著者
縄田 健悟 大賀 哲 藤村 まこと
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.si5-4, (Released:2023-03-14)
参考文献数
21

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関しては多くの陰謀論が存在する。COVID-19の陰謀論を信奉することで,感染リスクを軽視する認知を高め,個人としても感染リスク行動を取るようになるとともに,政府による感染防止政策を支持しなくなることが予測される。欧米ではこうした社会心理過程が指摘されており,本研究では日本でも同様の過程が見られるかを検討していく。研究1では,2021年1月に質問票調査を実施し,構造方程式モデリングによる分析を行った。その結果,仮説どおりに「COVID-19に関する陰謀論を信奉している人ほど,感染リスク軽視を通じて,個人として感染リスク行動を行うとともに,政府が感染対策政策を行うことを支持しない」と仮定したモデルの妥当性が確認された。次に研究2では,研究1の調査回答者に対して,2022年1月に縦断調査を実施した。その結果,SEMにより影響過程モデルが同様であることを確認した。また,縦断データに対する同時効果モデル及び交差遅延モデルの分析結果から仮説の因果は妥当性が高いことが示された。以上の結果は,COVID-19の陰謀論を信奉することが,COVID-19のリスク軽視をもたらし,個人や政府の感染症対策を阻害する影響がある可能性を示唆している。
著者
縄田 健悟 大賀 哲 藤村 まこと
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.182-194, 2023 (Released:2023-04-27)
参考文献数
21

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関しては多くの陰謀論が存在する。COVID-19の陰謀論を信奉することで,感染リスクを軽視する認知を高め,個人としても感染リスク行動を取るようになるとともに,政府による感染防止政策を支持しなくなることが予測される。欧米ではこうした社会心理過程が指摘されており,本研究では日本でも同様の過程が見られるかを検討していく。研究1では,2021年1月に質問票調査を実施し,構造方程式モデリングによる分析を行った。その結果,仮説どおりに「COVID-19に関する陰謀論を信奉している人ほど,感染リスク軽視を通じて,個人として感染リスク行動を行うとともに,政府が感染対策政策を行うことを支持しない」と仮定したモデルの妥当性が確認された。次に研究2では,研究1の調査回答者に対して,2022年1月に縦断調査を実施した。その結果,SEMにより影響過程モデルが同様であることを確認した。また,縦断データに対する同時効果モデル及び交差遅延モデルの分析結果から仮説の因果は妥当性が高いことが示された。以上の結果は,COVID-19の陰謀論を信奉することが,COVID-19のリスク軽視をもたらし,個人や政府の感染症対策を阻害する影響がある可能性を示唆している。
著者
大賀 哲
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社会科学研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.37-55, 2006

本稿の趣旨は,実証主義とポスト実証主義の認識論的差異,国際関係論における理論と歴史の方法論的な差異を踏まえながら,国際関係論における歴史社会学の用法を考察していくことにある.歴史社会学の用法や,理論と歴史の差異,言説分析の可能性とその限界等は既に社会学で広範に議論されているが,国際関係論において,歴史社会学のもつ可能性についての研究は少なく,未だ十分に議論されていないというのが現状である.本稿の意図するところはまさに国際関係論における歴史社会学の展開を掘り下げ,その研究上の可能性を考察する事にある.具体的には二つの歴史社会学(ウェーバー型とフーコー型)を比較検討し,とりわけフーコー型の歴史社会学にどのような特徴・妥当性があるのかを吟味していく.換言すれば,歴史社会学における先進的な研究動向を取り入れ,ポスト構造主義の概念を援用して歴史・思想要因を考察する.そして,ポスト国際関係史(或いはポスト国際関係論)を再構成した場合にそこにどのような可能性があるのかを検証する.
著者
大賀 哲
出版者
日本メディア学会
雑誌
メディア研究 (ISSN:27581047)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.3-20, 2023-07-31 (Released:2023-10-24)
参考文献数
25

