著者
大井 慈郎
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.111-114, 2017-12-26 (Released:2019-01-28)
参考文献数
4
著者
岩尾 紘彰
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.115-125, 2017-12-26 (Released:2019-01-28)
参考文献数
10

ハーバーマスによれば,「体系的に歪められたコミュニケーション」は「人格どうしの関係の物化」を表現するものであり,人格の社会化に関する「病的生成の研究の出発点にならねばならない」.しかし,ハーバーマスは『コミュニケーション行為の理論』でこのように述べてはいるものの,その内容をつまびらかにはしていない.「体系的に歪められたコミュニケーション」に関するアイディアを読み手の側で展開していくためには,『コミュニケーション行為の理論』の「体系的に歪められたコミュニケーション」に関する2つの疑問を解決しておく必要がある.そのために,本稿では,「コミュニケーション病理の考察」という論考の「体系的に歪められたコミュニケーション」の論理を話し手と聞き手とのやりとりに注目して明らかにする.「コミュニケーション病理の考察」の「体系的に歪められたコミュニケーション」の側から『コミュニケーション行為の理論』の「体系的に歪められたコミュニケーション」に光を当てることで,2つの疑問を解決するとともに以下のことが明らかになった.それは,「体系的に歪められたコミュニケーション」に関するアイディアをわたしたちが展開していくためには,『コミュニケーション行為の理論』の「体系的に歪められたコミュニケーション」の意義を「操作」や「コミュニケーション病理」との概念的なつながりのなかで明らかにする必要がある,ということである.
著者
鳶島 修治
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.75-85, 2016-12-26 (Released:2018-09-25)
参考文献数
22

本稿では,2006年にベネッセコーポレーションが実施した「学習に関する意識・実態調査」と「学力実態調査」のマッチングデータを用いて,中学2年生の進学期待に対する出身階層の影響が「学力自己評価」という主観的要因によって媒介されているかどうかを検討した.成績自己評価と「がんばればとれると思う成績」という2つの指標に着目して「学力自己評価」を測定し,「出身階層→学力自己評価→進学期待」という媒介メカニズムについて検討した結果,以下の知見が得られた.第1に,ペーパーテストで測定された学力を一定とした上でも,大卒の父親をもつ生徒は成績自己評価が高い傾向がある.第2に,学力と成績自己評価を一定とした上でも,大卒の母親をもつ生徒は「がんばればとれると思う成績」が高い傾向がある.第3に,進学期待に対して成績自己評価や「がんばればとれると思う成績」が(学力とは独立に)影響を与えている.第4に,進学期待に対する出身階層(父親と母親の学歴)の効果の一部が成績自己評価と「がんばればとれると思う成績」という主観的な要因によって媒介されている.この結果から,現代日本において「出身階層→学力自己評価→進学期待」という媒介メカニズムが存在していることが示唆される.ただし,学力に加えて「学力自己評価」による媒介を考慮した上でも,進学期待に対する出身階層(父親と母親の学歴)の(直接)効果は残ることが確認された.
著者
磯崎 匡
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.69-77, 2017-12-26 (Released:2019-01-28)
参考文献数
18

本稿の目的は,福島県いわき市豊間地区を事例として,協働による復興の取り組みが地域社会に与える影響について明らかにすることである. 福島県いわき市豊間地区では,震災後の地区復興のためのグランドデザインを示すために,地区を構成する豊間,薄磯,沼之内の3区の住民が協力して2013年に市民会議として「海まち・とよま市民会議」が立ち上がった.地域の意思決定においては既存の地域住民組織が大きな役割を果たしていたが,旧豊間中学校震災遺構問題に端を発して地域の意思決定プロセスに変化が見られた.このような変化に対して海まち・とよま市民会議が果たした役割について聴き取りを踏まえて考察を加えた結果,先行研究で挙げられていた,合意形成機能,協働促進機能,自治力向上機能が働いていることがわかった. 本稿の新たな知見として市民会議の様々な実践を通して,復興まちづくりという場面において行政や各区,住民の意見を集約することが可能となるという知見が得られた.そうして集約したものを提案として各区や行政に提示する形式が作られた.これは行政と住民の間に立ち意見を調整する調整機能というべき機能であると考えられる.
著者
三須田 善暢
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.95-106, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
4

