著者
三谷 羊平
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.18-29, 2023-03-20 (Released:2023-03-31)
参考文献数
27

環境政策の現場では,金銭的インセンティブを用いない非金銭的介入への期待が高まり,介入費用が低いナッジの政策利用に注目が集まっている.そこで,本稿ではナッジの分類枠組みや介入効果を検証する実験手法を解説しつつ,環境資源経済学におけるナッジ研究の動向を整理する.さらに,研究と政策から得られた大規模なナッジ介入データを用いたメタ分析の結果を紹介し,ナッジ政策の可能性と限界を議論する.
著者
沼田 大輔
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.39-49, 2018-03-28 (Released:2018-04-27)
参考文献数
32

本稿は,2017年3月に行われた植田和弘教授の退職記念公開シンポジウムにおける筆者の報告内容をもとに,植田教授のデポジット制度に関する言及を踏まえた上で,デポジット制度についての研究の現状と課題を,環境経済・政策学,特にインセンティブの観点から主体別に論じたものである.消費者については,購入時・返却時における様々なアプローチによる定量的な研究がある.生産者については,制度運営主体の負担緩和の観点を中心に,デポジット制度と飲料容器税を合わせたポリシーミックスで捉えることの有用性などを述べている.行政については,供給者サイドや回収拠点のモニタリングの検討などを提起している.
著者
陳 奕均 城山 英明 杉山 昌広 青木 一益 木村 宰 森 晶寿 太田 響子 松浦 正浩 松尾 真紀子
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-11, 2022-09-30 (Released:2022-11-04)
参考文献数
49

本稿では,近年,海外で急速に発展してきた持続可能性移行(サステナビリティ・トランジション)という研究分野に着眼し,当該分野における主な理論的枠組みである戦略的ニッチ・マネジメント論(SNM),重層的視座(MLP),トランジション・マネジメント論(TM)とその研究動向をまとめた.関連した概念を明確にしたうえ,日本の研究機関による事例研究への応用例を紹介し,日本の文脈を踏まえた今後の研究課題を提示する.
著者
李 秀澈 何 彦旻 昔 宣希 諸富 徹 平田 仁子 Unnada Chewpreecha
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.1-12, 2021-09-26 (Released:2021-11-02)
参考文献数
22

本稿では,「発電部門の石炭火力・原発の早期フェーズアウトは,日本経済と電源構成,そして二酸化炭素排出にどのような影響を与えるのか」という「問い」に対して,E3MEモデルを用いて定量的な回答を求めた.フェーズアウトシナリオとして,原発の場合,稼働年数40年に到達した古い原発からフェーズアウトし,石炭火力は発電効率の低い順から2030年または2040年までにフェーズアウトする2つのシナリオを設定した.そしてこのフェーズアウトシナリオが実現されたときに,2050年までの日本経済(GDP,雇用など),電源構成,発電部門二酸化炭素排出に与える影響について,E3MEモデルを用いて推定を行った.分析の結果,いずれのシナリオでも経済と雇用に悪い影響は殆ど与えないことが確認された.その要因として,再生可能エネルギー発電のコストが持続的に下落し,それが既存の石炭火力と原発を代替しても,経済への負担にはならないという事情が挙げられる.ただし,原発と石炭火力の代替電源としてLNG発電の割合が再生可能エネルギー発電の割合を大きく上回ることになり,発電部門における2050年の二酸化炭素排出量は,50%ほどの削減(2017年対比)に留まることも明らかになった.そこで本稿では,発電部門の脱炭素化のためには,規制的手法だけでなく,カーボンプライシングなど経済的措置の導入も必要であることが示唆された.
著者
内田 真輔
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.21-28, 2022-03-31 (Released:2022-05-28)
参考文献数
50

地球温暖化に伴う気候変動の影響が世界各地で顕在化する中,影響への適応を前提とした社会の仕組みづくりや行動様式の変革が求められている.しかし,適応するのはそう簡単なことではない.本稿では,適応行動の障害となる各種課題を抽出し,適応格差を是正するために必要な政策視点を経済学的見地から整理・提言する.その際,適応インセンティブを阻むメカニズムとして,4つの要因:「所得格差」,「リスク認知」,「保護政策とモラル・ハザード」,「既存技術や生産構造とのトレード・オフ」に焦点を当て,これらに関連する最新のミクロ実証研究を主な検証材料として取り上げる.
著者
生田 孝史 藤井 秀道
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.44-56, 2020-09-28 (Released:2020-12-25)
参考文献数
48

企業の持続的な成長には,財務パフォーマンスだけではなく,ESGを考慮した経営が必要という考えが浸透している.ESG経営や非財務情報の金額換算評価の取り組みは始まったばかりであり,研究機関や企業が試行錯誤しながら指標や計測・定量化方法の開発・改善を図っている状況である.本稿では,ESG経営に関する最新の調査・研究事例について紹介した上で,今後の研究展望について述べるとともに,研究を発展させる上での課題について紹介する.特に,持続可能な開発目標とESG経営の関連性は,企業活動が社会に与える影響評価を行う上で注目される点であり,いかにステークホルダーに対して両者の関係性を分かりやすく説明できるかが重要となる.
著者
松下 和夫
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.71-74, 2021-03-26 (Released:2021-05-01)
参考文献数
1
著者
横尾 英史
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.30-38, 2018

<p>廃棄物とリサイクルの経済学は植田和弘先生の初期の研究課題であり,それをまとめたものが植田(1992)である.本稿は植田(1992)を簡潔に解説し,その後の四半世紀のこの分野の進展と今後の展望を論じる.これから望まれる研究としては,第一に発展途上国の廃棄物問題とそれに対する政策を課題とすることである.第二に行動経済学の理論に基づいて廃棄物管理・リサイクル政策の手法を研究することである.第三に開発された政策の評価を経済学的なフィールド実験を用いて行うことである.本稿を通じて,植田先生の先見の明が確かめられ,取り組まれるべき課題が整理される.</p>