著者
岩崎 龍郎
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.407-422, 1981 (Released:2011-05-24)
参考文献数
37
被引用文献数
2
著者
近藤 信哉 伊藤 真樹
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.677-682, 2003-11-15
参考文献数
18
被引用文献数
1

[目的] 今後の乳幼児接触者検診における方針決定に役立てるため, 現行の検診の有用性, 特に予防内服の発病阻止効果を後方視的に検討した。 [対象と方法] 活動性肺結核患者と家庭内接触して接触者検診に来院し, 少なくとも2年間経過観察できた0~4歳児273名とした。 [結果] 初回検診で発病児は273名中60名 (22%), 発病が疑われた児は37名 (14%) であった。すべての発病, 発病が疑われた児において治療は完了され, 再燃を認めなかった。26名 (9%) が未感染と診断された。その25名において発病を認めなかったが, 1名に2カ月後の2回目検診時に発病を認めた。150名 (55%) が初感染と診断され, 6カ月間イソニアジド (10mg/kg/日) を服用した。服薬開始直後, 1名に発病が認められた。他の149名において内服は完了されて発病を認めず, 服薬中に血清GOT, GPTが100単位/Lを超す肝機能障害を生じなかった。 [考察] 現状の家族検診は有用であり, 発病の有無を明確にして治療, 予防内服を行えば再燃, 発病をほぼ完全に, 安全に阻止していることを示した。また, 感染の証拠が得られずに未感染とされた児を含めて未発病家庭内接触乳幼児全員に, 予防内服を躊躇なく始めることが潜在結核感染症を減少させる選択肢の1つであることを示唆する。
著者
伊藤 邦彦
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.653-658, 2013 (Released:2016-09-16)
参考文献数
6

〔目的〕潜在性結核感染症(LTBI)治療終了後に現在行われている2年間の定期的経過観察の必要性を評価するため,LTBI治療終了後の結核発病率と発病時期を推定する。〔対象と方法〕結核サーベイランスデータを用いて2008-09年新登録LTBI治療対象者の2011年末までの発病状況を調査する。〔結果〕2008-09年新登録LTBI治療対象者(合計8951例)中,その後2011年末までに活動性結核を発病したと推定されるものが56例特定された。治療中断者まで含めたデータであっても,登録年次次年末までの発病率は全結核で0.57%(51/8951),塗抹陽性肺結核で0.10%(9/8951),全菌陽性肺結核で0.22%(20/8951)であった。治療終了時期の情報のある37例での検討では,治療終了後1年以内に12例,2年目に22例が発病していた。〔考察と結論〕LTBI治療終了後の発病率は低いが,LTBI治療終了後1年目から2年目にかけて発病率が低下する傾向はみとめられなかった。問題とするべきは,LTBI治療終了後管理健診の妥当な期間よりも,LTBI治療終了後の管理健診の必要性そのものである。
著者
戸井田 一郎 中田 志津子
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.809-824, 2007-11-15
参考文献数
84
被引用文献数
9

1951年の結核予防法大改正によって凍結乾燥BCGワクチンの接種が法制化されてから2004年までに結核予防法によるBCG接種者総数は2億1380万人に達している。そのなかで接種局所および/または所属リンパ節の範囲を超えて身体他部位に重大な副反応が発生した症例を検索し,39症例(接種10万件あたり0.0182件)が同定できた。ほかに,BCGとの関連に疑問があるがBCG接種にひきつづいて起こった重大な有害事象症例として4症例の報告があった。39症例のうち19例では,慢性肉芽腫症(CGD),重症複合型免疫不全(SCID),Mendelian Susceptibility to Mycobacterial Disease(MSMD)などの先天性免疫不全を含め,何らかの細胞性免疫異常が報告されている。死亡の6例には全例に免疫異常が認められている。BCG接種の唯一の機会を逃す子供が生じないように,それと同時に,生後3カ月までの接種を避けて先天性免疫不全児へのBCG接種の危険を回避することができるように,公費によるBCG接種の期間を最短でも生後1年まで延長することが望まれる。
著者
松本 健二 小向 潤 笠井 幸 森河内 麻美 吉田 英樹 廣田 理 甲田 伸一 寺川 和彦 下内 昭
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.659-665, 2013 (Released:2016-09-16)
参考文献数
19

