- 著者
-
城山 英明
- 出版者
- 科学技術社会論学会
- 雑誌
- 科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.65-80, 2018-12-10 (Released:2020-02-10)
- 参考文献数
- 37
テクノロジーアセスメントとは,科学技術の発展が社会に与える影響を広く洗い出して分析し,それを関係者に伝え,相互の議論や意思決定・政策決定を支援する活動である.本稿では,人工知能(AI)に関して想定されるテクノロジーアセスメント上の論点を整理した上で,テクノロジーアセスメントのあり方,すなわち,枠組み・体制の選択肢について,検討する.国際的なテクノロジーアセスメントの取組み,各研究機関によるテクノロジーアセスメントの取組み,国によるテクノロジーアセスメントのための資金枠の設定,各国政府(議会,行政府)によるテクノロジーアセスメント取組みについて,テクノロジーアセスメント一般に関する経験やAIに関する試みを概観した後,このようなAIに関する実験的なテクノロジーアセスメント的活動の1つとして,日本の総務省情報通信政策研究所が行っている活動を検討する.そして,実利用や研究開発の現場から若干の距離のある観点から評価が行われている点,対象が包括的である点に特徴があるとする.また,開発者と利用者(学習データ提供者)の関係課題,利用者と非利用者が混在する移行期の課題等について指摘する.最後に,AIの政治的決定への影響やその可能性についても,社会的影響の1つとして若干考察する.