This article addresses three critical strategies in tackling the intricate challenges presented by hybrid warfare: fostering international cooperation, leveraging media engagement, and granting access to specialized expertise. When considering international cooperation, it’s imperative to underline the centrality of political decision-making and trust. Engaging in a shared exchange of information and strategic planning on an international level can bolster transparency and fortify trust among nations. Moreover, this cooperation could foster the development of universal standards and guidelines aimed at curbing the spread of disinformation. In turn, these guidelines would provide a roadmap for media outlets to ensure accurate reporting. The symbiosis between the media and expert knowledge forms another significant aspect of this approach. Media organizations should forge solid partnerships with professionals and experts harboring specialized knowledge. This collaboration can enhance the identification and verification of disinformation, ultimately resulting in more accurate reporting. Furthermore, working in conjunction with experts can boost the media’s credibility, promote media literacy, and augment their capacity to evaluate information objectively. In creating a comprehensive strategy to counter hybrid warfare, the integration of these three methods - international cooperation, media engagement, and access to expertise - becomes vital. In conclusion, to effectively address the multifaceted challenges posed by hybrid warfare, we need robust cooperation among governments, educational institutions, media organizations, and various stakeholders. Sound political decision-making and trust form the bedrock of this collaborative effort. Media organizations must prioritize transparency and accuracy in their reporting and actively engage with experts to validate the information. Furthermore, societal enhancement of media literacy and information evaluation skills are crucial. The diligent implementation of these measures can significantly mitigate the impact of hybrid warfare, paving the way for an informed and resilient society.
著者
大賀 哲 佐古田 彰 大井 由紀 中藤 哲也 上田 純子 松井 仁 清野 聡子 内田 交謹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-07-19

研究期間の2年目にあたる今年度は、所定の役割分担に基づいて研究代表者・分担者・連携研究者間で相互調整および個別の研究を進めた。全体を制度分析・人権規範・経営規範・環境規範・データ分析の5グループに分け、大賀が制度分析、松井・大井・吾郷が人権規範、内田・上田が経営規範、佐古田・清野・渡邉が環境規範、中藤がデータ分析を担当した。研究メンバー間での勉強会を5回(6月・9月・12月・2月・3月)、外部の研究者を招聘しての公開研究会を2回(10月・2月)行った。勉強会では大賀・内田・佐古田・渡邉・松井・上田・中藤がそれぞれ研究報告を行った。公開研究会では石井梨紗子准教授(神奈川大学)、畠田公明教授(福岡大学)を招聘し、また連携研究者の吾郷も研究報告を行った。勉強会、公開研究会では、研究分担者・連携研究者とともに報告内容を討議した。「企業の社会的責任」・国連グローバル・コンパクトの研究動向への理解を深める上で非常に有意義な機会となった。来年度以降は個別の研究を進めるとともに、研究成果の発信と各グループの研究成果の比較を行っていく予定である。
著者
大賀 哲
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.127-152, 2003-03-31

本稿は日本外交とアイデンティティの関係をディスコース分析(Discourse Analysis)を基軸に分析し,外交上のアイデンティティが「アジア太平洋」から「東アジア」へと,どのように変容してきたのかを考察したものである.リアリズム・コンストラクティヴィズムといった国際政治学における既存のフレームワークは「利益」および「規範」といった分析変数を用いて外交分析を行うが,本稿はこうした既存のフレームワークからでは見えにくかったアイデンティティの問題をディスコース分析によって日本外交という枠組みの中で再検討しようという試みである.主に吉田茂・岸信介・福田赳夫・中曽根康弘・90年代の「開かれた地域主義」・アジア通貨危機以降のアジア地域主義といった外交言説に着目し,「アジア」が日本外交の中でどのように定義され,「アジア太平洋」という帰属意識がどのように「東アジア」へと変遷してきたのかを分析した.これは,外交をアイデンティティの構築作業として捉えることであり,ディスコース分析が既存の理論的フレームワークの欠点を補完する,若しくは代替的な枠組みとして一定の役割を担いうるのではないかと考えられる.
著者
西谷 真規子 庄司 真理子 杉田 米行 宮脇 昇 高橋 良輔 足立 研幾 大賀 哲
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008-04-08

本研究では、国際規範の発展における規範間の競合または複合のプロセスを明らかにすることを目的とした。グローバル、リージョナル、ナショナルの各レベルにおいて、①規範的アイディアの競合や複合が、どのような制度変化をもたらすか、②多様な行為主体(国家、国際機構、市民社会、企業等)が競合または複合の過程にどのように関っているか、または、競合や複合から生じる問題をどのように調整しているか、の二点を中心的な問いとして、事例分析を行った。成果は、国際・国内学会発表や論文発表を通じて逐次公開した。最終的には、編著『国際規範の複合的発展ダイナミクス(仮題)』(ミネルヴァ書房)として近刊予定である。
著者
大賀 哲
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3/4, pp.37-55, 2006-03-28 (Released:2008-09-19)

