著者
Sucharit Supat Tumrasvin Watanasak
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.334-336, 1981
被引用文献数
4

バンコクにおけるイエバエとオビキンバエの日周活動を, 2時間おきに24時間, ハエトラップを設置して調査した。その結果, イエバエは明らかな昼間活動性を示し, 12時から14時の時間帯に山がみられ, オビキンバエでは昼間活動性ではあるが, イエバエよりかなり遅れ, 16時から18時の時間帯に山がみられた。
著者
斉藤 一三 林 滋生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.180-183, 1966

1)1963年12月から1964年4月まで東京都品川区五反田でチカイエカ成虫のAge構成の変動を観察した.発生場所はビル地下の閉鎖空間で, 水温13〜16℃, 気温15〜20℃であつた.2)観察は1〜2週間に1度行い, 採集は吸虫管で行い, 採集した蚊は実験室に持ち帰えりAgeの判定に供した.Ageの判定はDetinovaの方法に従い, 小卵巣のRelicの観察によつた.3)チカイエカのAge構成の変動には周期性がみられその周期は6週間であつた.4)交尾率と経産蚊率間には密接な関連がみられ, 交尾率が上昇すると経産蚊率も上昇し, 反対に交尾率が低下すると経産蚊率にも低下がみられた.5)経産蚊は大部分1回産卵で, 2回産卵が極めて少数, 3回以上は0であつた.6)1回産卵後は濾胞の発育が悪く吸血源のないところでは, 大部分が1回産卵のみで終るものと考えられた.
著者
中村 央 吉田 政弘 木村 明生 弓指 孝博 木村 朝昭 上羽 昇 國田 信治
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.275-286, 1999
被引用文献数
1 1

1968∿1997年に畜舎, 主として豚舎で蚊を採集し, コガタアカイエカの発生状況を調べると共に蚊から日脳ウイルスの分離を試みた。その成績に基づき, 環境条件と蚊の発生量及び蚊の日脳ウイルス感染状況との関連性を検討した。その結果, 以下のことが明らかになった。1)水田地帯に2ケ所以上の豚舎がある程度離れて位置しており, 多数の豚が飼育されているような環境条件下では, 毎年, コガタアカイエカの発生量が多く, しばしば, 早い時期に日脳ウイルスの検出が始まり, 感染率も高い傾向が認められた。2)周囲に広く水田が残っていても, 豚舎が1ケ所のみの場合は, 蚊の発生量は1)より少なく, 日脳ウイルスの感染環は必ずしも毎年成立せず, 感染率も低い傾向が認められた。3) 1), 2)と近年における水田面積や家畜飼育農家戸数の激減とを考え併せると, 近年の日脳低流行の一因として, 環境条件の変化, 特に, 1)のような地域の消失, をも考慮すべきであると考えられた。また, なぜ, 1)と2)のような違いが生じるかについて論議した。
著者
小野 泱
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.263-271, 1977
被引用文献数
2

1974∿1976年の4∿11月に帯広市周辺の諸河川でブユの採集を行い, Simulium arakawaeヒメアシマダラブユに極めて類似したブユの多数の卵, 幼虫, 蛹を得た。これらを室内で飼育し成虫を羽化させた結果arakawaeと別種であると認められたので, これを記載しさらに両種の相異について比較図示した。本種とarakawaeとは雌雄のgenitalia構造に差があり, 特に雄のventral plateのventral process, dorsal processesの形態の差は著しく, 脚の形態, 色彩にも差が認められる。幼虫の頭部額板の斑紋はtobetsuensisではH字型, arakawaeでは亀甲斑型となっている。本種はS. aemulum, S. janzeni, S. venustum (s. str.)にもかなり類似し, S. rubtzovi, S. longipapleにも類似している。しかしaemulum, janzeni, venustumとは雄の交尾器のventral plateの形態, 幼虫の肛鰓の形態などにより区別でき, rubtzovi, logipalpeとは蛹の呼吸糸が8本であることで容易に区別できる。本種は北海道東部(十勝, 釧路), 南千島(国後島)に産し, 年2化と考えられるがその吸血習性は不明である。
著者
大串 晃治 徳満 巌
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.219-222, 1970
被引用文献数
1

抗凝血性殺そ剤ワルファリンのドブネズミに対する致死薬量, 摂食性, 致死所要日数について検討した.ワルファリンの5日間連続摂食による累積致死薬量は, 生体重当り3.13〜8.00mg/kgであつた.ワルファリンの1日摂食による致死薬量は264mg/kgであつた.ワルファリン0.03%および0.1%毒餌の摂食性は無毒餌のそれと変らず, これらの濃度では摂食忌避性はなかつた.ワルファリン固型毒餌は, 1%以上のワルファリン濃度では摂食忌避性は強くなるものとみられた.ワルファリンによる致死所要日数は, 摂取薬量および摂食日数と関係なく3〜8日の範囲であつた.
著者
岩佐 光啓
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.177-206, 1983
被引用文献数
7

日本, 東南アジア, ニューギニア, アフリカなどから採集された25科63属111種の衛生上重要な双翅目・環縫群のハエ類の口器, とくに唇弁部を中心に比較形態学研究を行い, それらの類縁性を調べ, あわせて環縫群における前口歯の発達と起源についても考察した。イエバエ属(Musca)の口器の走査電子顕微鏡と水酸化カリウム処理による光学顕微鏡の両方の観察により, prestomal teethとdiscal scleriteの外見的・表面的特徴と内容・硬化状態などを明らかにし, これらの特徴に従い, 口器を三つの型に分類した。これらの各群の間には中間移行型が見いだされ, prestomal teethとdiscal scleriteが唇弁部の縮小・尖鋭化を伴い, 未発達なものから発達したものへの徐々の段階的な変化を示す様子が観察され, それに基づいてイエバエ属の口器の進化の過程を考察した。また有弁類においてprestomal teethが発達・硬化した種は捕食性か血液嗜好性に限られ, イエバエ科, クロバエ科, ニクバエ科のハエは食性に関係なく基本的にprestomal teethを有していることが観察された。しかし, ヤドリバエ科とハナバエ科の一部ではprestomal teethは痕跡的かまたは存在せず, さらに無額嚢群と無弁類ではprestomal teethはノミバエの一部に見いだされただけで他はほとんど存在しないことがわかった。これらの事実と環縫群の系統から考えると, 衛生上重要な有弁類ハエ類にみられる発達したprestomal teethはハナバエ科の祖先型に起源をもつものと考えられる。