著者
内田 俊也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1897-1905, 1997-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

輸液は水・電解質の欠乏症に対する輸液が中心だが,水・電解質バランスの維持のため,栄養輸液,治療としての輸液など輸液の目的は拡がっている.脱水症では高張性・等張性・低張性脱水を鑑別し,病態に見合った輸液をする必要がある.また腎機能が低下すると輸液の安全域は狭まり,安全な維持輸液のためには電解質の浸透圧が100mOsm/kgH2Oくらいの低張性輸液が望ましい. 3号液2lが基本である.輸液においてはつねにバランスを計算してフィードバックにより微調整することが大切である.
著者
國島 広之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.2367-2372, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
22

不明熱を含めた発熱時におけるウイルス感染症では,プライマリ・ケア領域ではEBウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)感染症とサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)感染症がしばしばみられる.EBVによる初感染では,発熱,リンパ節腫脹,扁桃腫大,脾腫を伴い,末梢血に異型リンパ球がみられる.ペニシリン系薬で発疹がみられることから,溶連菌性扁桃腺炎との鑑別が重要となる.CMV感染症も近年の抗体陰性者の増加に伴い,感受性者が増加していることから,丁寧な評価が必要である.
著者
田中 良哉 岡田 洋右
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.669-674, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は代表的な腫瘍随伴症候群で,進行癌の約10%に併発する.腫瘍細胞から産生された副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)は,腎でのカルシウム再吸収や骨でのカルシウム動員を介して高カルシウム血症をもたらす.ビスフォスフォネートは,骨吸収阻害を介して高カルシウム血症に奏功する.本稿では,PTHrP産生腫瘍による高カルシウム血症の発症の機序,診断,治療および今後の展望について概説する.
著者
要 伸也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.826-834, 2006-05-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

低K血症, 高K血症は日常診療上頻繁に遭遇し, 様々な疾患の診断の手がかりになるとともに, 時に緊急治療の対象にもなるため, 実地医家はその対処法をよく知っておく必要がある. ここでは, 基本的なK調節メカニズムについて述べたあと, K代謝異常の具体的なアプローチ法につき解説したい.
著者
中世古 知昭
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.987-994, 2020-05-10 (Released:2021-05-10)
参考文献数
11

多発性骨髄腫は,化学療法に対する反応性が不良で,治癒困難な疾患であったが,1990年代以降,自家造血幹細胞移植療法が確立し,さらに2000年代に入り,プロテアソーム阻害薬(proteasome inhibitor:PI)であるボルテゾミブや免疫調整薬(immunomodulatory drugs:IMiDs)であるサリドマイド及びレナリドミド等の新規薬剤が次々と登場し,予後が劇的に改善した.さらに,第2世代のPIであるカルフィルゾミブやイクサゾミブ,IMiDsであるポマリドミドに加え,骨髄腫細胞上に発現するCD38やSLAMF7を標的とするダラツムマブやエロツズマブといった新規抗体薬も登場し,多発性骨髄腫の予後はさらに改善しつつある.また,フローサイトメトリーやPCR(polymerase chain reaction)法,次世代シークエンサーによる微小残存病変(minimal residual disease:MRD)検出法が開発され,MRD陰性化が得られた症例では,生存期間が大幅に延長することが示されている.
著者
白土 修
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.2133-2138, 2018-10-10 (Released:2019-10-10)
参考文献数
4
著者
露口 一成
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2922-2927, 2013-11-10 (Released:2014-11-10)
参考文献数
10

抗結核薬の歴史はストレプトマイシンの発見に始まり,多数の臨床試験の積み上げにより現在の標準化学療法が確立された.しかし多剤耐性結核の蔓延,より短期の治療レジメンの必要性,薬剤相互作用などさまざまな問題により新たな薬剤の出現が望まれてきた.近年,いくつかの新たな薬剤が新規抗結核薬の候補として開発され臨床応用に向けて研究が進んでいる.本稿ではこれまでの歴史と主な新規抗結核薬の現状について概説する.
著者
藤原 康弘
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2336-2345, 2016-12-10 (Released:2017-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

日本では「保険医療機関及び保険医療養担当規則」第18条の規定「保険医は,特殊な療法又は新しい療法等については,厚生労働大臣の定めるもののほか行つてはならない」により,研究的な要素をもつ診療(臨床試験)は保険診療の枠組みの中では実施できない.その例外が保険外併用療養という枠組みの中の評価療養(治験と先進医療が含まれる)と患者申出療養で実施される臨床試験である.本稿では当該療養の仕組みを概説する.
著者
佐野 史典 近藤 敏範 薄 聖子 林 清人 兵 るい 竹内 麻子 徳永 博俊 中西 秀和 和田 秀穂 杉原 尚
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2409-2416, 2016-12-10 (Released:2017-12-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

60歳代,男性.中咽頭癌に対して放射線化学療法で寛解を得たが,貧血と白血球減少が出現し,血液内科へ紹介となった.骨髄不全症候群(低形成骨髄異形成症候群)と診断し,蛋白同化ステロイド薬で治療したが,効果は限定的であった.体格や食事量などからカルニチン(carnitine)欠乏症を疑い,レボカルニチン(L-carnitine)を補充したところ,Hbと白血球数は基準値まで改善した.癌治療後の骨髄不全症候群にカルニチン補充療法が有効である可能性が示唆された.
著者
山下 裕之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1555-1563, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
10

