著者
畠山 勝義
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1072-1078, 1996-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

短腸症候群およびblind loop syndromeは外科的処置によって生ずることが多い吸収不良症候群の1つである.短腸症候群は原因疾患のため余儀なく施行された小腸広範切除の結果生ずるものがほとんどで,各病期にその病態生理の特徴があり,その病態に適した管理が必要となる.一方, blind loop syndromeの本態は小腸内細菌叢の異常増殖によることから,近年ではbacterial overgrowth syndromeとして包括されており,この病態について解説したい.

1 0 0 0 OA V.膜性腎症

著者
西脇 宏樹 清水 さやか 中屋 来哉 柴垣 有吾 祖父江 理
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.910-916, 2020-05-10 (Released:2021-05-10)
参考文献数
21

膜性腎症は,成人の原発性ネフローゼ症候群で最も頻度の高い疾患である.近年,膜性腎症の抗原として,phospholipase A2 receptor(PLA2R),thrombospondin type-1 domain-containing 7A(THSD7A)ならびにneural epidermal growth factor-like 1(NELL-1)等が報告されており,特にPLA2Rについては,その抗体による新規診断方法等が検討されている.一方で,本邦のPLA2Rの頻度は欧米の報告とは異なることも示唆されている.治療については,2020年に改訂が行われる本邦の診療ガイドラインと2019年に発表されたリツキシマブに関する研究を本稿では紹介する.
著者
宮村 耕一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.2348-2356, 2014-09-10 (Released:2015-09-10)
参考文献数
10
著者
今井 圓裕 伊藤 孝仁 猪阪 善隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.800-807, 2004-04-10
参考文献数
22

腎疾患における最も重要な問題は増加する慢性腎不全患者をいかに抑制するかであり,この根本的な解決は患者にとっての福音であるばかりでなく,医療経済的にも大きなメリットとなり,今後も引き続き重点的に研究が続けられるであろう.ポストゲノム研究の中心的な課題であるゲノム創薬は国際的に熾烈な競争が行われているが,腎臓分野もその重要なターゲットである.ただし,腎疾患関連遺伝子の同定がボトルネックとなっており,遺伝子の同定および機能解析が急務である.糸球体腎炎や腎線維化に対する遺伝子治療および腎再生医療などの革新的な治療法の開発はわが国が先行する状況で行われている.腎移植は移植領域では最も進んだ治療法であり,移植腎の長期生着をめざした研究が活発に行われている.また,最近開発された急性拒絶反応を起こさないα1, 3-galactosyltransferase欠損ブタの腎臓がヒト代用腎として使用される日も遠くはないと思われる.
著者
小椋 陽介
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.683-693, 1978-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
46

腎がカルシウム調節ホルモンの一つである活性型ビタミンDとくに1, 25-(OH)3-D3を産生することが明らかにされてから,慢性腎不全に合併するカルシウム代謝異常とくに骨病変の解明は大きく進展した.すなわち慢性腎不全では,腎での1, 25-(OH)2-D3が産生が低下し,これが腎性骨病変の重要な因子と考えられ,その治療には, 1.25-(OH)2-D3そのものを補充するか,または腎での反応を必要とせずに活性型ビタミンDとなるアナログが開発され,臨床応用が検討されるようになつた,しかし,これで解決したように思われた腎不全におけるカルシウム代謝異常の治療も, 1, 25-(OH)2-D3に対する無反応を示す例もみい出されるようになり, 1, 25-(OH)-D3以外のビタミンD代謝物の役割についても関心がもたれつつある.
著者
篠崎 有三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.724-731, 1955-10-10 (Released:2011-02-22)
参考文献数
12

Studying the thiamine metabolism in blood and urine of pulmonary tuberculosis patients, I got results as Follows:1) Thiamine is laeking in pulmonary tuberculosis, and the worse is the disease, the less is thiamine in the body.Thiamine increases by dosing thiamine preparations in general, but it is apt to decrease to the previous amount after dosing in serious cases.2) Many of pulmonary tuberculosis patients have beriberoid-complaints, but none of them could be diagnosed to have evident Beriberi as complication.3) Composite Vitamine and T. P. D. are more effective to cure the beriberoid-complaints of pulmonary tuberculosis than simple B1 hydrochloride.
著者
實吉 拓 北村 健一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.1123-1129, 2014-05-10 (Released:2015-05-10)
参考文献数
19

