著者
高山 哲治 岡久 稔也 岡村 誠介
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.153-158, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
11

大腸癌をめぐる最近の話題の一つは,過形成性ポリープ(あるいは鋸歯状腺腫)から発癌するというserrated pathwayの提唱である.すなわち,これらの病変の分子生物学的な解析が進み,従来発癌しないと考えられてきた過形成性病変の一部,特に右側結腸の大きい過形成性ポリープから発癌しうることが明らかにされつつある.もう一つの大腸癌をめぐる話題は,大腸癌に対する化学療法の進歩である.すなわち,oxaliplatin(L-OHP)などの新規抗癌剤の開発に加え,Vascular endothelial growth factor(VEGF)やEpidermal growth factor(EGF)受容体(EGFR)を標的とした新しい分指標的治療薬が開発された.特に,EGFRに対する単クローン抗体は,K-ras遺伝子変異の無い癌に有効であることが明らかとなり,これらの遺伝子異常を調べて治療を行う,いわゆる個別化医療の時代に入りつつある.
著者
新田 孝作
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.1330-1335, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

悪性腫瘍による腎障害の病態は多彩である.腫瘍の浸潤や移転に起因せず,腫瘍細胞から産生される各種ホルモンやgrowth factor,cytokineおよび腫瘍特異的抗原物質に対する抗体産生によって引き起こされるparaneoplastic glomerulopathy,悪性腫瘍の急速な進展や放射線および化学療法後に生じる腫瘍融解症候群,多発性骨髄腫に伴う腎障害,腹部や骨盤部の悪性腫瘍の浸潤による尿路閉塞による腎障害および抗悪性腫瘍薬による腎障害などがある.それぞれの病態に応じた対策が必要である.
著者
水梨 一利
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1964-1967, 1993-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

特発性副甲状腺機能低下症は,明らかな誘因を伴わずに, PTH分泌不全を来したものであり, PTHの最大分泌能の低下およびset-pointの左への移動を特徴とする. PTH作用および血清PTH値の低下に加え,外因性PTHに対する反応性の保持によって診断される.活性型ビタミンD3によって治療されているが,血清Caの上昇に伴い,高Ca尿症を来しやすいため,血清Caを正常下界に維持することが望ましい.
著者
髙 勇羅 押谷 仁
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.2281-2283, 2020-11-10 (Released:2021-11-10)
参考文献数
8

新型コロナウイルスに対する日本の対策,特に積極的疫学調査に基づくクラスター対策は,このウイルスに対して一定の効果をあげてきたと考えられる.しかし,これまでの対応からさまざまな課題も明らかになってきている.このウイルスの流行は今後も続く可能性があり,より効率的な対応の確立が求められる.
著者
野村 英樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.1135-1139, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1
著者
星野 一正
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.1983-1987, 1996-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

1970年代から不治の病で生命維持装置を付けられて延命されるのを拒む風潮が高まり,リビング・ウイルで意思表示することを認めたカリフォルニア州自然死法の制定以来,自然死・尊厳死が広まった.一方,自主的判断で自発的積極的安楽死あるいは自殺幇助を医師に要請する自己決定権を求める運動も盛んになり,新しい安楽死論議が高まってきた.第三者の同情や思い入れで他人の生命を絶つ慈悲殺は殺人行為であるのに行われている.
著者
西田 勝也 戸根 幸太郎 山崎 浩 西本 啓介 河本 邦彦 二村 直伸 三谷 真紀 舟川 格 陣内 研二
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.433-436, 2014-02-10 (Released:2015-02-10)
参考文献数
8

Lewy小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)は,変動を伴う進行性の認知機能障害,具体的で詳細な内容の幻視,パーキンソニズムなどの特徴的な臨床像を呈する.今回我々はDLBとして典型的な症状,画像検査所見を認めながら,血液検査で著明な甲状腺機能の低下を認めた橋本病の1例を経験した.甲状腺ホルモン製剤の投与により臨床症状は改善した.treatable dementiaとして甲状腺疾患は常に念頭に置く必要がある.
著者
赤水 尚史
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.2361-2368, 2019-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
9

甲状腺クリーゼは,甲状腺中毒症に種々のストレスが加わって多臓器不全や生体恒常性破綻を来たし,致死的となった状態と定義される.致死率は10%以上に達する.我が国で年間約250例が発症している.早期の診断と治療を要する救急疾患であり,診断基準と治療アルゴリズムを含む詳細な診療ガイドラインが近年我が国で作成された.そのなかには,重症度判定の指針,各臨床症状に対する具体的治療,Basedow病に対する従来の治療法の修正ならびに集学的治療等が盛り込まれている.この診療ガイドラインによって,甲状腺クリーゼの予後改善が期待されている.さらに,同ガイドラインの評価と改訂を目指し,種々のクリニカルクエスチョンを解決するために,現在,多施設前向きレジストリー研究が行われている.
著者
福土 審
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.1220-1227, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
16

機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders)は,生物心理社会モデルによる心身医学的なアプローチがその威力を発揮する代表的な疾患群である.その概念形成の源流となったのが過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)である.機能性消化管障害,特にIBSの研究と臨床は,既知の生物学的診断マーカーが未発見である疾患の国際的診断基準作成,脳―末梢臓器相関の概念化,脳機能画像の導入,ストレス病態からの関連物質の絞り込み,炎症と感作の関連,遺伝子と環境の関連,性差医学,薬物療法と心理療法の組み合わせなどの多くの点で他領域に応用できる先進性を含んでいる.
著者
前田 光一 三笠 桂一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3497-3502, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
8

日本呼吸器学会の院内肺炎ガイドラインは,2002年の初版の検証をもとに2008年に改訂されて現在のものとなっている.2008年版ガイドラインでは重症度分類が予後に基づくものに変更され,各群における抗菌薬の選択とPK/PDを考慮した投与法,わが国の医療事情に即したde-escalationの方法が提唱された.ただし,わが国でも医療・介護関連肺炎の概念が導入されたことから,さらにその内容の見直しが今後も必要となる.
著者
西藤 岳彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.415-421, 2017-03-10 (Released:2018-03-10)
参考文献数
11
著者
黒川 峰夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.9, pp.2370-2374, 2013-09-10 (Released:2014-09-10)
参考文献数
8

1 0 0 0 狂犬病

著者
高山 直秀
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.2382-2387, 2004-11-10
参考文献数
6
被引用文献数
1

狂犬病はラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルスによって引き起こされる代表的な人獣共通感染症であり,独特の臨床像とほぼ100%の致命率のために昔から恐れられてきた.日本では1957年以降狂犬病の発生はないが,今なお多くの国々で多数の狂犬病犠牲者が発生している.狂犬病危険動物に咬まれたなら,ただちに狂犬病ワクチン接種による狂犬病曝露後発病予防を受けることが狂犬病死を免れる唯一の方法である.
著者
田村 雄一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.2, pp.195-201, 2018-02-10 (Released:2019-02-10)
参考文献数
8

肺高血圧症は稀な疾患であるため,長期間診断されずに,右心不全を起こすまで治療介入が行われない例も多い.一般内科では,長く持続する労作時の息切れを主訴とする場合,心電図及び胸部X線写真で肺高血圧症に特徴的な所見の有無を検索することがスクリーニングとして重要である.また,肺換気・血流シンチグラフィーやDLCO(carbon monoxide diffusing capacity)の評価各種血清学的評価,また最近では,遺伝子検査が肺高血圧症の診断・鑑別に役立つため,解説する.