著者
樋口 敬二
出版者
日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.503-505, 2004-07-15
被引用文献数
1
著者
松沢 勝 石本 敬志 前野 紀一
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.19-28, 1996-01-15
被引用文献数
3 1

スパイクタイヤ使用禁止以降,社会問題となっている凍結路面の形成過程を明らかにするために,降雪のあった日の夕方から,翌朝にかけて路面の調査を行った.本調査では,気象観測や交通量観測に加え,道路雪氷試料を採取し,偏光顕微鏡による薄片観察を行った.その結果,圧雪の表面に厚さ0.2~4mm程度の氷膜(氷板)が形成されることが明らかになった.同時に行った気象観測の結果より,この氷膜は,車両の影響で融けた水分が再凍結することによって生じることがわかった.さらに,このような氷膜の形成の有無は,時間交通量(無降雪時は,降雪が止んだ後の積算交通量)と時間降水量の関係によって,決定されることが明らかになった.また,自動車のスリップ時に発生する摩擦熱に加え,排気口からの暖められた排出物も道路雪氷の融解・再凍結を促進することがわかった.
著者
石坂 雅昭
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.23-34, 1995-03-15
被引用文献数
8 3

日本の積雪地帯のうち,メッシュ気候値が整備されている地域を,その地域の積雪の堆積環境から推定される雪質を考慮して,「湿り雪地域」,「乾き雪地域」,および「しもざらめ地域」の三つに分けた.ただし,湿り雪地域と乾き雪地域の境界は,さほど明瞭ではないので,その中間的な遷移領域として「中間地域」を設けた.湿り雪地域では,厳冬期にも融雪や降雨による積雪表層からの水の浸透によって,積雪の全層が水を帯び,雪温は一冬季をとおしてほぼ0℃で経過し,温暖変態が支配的である.一方,これより気候的に寒い地域でしもざらめ雪地域でない積雪地域を乾き雪地域とした.すなわち乾き雪地域では,厳冬期には雪温が0℃以下に保たれることが多く,寒冷変態が卓越する.しもざらめ雪地域では,寒冷な上に積雪が少ないので,積雪層内の温度勾配が大きく,しもざらめ雪が発達する.湿り雪地域と乾き雪地域は気温によって,またしもざらめ雪地域は,気温と積雪量によって決まると考えた.前者は筆者らが行った中部地方の積雪調査にもとづき,1月の平均気温の気候値から推定した.すなわち,1月の平均気温が0.3℃以上の気候値をもつ地域が湿り雪地域に,-1.1℃以下が乾き雪地域に分類され,その間の気温帯は中間地域となった.また,後者は秋田谷・遠藤(1982)の判別式の変数に気候値から推定したものを代入して求めた.
著者
高志 勤 生頼 孝博 山本 英夫 岡本 純
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.277-287, 1979
被引用文献数
5

土を密閉系で水飽和状態で部分凍結し, 間隙水圧の変化を観測することによって凍上力の上限を推定する室内実験を行った.<BR>軸方向に一定の全圧をかけた円柱状供試体の両端を正, 負の一定温度に保った場合, 熱的には数時間でほぼ平衡に達するが, 間隙水圧の変化は2000時間以上継続する場合もあり, 平衡に達するには長時間を要することがわかった.更に, 凍土内部で冷却面に接してアイスレンズが発達しつづけていた.このことは, 凍土内部では凍結面からアイスレンズ成長面まで不凍水が連続していて, 不凍水が凍土中をアイスレンズに向って吸い寄せられ, そのために間隙水圧が降下したことを示している.平衡に達したとき, 土は間隙水圧と全圧から計算される有効応力状態に抗してもはや水分を吸い寄せ得なくなったと解釈し, このときの応力をその凍結条件における上限凍上力σ<SUB>u</SUB>と定義した.得られた上限凍上力σ<SUB>u</SUB>は冷却面温度θ<SUB>c</SUB>に依存し<BR>σ<SUB>u</SUB>=-11.1θ<SUB>c</SUB> [kg/cm<SUP>2</SUP>] <BR>なる実験式を得た.これは方法は異なるがRadd and Oertle (1973) の実験結果と一致する. 更に, この実験式は, 凍土内部の氷層消長面における熱力学関係から, 氷と水の圧力が異なって変化する場合の氷の融点に関する拡張したClausius-Clapeyronの式と一致することがわかった.
著者
杉江 伸祐 成瀬 廉二
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.117-127, 2000-03-15
被引用文献数
2 4