〔目的〕ホームレス結核患者の治療成績に関連する要因と服薬支援の状況について検討した。〔方法〕平成19~21年の大阪市におけるホームレスの結核新登録患者433例を対象とした。治療成績に関連する要因として,入院期間,外来治療予定期間,DOTSの型等を検討した。対照として大阪市における平成19~21年のホームレス以外の肺結核新登録患者3047例を用いた。〔結果〕①治療成功と失敗中断における服薬支援等の状況:治療成功は311例で219例(70.4%)が院内DOTSにて入院のまま治療を終了した。失敗中断は48例で35例(72.9%)は自己退院であった。肺結核患者における失敗中断率はホームレス結核患者が11.0%であり,ホームレス以外の結核患者の6.5%に比べて有意に高かった(P<0.001)。②地域DOTSと治療成績:地域DOTS実施は102例で,週5日以上の服薬確認は66例(64.7%)と最も多くを占めたが,失敗中断は10例(9.8%)であった。入院および外来治療予定期間と治療成績では,入院期間は脱落中断が2.0±1.6カ月,治療成功が4.4±2.5カ月であり,外来治療予定期間は脱落中断が7.9±2.7カ月,治療成功が3.6±2.1カ月であり,入院期間の短い例と外来治療予定期間の長い例で脱落中断が有意に多かった(P<0.01)。〔結論〕ホームレス結核患者の失敗中断率は高く,自己退院によるものが多かった。治療成功例では入院のまま治療を完遂することが多く,地域DOTSにつながった例では週5日以上の服薬確認を行っても失敗中断率は高く,特に入院期間の短い例と外来治療予定期間の長い例では十分な支援が必要と考えられた。
著者
井上 武夫 子安 春樹 服部 悟
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.507-512, 2008-07-15
参考文献数
5
被引用文献数
4

〔目的〕菌陽性患者を初発患者とするニ次患者の実態を知る。〔対象と方法〕1989年から2003年までの15年間に,愛知県7保健所4支所で新登録された10,088名の結核患者登録票を再点検し,感染経路を同じくする2名以上の発病者からなるクラスタ一を選別し,菌陽性患者を初発患者とする二次患者の新登録患者に占める割合をクラスター所属二次患者率(CSR),菌陽性患者の中に占める菌陽性の初発患者+二次患者の割合をクラスター率とした。〔結果〕二次患者は417名,全体のCSRは4.1%であり,塗抹陽性3,332名の3.5%,他陽性2,139名の3.8%,菌陰性3,158名の5.4%,肺外結核1,459名の3.4%であり,菌陰性のCSRは他の3群より高かった(p<0.01~p<0.001)。年齢階級別CSRは,10歳未満425%,10代30.3%,20代11.2%,30代7.4%,40代4.6%,50代3.2%,60代2.4%,70代1.8%,80代1.3%,90代0.6%であり,10代と20代(p<0.001),20代と30代(p<0.05),30代と40代(p<0.05)との問に有意差を認めた。男性のCSRは2.9%で女性の6.3%と比べ有意に低かった(p<0.001)。クラスター率は8.8%で,10代と20代(37.1%対21.1%,p<0.001)および40代と50代(16.4%対8.5%,p<0.001)の間に有意差を認めた。〔考察〕CSRは登録10年前までに菌陽性患者と濃厚に接触していることが確認された患者の割合を示すものであり,見知らぬ患者からの感染および感染後長期間経てからの発病が少ないほどCSRは高くなる。〔結論〕CSRは年齢,性別,登録時菌所見と密接に関係しており,若年者,女性,菌陰性肺結核で高い。クラスター率は年齢が若いほど高い。
著者
橋本 達一郎
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.329-334, 1982 (Released:2011-05-24)
参考文献数
52
著者
橋本 達一郎
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.51-59, 1973-03-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
91

