著者
高坂 健次
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.141-152, 1987-10-01 (Released:2009-03-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2
著者
村上 あかね
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.39-55, 2008-06-30 (Released:2008-08-11)
参考文献数
38
被引用文献数
5

本稿の目的は、社会階層と家族が住宅取得に及ぼす影響を検証することである。住宅は、人びとの生活にとって重要な基盤であり、もっとも重要な資産である。経済的地位と密接な関連を持つにもかかわらず、住宅と社会階層との関連に注目した研究は多くはなかった。1993年から実施されている全国規模のパネルデータに対して離散時間ロジットモデルを用いて分析した結果、(1)世帯の預貯金残高が多いことは持家への移行確率を高めること、(2)夫が専門・技術職の場合には持家となる確率が高いが、全般に夫の職業の影響は弱いこと、(3)親との同居や相続・贈与は家を持つようになる確率を高めること、が明らかになった。これらの結果は、日本は福祉の担い手として家族の役割を重視するという、エスピン-アンデルセンの福祉レジーム論とも、整合的である。
著者
白倉 幸男
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.57-70, 1986-11-20 (Released:2009-03-01)
参考文献数
36

数理社会学の古典としてのSimon-Homansモデルは、本質的部分は図形による質的推論を用いる。Simonの方法では、より一般的な定式化を進めると2つの難点に直面する。「(1)システムは、2つの内生変数のみ限られる.(2)測定単位の影響を被る。」この難点は、Simon=Homansモデルに一貫した解析性がないことに起因する。 Simonの方法では、調整速度の概念により、多変数システムを2変数システムへ帰着させ、位相図を用いる。かつては、これ以外に、質的な推論を行う方法がなかった。この桎梏からSimon=Homansモデルを解放し、新たな解析的展開の方法を提示する。このために、Jeffries(1974)の二色点法と質的比較静学が用いられる。二色点法は、サイクルテスト、彩色テスト、マッチングテストからなり、質的安定性を識別する。Simonの定式化は、Homansのいう内部体系を充分に把握しない。それゆえSimon=Homansモデルは、質的安定でない。Homansの下位モデルである南洋諸島の呪術と不安の相互連関は、飽和性の想定により集団の安定を保証する。Homansの小集団論の一般化の可能性をあわせて指摘する。
著者
Daishiro NOMIYA
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.2_85-2_104, 1992-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
31

The objective of this study is to explore the applicability of the structural theories developed in the area of social movements and collective action to a Japanese historical case. Three theories originated in Europe and America - breakdown theory, class conflict theory, and resource mobilization theory - offer competing explanations for the rise of peasant rebellion, as well as different pictures of peasants and agrarian societies. The purpose of this study is modest: to contribute to the establishment of an empirical foundation for the following inquiry. How well do these three theories apply to the rise of peasant rebellion in premodern Japan?     A cross-regional study is performed using 2,045 cases of peasant uprising occurring during the period 1848-1877 across 631 counties in Japan. It employs multivariate regression analysis combined with the techniques of structural equations to examine the impact of structural factors on the occurrence of uprisings. The study shows that none of the three theories applies well to the experience of nineteenth-century Japan, suggesting differing compositions of social structural forces and their working in their formation of premodern popular protest between Japan and some European countries. A few possible routes are discussed for further investigation of the extent of the applicability and generalizability of the structural theories to the Japanese experience, and beyond.
著者
藤山 英樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.109-119, 2009-05-25 (Released:2010-01-08)
参考文献数
13

本稿では、温泉地域の中心的な組織である旅館に注目し、「地域の異質性および規模」と「地域公共活動」との関係について実証分析をした。「地域公共活動」については、より具体的には、「自治活動」、「旅館組合活動」および「祭り関連の活動」を取り上げた。 調査地域は、長野・山形・群馬・新潟の4県であり、対象は10軒以上の宿泊施設で構成されている旅館組合に加盟している全ての宿泊施設である。有効回答率は51.4%であった。 推定結果から、第1に地域の異質性は自治活動に負の相関があり、第2に地域の規模は組合活動に負の相関があることが示された。解釈は以下の通りである:自治活動といった目的がより漠然とした活動においては、地域の異質性に起因するコミュニケーションコストの高さが大きな影響を与える。他方、組合活動のような目的が決まっている活動では、コミュニケーションコストの効果は小さくなり、公共財としての性質が強くなり、より規模の大きい組織でより多くのフリーライドが生まれる。
著者
杉山 あかし
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.77-92, 1989