本稿では,新規就農者たちによる助け合い・直売・ボランティア活動を中心とする団体(新農業人ネットワーク)を取りあげ,その展開過程を具体的な事例に即して見るなかから,彼らの活動の特徴とその含意を明らかにする. Iターンなどの新規就農者は,「自分自身の確固とした宇宙」をつくる傾向が強く,個性的な人間が多い.そうした彼らがこうした団体を結成し活動を続けてきたのは,販路を確保するという経済的理由にくわえ,地域と密に溶け込み難いゆえに同じ境遇である仲間の協力を必要としたからでもあった.この助け合いの精神と,自らの経営を単なる自己利害のためにとどめたくないとする志向があいまって,引きこもり・障碍者支援や高校生の就学援助,環境保全,震災ボランティア,独自の就農支援企画等の「公共性」の強い活動へと向かわせていった.別言すれば,ある意味で「社会運動」としての側面を強く持ったものへと進展していったのである.彼らの活動は,生活のためであると同時に遊びの要素と「夢」を含んだ側面が強く,それが公共的なものと結びつきあらわれている.しかし,彼らが述べ志向する公共性は,現時点では地元農村地域,特に集落との関わりが薄いものにとどまっている.
著者
加藤 眞義
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.1-3, 2016-12-26 (Released:2018-09-25)
参考文献数
6
著者
牧野 友紀
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.5-18, 2016-12-26 (Released:2018-09-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本稿の目的は,福島県南相馬市で有機農業の再生に取り組む一人の農民の実践を取り上げ,その生活現実の認識に関して,東日本大震災前と震災後の社会的時間の連続性と差異性に注目して考察を行い,震災後の生活秩序のあり方について検討することである. 福島の農業を取り囲む厳しい現状のもと,避難生活を強いられている農家は,理不尽な生活現実に直面し続けている.居所への帰還とはいっても,ただ単に地理的な居所に帰りそこで消費生活が営めればよいということではなく,農業生産を基軸とする生活が可能でなければならない.避難以前の日常の取戻しは農民や農家にとって至難の業となっている.それでも浜通りの旧警戒区域において,試行錯誤を繰り返しながら,農の営みを組み立て直そうと避難先から通勤して農業を行う人が実在している.本稿ではそうした農民の生活の一端を考察している.また,農家の生活の確保や展開に資するような社会学的知の検討を行っている.考察を通じて,本稿では福島において「食べる」ための農業の再確立が必要であるとの結論を得た.この「食べる」という言葉には二つの意味が込められている.一つは,生産者や消費者,さらには将来世代が農産物を食べるという意味であり,もう一つは農業者が生活する,暮らしていくという意味である.
著者
松井 克浩
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.19-29, 2016-12-26 (Released:2018-09-25)
参考文献数
15

本稿では,福島県の隣に位置する新潟県への原発避難の事例を対象として,長期・広域避難とコミュニティとのかかわりについて考察する.避難指示区域からの避難者に対して,間隔を置いて同じ人に数回行った聞き取りをもとに,避難生活の経過と将来の見通し,故郷/福島について,奪われたもの/失ったものの順に,現状とその変化などをたどった.その結果,表面的には生活の安定がうかがわれる一方で,避難者の迷いや不安はむしろ深まっていることが分かった.何が「難民」という言葉に象徴されるような避難者の苦悩をつくりだしているのだろうか. 若松英輔の議論をふまえると,避難者は「人生の次元」抜きの「生活の次元」を強いられているといえる.すなわち,時間の蓄積をふまえた未来への展望,被害の真の回復までに要する時間,「根っこ」のある生き方,住み慣れた生活空間での承認等々を失い,しかも失っていることさえ周囲から理解されずに日々の生活に追われている.避難者が再び地に足をつけて前に進んでいくためには,「生活の次元」の再建・維持に加えて,時間的・空間的・関係的な「人生の次元」の再生が不可欠である.避難者全体の不可視化と難民化がいっそう進むのか,それとも「人生の次元」の再生がはかられるのか,現在はその岐路にあるといえる.
著者
相澤 出
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.39-49, 2016-12-26 (Released:2018-09-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

