著者
白波瀬 佐和子 石田 浩
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.185-201, 2018 (Released:2019-09-28)
参考文献数
53

本研究の目的は,個々人のライフコースで発生する様々なイベントを出身階層との関係から検討していくことにある.人生の初期,中期,後期におけるライフイベントの発生に着目し,それらに対する出身階層の効果を検討することで,今までの労働市場を中心に展開された社会階層研究とは異なる新たな地平を切り開くことを試みる.本論文では,ライフコースにおける3つのステージに着目する.40歳までの初婚,標準的なライフコースを歩んできたか,そして,高齢期における世帯類型に注目して,出身階層の影響の有無を検討する.本論で分析するデータは,2015年SSM調査である.具体的なリサーチクエスチョンは,(1)3つのライフステージのイベントや状況に出身階層の影響が認められるか,(2)父階層と母階層を区別することで両者の効果に違いがあるのか,(3)本人が獲得した学歴によって出身階層からの影響に違いがあるのか,である.分析結果によれば,いずれのライフステージにあっても出身階層の効果が認められ,その効果はライフステージの後半にあっても確認された.また,学歴によって出身階層からの効果に異質性はみられず,たとえ高学歴を獲得したとしても出身階層の不利さを挽回,あるいは恵まれた出身階層の効果を強化するような交互作用はみられなかった.初期の格差(出身階層)は個人のその後のライフイベントに継続して影響を及ぼしていた.
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.2-19, 2016 (Released:2016-08-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本稿は,新しい分析概念として複合化された社会メカニズムを提示することを目的としている.この概念は,有名なコールマンボート(Coleman 1990=2004)から想を得ている.従来のコールマンボートでは一連の因果関係だけが想定されているが,新しい概念では複数の因果関係が併存することを想定している.このように想定することで,私たちは複雑な社会現象をより深く理解することが可能になる.本稿では,新しい分析概念の有効性を示す一つの事例として,回帰モデルの有限混合を前提にした性別役割意識の分析をおこなった.最近の世論調査によると,日本人の性別役割意識の趨勢が不安定化している.このような変化を説明するためには,高学歴化・女性の労働力参加と性別役割意識を結ぶ2つの因果関係を想定することが必要になる.一つは性別役割意識に囚われなくなる人びとを生むが,もう一つは,ワークライフバランスを無視した働き方を強いることで,性別役割意識を肯定するような人びとを生む.その結果,性別役割意識の趨勢が不安定化するのだ.SSP-I 2010 (N=1,739) による分析結果は,本稿の仮説を支持するものになっている.このことは,複雑な社会現象の解明には,複合化された社会メカニズムの存在を仮定することが有効であることを明らかにしている.
著者
盛山 和夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.2_85-2_100, 1988-10-09 (Released:2009-03-06)
参考文献数
7
被引用文献数
3

権力という概念は、われわれが日常的に社会的世界を理解する上できわめて重要な役割を果たしている。そこでは、権力は、世界に作用を及ぼすところの実体であり、独立した要因であると概念化されている。「権力の大きさ」とか「権力の大小」といった概念は、実体としての権力を前提にしている。 しかしながら、このような実体としての権力の実在は疑わしい。ニュートン力学におけるような物理的な力は実在するかも知れないが、社会学理論においてそれと同等の役割を果たすべき実体としての権力は、存在しないと考えた方が、これまでの権力理論の混乱と失敗をよりよく説明することが出来る。ここで、実体としての権力と、被説明項としての権力現象とを区別することが重要である。後者は、実際に観測され、説明を求められているさまざまな権力現象である。それに対して、前者はそうした権力現象を説明するために、日常的な社会理解において考え出された説明要因である。しかも、これは説明要因として、厳密な検討に耐えうるものではなく、結局のところ幻想的な要因であると考えられる。 したがって、ありうべき権力理論においては、もはや説明要因としての権力概念を保持することはできない。むしろ、さまざまな権力現象を現象に即して説明していく試みの蓄積が必要である。
著者
Tsai Shu-Ling 鹿又 伸夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.179-195, 2011