The tuberculin reaction, classical form of delayed type hypersensitivity, is defined as an immunologically determined inflammatory response characterized mainly by delayed onset of the reaction and by a mononuclear cell infiltration at the reaction site. These two characteristics are analysed in this review in relation to the mechanism of manifestation of the tuberculin skin reaction.Many evidences in the passive transfer of tuberculin sensitivity showed that the passive sensitization could be established without lag by injecting.intravenously the mononuclear cells from sensitized animals to normal in the absence of demonstrable serum antibody and that the immunologically competent cells would be sensitized lymphocyts transformed from thymus-dependent lymphocytes. After leaving the regional lymph nodes where they were produced, the sensitized cells start to circulate through the whole body to establish the over-all sensitization to tuberculin.Further experiments in which passive transfer was combined with desensitization or with labelling of donor or recipient demonstrated that the circulating sensitized cells interacted directly with the tuberculin injected intradermally and remained there at the contact site, reaching in several hours (within 6 hours) the necessary numbers for elicitation of the skin reaction. This immunologically specific process hardly manifests a visible reaction. The majority of the infiltrating cells at the reaction site consists of non-specific mononuclear cells, with a small portion of specifically sensitized cells, even when the reaction reaches the maximal intensity. The non-specific cells play a major role for the visible expression of the reaction, coming almost entirely from an actively dividing cell population through the blood stream. Thus the tuberculin reaction consists of 2 steps, specific and non-specific.
著者
河津 里沙 石川 信克 内村 和広
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.395-400, 2015 (Released:2016-09-16)
参考文献数
31

〔目的〕わが国の結核罹患率は減少傾向が続いている一方で,患者は高齢者,社会経済的弱者,結核発病の高危険因子を有する者らへの偏在化を進めている。これまでに「医学的ハイリスク者」や「高齢者」に対する課題は議論されてきたが,日本における結核のリスク集団の総合的な評価はされてこなかった。本稿では,主に文献調査を通してリスク集団の罹患率比(relative risk: RR)および人口寄与割合(population attributable fraction: PAF)を算出,比較することで,今後必要とされる調査研究等を明らかにし,介入の優先度の決定を導く指標の一つとなることを目的とした。〔方法〕HIV陽性者,糖尿病患者,関節リウマチ患者,血液透析患者,高齢者,医療従事者,ホームレス者,生活保護受給者,外国人,刑事施設被収容者,喫煙者およびアルコール過剰摂取者のRRおよびPAFを算出し,PAFが5%以上を「高PAF群」,1%以上5%未満を「中PAF群」,1%未満を「低PAF群」とし,RRと共に検討した。〔結果〕PAFが5%以上で,なおかつRRも5以上であったリスク集団は高齢者と糖尿病患者であり,これらは公衆衛生上,最も優先度が高い集団と考えられた。
著者
原田 登之 樋口 一恵 関谷 幸江 ROTHEL Jim 木藤 孝 森 亨
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.725-735, 2004-12-15
参考文献数
21
被引用文献数
20

[目的] 新規結核菌感染診断法である全血インターフェロン・ガンマ (IFN-γ) 応答測定法QuantiFERoN<I>&reg;</I>TB-2Gの最適カットオフ値設定を中心とし, その基礎的な特性を検討した。 [対象] 健常人群: 結核菌暴露のリスク要因が確認されない若年健常人220人。結核患者群: 結核菌培養陽性の活動性結核患者118人。接触者群: ある接触者健診でツベルクリン反応 (ツ反) 発赤径が30mm以上あった若年健常者75人。 [方法] 被験者の全血を結核菌抗原で刺激培養後, 血漿成分中のIFN-γ産生量をQuantiFERoN<I>&reg;</I>-CMIにより測定した。測定結果は, ROC曲線と陽性・陰性の誤分類による損失の検討を行い, カットオフ値を設定した。 [結果] カットオフ値はESAT-6, CFP-10双方に対して0.35IU/mlと設定し, その感度は89.0%, 特異度は98.1%であった。 [考察] 未感染健常者において, 全血IFN-γ応答測定法はBCG接種に全く影響されなかった。また, 2種の結核抗原に対するIFN-γ応答の相関は弱く, 判定には両者を独立に用いる必要があった。さらに, 既感染率が高い集団に本法を適応する際, カットオフ値はより低いレベルに設定し, 陽性的中率をあまり下げずに見落としを減らすべきであると考えられる。
著者
山口 淳一 大場 有功 金田 美恵 内田 紀代美 石川 洋 鈴木 公典 八木 毅典 佐々木 結花 山岸 文雄
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.629-634, 2007-08-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
8

