著者
浦野 正樹 松薗 祐子 長谷川 公一 宍戸 邦章 野坂 真 室井 研二 黒田 由彦 高木 竜輔 浅川 達人 田中 重好 川副 早央里 池田 恵子 大矢根 淳 岩井 紀子 吉野 英岐
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、東日本大震災を対象として発災以来社会学が蓄積してきた社会調査の成果に基づき、災害復興には地域的最適解があるという仮説命題を実証的な調査研究によって検証し、また地域的最適解の科学的解明に基づいて得られた知見に基づいて、南海トラフ巨大地震、首都直下地震など次に予想される大規模災害に備えて、大規模災害からの復興をどのように進めるべきか、どのような制度設計を行うべきかなど、復興の制度設計、復興の具体的政策および復興手法、被災地側での復興への取り組みの支援の3つの次元での、災害復興に関する政策提言を行う。また、研究の遂行と並行して、研究成果の社会への還元とグローバルな発信を重視する。
著者
吉野英岐編著
出版者
東信堂
巻号頁・発行日
2021
著者
細谷 昂 米地 文夫 平塚 明 佐野 嘉彦 小林 一穂 佐藤 利明 劉 文静 山田 佳奈 吉野 英岐 徳川 直人
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-73, 2004-01-16

中国河北省〓台市〓台県の前南峪村は、1995年以来「前南峪経済試験区」となって、模範村として全国的にも注目されるにいたっている。その理由は、(1)「生態農業」を、(2)集体経営で実施し、成功を収めたからである。つまり、(1)村を取り囲む山地に、栗やりんごなどを植林して緑化し、洪水を防ぎながら、果樹作によって経済的にも村を豊かにしたのである。しかも(2)これらの事業を、村全体の集体経営としておこなっている。人民公社時代の集体農業の非効率性を解決するために、中国では生産請負制を導入した。その具体的なやり方はさまざまであったが、一般的には、土地を個人に分配して請け負わせるという、個別化の道であった。しかし前南峪では、村民のきびしい議論を経て集体経営の道を選び、成功したのである。現在では、この集体経営のなかに工業をも導入し、その収入が畑作や果樹作を上回るにいたっている。しかし、(1)環境保全と生活の向上との両方を追求してきた「生態農業」が、経済発展のいっそうの追求のなかで環境破壊に至るのではないかという問題、そしてまた(2)集体経営におけるる「個と集団」の問題が、生活水準の向上、とくに学歴水準の向上によって「個の」自己主張という形で顕在化するのではないかという問題を抱えていることを見逃すわけにはいかない。
著者
麦倉 哲 吉野 英岐
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.402-419, 2013 (Released:2014-12-31)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

東日本大震災による岩手県の死者行方不明者の合計は6,000人を超えている. 生存した被災者は避難所等での生活を経て, 応急仮設住宅で避難生活を継続し, その数は2013年9月の時点でも約3万6000人に達している. 国, 県, 市町村は復興計画を策定し, 復興事業を進めているが, 被災した市街地や住宅地は更地のままであることも少なくない.2011年に大槌町の応急仮設住宅の住民を対象とした調査では, 深刻な被災状況, 生存者の避難行動の高い割合, 避難先での助け合い行動などが確認できた. また聞き取り調査から, 被災犠牲死の要因の再検討が必要であることを明らかにした. そのうえで, コミュニティの復興にとって, 復興のシンボルとなる地域文化の存在が重要であることを指摘した.復興まちづくりの前提になる防潮堤建設では, 県による民有地の取得が必要であるが, 多数による共有地や相続未処理のままの土地が多く, その取得は難航している. 釜石市での調査からは, 海岸部での防潮堤の建設にあたり, 41名の共有になっている共有地の存在が明らかになった. 国はその処理をめぐって加速化措置を発表したが, 被災地の自治体が自ら処理を進められるかたちにはなっておらず, 復興の地方分権化は実現していない.今後の課題としては, 震災犠牲者の被災要因の検証, 地域文化の所在や価値の認識, 住民の地域への関心の持続, 住民と基礎自治体が復興をすすめられる体制の構築が挙げられる.