     This paper examines whether and how educational expansion affects inequality of educational opportunity, focusing on the two hypotheses which argue that educational expansion transforms class inequality through saturation of education. Under the condition that a level of education approaches nearly saturation, the MMI hypothesis claims class inequality in attaining the level of education begins to decrease and the EMI hypothesis maintains class inequality over types within the level of education emerges. Taiwan and Japan showed similarity in educational system, but education in Taiwan has expanded more drastically than that in Japan. To test the hypotheses, utilizing their different time point in appearance of saturation caused by the respective pace of expansion, we present the expectations on changes in class inequality for the two countries. The result of analysis using survey data collected in each country is more consistent with the MMI rather than the EMI. Class inequality in attaining levels of education persisted until approaching saturation, but reduced in attaining senior high school education in Japan when this level of education reached saturation. Class inequality in attaining university education rather than junior college over types of higher education emerged clearly corresponding to approaching saturation in Taiwan but appeared in Japan before saturation. The result also indicates that educational expansion urges the transformation of class inequality and gender inequality through respective process. Educational expansion leads to reduction of gender inequality in attaining levels of education irrespective of rapidity and saturation of expansion and without interaction by class and gender in both countries, but hardly erodes gender-specific educational paths institutionalized by gender norm or preference preserved in Japan.
著者
瀧川 裕貴
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.215-223, 2011 (Released:2012-01-31)
参考文献数
17
被引用文献数
2

社会階層研究における理論の不在が指摘されるようになってすでに久しい.産業化の進展に伴う階級間の機会格差の消滅を予言した近代化理論と逆に階級対立の激化を予言したマルクス主義は,ともに決定的に誤っていたことが明らかになった(原・盛山 1999).その後に提唱されたいわゆるFJH 仮説は,産業化諸国における社会移動の「機会格差」の質的パタンの同一性を主張するもので,確かに実証データとの適合度は高い(Featherman et al. 1975).だがこの仮説は,なぜ産業化が進展した後でも階級間の「機会格差」が残り続けるのかを,理論的に説明するものではない. もう少し的を絞った問題としては教育,特に高等教育への進学における社会階層格差の存続をいかにして説明するべきかという問題がある.もちろん,これは社会階層全般における持続的不平等の問題と密接に関連している.高等教育を媒介として階層間の機会格差が持続するからである.さて,高等教育における持続的不平等とは,産業化の進展に伴い教育機会は全般的に大きく拡大したにもかかわらず,階層間の進学率の格差が残り続ける現象をいう.このような現象は,いくつかの例外を除き産業化を達成した諸国において共通に観察されている. 高等教育における持続的不平等の問題については,近年になっていくつかの注目すべき理論的考察が提出されてきている.なかでもR.ブリーンとJ.ゴールドソープが提唱した相対的リスク回避モデルは,大きな注目を集め,多くの実証的追試を産んだ3), 4).にもかかわらず彼らの相対的リスク回避モデルの定式化は不必要に煩雑であり,かつ多くの点で理論的な問いに答えるためには不十分であることは否めない.そこで,本稿ではブリーンとゴールドソープのモデルに対して筆者が与えた新たな定式化を紹介し,このモデルの意義と限界について説明を試みたい.
著者
高坂 健次 吹野 卓
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.93-116, 1989

天然の漁業資源は、一方では自然的再生産メカニズムを享受しているものの、他方では、人間の手による乱獲のためにしばしば枯渇の危機に晒されている。本稿では、資源の再生産メカニズムの仮定をモデルに組み込み、(1)漁獲規制を遵守した漁獲戦略と、(2)規制を無視して可能な限りの漁獲をする漁獲戦略、の2戦略が選択可能な状況について考察する。そして、漁獲活動がDawes(1975)の定式化による「社会的ジレンマ」に陥るのは、資源再生産と漁獲に関するパラメータが特定の関係を持つ場合だけであることを示す。あわせて、囚人のジレンマ・ゲーム論的な観点から、乱獲の数理モデルの社会学的含みについて考察を加える。

1 0 0 0 OA Discovering Data :

著者
Rodney Stark
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.19-29, 2001-03-31 (Released:2016-09-30)
参考文献数
20

When research is theory-driven, the “proper” research method is the one that best tests one's theory. An often unnoticed byproduct of theory-driven research is the ability to “discover” appropriate data. I illustrate this point with the many instances when I recognized that the data I needed to test a theory were already available in some rather odd places.
著者
山田 昌弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.94-98, 2016 (Released:2016-08-06)
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
塩谷 芳也
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.349-356, 2018 (Released:2019-09-28)
参考文献数
6