積雪中の水の移動を知る上でもっとも重要なパラメータである不飽和透水係数を, しまり雪 (平均粒径0.5mm, 平均密度530kg/m<SUP>3</SUP>) および中ざらめ雪 (1.3mm, 620kg/m<SUP>3</SUP>) と大ざらめ雪 (1.7mm, 610kg/m<SUP>3</SUP>) の3種類の雪について実験室で測定した.実験は, 0℃の恒温槽内にて, 水の流下フラックスを一定にする「フラックス制御型定常法」によって行った.積雪中の水の負圧 (サクション : <I>h</I>) と流下フラックスから, 不飽和透水係数<I>K</I>とサクション<I>h</I>の関係<I>K</I> (<I>h</I>) を求めた.次に水分特性 (サクションと含水率の関係) の測定結果を用い, 不飽和透水係数と重量含水率θ<I><SUB>w</SUB></I>の関係<I>K</I> (θ<I><SUB>w</SUB></I>) に変換した.その結果, 不飽和透水係数Kは, 含水率の減少にともないべき乗の関係で減少することが分かった.これを<I>K</I>=<I>a</I>θ<SUP><I>m</I></SUP>で表わすと, 減少率を表わす<I>m</I>は雪質の違いによって大きな差があり, しまり雪 : 1.9, 中ざらめ雪 : 4.8, 大ざらめ雪 : 6.3となった.従来の研究では, べき乗数を一義的に3とすることがあるが, 雪質によって使い分けなくてはならない.また不飽和透水係数は, 高い含水率の時, ざらめ雪>しまり雪, 低い含水率の時, ざらめ雪<しまり雪の関係が得られた.このことは, ざらめ雪としまり雪で層を形成している時, 含水率によっては浸透を阻害する層構造があることが示唆された.
著者
三橋 博巳
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.287-295, 2003-05-15
被引用文献数
9 10

近年,雪国では大スパンの建物や超高層建築物などが増えており,建物の屋根上雪荷重や吹きだまりによる積雪の評価が設計上重要である.そこで模型雪を用いた風洞実験(吹雪風洞実験)が,その性状や評価を行なう手段として用いられている.ここでは,吹雪風洞実験の概要と吹雪風洞実験について実際の建物への応用例を中心に紹介する.
著者
福嶋 祐介
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.189-197, 1986
被引用文献数
9 9

粉雪雪崩の流動特性を記述するのに適切な基礎方程式を導いた.モデルは,空気の質量保存式,雪粒子の質量保存式,雪崩の運動量保存式,乱れエネルギーの収支式の四つの方程式で構成されている.雪崩全体の空気中重量は,積雪層の洗掘と堆積により自由に変化する.今回のモデルでは,雪粒子の底面からの連行率は乱れのレベルと直接的に結ばれている.<BR>基礎方程式を数値計算することにより,急激に加速する粉雪雪崩の時間変化を求めた今回のモデルは,粉雪雪崩が急速に形成され,極めて早い移動速度となる粉雪雪崩の特性を良く説明できる.今回得られた結果と既存の観測結果と比較すると,今回の結果は観測結果とほぼ一致することが分かった.
著者
村井 昭夫
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.341-351, 2005-07-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
16
被引用文献数
3

ペルチェ効果を利用して雪結晶を生成する装置を考案した.本装置は,大型のペルチェ素子を多段化し水冷方式で使用する事により,室内で-30℃程度までの低温環境を実現しながら,電圧を調節することで,結晶生成領域の温度と水温,すなわち水面から発生する水蒸気量を変化させ,簡単に雪結晶を生成することができる対流型の人工雪発生装置である.筐体に発泡スチロールを使用するなどの工夫によって,装置の製作が容易であり,同時に小型で移動もできるという利点を持つ.これは,従来の対流型や拡散型装置のように低温室など大がかりな装置や,冷媒を使用する複雑な付加装置が不要である.本論文では,この装置の基本原理およびその構成を述べ,本装置によって作られた雪結晶のいくつかを紹介する.
著者
阿部 修
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.239-245, 1996-05-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
23

