- 著者
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角松 生史
- 出版者
- 東京大学社会科学研究所
- 雑誌
- 社會科學研究 (ISSN:03873307)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.3/4, pp.139-159, 2010-03-10
都市空間は, 「多数の人々の諸活動と居住と生活の『場』」であるにもかかわらず, その法的理解にあっては, 被規制者の財産権と「公益」的規制という二面的な関係が視野の中心に置かれている. これに対して都市計画を「当該地域の空間形成に関する権限と利害についての, 地権者相互, あるいは地権者と非地権者住民との間における, 調整・分配ルール」とみなす立場からは, 被規制地権者以外の当該空間に対するステークホルダーの利害をどのように法的に構成し, 実体法的・訴訟法的にどのような位置づけを与えるかが, 理論的課題となってくる. 本稿は, 上のような問題意識を念頭に置きつつ, 行政事件訴訟法10条1項の主張制限「自己の法律上の利益に関係のない違法」に関する解釈論を分析したものである. 同条については, 行政処分の名宛人と第三者とを区別し, 前者は公益に関わる要件も主張できるが, 後者は個別的利益を保護し原告適格の基礎となる根拠規定違反に限り主張できるとする立場が裁判例上有力である. 他方, 近時の学説は, 名宛人-第三者のかかる二元論を相対化し, 第三者に対しても, 「公益上の理由による受忍」という構成をとることが可能な場合があることを指摘する. 都市空間に関わるステークホルダーの立場を法的に構成していく上で, この発想は有益である.