本研究の目的は,大学生の就職活動における内定取得時期に対するソーシャルスキルの効果を解明することである.企業への就職を希望する大学3年生を対象に,ウェブ調査によって就職活動の前後でパネル調査を行った.2014年1月にソーシャルスキル(KiSS-18)を測定し,同年12月に最初の内定取得時期を測定した.イベントヒストリー分析を用いて,大学の偏差値やアルバイト経験,出身階層等を統制して分析した結果,女子(n=294)ではソーシャルスキルが高いほど早期に内定を得る傾向が見られたが,男子(n=109)では無関連であった.ソーシャルスキルの効果の男女差は,大卒労働市場において男女が異なる評価基準で選抜されている可能性を示唆している.対人コミュニケーションにおいて女子は男子とは異なる役割を期待され,その役割遂行の巧拙によって女子のあいだに就職の格差が生じている可能性がある.
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.89-120, 1991-04-01 (Released:2009-03-31)
著者
永吉 希久子
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.114-126, 2017 (Released:2017-07-19)
参考文献数
26

社会的排除の視点からみれば,社会的ネットワークからの排除は,失業(労働市場からの排除)や貧困(経済的次元での排除)など他の次元における排除の帰結として生じると考えられる.しかし,クロスセクションデータを用いた研究では,個人の観測されない異質性の影響を除外できないため,失業や貧困それ自体がネットワークからの排除を促すのかが明確ではない.本研究ではパネルデータをもとに固定効果ロジットモデルを用いた分析を行い,失業や貧困状態への移行という個人内の状態変化が家族外でのサポート・ネットワークの喪失に与える影響を検証した.さらに,その効果のジェンダーによる差についても分析を行った.分析の結果,失業や貧困による非家族ネットワークの喪失は男性についてのみ生じることが示された.また,加齢によるネットワークの喪失も男性のみにみられた.一方,結婚は男女ともに非家族ネットワークの喪失を促していた.女性のサポート・ネットワークが社会経済的な次元での排除に頑健であるのに対し,男性のネットワークは脆弱であること,また,結婚がネットワークを縮小させる負の側面を持つことが示唆される.
著者
仁平 典宏
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.247-268, 2013

社会的に弱い層が災害時により大きな被害を受けるという脆弱性のモデルは,東日本大震災においても妥当するのだろうか.この問いに答えるためには,まず津波災害と原発事故災害とを分けて考える必要がある.津波災害に関しては,高齢者と漁業従事者が多く居住する地域で特に被害は大きかったのかという問いについて,地域間比較の分析を通じて検証を試みる.その上で,モデルから外れた事例として岩手県陸前高田市に注目し,津波や仮設住宅の生活におけるリスクをどう回避してきたのか,その条件は何かということについて調査データをもとに分析する.次に,原発事故災害について検討する.その出発点は,被曝と避難に伴うリスクが高齢者と若者で異なるという事実である.だが,被曝リスクをゼロにすることにこだわる場合,そのリスク構造の差異を適切に扱えない上に,有効な政策的・実践的方向性も示せなくなる.以上を通じて,地域や時期,問題によって,特定の社会的カテゴリーが有する災害に対するリスクが多様な形をとることとその含意について論じる.
著者
樋口 耕一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.101-115, 2004
被引用文献数
9

新聞記事や質問紙調査における自由回答など、社会調査において計量的な分析の対象となるテキスト型データには、様々なものが挙げられる。これらのテキスト型データを計量的に分析する際、従来はCorrelationalアプローチかDictionary-basedアプローチのうち、いずれかが用いられることが多かった。前者は多変量解析の応用、例えば、クラスター分析を用いて頻繁に同じ文書の中にあらわれる言葉のグループを見つけだすといった方法で、データ中の主題を探索するアプローチである。それに対して後者のアプローチでは、分析者の指定した基準にそって言葉や文書が分類され、計量的な分析が行われる。本稿ではこれらのアプローチを検討し、それぞれに一長一短を持つこれら2つを、互いに補い合う形で統合したアプローチを提案する。そして、その実現に必要なシステムを作製・公開するとともに、本アプローチ・システムを用いて自由回答データの分析を行った例を示す。その上で、従来のアプローチに対する本アプローチの有効性について若干の検討を加える。
著者
内藤 準
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.15-35, 2015