膠原病の中でも,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)の神経精神症状はneuropsychiatric SLE(NPSLE)と総称され,その病態も多岐にわたる.NPSLEのうち,中枢神経系症状は局所徴候とびまん性徴候に大別されるが,診断基準は確立しておらず,諸検査で総合判断するしかなく,ステロイドによる精神症状との鑑別が非常に難しい場合がある.また,neuromyelitis optica(NMO)や進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy:PML),薬剤性脳症等も鑑別に挙がり,診断は困難を極める.治療は病態に応じて免疫抑制療法と対症療法を組み合わせて行う.
著者
池松 秀之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.11, pp.2718-2723, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

インフルエンザは感染性の高い疾患であり院内感染対策が必要である.対策の第一歩としてサーベイランスが重要であるが,インフルエンザの臨床症状だけではなく,迅速診断キットを早期より使用することが効果的である.患者の隔離および抗インフルエンザ薬による治療は,感染拡大防止に有用である.予防としては,流行前のワクチン接種が第一である.抗インフルエンザ薬の適切な予防投与も有効な手段である.
著者
山下 直生 栃谷 健太郎 岩本 伸紀 青木 一晃 元林 寛文 山本 舜悟 清水 恒広
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.85-91, 2021-01-10 (Released:2022-01-10)
参考文献数
6

24歳,男性.コンゴ民主共和国に半年間滞在し,ドキシサイクリンを帰国後2週まで内服した.帰国後43日から72時間毎に発熱を認め,50日にアーテメター/ルメファントリン錠の内服開始,51日に当院を受診した.血液塗抹検査,迅速診断キットは陰性であったが,PCR(polymerase chain reaction)で四日熱マラリアと診断した.四日熱マラリアは潜伏期間が長く,検査で偽陰性が多いため,注意が必要である.
著者
大石 和徳 菅 秀
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.2301-2306, 2015-11-10 (Released:2016-11-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

小児用7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の公費助成開始により,我が国のワクチン血清型による小児の侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:IPD)は激減した.一方,非PCV7含有血清型による小児IPDが増加し,血清型置換が明確となった.結果的に,小児IPD罹患率は,PCV7導入前に比較して,2013年度までに57%減少した.さらに,65歳以上の高齢者におけるIPDの原因菌にも血清型置換が認められた.
著者
金光 禎寛
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.10, pp.2124-2131, 2020-10-10 (Released:2021-10-10)
参考文献数
12

咳は,胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)の食道外症状の1つである.本邦でのGERDの有病率の増加に伴い,GERD咳嗽も増加傾向で,慢性咳嗽の原因として,咳喘息と共に頻度が高い.一方で,胸やけ等の典型的な食道症状を伴わないことも多く,咳の罹病期間が長期に及び,生活の質を低下させる.診断に難渋することも多いが,Fスケール等の質問票の活用やPPIに加えて消化管運動機能改善薬の併用がGERD咳嗽の診断・治療に対して有用な可能性を述べる.
著者
千葉 宏文 小笠原 光矢 谷地 一真 伊藤 啓紀 新海 洋彦 小野寺 美緒 石山 文威 萱場 尚一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.1475-1481, 2021-07-10 (Released:2022-07-10)
参考文献数
9

54歳,女性.8年前に完全型Behçet病(Behçet's disease:BD)と診断.インフリキシマブ投与で安定していた.また,ラベプラゾール10 mgを長期内服していた.体重減少の精査で,回盲部に円形の深掘れ潰瘍を認め,腸管BDと診断した.高度下痢が持続し,上下肢のしびれ・脱力を伴い,Ca 6.0 mg/dl,Mg 0.5 mg/dlと著明な電解質異常を認めた.プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)の長期内服とBDの腸管病変のため,Mg吸収障害を来たし,二次的に低Ca血症を呈したと考えられた.

1 0 0 0 OA 2.赤芽球癆

著者
廣川 誠 澤田 賢一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.7, pp.1937-1944, 2012 (Released:2013-07-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

赤芽球癆は正球性正色素性貧血と網赤血球の著減および骨髄赤芽球の著減を特徴とする難治性貧血である.赤芽球癆の病因は多様で,先天性と後天性の病型があり,後天性はその発症様式から急性型と慢性型に分類される.後天性慢性赤芽球癆には特発性と,胸腺腫あるいは大顆粒リンパ球白血病などに伴う続発性赤芽球癆がある.赤芽球癆の治療は病因によって異なり,基礎疾患の治療に反応しない慢性赤芽球癆に対して免疫抑制療法が行われる.
著者
平野 賢一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.2385-2390, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

中性脂肪蓄積心筋血管症(triglyceride deposit cardiomyovasculopathy:TGCV)は,我々が2008年に心臓移植待機症例より見出した新規疾患概念である.細胞内代謝異常の結果,心筋細胞及び血管平滑筋細胞に中性脂肪(triglyceride:TG)が蓄積する.TGCVは既存の内科的・外科的治療に抵抗性を示す心不全,冠動脈疾患・不整脈症例に少なからず存在する.TGCV研究班の使命は「1日でも早くこの難病を克服する」ことであり,治療法の実用化を加速するため,症例登録・情報提供等をお願いしたい.
著者
森 悦朗
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.1820-1825, 2016-09-10 (Released:2017-09-10)
参考文献数
15