著者
長松 奈美江
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.73-89, 2008-06-30 (Released:2008-08-11)
参考文献数
31

所得格差を説明する理論の多くは、個人が仕事において発揮する技能が高い所得と結びつくことを指摘する。しかし、技能は直接測定することが困難であるため、技能と所得格差との関係を実証的に明らかにする試みは多くはない。本稿は、技能を、「仕事における裁量」と「仕事の複雑性」という二つの側面から測定し、所得格差をもたらす技能の役割を実証的に明らかにした。 2004年に全国の成人男女を対象に実施された社会調査データをもちいて所得決定構造の分析を行った結果、以下の三つの知見が得られた。第一に、高い所得に結びつく技能は、発言権や決定権をもったり、資料の分析や企画を行うといった組織における意思決定に関する技能や、機械装置の操作に関する技能であった。第二に、性別、学歴、雇用形態、企業規模、勤続年数の所得への効果の一部は、技能の所得への効果により媒介されていた。しかし第三に、技能をコントロールしても、性別、雇用形態、企業規模の所得への効果は大きく、同じ技能を発揮していても、女性ほど、パートほど、そして企業規模が小さいほど所得が低いことがわかった。
著者
高田 洋
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.19-37, 2008-06-30 (Released:2008-08-11)
参考文献数
31

民主主義年齢を重ねた国々においては、どの国においても投票率の低下という現象が生じている。投票率の低下は、民主主義の危機のように論じられることがあるが、それはその国がどのような社会的条件にあるかによる。民主主義にとっては、そのときの政治的状況に即座に反応する投票行動ではなく、継続される投票態度の方が重要である。投票態度がどのように備わるかについて、(1)個人の社会経済的背景、(2)個人に内面化された民主的な意識、(3)社会政治的なマクロ状況の3つの要因による因果モデルを分析する。また、積極的な投票態度を持っていない人びとは社会調査に回答しにくいというバイアスを評価するためTobitモデルのHeckman推定法によってこの因果モデルを分析する。日本の2005年のデータを用いた分析の結果、次のことが明らかとなった。(1)学歴や文化資本は、反権威主義的および多元主義的意識を高めるが、この2つの意識は投票態度に直接の影響を持たない。(2)若年期に経験した高度経済成長は、非自己中心的な社会参加を促し、積極的な投票態度を形成させる。(3)若年期の経済成長が大きいほど反功利主義的人間観になるが、これは投票態度に直接の効果を持たない。(4)階層的地位は投票態度に直接の積極的な影響を与える。現代日本においては、反権威主義や多元主義が投票態度と直接には結びつかなくなる一方、経済成長の停滞は、自己中心主義または少ない社会参加を通じて、消極的な投票態度を導く。
著者
高田 洋
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.19-37, 2008

民主主義年齢を重ねた国々においては、どの国においても投票率の低下という現象が生じている。投票率の低下は、民主主義の危機のように論じられることがあるが、それはその国がどのような社会的条件にあるかによる。民主主義にとっては、そのときの政治的状況に即座に反応する投票行動ではなく、継続される投票態度の方が重要である。投票態度がどのように備わるかについて、(1)個人の社会経済的背景、(2)個人に内面化された民主的な意識、(3)社会政治的なマクロ状況の3つの要因による因果モデルを分析する。また、積極的な投票態度を持っていない人びとは社会調査に回答しにくいというバイアスを評価するためTobitモデルのHeckman推定法によってこの因果モデルを分析する。日本の2005年のデータを用いた分析の結果、次のことが明らかとなった。(1)学歴や文化資本は、反権威主義的および多元主義的意識を高めるが、この2つの意識は投票態度に直接の影響を持たない。(2)若年期に経験した高度経済成長は、非自己中心的な社会参加を促し、積極的な投票態度を形成させる。(3)若年期の経済成長が大きいほど反功利主義的人間観になるが、これは投票態度に直接の効果を持たない。(4)階層的地位は投票態度に直接の積極的な影響を与える。現代日本においては、反権威主義や多元主義が投票態度と直接には結びつかなくなる一方、経済成長の停滞は、自己中心主義または少ない社会参加を通じて、消極的な投票態度を導く。
著者
出口 弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.67-86, 2004-03-31 (Released:2008-12-22)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1

