集団外との交際よりも優越するというものである。また「社会的距離」仮説は、集団間の社会的交際がその集団間の社会的距離の大きさと逆比例関係にあるというものである。こうした仮説を経験的に検証するために、かれはログリニア・モデルを再定式化し、交際が「社会的距離」と関連していることを仮定したモデルでは新たなパラメータを導入した。しかし、このパラメータのデリベーションには問題がある。本稿では、こうしたMarsdenの分析手法を検討し、その問題点を示す。
著者
白倉 幸男 与謝野 有紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.2_37-2_54, 1991-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では、Fararoの公理をもとに、階層認知と階層帰属意識の問題について数学的な定式化を行ない、理論展開する。ここでは、次の点を明らかにする。(1) 階層イメージの形成において、各人は自己の属するイメージ階層をもっとも少数派だと認知する。そして、自己の属する階層から離れるほど多数派になっていくと認知する。(2) また、次元もしくはランク数が増加するにつれて、ますます自己を少数派だと認知する。(3) イメージ階層分布は対称で上に凸である。(4) 階層システムにおいて次元数が増加するほど、階層帰属意識はより中レベルに集中する。(5) Fararoの公理を拡張し、スキャニング過程を一般化することによって、イメージ階層および客観階層における順位の一般式を明らかにする。(6) イメージ階層の順序の非保持性を「逆転現象」としてとらえ、その数理的なメカニズムを明らかにする。(7) そして、客観階層と主観的なイメージの間の乖離から生じる差異化と同質化のパラドキシカルな関係を明らかにする。
著者
鈴木 鉄忠
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.49-61, 2006-04-30

本稿の目的は、「共通利益と個別利害のジレンマ」の解決に「連帯集団」が及ぼす効果と社会的メカニズムを、マイクロ・レベルに基礎付けて解明することにある。利己的な行為者を仮定する社会理論では、ジレンマを解決する主要因として、「連帯集団」の存在がたびたび取り上げられてきた。しかしそれが行為者の意思決定状況や行動に及ぼす効果と社会的メカニズムについては十分な分析がなされていなかった。そこで本稿では、ジレンマが生じる問題状況を「n人チキンゲーム」によって定式化し、プレイヤー間の提携を考慮に入れた「強ナッシュ均衡」を用いて新たに分析した。分析の結果、「連帯集団」がコミュニケーション回路として機能することで行為者同士の共同行動が促されることによりジレンマが解決されるという、マイクロ-マクロ・レベルの社会的メカニズムが明らかになった。そしてこれは、「連帯集団」を通じた「集団まるごと加入」によって効率的な動員が可能になるという資源動員論の主張からも実証的に裏付けられることがわかった。
著者
太郎丸 博
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.287-298, 2000

本稿のねらいは、社会学における合理的選択理論の伝統を概観し、今後の発展の可能性を示すことにある。合理的選択理論は行為の目的合理性を過剰に強調すると同時に、選好と機会構造の形成過程をしばしばブラックボックスのままにしてきたため、社会学の中では異端でありつづけてきた。しかし、マイクロ-マクロ・リンクおよび行為の多元的合理性を梃子にしながら社会批判・政策提言を行っていくことは、社会学の良質の伝統に属する。そして合理的選択理論もそのような良質の伝統に属する。そのことが一見異端とも思える合理的選択理論が社会学の中で発展してきた理由の一つであり、このような伝統を共通の基盤にしながら他の学派との対話も可能であることを示す。
著者
出口 弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.67-86, 2004-03-31
被引用文献数
2

本稿で我々は、エージェントベース社会システム科学の研究プログラムにひとつの数理的な基礎を与える、社会学習に関する動学的なモデルとその分岐構造を分析する。そのために代替案選択に関する非定常マルコフ過程を導入し、そこから社会学習動学(SLD)と呼ばれる動的システムを定式化する。SLDは、エージェントベースモデリングとそのシミュレーションに対する理論的枠組みを提供する。この力学系の平衡点を変化させるために境界条件を制御する間接制御に着目しSLDを規範の形成と崩壊のプロセスの分析に適用する。これはもともとR.アクセルロッドによって規範ゲームとメタ規範ゲームとして定式化されエージェントベースシミュレーションによって分析されたものである。本稿ではこれにSLDを用いた再定式化を与えたものを数理的に解析し、幾つかの性質を定理として明らかにする。これは結果として二次の社会的ジレンマ問題に対する一つの解を与える。