著者
篠永 哲 加納 六郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.57-63, 1973
被引用文献数
1

日本産ミドリハナバエ属については, 加納・篠永(1967), 篠永・加納(1971)が成虫5種を記載しているほか, 篠永ら(1972)がキタミドリハナバエO. caesarionを北海道から日本新記録種として報告している。わが国では, 本属の幼虫はすべて牛その他の大形草食獣糞より発生するが, とくに放牧場の牛糞からの発生が多い。しかし, 沖繩の石垣, 西表島などでは, 水牛糞がおもな発生源である。本属の幼虫の形態については, 日本では石島(1967がミドリハナバエO. coeruleaの3令幼虫を記録しているのみである。著者らは, 野外で採集した雌成虫を新鮮な牛糞と砂糖水を与えて飼育し, 産卵させて3令幼虫をえた。図と記載のごとく, ミドリハナバエ属の幼虫は腹部第12節に特徴があり, そのうちでもanal plateとanal, subanal, postanal, extra-anal papillaeなどの有無, 形態とその組合せなどは種の特徴として重要でありこれらによって種の同定も可能である。
著者
桐木 雅史 一杉 正仁 千種 雄一 黒須 明 徳留 省悟
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.115-119, 2010-06-15 (Released:2011-01-07)
参考文献数
28
被引用文献数
3 5

某年12月下旬に栃木県中部の山林内で白骨化した遺体が発見された.法医解剖において,右大腿骨の大腿骨頭内から数十匹の虫体を検出した.採取した虫体は活発に動き,しばしば跳躍した.本虫はチーズバエ科(Diptera: Piophilidae)の3齢幼虫と同定された.本科は広く世界に分布し,日本には5種が報告されている.幼虫は動物の腐肉などの動物性蛋白質を好む種が多く,動物の死骸や骨に発生することが観察されている.本虫の骨内への侵入経路としては脈管孔が考えられる.孔径1 mm以上の脈管孔も多数あり,本科の幼虫のみならず,微小な生物であれば容易に侵入できると考えられる.遺体から検出される生物を解析することで死後時間の推定などの有用な情報が得られることがある.本事例から,体表や軟部組織のみならず,骨の内部も法医昆虫学的な検索の対象となり得ることが示唆された.
著者
倉橋 弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.231-232, 1998
参考文献数
2
被引用文献数
1

Copenhagen大学動物博物館所蔵のマレーシア産クロバエの標本を調べる機会を得た。同定の結果マレーシアからは未記録であるニセミヤマキンバエLucilia bazini Seguy, 1934の1♂を見出したので新記録として発表する。なお, 本新記録種を含めたマレーシア産全7種の改訂された検索表を付した。
著者
渡辺 護 荒川 良 品川 保弘 岡沢 孝雄
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.311-317, 1994-12-15 (Released:2016-08-23)
被引用文献数
8 18

From 1988 to 1993,we studied anti-invading methods against the brown marmorated stink bug, Halyomorpha mista, in houses at several locations in Toyama Prefecture, Japan, where a great number of the bugs in overwintering flight has been observed every year. The "slit-trap" was proved to be effective as an attractant for the bugs. When several traps were set around a building, the number of invading bugs into the building apparently decreased. The application of concentrated cyphenothrin and the laying of a cyphenothrin-treated polyethylene sheet to window-frames were also effective to prevent the invasion of the bugs. These preventive measures were almost 100% effective in reinforced concrete buildings such as modern hotels, whereas the number of invading bugs to wooden houses only slightly decreased. Covering wooden houses with cyphenothrin-treated nets was effective to prevent the invasion of the bugs. The application of repellent (Deet) to window-frames was also effective.
著者
森下 哲夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.241-242, 1957

今年の日本衛生動物学会総会に於て予研石崎氏の毒蛾皮膚炎アレルギー説とそれにつれて逢坂氏の毒蛾毒針中の毒物に関する知見が我々の所説と著しく異なつて居るとして報告された.その後予研の前記の二氏及び水野氏との間に数回の文書の往復によつて我々の意見と食いちがつた諸点があるのでこゝに一文を草した次第である.
著者
矢部 辰男 林 晴男
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.179-184, 1993-09-15 (Released:2016-08-23)
被引用文献数
1 1