本稿の目的は,ジェンダーによる就職時の統計的差別において予言の自己成就を生み出す単純な社会的メカニズムを理解することである.分析の結果,仕事と家庭が両立できず共稼ぎ世帯の方が片稼ぎ世帯よりも家族生活全体の利得が低くなる低ワーク・ライフ・バランス社会において,求人数が求職者数を下回っているとき,企業が「女性は男性よりも離職しやすい」という予測(予言)に基づいて男性優先の統計的差別をおこなうと,その差別的採用自体が,実際に女性が離職しやすい状況を作り出してしまうことが示される.次に,男女平等な採用が企業にもたらすメリットに関する先行研究の指摘をふまえたうえで,企業が差別的な採用から男女平等な採用へ切り替えることが合理的になる条件を明らかにする.その条件の解釈を通じて,ワーク・ライフ・バランスの改善,雇用拡大やワークシェアリング,ポジティブアクションの促進,労働の質の変化といった社会経済的・政策的要因が,統計的差別の予言の自己成就のサイクルを断ちきる効果をもつことを明快に理解することができる.
著者
河野 敬雄
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.195-209, 2002-10-31 (Released:2009-02-10)
参考文献数
14

社会問題としての大学入試制度を分析する枠組みとして,「複数の意思決定主体が複数の選択肢を持ち,かつ相手の選択肢の結果を想定した上で,何らかの意味における合理的な選択をするメカニズムを分析する枠組み」としてのゲーム理論的視点が有効であることを大学審議会報告(1993)等の分析を通して明らかにする。 次に,大学審議会答申(2000)の提唱する「資格試験化」と「受験機会の複数化」に関して,(1)試験を資格試験とみなした場合,(2)2回受験可能な現行の2次試験の場合,(3)センター試験で2回の得点の良い方の点数で比較する場合,を確率変数を用いて表現される数理モデルに基づいて検討する。結果として,特に(3)の場合,答申の意図する「主観的合理性」が必ずしも客観的評価に耐えられないことを指摘する。
著者
坂口 尚文 中村 隆
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.3-17, 2019 (Released:2019-12-25)
参考文献数
20

本稿では,階層型コウホート(HAPC)モデルによる推定でコウホート効果がフラットになるメカニズムを明らかにし,ベイズ型コウホート(BAPC)モデルで用いられているパラメータの1次階差に着目することが妥当であることを述べる.HAPCモデルは近年のコウホート分析において標準的手法であり,一般的に時点とコウホートを個々の対象者が属する集団の効果として,それらを変量効果として扱う混合効果モデルである.しかしながら,HAPCモデルによる推定はコウホート効果が想定よりもフラットになりやすいとの批判もなされてきた.他方,BAPCモデルはパラメータの1次階差に正規分布を仮定した経験ベイズ流の枠組みで従来とらえられてきたが,混合効果モデルとしてとらえることも可能である.両者とも変量効果の導入で識別不足を解消する点は共通だが,コウホート分析における識別問題へのアプローチは異なる.実証例として,コウホート効果が大きいと考えられる男性大学卒割合を用いて,両モデルの推定結果の違いを示す.HAPCモデルの推定はコウホート効果がフラットであるのに対し,BAPCモデルはコウホート効果が大きく,新しい世代ほど大学卒割合が高くなるという特徴を捉えていた.
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.163-179, 1998

江原ら(1984)及び山崎&江原(1993)は、会話分析において次のような事実を見いだした。1)男性同士の会話では沈黙が多い。2)女性同士の会話では沈黙が少ない。3)にもかかわらず、男性と女性の間の会話では、男性が女性の話に割り込みやすく、女性が聞き役になる。江原らは、この奇妙な現象の中に性による権力を見いだした、しかし、江原らは、そのような権力を産出するメカニズムを特定できなかった。本稿は、進化ゲーム理論を用いて、このメカニズムを分析する。その結果、性による権力は自我を防衛しようとする感情に起因することが明らかにされる。また、本稿は、男性と女性の間の対等な関係が、否定的な他者に対する寛容によって可能になることを示す。
著者
松田 光司
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.113-128, 1996-12-31 (Released:2016-08-26)
参考文献数
8
被引用文献数
4

本稿は、Granovetterによって集団行動のモデルとして提唱された『閾値モデル』をもとにして流行現象のみにおいてさらに詳しく考察し新モデルの発表を目的とするものである。まず、理論面で閾値の分布形態と流行現象の関係を調べた。その結果をふまえて閾値モデルの矛盾点を指摘する。そしてその矛盾点を解決する為に、従来のある時刻の流行の採用率のみを考慮に入れたモデルから採用率と時間を考慮に入れたベクトル型閾値モデルを考案した。また、その新モデルにもとづいた社会調査を行ない、その結果得られたデータを新モデルに適用した。そして、その調査対象ではどのような流行現象が起こるかについて考察した。その結果、閾値モデルでは、終局の採用率がほとんど初期値によらないのに対して新モデルでは終局の採用率が初期値によって変化するということがわかった。