ダーウィニズムの視点から見た場合、これまで論じられてきた社会進化論のいくつかの主張にはかなりの問題がある。本稿はまず、ラマルキズムからダーウィニズムヘの変革において存在した、論理の組み立て方の転換を明らかにする。そして、この転換によって本来可能になるはずであった議論展開の可能性を考えながら、社会進化論の通念を吟味していく。「選択によってより優れたものが残る」という命題が、社会的事象に適用される場合の問題点が示され、しかもここでの「優れたもの」の含意が日常語的な意味とは懸け離れたものであることへの注意が喚起される。また、ダーウィニズムと、「分化」「複雑化」「発展段階」といった理論装置は、結び付くことが困難であることが示される。本稿は、このような考察の後に、ダーウィニズムの今後の展開方向を示唆する。まず、個人意識の社会による規定や、利他行動についてのダーウィニズム的解釈についての言及がなされ、そして、ある種のミクロ・マクロ・リンクの理論として、ダーウィニズムが、社会というマクロな過程によって疎外されていく人間のあり方を考える一つの方法となりえることが示される。ここに、再生産論としてのダーウィニズムの、再展開の可能性が示唆される。
著者
数土 直紀
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.41-56, 2009-05-25 (Released:2010-01-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1

階層帰属意識は、日本の社会階層研究において、とりわけ理論的に探求されることの多かった主題である。その代表的な事例として、ファラロ=高坂モデルを指摘することができるだろう。しかし、ファラロ=高坂モデルはある一時点での階層帰属意識分布を問題にしており、構造変動にともなって、それがどのように変化するのかといったことは議論していない。そこで本稿では、この欠を補うべく、階層帰属意識分布の変化の背後にあるメカニズムを理論的に明らかにすることを試みた。その結果、“親の職業的地位を継承している個人は、自身の職業的地位が指示する階層的地位により強くコミットしている”ことを仮定することで、いっけんすると対応関係を欠いていたかのように観察された“職業構造の変動と階層帰属意識の変化”の関係を合理的に説明できることが明らかにされた。そして同時に、そのようなメカニズムの存在を、SSM調査データによって実証的に確認できることも明らかにした。
著者
Peter KOLLOCK
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.3-18, 1993-04-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
1 6

The purpose of this study is to investigate how cooperation might emerge given the following circumstances: the presence of social dilemmas (in which individually rational behavior leads to collectively irrational outcomes), the absence of perfect information, and the possibility of degrees of cooperation. This investigation includes an analysis of accounting systems in exchange relations and argues for the benefits of a relaxed accounting system under the conditions enumerated above. The problem is examined in an experimental study in which subjects interacted with a variety of simulated actors. The highest levels of cooperation and the greatest earnings resulted when subjects interacted with simulated actors using a strategy that involved some form of relaxed accounting system. In addition, simulated actors using a relaxed accounting system did as well or better for themselves than simulated actors using more restrictive strategies.
著者
武藤 正義
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-16, 2007 (Released:2007-08-03)
参考文献数
27
被引用文献数
1

社会学的研究における数理モデルには「現象説明」型と「制度理解」型の2つがある。現象説明モデルは特定の社会現象をメカニズムとして記述し、現象のデータを説明することを目指す。制度理解モデルはもうすこし抽象度が高く広汎で持続的な社会現象、すなわち制度をメカニズムとして理解することを目指す。両者の関係は相互補完的であるが、今日では制度理解モデルは地に足のつかないものとして敬遠される向きもある。しかし、制度理解モデルは、第1に、社会の見えざる制度を明らかにする発見的価値を有することで社会への理解を深め、第2に、それによって社会をより望ましい方向へと構築していく倫理的価値を有することで社会に貢献する。なお、この理解の経験的な正しさは、制度理解モデルが産出する規範的命題が当為を突きつけることによって支えられている。規範的命題によって制度理解モデルは机上の空論を免れる。制度理解モデルは、特定の現象の説明を超えてより普遍的な制度のメカニズムを明らかにする点で広汎な興味と利用の可能性に開かれているため、共通言語性をもつ。また、数学は諸学問分野の橋渡しとなるおそらく唯一の共通言語である。この二重の共通言語性において、制度理解型の数理モデルが探究される意義がある。
著者
塚崎 崇史 亀田 達也
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-51, 2004-03-31 (Released:2008-12-22)
参考文献数
51