本稿で我々は、エージェントベース社会システム科学の研究プログラムにひとつの数理的な基礎を与える、社会学習に関する動学的なモデルとその分岐構造を分析する。そのために代替案選択に関する非定常マルコフ過程を導入し、そこから社会学習動学(SLD)と呼ばれる動的システムを定式化する。SLDは、エージェントベースモデリングとそのシミュレーションに対する理論的枠組みを提供する。この力学系の平衡点を変化させるために境界条件を制御する間接制御に着目しSLDを規範の形成と崩壊のプロセスの分析に適用する。これはもともとR.アクセルロッドによって規範ゲームとメタ規範ゲームとして定式化されエージェントベースシミュレーションによって分析されたものである。本稿ではこれにSLDを用いた再定式化を与えたものを数理的に解析し、幾つかの性質を定理として明らかにする。これは結果として二次の社会的ジレンマ問題に対する一つの解を与える。
著者
井上 寛
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-13, 2008-06-30 (Released:2008-08-11)
参考文献数
50
被引用文献数
3

数理社会学あるいは社会学にパラダイムが存在しているかどうかを判断すること自体が危うい試みであるが、研究者はコミュニケーションを可能にする共有知を自覚していることも事実である。パラダイムという用語の概念的な厳密さには深入りせず、ここでは、少し広めに、認識の場におけるいくつかの分岐点において、研究者の部分集合によって持続的に共有され、認識のアウトプットを導きあるいは制約する概念、理論、方法、さらには意識的あるいは無意識的な信念あるいは価値意識の複合体としておく。 結論からいえば、緩やかなパラダイムなしには社会科学の発展はありえないが、現在は必ずしも十全なパラダイムは存在せず、よりよいパラダイムを求める個別パラダイムの相克のなかにあり、またそうであることが望ましいといえるだろう。問われるべきはその相克の様相をできるだけ明らかにすることであり、本稿は、その課題に少しばかりの発言をするものである。 この作業のためのさしあたりの視点として、科学認識の基本的な2組の様式の分岐点を置くことにする。ひとつは実証的か規範的か、今ひとつは経験的か理論的かである。これらの区別を説明する必要はないと思われるが、「実証的」という用語については注意が必要である。ここで実証的とは経験的研究(計量的研究)に限定されず、理論研究(演繹理論)も含むものとする。その上で、理論と経験的研究を識別する。行動、態度、社会状態(不平等)であれ、その状態の特性を明らかにし、その状態の出現のメカニズムを明らかにすることは、理論にも経験的研究も共通であるが、アプローチが異なる。ただし、この2組の単純化した区別は、議論のなかでもう少し複雑な関係にあることが明らかになるだろう。
著者
岡部 悟志
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.169-187, 2007-10-31 (Released:2008-01-08)
参考文献数
21

1990年代以降、若年層を中心に進行した就業の非正規雇用化は、彼らの社会的な地位達成のあり方に大きなゆらぎを与えた。そのような中、若者の間に広がる収入差などの格差に着目した研究は蓄積されつつあるが、一方で当事者である彼らの主観的評価に焦点を当てた研究は相対的少数に留まっている。本稿では、当事者評価の中でも特に「仕事に対する総合的な満足」(仕事満足)を手がかりとし、若年非正規雇用の実態把握から問題点の特定を行った。分析の結果、同じ非正規社員でも、未婚男性の仕事満足が最も低いこと、そして、当カテゴリに属する若者は、無職の若者と生活意識面で強い親和性があり、生家の暮らし向きや学歴などの経歴が恵まれていないことがわかった。さらに、当カテゴリに限定して仕事満足の決定要因を探ったところ、現在の社会的属性ではなく過去の教育体験、とりわけ親や親以外の大人との接触体験の多寡が影響していることが判明した。過酷な労働条件のもとで仕事満足が相対的低位にとどまる若年非正規雇用の問題に対して、その解決の糸口を専ら彼らの働き方や処遇改善だけに求めるのではなく、義務教育段階より大人交流体験を促進する教育プログラムを導入するなどの方策を、政策議論の俎上に載せていくことが急務といえる。
著者
栗田 宣義
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.21-37, 1994-04-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
38

政治的暴力とは、多数の人びとによる政治的で明確な敵手を有した暴力的叛乱である。従来、相対的剥奪仮説、集合行動仮説、資源動員仮説、大衆社会仮説、紛争伝播仮説、不平等仮説、世界システム周辺仮説といった複数の理論モデルが、競合しつつ、政治的暴力の生起を説明してきた。これらの仮説群は、筆者の提唱する (1) 心理・文化分析―関係・構造分析、(2) 個別分析―エコロジカル分析という二軸の基準によって、(a) ミクロ政治心理学説、(b) ミクロ政治社会学説、(c) マクロ政治心理学説、(d) マクロ政治社会学説、の四類型に分類される。この分類作業と各仮説の検討を通じて明らかにされたのは、四つの学説は対立関係にはあらず、むしろ相互補完的であることだ。本稿は、これらの理論的作業を通じて、計量分析を前提とした政治的暴力の総合的理解を進めることを目的とした試論である。
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.71-75, 1994-04-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
1