積雪の内部構造に関する情報をより簡便に得るために開発された積雪用ゾンデの現況を経緯および展望を含めて紹介した.まず,積雪層構造を測定するためのこれまでの方法と新しい方法について述べ,長所や短所を指摘した.その上で複数のセンサーを組み込んだ複合ゾンデの構成,使用方法および測定結果を紹介した.さらにゾンデの性能評価や今後の展望について言及した.
著者
古川 巌
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.3-7, 1963
被引用文献数
1

The author investigated how much snow (m<SUP>3</SUP>) one man can remove in a day with a shovel.<BR>The efficiency depends upon the snow-quality and the height and distance to deposit the shovelled snow.
著者
飯塚 芳徳 五十嵐 誠 渡辺 幸一 神山 孝吉 渡辺 興亜
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.245-254, 2000-05-15
被引用文献数
1 2 1

1998年3~4月, スバールバル諸島アウストフォンナ氷帽頂上において, 多点積雪断面観測による積雪試料の採取を行なった.試料は化学分析に用いられた.<BR>各積雪断面は, 深さ0.50~0.79mを境に, 雪質の違いから上部と下部に分けられる.上部はしもざらめ雪としまり雪, 下部は氷板とざらめ雪が層を成している.下部はδ<SUP>18</SUP>O値や電気伝導度の変動が保持されていない.これらの結果は, 下部の積雪が融解を経験していることを示す.融解による化学主成分の減少過程は各イオン種ごとで異なる.Na<SUP>+</SUP>, Cl<SUP>-</SUP>に比べてMg<SUP>2+</SUP>, SO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>は流出しやすい.K<SUP>+</SUP>, Ca<SUP>2+</SUP>は融雪後も他のイオン種と相関のない鋭いピークを残している.<BR>融解を経験していない積雪のMg<SUP>2+</SUP>/Na<SUP>+</SUP>比が0.11±0.02であり海塩比 (0.12) とほぼ一致するのに対し, 融解を経験した積雪のMg<SUP>2+</SUP>/Na<SUP>+</SUP>比は0.03±0.02の値をとる.Mg<SUP>2+</SUP>/Na<SUP>+</SUP>比は氷コア中のフィルンの融解の有無を明らかにする指標になると考えられる.
著者
粉川 牧
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.365-375, 2004-05-15
被引用文献数
2

湖氷板上にアイスドームを建設する場合,湖氷板は長期のリング荷重を受ける.このとき,その力学的安全性が問題となる.そこで,この問題の理論的解明を計るために,ドーム建設中は時間に関して直線的に増加し完成後は一定となるリング荷重と線形Maxwell流体の構成式に従う氷の粘弾性モデルをそれぞれ仮定し,無限平板の弾性解に対応原理を適用して,氷板のクリープ解析法を展開した.その結果として,時間とともに変化する氷板の応力,変位を閉形級数解の形で示している.
著者
後藤 博 梶川 正弘 菊地 勝弘 猿渡 琢
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.191-198, 2006-05-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
12
被引用文献数
1

乾き新積雪(新雪)からこしまり雪に変態する過程で,圧縮粘性率と密度の関係が結晶形と雪温にどのように依存するかを調べる目的で室内実験を行った.その結果,雪温と圧力が低いほど,こしまり雪への変態に長時間を要した.また,圧縮粘性率と密度の関係は,結晶形と雪温により大きく異なることを確認した.さらに,圧縮粘性率の雪温依存の度合いは,新雪段階では卓越結晶形により異なることがわかった.
著者
柏村 良一 大月 晃
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.17-28, 1973-03-31 (Released:2010-01-20)