社会心理学において、エージェント・ベースト・モデルは、社会的影響過程や社会的交換などの対人・集合現象に関する研究で展開されてきた。これらの先行研究におけるモデルでは、集団極化や住み分けが発生する社会的メカニズムを明らかにしたり、また、利他行動が集団内で合理的となる状況の範囲を同定することに成功している。本稿では、これらの展開について議論した後、不確実環境下での社会的学習方略の進化可能性や、集団意思決定における多数決規則の適応価について、エージェント・ベースト・モデルを用いて検討を行った最近の研究を紹介した。そして、エージェント・ベーストの進化シミュレーションを用いた研究を行うことで、様々な社会心理学的現象に関する理論的仮説を組織的に導き出せること、また、生物学や経済学など異なった分野との交流を促進できることを議論した。
著者
七條 達弘
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.87-103, 2007 (Released:2007-08-03)
参考文献数
9
被引用文献数
1

囚人のジレンマゲームは、社会的ジレンマ状況を説明する単純化されたモデルとして、多くの研究がなされてきた。長期的な付き合い関係などで、協力が発生することが知れている。しかし、この結論を導くためには、強制的に同じ相手とゲームを継続するという仮定が必要である。現実には、パートナーの変更が可能であり、これにより協力の発生が阻害される可能性がある。そこで、本研究では、パートナー変更がある場合でも、協力が発生する事が可能であることを示す理論モデルを構築する。さらに、パートナーの分布変化がある場合を考慮すると、非協力の集団からの協力の発生という、協力の初期進化を説明することができることを示す。
著者
小林 盾
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.183-194, 2002-10-31 (Released:2009-02-10)
参考文献数
57
被引用文献数
2

数理社会学は,社会規範の発生メカニズムを扱うことができるし,むしろ積極的に扱っていくことが期待されている.社会規範は社会のセメントとして役立っているが,これまで社会学は「すでにあるもの」と仮定することが多かった.しかし,もし社会規範がどう生まれて変化していくのかをあきらかにできないと,ひとびとの行動や社会現象を理解するときに誤解する危険がある.いっぽうもし解明すれば,秩序問題という社会学の根本問題を解決できるであろう.そこで,1つの有望な戦略として,社会規範の発生を「選好形成」と捉えて,社会規範の内面化をモデル化することを提案する.そうすることで,理論的には合理的選択理論やゲーム理論の成果を継承できるし,方法論的にはマイクロな行動をマクロな構造へと架橋できる.そのとき,「ピンポイントの数理モデル」を立てて,研究対象を狭く深く限定することがふさわしい.こうした検討をとおして,「望ましい社会とはなにか」という問いにも,貢献できる可能性がある.
著者
内藤 準
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.211-226, 2005 (Released:2007-07-06)
参考文献数
31

本稿の目的は, 「パレート派リベラルの不可能性」を解消させうる「リベラルな」社会的仕組みを明らかにし, さらにその問題点を示すことである. 具体的には, 選択の自由を保証するリベラリズムの自然な含意として認められてきた「高階の判断」および「選択の責任」という考え方を組み込んで「契約の自由」を適切に再定式化すれば, 従来の解決法にはない制度としての強さを持った解決が可能なことを示す. 最後に, この「自由と責任の制度」の仕組みを社会学的に簡潔に説明し, その現実的問題点も指摘する.
著者
毛塚 和宏
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-12, 2017 (Released:2017-07-19)
参考文献数
34

受賞論文は教育達成に関する階層間格差を説明するBreenとGoldthorpeの相対リスク回避仮説に修正を加え,日本において適合的かどうか検討した.数理モデルと計量分析による検討の結果,下降回避的なメカニズムを含まない単純進学モデルが最も説明力があった.本稿の後半では,社会学内における数理社会学のプレゼンスの低さという数理社会学を巡る問題を取り上げた.最後に,さまざまな実証研究との協働によって解決される可能性を提示した.
著者
浜田 宏
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.2_3-2_17, 1999-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
16

ジブラ法則に従うことが経験的に知られている所得分布が、個人の合理的選択の集積によって生成される過程を単純なモデルによって定式化することを試みる。ベースライン・モデルとして「成功すれば高利得を得るが不確実な投資」と「低利得しか得られないが確実な安全策」のどちらかを行為者が合理的に選択する反復ゲームを用いた。モデルの利得構造を決定する所与のパラメータは投資成功確率(報奨密度)&gと投資に対する利益率Rである。分析は数値計算によるシミュレーションでおこなった。ゲーム回数を5または10とし、R={0.5,1,2,3}、0≦γ≦1の範囲でパラメータを変化させ、それに伴う総獲得純益分布の歪度およびジニ係数の変化を調べた。分析の結果、ジニ係数の増減には臨界点が存在するという予想が得られた。 また、ゲームの勝者がより多く投資してより多くを得る累積効果を考慮した場合、反復投資ゲームが生成する総獲得純益分布はγ›1/(R+1)のとき対数正規分布に従うことがわかった。
著者
原田 豊
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.71-74, 2023 (Released:2023-09-01)