ここではまず、論文「権力関係の存在可能性」(数土,1993)で明らかにされた定理3の証明に誤りがあることを指摘し、その証明を訂正する。次に、同論文の証明に省略が多いことを指摘し、特に重要と思われる定理2(補助定理1を含む)のより詳しい証明を紹介する。最後に、この定理2が社会秩序問題に対して持つと考えられる含意を指摘する。
著者
今田 高俊
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-11, 2003-03-31 (Released:2009-01-20)
被引用文献数
1

The objective of this lecture is to consider the possibility of a new scientific method from the viewpoint of “reality science.” Once, Descartes who presented the method of the modern science wrote A Discourse on Method. However, at present, new reality has become an important theme which could not adequately be grasped by the method he planned. The movement heightens which intends to grasp the reality such as edge of the chaos, fluctuation, noise, complexity, and postmodernity not caught by the method of the science that aims at the recognition of the universal law. In this lecture, I will discuss such new trends from the viewpoint of the “reality science,” and raise a question on the necessity of the method which takes in both of unique factor and universal factor.
著者
志田 基与師
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.2_101-2_114, 1988-10-09 (Released:2009-03-06)
参考文献数
28
被引用文献数
2

権力を,権利や意思という概念と関連させて考察するためには,社会的決定関数という社会装置に基づくのがよい.社会的決定関数は,社会状態を,社会にたいして開かれた機会集合から人々の選好の組を参照しつつ,一義的に導き出す手続きであり,その機能に着目すれば制度と等置できる.権力とは,社会的決定の中に自らの意思を貫徹する能力と理解できるから,この関数の入力の一つである意思と出力である社会的決定とを比較することにより,その記述を与えることができる.たとえば,他者の意思がどんな配置になっていようと特定の社会状態を帰結できる行為者は一定の権力を有しているといえよう.ある個人の選好と社会的決定の一致の度合から,われわれは,狭義の権力,権限,権利という次第に強さを増す一連の権力概念を提案した.ところでこの入出力の対応は制度である社会的決定関数によって定まっているから,権力は制度の属性として記述を与えられることになる.それゆえ,権力は制定の一部分である.それは,社会的決定関数が,幾分かは個別の個人行為者による部分的な決定へと分解可能なものであることに基づいていて,われわれはそこに権力関係を読み取るのである.権力の布置は,したがって,人々の選好の布置に基づいているわけではなく,社会的決定関数の関数形の一部であり,これを選好の布置に依存すると考えるのはいわゆるカテゴリー錯誤を犯すものである.権力関係はまた社会的決定関数のもつ形式的特性によって制約をうけるし,逆に権力関係のあり方が社会的決定関数に制約を加えることもある.その例としてSenのLiberal Paradoxと戦略的操作の可能性が挙げられる.
著者
七條 達弘 西本 真弓
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.229-236, 2003-09-30 (Released:2009-01-20)
参考文献数
14

近年、我が国では少子化が急速に進行している。国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口―平成13(2001)~62(2050)年―』(2002)では、出生力低下の主な原因として、有配偶率の低下に加え、若い世代の夫婦における出生児数の減少が新たに認められている。 そこで本稿では、若い世代の夫婦がどのような要因により子供数を決定するのかについて明らかにすることを分析目的としている。推定には、総務省統計局が1996年に実施した『平成8年 社会生活基本調査』のうち、妻が20歳以上40歳未満のサンプルを用い、若い世代の夫婦において子供数を減少させる要因について考察する。 推定結果から、若い世代の夫婦が、非就業あるいは就業時間が比較的短い母親と同居している場合に子供数が多くなる傾向があることが示された。よって、家事や育児に関する外部サービスの充実が子供数上昇を促すと考えられる。
著者
志田 基与師
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.2_37-2_50, 1990-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
17

「ハムレット」を社会学的に読みといてみよう。社会学者が「ハムレット」の世界にかんするモノグラフを読んだなら、あるいはその世界を訪れたなら、それをどう分析するだろうか。「ハムレット」の世界を規範・役割・地位の体系を備えた制度とみなして分析することにより、その特質を明らかにするだろう。そうすると、ハムレットは弱々しい悩める貴公子でもなく、衝動的な性格の持ち主でもなく、まして分裂した人格の持ち主でもないことが明らかになる。それどころか、「ハムレット」は復讐劇ですらなく、デンマーク王国の危機と再生の物語であり、主人公ハムレットの役割はそのための殉教者であることが明らかになってくる。
著者
藤山 英樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.17-30, 2007 (Released:2007-08-03)
参考文献数
10