神奈川県西部地域の, 県境より東へ約34km内に設けた19調査地点の草やぶ(主にススキを優占種とする放置された草原)で, 全捕獲小哺乳類の88%に当たる239個体のアカネズミ(Apodemus speciosus)が採集された。県境より25km内の13調査地点では, これらの哺乳類と土壌から815個体のタテツツガムシ(Leptotrombidim scutellare)が採集された。草やぶは, タテツツガムシとその主要宿主であるアカネズミの格好の生息環境と推定される。しかし, 1950年代の調査では, この地域でタテツツガムシがまったく見いだされていない。本病発生地域内に6(km)^2の区画4カ所を設け, 空中写真を用いて1964,1973,1980,1985年の草やぶ面積を推定した。4区画の総草やぶ面積は, 1964・1973に約0.6(km)^2であったが, その後に増えて1985年には1.5(km)^2に達した。農林水産省の統計によれば, 山北町と南足柄市で耕作放棄された農地面積は, 1975年に0.14(km)^2で, 1985年には0.64(km)^2に達した。耕作放棄面積の増加は草やぶ拡大の一因と思われる。ツツガムシ病患者は県西部の山北町と南足柄市を中心に, 1970年代前半より増えたと見られるが, その増加の一因は, 草やぶの拡大に伴うタテツツガムシの分布拡大にあると推定される。
著者
Satoshi Shinonaga Motoki Sagara
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.17-27, 2016-03-25 (Released:2016-09-25)
参考文献数
10

Six new species from Japan belonging to the genus Xenotachina are described and illustrated. The new species include the followings: Xenotachina longicornis n. sp., X. albicorpus n. sp., X. surugaensis n. sp., X. awaensis n. sp., X. nigrithorax n. sp. and X. montana n. sp.
著者
早川 博文 高橋 弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.289-293, 1983-12-15 (Released:2016-09-02)

吐[カ]喇列島の宝島および中之島から採集された雌雄成虫標本に基づいて, 新種A. takaraensis n. sp.タカラキイロアブを記載した。本種はA. kakeromaensis Hayakawa, Takahasi and Suzukiカケロマキイロアブに酷似しているが, 腹背面の斑紋が全くないことと, 翅脈R_4の小枝がきわめて短いかまたはそれを欠いていることにより, 容易に区別される。日本産キイロアブ属11種の検索表を掲げた。
著者
浜田 篤郎 渡辺 直煕 山崎 洋次 吉葉 繁雄 小林 昭夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.279-280, 1990-09-15 (Released:2016-08-26)
被引用文献数
3 3

A 57-year-old woman experienced pain from foreign bodies in her oral cavity after eating raw squid. Examination of her oral cavity revealed 20-30 small foreign bodies embedded in the mucous membrane. After all the foreign bodies were pulled out, the pain was allayed and the wounds eventually healed. The foreign bodies, 5mm in length, were white and of elongated conical shape. Under microscopy, a large number of sperms was observed in the bodies. These foreign bodies were determined to be sperm-bags of the squid. It is supposed that this woman ate squid with spermatophores, thereafter sperm-bags were discharged from the spermatophores into her oral cavity. Although only a few similar cases heretofore have been found, it might increase among the Japanese who frequently eat raw squid.
著者
二瓶 直子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.69-77, 2016-06-25 (Released:2017-05-26)
参考文献数
95

The distribution of medically important arthropods and related diseases is changing on a global scale due to issues involving natural environments, socioeconomic conditions and border disputes, etc. Geographic information systems (GIS) provide an important method for establishing a prompt and precise understanding of the local data of these outbreak, from which the disease eradication programs can be built. Having first defined GIS as a combination of GPS, RS and GIS, we detailed the history of development of each technology and showed the processes through which these technologies were being introduced into our research. We examined past reports published in this journal from the perspective of geographical information and found that GIS is essential in medical and zoological research. GIS derived geographical information attributes were interpreted in terms of point, line, area, spatial epidemiology, risk and development into infestation models. As a case study, we showed the progress of our research on Aedes albopictus, the vector mosquito for dengue fever, chikungunya fever and other various communicable diseases, whose infestation and establishment in new environment due to global warming is currently being closely monitored worldwide. The need for inter-disciplinary collaboration on the issues and perspective for future GIS utilization should be advocated.
著者
早川 博文 高橋 弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.389-392, 1977