東京電力 (株) では, TACSR (鋼心耐熱アルミ合金より線) 410mm2×6,810mm2×4導体 (送電容量650万kW), および1,520mm2×4,810mm2×6導体 (送電容量1,000万kW) の大サイズ多導体よりなる, 50万V大容量送電線の技術開発を行なっている.そして, その一環として, 耐雪構造化の開発も行なっており, このため藤倉電線 (株) と共同で, 高石山, 野反湖着氷試験線, 石打着雪試験線, ならびに切明, 渋沢, 地蔵峠のロボット観測小屋において, 昭和44年度冬季より, 気象, 電線着氷雪の観測に着手し, 現在すでに3冬を経過し, 4冬の観測中である.3冬季の観測結果より, 着氷・着雪の傾向を掴み得たこと, 予想される着氷+風圧荷重に対し, 大容量電線の強度は十分であることなど, 耐氷雪設計上有益な資料が得られた.
著者
石坂 雅昭
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.229-238, 1995-09-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
16
被引用文献数
13

雲粒付雪片について,落下速度を初めとする落下に関する諸物理量を,可能なかぎり同時かつ直接的に測定した.雲粒付雪片は,雲粒の付着の度合いに応じて3タイプに分けた.その結果,落下速度はLangleben (1954)の提出したV=kDn(Dは雪片の融解直径)の形に書けた.また,雲粒付きの度合いが多い雪片ほど,n,k とも大きくなる傾向もこれまでの結果と同じであった.雪片の空中での落下姿勢は,逆円錐形で落ちてくるものが最も多かった.密度σは,大きさdとともに低下し,その関係は,濃密雲粒付雪片で,σ・d0.81=0.027となり,傾向は,Magono and Nakamura (1965)の結果と同じであるが,その関係式は,彼らのσ・d2=0.02 とは異なった.雪片の質量は,どのタイプの場合も,横方向から見た断面積にほぼ比例し,最大粒径とは,およそその2乗に比例する関係が得られた.また,レイノルズ数300~2500の範囲の抵抗係数を計算によって求めることができた.値は大きくばらついたが,どのタイプも,多くは0.4から1.3の間に分布し,同じ範囲のレイノルズ数における球と円柱の抵抗係数の間の値をとり,レイノルズ数の増加とともにわずかに低下する傾向が見られた.また,これらの諸量の関係からV=kDn形の式を検討した結果,kやnの値には,抵抗係数とレイノルズ数の関係や,横方向(水平方向)の大きさと融解直径の関係を反映することがわかった.そして,後者については,雲粒が多く付いているタイプの雪片では,少ないものに比べ,融解直径の増加に対する大きさの増加が小さいこと,すなわち重くなる割に水平方向の大きさの増加が小さいことが,特に融解直径の大きい領域で終速度を大きくする要因であることがわかった.
著者
石田 仁
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.489-496, 2006-09-25 (Released:2009-08-07)
参考文献数
14

積雪時の地表面温度の特性を明らかにする目的で,超音波積雪深計によって観測された積雪の有無と地表面温度(1時間インターバル)との関連について検討した.その結果,積雪時の地表面温度は,0.5±1.0℃(平均±標準偏差,最小-0.4℃,最大3.2℃)であった.地表面温度3.2℃以下,前後5時間の標準偏差が±0.22℃以下の条件を積雪下とみなした場合の積雪の有無の判定的中率は95%であった.この判別条件を用い,2003年10月上旬から2004年6月下旬までの一冬季間,富山県下の暖帯から高山帯に至る主要森林タイプ19地点で林床の地表面温度の計測を行い積雪日数の推定を行った.その結果,各地点の積雪日数は,暖温帯常緑―落葉広葉樹林:22.5日/年,暖温帯落葉広葉樹林:58.4~104.5日/年,温帯落葉広葉樹林:113.3~158.6日/年,温帯針広混交林:150.3~158.7日/年,温帯―亜高山移行帯林:167.0日/年,亜高山帯林:214.5日/年,高山帯林:200.4~207.1日/年と推定された.暖帯から亜高山帯の森林では,標高と積雪日数の間に高い相関関係が認められた.