地域包括ケアが推進されるなか,特別養護老人ホーム(特養)の看取りへの取り組みが増えている.しかし医師,看護師など医療職の人材不足に悩む医療過疎地域では,特養での看取りが困難な場合がある.宮城県登米市もそうした地域のひとつである.そこで,登米市の地域密着型特養のケアの当事者が,看取りの阻害要因についていかなる認識をもっているかを明らかにするため,聞き取り調査を実施した.聞き取りは,個々の施設ごとの体制や現状,取り組み,看取りの阻害要因として認識している事柄に関するものである.調査から,医療過疎地域や登米市の固有の事情と複合したかたちで,特養の看取りの阻害要因が認識されていたことが明らかになった.今後は看取りのケアを可能にする普遍的な要因の検討に加えて,地域の文脈や個々の特養が置かれた状況を視野に入れたアプローチが,地方における特養の看取りを研究する上で重要となろう.
著者
阿部 晃士
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.5-16, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

東日本大震災の被災地である岩手県大船渡市の住民を対象に郵送で実施した,2011年12月と2013年12月のパネル調査データ(有効回答439人)を分析した.地震・津波による被害については,住まいの被害は収入や職業と関連がない一方で,仕事という点ではもともと収入が低い層ほど継続が困難な状況にあったことを確認した.次に,2013年12月時点で自宅を再建できているのは震災前の世帯収入がかなり高い層であること,震災前からの世帯収入の変化には業種・職業による大きな違いがみられることを示した.最後に,意識の点では不安感と生活復興感を取りあげ,2年間に不安感は低下したが生活復興感は変化していないこと,居住形態の効果もあるが,性別や世帯収入の効果が強くなってきたことが明らかになった.また,復興感では,2013年の復興感に対する震災前の世帯収入の効果があった. これらの結果から,震災による住まいへの被害は格差との関連は小さかったが,その後,仕事の継続や住まいの再建といった復興過程に経済的要因による格差が存在したといえる.さらに,震災前の収入が震災2年9カ月後の時点での生活復興感に結びつていることから,震災前の格差が復興過程の格差に,さらに復興における意識の格差にもつながっていると考えられる.
著者
渡辺 寛人
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.17-24, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
被引用文献数
1

東日本大震災以降,貧困問題への視点は薄れ,被災問題ばかりがクローズアップされている.しかしながら,被災者が抱える困難の性質は,被災によって一時的に生じた問題だけではない.むしろ,経済的困窮をはじめとする貧困問題としての性質が極めて強く現れている.こうした状況にもかかわらず,「最後のセーフティネット」である生活保護制度は,被災地においても十分に機能しているとは言えない.本稿は,筆者らが行なった仙台市の仮設住宅における生活実態調査をもとに,被災問題と貧困問題との重なりを明らかにしつつ,被災問題に限定されない普遍的な社会保障制度の構築が必要であるとの問題提起をしたものである.
著者
加藤 正文
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.25-38, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
9

アスベスト(石綿)は他に類を見ない有用性から産業革命以降,各国で大量使用されてきた.その用途は3千種類に及んだ.しかし,髪の毛の5千分の1の微細な石綿繊維は,吸引すると長い潜伏期間をへて中皮腫や石綿肺などの病気を引き起こす.生産・流通・消費・廃棄の経済活動の全局面で被害を起こす「複合型ストック災害」(大阪市大名誉教授・宮本憲一)とされる. 微細な死の棘が一気に拡散されるのが,大震災のときだ.激しい揺れで倒壊した建物からは,建材などに内在していた石綿が周囲に飛散する.1995年の阪神・淡路大震災では大量の建物が倒壊し,粉じんが舞いあがった.20年あまりが過ぎ,がれき処理に携わった労働者の間で発症が相次いでいる.震災で家族や自宅,工場などを失い,さらに時をへて石綿の病気にかかってしまう.この不条理こそが震災アスベストの特徴である.この教訓は2011年の東日本大震災の被災地できちんと生かされているのだろうか.宮城県石巻市や仙台市などでは飛散対策の不備やマスクの装着の不徹底など飛散・吸引のリスクを各所で感じた. アスベスト被害は使われた範囲が広い分,被害の形もまた多様である.有害と知りつつも「管理して使えば安全」として十分な規制を怠る.その結果,大勢の市民が犠牲となり,いまも危険にさらされ続ける.その姿は,東京電力福島第一原発事故を引き起こし,迷走したままの原子力政策とも重なる.
著者
佐藤 嘉倫
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.39-41, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
5