福岡と大分の県境に位置する英彦山で, 1948年, 宮本正一教授によって採集された標本について, 新種Haematopota hikosanensisヒコサンゴマフアブを記載した。本種はH. toyamaensis Watanabe, Kamimura and Takahasiに酷似するが, 明瞭な額の中央斑およびほぼ円形の側斑, 背縁が真直ぐな触角基節, 小楯板上の灰色斑, および腹部背面の各節は縁帯を欠き, 全体が暗褐色であることにより, 容易に区別される。
著者
金子 清俊 天野 甲子穂 窪田 公子 細川 彰
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.248-252, 1968-12-31 (Released:2016-09-05)
被引用文献数
1

某産婦人科医院で分娩した新生児の耳から計8匹のクサニクバエ幼虫を得た.この耳蝿症の報告は1945年以来, 本邦での初めての記録である.1)患者が生後1日目の新生児で, 記録としては最年少者である点注目に価する.2)クサニクバエParasarcophaga harpaxを原因とする蝿症は世界で最初である.3)蝿幼虫の侵入経路としては, 新生児の外耳道にあつた凝血または羊水に誘引されたクサニクバエが幼虫を産出したものと想像する.
著者
高岡 宏行 鈴木 博
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.7-45, 1984
被引用文献数
19 58

著者の一人鈴木が1978・1979年にタイ北部で採集したブユの標本を分類学的に検討した。その結果, 従来の既知3種のほかに, 7新種, 5新記録種を含む19種のブユが分布していることがわかった。これらはすべてブユ属(Simulium)に属し, さらに, 亜属段階では, ツノマュブユ亜属(Eusimulium)に3種, ナンヨウブユ亜属(Gomphostilbia)に3種, ヒマラヤブユ(新和名)亜属(Himalayum)に1種, さらにアシマダラブユ亜属(Simulium)に12種が分類された。既知3種のうちマレー半島を模式産地とするS. hackeri Edwardsは, タイ国での分布の根拠となっていた副模式標本(雌成虫, 英国国立自然博物館所蔵)が模式産地の標本と異なることから, 分布種から除かれた。同時に当該のタイ国産副模式標本に基づいて, 新種(S. barnesi)を記載した。また, インドのアッサム州より記載されたS. indicum Becherの同物異名とされていたS. nigrogilvum Summersは, 雌雄成虫, 蛹, および幼虫の各発育期で形態的差異が見出されたので, 有効種として復活した。
著者
TOMA Takako MIYAGI Ichiro OKAZAWA Takao HIGA Yukiko LEH Moi Ung
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.281-308, 2010
被引用文献数
1

マレーシア・サラワク州のクチン周辺の海岸地帯には大小の椰子園があり,園内には緑色(未成熟)の椰子の実が落下している.落下した果実の多くは地上でネズミやツパイにより穿孔され,果実内には腐敗した水が溜まる.これらの水溜りには多数のクロヤブカ亜属(<i>Armigeres</i>)の幼虫が発生している.<br>これらの果実内から多数の幼虫を採集し,室内で個別飼育により,幼虫・蛹の脱皮殻・羽化成虫からなる一連の標本約200個体を入手した.標本を雄の生殖器の形態的特徴により比較検討し同定した結果,クロヤブカ亜属の蚊5種, <i>Ar. confusus</i>, <i>Ar. jugraensis</i>, <i>Ar. moultoni</i>, <i>Ar. malayi</i>, <i>Ar. setifer</i> が混生していることが明らかになった.これら5種の内,前3種の成虫は1900年初頭に英国の研究者により新種として記載されたが,原記載は不完全で,幼虫,蛹はこれまでに全く記載されていない.本論文でこれら3種の全ステージ(卵を除く)を詳細に記載した.また,椰子園に生息する5種の,成虫,雄生殖器,蛹,幼虫の形態を比較し,同定のための検索表を作成した.
著者
Monroy Carlota Rodas Antonieta Mejia Mildred 田原 雄一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.187-193, 1998
被引用文献数
2 13

チャガス病媒介者であるサシガメ(Triatomadimidiata & T. nitida)が生息する土壁の割れ目やすき間をセメントや石灰で埋めることで, 彼等の生息数を減らす事を試みた。双方(セメント及び石灰)の塗装を行った場合, 翌年は平均92%も生息数が減少した。石灰だけでは34%の減少に止まった。また, 部分的な改善(塗装)では53%の減少であった。他方, 何も施さない場合の生息数には変化がなかった。しかしながら, Tripanosoma cruziの保有率には変化がなかった。また, 研究室内の試験で壁材の塗装はサシガメの寿命に変化を及ぼさなかった。

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出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.57, 2004-03-15 (Released:2016-08-07)
被引用文献数
1