本稿では,利得が確率変数となっている囚人のジレンマ状況での,「開放的関係」と「閉鎖的関係」の相互補完的なメカニズムを明らかにする.「開放的関係」では,個々のプレイヤーはランダムにマッチングされ,1回限りのゲームを繰り返すことになる.「閉鎖的関係」では,ゲームの相手は固定され,協力行動が繰り返されると仮定する.結論としては,どちらか一方の関係しかないときよりも,両関係が存在し,相互間でダイナミクスが存在するときに,社会的効率性の向上が示された.すなわち,「開放的関係」において,社会の多様性が維持され,「閉鎖的関係」において,その望ましい関係が短期で終わらずに保護され,かつダイナミクスによって選択過程が果たされることによって,内生的な利得の向上が実現する.ただし,選択過程が機能するには,ランダムな「閉鎖的関係」の解消確率が十分に小さくなければならない.これまでは,開放的な社会関係(「一般的信頼」)と閉鎖的な社会関係(「コミットメント」)が対立的にとらえられてきた(山岸 1998).しかしながら,現実的にはその双方が社会に存在し,佐藤(2005)も示すように,それらは補完的に作用し,社会の効率性の向上に双方が寄与できるのである.
著者
鹿又 伸夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.251-264, 2004-09-30 (Released:2008-12-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本稿で提示するロジスティック回帰分析では、独立変数として、時間の経過にかんする変数、従属変数(本人の階層)と同一カテゴリーにかんする父階層のダミー変数、そしてこれらの交互作用変数を投入する。この分析方法によって、移動表から計算される対数オッズ比に相当する移動機会格差(地位継承の強さ)を回帰係数としてえられ、またその機会格差の時間的変化も分析できる。SSM調査データをもちいて世代間移動(父階層×現職階層)を階層別に分析した。その結果、移動機会格差は、6階層分類のうち3階層で年齢が高まるにつれて低下し、1階層で調査時点が後になるほど減少していた一方で、2階層は時間的変化をしめさなかった。さらに、回帰係数を利用して計算した社会全体としての機会格差指標は、1955年から1965年にかけて機会格差が急激に減少し、1965年以降は新しいコーホートほど格差が緩やかに減少してきたことをしめした。
著者
田辺 俊介
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.235-249, 2004-09-30 (Released:2008-12-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本論文は様々な外国人に対する認知構造について、多次元尺度構成法による把握を試みたものである。先行研究を受けつつ本研究では、26国民・民族集団についての類似度データ、10国民・民族集団の一対比較データ、海外経験の有無や外国人友人の有無についてのデータを、主に大学生を対象として収集し、分析した。 類似度データをクラスカルの非計量多次元尺度構成法で分析した結果、「西洋人(あるいは白人)か否か」、心理的距離、地理の3つの次元によって人々が外国人を分類していることが示された。さらに個人差多次元尺構成度法により認知構造の属性差を検討した結果、旅行経験の有無に関して旅行経験のある人の方が「西洋人か否か」(「白人か否か」)という次元をあまり重視しないという傾向が見られた。また一対比較データを選好度の多次元尺度構成法で分析した結果、「アジアびいき」、「欧米びいき」という異なる選好パターンが存在すること、またイスラム諸国やアフリカ地域の人々がどんな人からも「遠い」存在と考えられていることが示された。
著者
篠木 幹子 木村 邦博
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.49-70, 2007 (Released:2007-08-03)
参考文献数
53
被引用文献数
1

In Kimura and Shinoki (2007), after criticizing Diekmann and Preisendörfer's (1998; 2003) argument on the cognitive strategies to harmonize the discrepancy between attitudes and behaviors, we constructed a two-stage model of decision-making (rational choice) and justification (cognitive dissonance reduction) in a potential “social dilemma” situation, focusing on the problem of recycling. We deduced several propositions from our model and translated some of them into falsifiable predictions. In this paper, we analyze data from a social survey conducted in Sendai, Japan, in order to test these predictions: (1) On average, contributors' estimate of others' contribution is greater than non-contributors' estimate of others' contribution (the “false consensus effect”); (2) The proportion of the contributors who think that their marginal contribution plays a significant role in the well-functioning of the recycling system is greater than that of the non-contributors who think that their marginal contribution plays a significant role in the well-functioning of the recycling system; (3) On average, the normative consciousness concerning environmental problems is stronger among contributors than among non-contributors. We find that our predictions are almost supported. We also conduct a “critical experiment” in the natural settings on the mechanisms for the false consensus effect. The result reveals that our model is better than the selective exposure hypothesis in explaining it. We examine some possible objections to our model in order to consider what kind of research we need and to clarify the policy implication of our model.
著者
河野 敬雄
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.167-182, 2006 (Released:2007-08-02)
参考文献数
30