AKI(acute kidney injury)は多くの場合多臓器不全の一部として発症し,その予後は不良である.AKIはサイトカイン/ケモカインの産生や白血球の遊走,酸化ストレス,Na,水代謝調節障害などを介して肺,心,中枢神経,肝,消化管などの遠隔臓器に障害を生じる.また,逆に各臓器障害がAKIの発症に関連していることも指摘されている.このようなAKIと臓器関連についての多くの研究から,その病態を理解することは重要である.

1 0 0 0 OA 1.分類と疫学

著者
五十嵐 久佳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.567-573, 2001-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6

1988年に発表された国際頭痛学会による分類は各種頭痛の診断基準を明記しており,疫学調査,薬剤の臨床試験などに有用である.本邦における片頭痛の有病率は8.4%で,女性が男性の3.6倍であった.片頭痛は日常生活に支障をきたすことが多いにも関わらず受診率は低い.緊張型頭痛の有病率は22.3%で,女性が男性の1.5倍であった.いずれの頭痛も就業年齢に多く,患者の社会生活に影響を及ぼすと考えられる.

1 0 0 0 OA 2.Cushing症候群

著者
蔭山 和則 二川原 健 大門 眞
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.832-840, 2014-04-10 (Released:2015-04-10)
参考文献数
8

Cushing病の確定診断ガイドラインは特異度が高いものであるが,一部の異所性ACTH症候群とのデータ上のオーバーラップは避けられず,ACTH依存性Cushing症候群の診断には注意が必要である.Cushing症候群の治療としては,それぞれの病状を考慮して手術療法,放射線療法および薬物療法を選択する.これらの治療にはそれぞれ限界もあるが,併用も考慮し,高コルチゾール血症を是正して,予後やQOLの改善に努める.
著者
小泉 俊三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2441-2449, 2016
被引用文献数
5

<p>Choosing Wiselyキャンペーンは,米国内科専門医機構財団の主導で2012年に発足した.米欧で同時発表された「新ミレニアムにおける医のプロフェッショナリズム:医師憲章」(Medical Professionalism in the New Millennium:A Physician Charter)(2002)を実践に移すべく,全米の臨床系専門学会に対して"再考すべき(無駄な)医療行為"をそれぞれ5つずつリストアップすることを求めたところ,大部分の専門学会が根拠文献とともにこれに応じたことで大きく注目された.キャンペーンとしては,「賢明な選択」を合言葉に,患者にとって最も望ましい医療について"医療職と患者との対話を促進する"ことを目指し,患者向けの説明資料や診療場面の動画を数多く提供している.2014年開催の国際円卓会議を機にこの機運は全世界に広まり,Choosing Wisely Internationalとしての本格的な活動が始まっている.これまでevidence-practice gapといえば,実施すべき医療が実施されていないことを指していたが,このChoosing Wiselyキャンペーンが,臨床的有用性についてのevidenceなしに実施されている過剰な医療に着目したことは,EBM(evidence-based medicine,根拠に基づく医療)の今日的展開という意味でも,また,医療技術評価論の立場からするlow-value care(低価値医療)への警鐘としても,特筆に値する.</p>
著者
小山 博史
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.100-106, 2020-01-10 (Released:2021-01-10)
参考文献数
10

バーチャルリアリティ(virtual reality:VR)技術と拡張現実(augmented reality:AR)技術の飛躍的進歩と低価格化により,解剖学や看護教育,心的外傷後ストレス障害や幻肢痛等の治療法への応用の期待が高まっている.VR技術とは,主にコンピュータグラフィックス技術や実動画の撮影によって現実世界と類似した仮想世界を作成し,感覚受容器に提示(ディスプレイ)し,仮想世界での体験を可能とする技術である.一方,AR技術は,現実世界に仮想モデル(臓器モデル等)を提示する技術とされる.人工的感覚刺激は,現実世界の感覚刺激と比較して精度が低いにもかかわらず,ヒトはなぜ,仮想世界に存在するような感覚を得るのであろうか.さらに,近年注目されている認知症患者を疑似体験する一人称VR体験において,ヒトはなぜ共感を得るのか.VR技術による仮想世界の体験で生じる現象とその医療応用について,脳科学との関係も含め概説する.