本稿の趣旨は,実証主義とポスト実証主義の認識論的差異,国際関係論における理論と歴史の方法論的な差異を踏まえながら,国際関係論における歴史社会学の用法を考察していくことにある.歴史社会学の用法や,理論と歴史の差異,言説分析の可能性とその限界等は既に社会学で広範に議論されているが,国際関係論において,歴史社会学のもつ可能性についての研究は少なく,未だ十分に議論されていないというのが現状である.本稿の意図するところはまさに国際関係論における歴史社会学の展開を掘り下げ,その研究上の可能性を考察する事にある.具体的には二つの歴史社会学(ウェーバー型とフーコー型)を比較検討し,とりわけフーコー型の歴史社会学にどのような特徴・妥当性があるのかを吟味していく.換言すれば,歴史社会学における先進的な研究動向を取り入れ,ポスト構造主義の概念を援用して歴史・思想要因を考察する.そして,ポスト国際関係史(或いはポスト国際関係論)を再構成した場合にそこにどのような可能性があるのかを検証する. The aim of this paper is, through considering an epistemological difference between positivism and post-positivism, and a methodological difference between theory and history within the study of international relations, to examine uses of historical sociologies in international relations. While issues like an application of historical sociology, a difference between theory and history, and potentials and limits of discourse analysis, have been already and widely discussed in sociology, there are, in the discipline of international relations, few works that examine an effectiveness of historical sociology and the discussion has been still insufficient. Therefore, this paper tries to explore the positive potentials of historical sociology by widely investigating the development of historical sociology in international relations. The contention of this paper compares Weberian and Foucauldian versions of historical sociology and uncovers features and potentials of the latter. In other words, this paper harmonizes post-structuralism and the well-developed researches of historical sociology in order to examine historical and ideological factors. And this paper finally constructs post-international relations (history), as a unification of post-structuralism and historical sociology, and evaluates its potentials.
著者
松浦 正孝 山室 信一 浜 由樹子 土屋 光芳 中島 岳志 高橋 正樹 宮城 大蔵 WOLFF David 大庭 三枝 吉澤 誠一郎 姜 東局 大賀 哲 酒井 哲哉 後藤 乾一 都丸 潤子 関根 政美 矢口 祐人 高原 明生 遠藤 乾 松本 佐保
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、アジア各地における多様なアジア主義のビジョンと構造を解明し相互比較すると共に、アジア主義ネットワークの生成過程を解明した。方法としては、国内外から選ばれた各地域の専門研究者と各事例を議論することで、アジア主義に共通の構造と地域それぞれに固有の特徴とを明らかにした。そうすることで、各地域におけるアジア主義を相対化して民族中心的なバイアスから解放し、アジアにおける共同体の可能性と条件、各民族・国家の共生の可能性を探ろうとした。
著者
大賀 哲
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3/4, pp.37-55, 2006-03-28

本稿の趣旨は,実証主義とポスト実証主義の認識論的差異,国際関係論における理論と歴史の方法論的な差異を踏まえながら,国際関係論における歴史社会学の用法を考察していくことにある.歴史社会学の用法や,理論と歴史の差異,言説分析の可能性とその限界等は既に社会学で広範に議論されているが,国際関係論において,歴史社会学のもつ可能性についての研究は少なく,未だ十分に議論されていないというのが現状である.本稿の意図するところはまさに国際関係論における歴史社会学の展開を掘り下げ,その研究上の可能性を考察する事にある.具体的には二つの歴史社会学(ウェーバー型とフーコー型)を比較検討し,とりわけフーコー型の歴史社会学にどのような特徴・妥当性があるのかを吟味していく.換言すれば,歴史社会学における先進的な研究動向を取り入れ,ポスト構造主義の概念を援用して歴史・思想要因を考察する.そして,ポスト国際関係史(或いはポスト国際関係論)を再構成した場合にそこにどのような可能性があるのかを検証する.