まず始めに社会科学において用いられている「数学」とは何かということを考察する。次いで数学概念と推論が明晰であるが故に多くの人々による検討が可能であるという意味での検証可能性を社会学の文献の中からの例を引いて示す。さらに、「「いき」の構造の代数学的構造について」(高坂 1984)を一例として批判的に検討することを通して数学の効用と同時に数理モデルの適用限界を模索する。最後にこれらの批判的検討がより一層の数理社会学発展の契機となり得ることを指摘する。
著者
Arinori YOSANO Nahoko HAYASHI
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.27-44, 2005 (Released:2007-07-06)
参考文献数
26
被引用文献数
2

In this paper, we focused on trust as one of the factors of social capital, and examined its generating processes by comparing two main theoretical approaches of trust — the Emancipation Theory of Trust and the Reduction Approach. The former theory states that creation of general trust will be undermined when commitment relations with specific others are strong, whereas the latter approach states that strength of commitment relations with specific others provides the basis for nurturing general trust. First we examined the relationship between city size (supposedly an indicator of the strength of committed relations) and the level of general trust using data from two social surveys conducted in Japan. The result of the analysis showed no correlation between city size and the level of general trust. Then we performed structural equation modeling to explore the relationships between a wider variety of capitals, social resources and general trust. The results of the analyses show that general trust is nurtured when it is based on relations of trust with specific people. In other words, the result is diametrically opposed to the Emancipation Theory of Trust in that it implies that placing a high priority on existing relationships with people fosters accumulation of general trust and therefore of social capital.
著者
Nahoko HAYASHI Arinori YOSANO
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.59-80, 2005 (Released:2007-07-06)
参考文献数
20

In this paper, we discuss one of the major factors in social capital, the issue of trust, in terms of detection of trustworthiness of others. Yamagishi's Emancipation Theory of Trust concluded that high trusters, or people who have a high level of general trustfulness toward others, have social intelligence to accurately detect the general character of others. Kikuchi, Watanabe, and Yamagishi's Detection Experiment provided the empirical basis of such a conclusion. However, the Prisoner's Dilemma (PD) Game adopted in the Detection Experiment did not necessarily use appropriate alternatives of behaviors for participants as indicators of the general characters of people. Consequently, the results from the experiment are not appropriate for reviewing the ability to “detect a particular person's general character.” In order to overcome such problems and to measure the ability to detect a person's trustworthiness more appropriately, we conducted a laboratory experiment by adopting the game of enthronement. After a series of analyses, we could not confirm such a relationship between trustfulness and the ability to detect trustworthiness as discussed in a series of studies by Yamagishi. On the other hand, after reviewing the relationship between breadth of beliefs about others and the ability to detect trustworthiness of others based on Kelley and Stahelski's Triangle Hypothesis in a traditional PD game study, we could confirm that it is a person's assumptions or beliefs about internalization of social norms by others that determine the accuracy of his/her ability to detect trustworthiness of others.
著者
Kazuharu TSUZUKI
出版者
Japanese Association For Mathematical Sociology
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.81-95, 2005 (Released:2007-07-06)
参考文献数
22

For the last two decades, there has been a growing argument that “social capital” derived from human relationships has an influence on various aspects of social phenomena. In many such studies, it is pointed out that social capital has two aspects social relationships as “network” and “trust” associated with such relationships. However, there has been a tendency for them to be discussed separately and they have not been integrated into one concept of social capital.In this paper, we would like to define the ‘tie’ of human relationships and ‘strength of tie’ among the component concepts of social capital in a formal manner, and try to define the ‘trust’ mechanism as a function that maps ‘one's act counting on other people's actions’ into its feasibility. We will then explore the empirical credibility of such formalization by analyzing survey data.In the following two sections, we will make clear related problems. First, we try to distinguish the ‘feasibility of one's acts which count on other people's actions’ from the probability of other people's action. In our view, one will never calculate an expected utility using the probability of other people's actions in everyday life. He/she will only judge whether his/her act counting on other people's actions is feasible or not. In the next section, we will distinguish the ‘trust’ mechanism from the ‘confidence’ mechanism according to Luhmann. We see their difference as a difference in domain of feasibility that each mechanism concerns.