1 0 0 0 OA II.疫学

著者
山縣 邦弘 斎藤 知栄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.5, pp.1243-1252, 2012 (Released:2013-05-10)
参考文献数
22

慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)が提唱されたことにより,各地域でのCKDの疫学研究が報告されてきている.この際,尿蛋白を試験紙法あるいは微量アルブミン尿で評価するか,また血清クレアチニンの測定方法やeGFRの計算式により,CKDの頻度が異なってくる.またeGFRは人種により実測GFRと差が大きく出る場合があり,人種に合わせた推算式も必要になる.CKDの疫学を比較するには,CKDの評価方法を確認し,対象集団の年齢分布,人種差などの背景因子にも注目する必要がある.
著者
平岡 諦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.596-599, 2010-03-10
参考文献数
7
著者
鈴木(堀田) 眞理
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.676-682, 2016

<p>神経性やせ症や過食症などの摂食障害は,低栄養や自己誘発性嘔吐や下剤・利尿薬乱用に伴う合併症で救急診療を必要とする場合がある.「摂食障害救急患者治療マニュアル」「神経性食欲不振症プライマリケアのためのガイドライン」について概説し,救急でみられる症状と疾患,栄養アセスメント,内科的緊急入院の適応,重篤な合併症と治療,栄養療法,再栄養に伴う重篤な合併症であるrefeeding症候群の予防について述べる.</p>
著者
要 伸也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.826-834, 2006-05-10
参考文献数
5
被引用文献数
2

低K血症, 高K血症は日常診療上頻繁に遭遇し, 様々な疾患の診断の手がかりになるとともに, 時に緊急治療の対象にもなるため, 実地医家はその対処法をよく知っておく必要がある. ここでは, 基本的なK調節メカニズムについて述べたあと, K代謝異常の具体的なアプローチ法につき解説したい.
著者
御手洗 哲也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.172-178, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
10

妊娠において最も頻度の高い合併症は妊娠高血圧症候群で,発症には遺伝的素因とリスク因子が関与する.主な病態は胎盤発育不全による胎盤虚血,それに起因する母体の血管内皮細胞障害と高血圧,および子宮内胎児発育遅延であり,蛋白尿を伴う場合は妊娠高血圧腎症と称する.腎疾患はリスク因子であり,加重型妊娠高血圧腎症を合併しやすい.降圧治療は母体合併症の予防には有用だが,妊娠期間の延長には繋がらない.妊娠早期に発症を予知し,発症を抑制する新たな治療法の開発が望まれる.高血圧は分娩後に軽快するが,長期的に見ると本症候群合併妊婦は心血管病,メタボリック症候群,慢性腎臓病のリスクが高く,複数回繰り返すと末期腎不全の集積発症頻度も高くなる.低出生体重児も慢性腎臓病や高血圧の高リスク群で,本症候群を経過した母児には,この様な視点に立ったtotal-life careが必要である.
著者
河野 哲也 松瀬 厚人 深堀 範 土田 朋子 福島 千鶴 河野 茂
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.866-867, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
8

緑茶喘息は浜松のShirai等により職業喘息の一つとして報告されており,そのメカニズムは緑茶カテキンに対するI型アレルギーであることが証明されている.今回我々は長崎県において緑茶製造業に携わっていた緑茶アレルギーを合併した緑茶喘息の一例を経験した.既報に則っての診断に至るまでの過程の報告に加え,抗ヒスタミン薬の前処置による抑制効果についても検討を行った.