〔目的〕定期外健康診断にクォンティフェロン ® TB-2G検査(以下QFT検査)を応用する際の留意点を明らかにすることを目的とする。〔対象と方法〕30代男性の肺結核患者(bII2,ガフキー9号,咳症状1.5カ月)を端緒として実施した会社の定期外健康診断の経過と結果を分析する。〔結果〕40歳未満の43名に対して,2カ月後の定期外健康診断において,ツベルクリン反応検査,QFT検査・胸部エックス線検査を行い,6カ月後の定期外健康診断において,胸部エックス線検査を実施した。また,9カ月後に2回目のQFT検査および胸部CT検査を実施した。2カ月後のツベルクリン反応検査は二峰性の分布を示し,QFT検査では10名が陽性,2名が疑陽性であった。QFT検査陽性・疑陽性の12名を化学予防としていたところ,6カ月後の胸部エックス線検査で,QFT陰性者から2名の肺結核患者が確認され,さらに9カ月後の胸部CT検査により5名の発病者が確認された。2回目のQFT検査では,発病者7名のうち3名が陽性または疑陽性であった。〔考察と結論〕QFT検査の結核患者における感度は80~90%とされており,偽陰性の可能性は無視できない。今回の経験を踏まえ,集団定期外健康診断において,QFT陽性・疑陽性者の割合が高かったり,ツベルクリン反応が明らかな二峰性の分布を示すなど,感染者が多数含まれている可能性が濃厚な集団では,以下に留意することが必要と考えられる。(1) 化学予防の対象者は,QFT検査結果のみでなく,ツベルクリン反応検査,接触状況などを総合的に判断して決定すべきである。(2)QFT検査陰性だった者についても,胸部X線検査の経過観察を行うべきである。
著者
伊藤 邦彦 豊田 恵美子
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.81, no.12, pp.721-730, 2006-12-15
参考文献数
27
被引用文献数
4

欧米における結核患者の入退院基準を明らかにし,本邦の基準と比較考察を行った。アメリカ(USA)/ニューヨーク/カナダ/EU/イギリス(UK)/ドイツ/フランス/スペイン/イタリアの9地域を対象に,インターネット/PubMed等で入退院基準を述べた公的文書を抽出し,化学療法後の感染性推移に関する見解/入退院基準/隔離解除基準を調査した。欧米においては,化学療法開始後に感染性が消失する時期については不明であるとする見解を採る場合が多い。短期隔離やadherence確保のための入院適応も存在している場合が多く,隔離解除基準や退院基準では,患者の感染性そのものよりは,患者のもつ可能性のある接触の総合的リスク(接触者の結核の発病しやすさや,多剤耐性結核/播種性結核/結核性髄膜炎等の重篤な結核発症のリスク)を勘案して決定されているものと考えられた。欧米では外来治療に固執するのではなく柔軟な対応が可能である。米国においても初期入院治療の頻度は高く,場合によって長期の入院治療も行われている。本邦の基準は感染性に過度に偏重しているものと思われた。
著者
山田 勝雄 川澄 佑太 杉山 燈人 安田 あゆ子 関 幸雄 足立 崇 垂水 修 林 悠太 中村 俊信 中川 拓 山田 憲隆 小川 賢二
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.407-413, 2015 (Released:2016-09-16)
参考文献数
19

〔目的〕今回6例の肺M.abscessus症に対する手術を経験した。肺M.abscessus症に対する外科治療の報告は多くない。同時期に手術を施行したMAC症例との比較検討も含めて報告する。〔対象と方法〕2012年7月から2014年6月までの2年間に6例の肺M.abscessus症に対する手術を経験した。6例全例を完全鏡視下手術で行った。手術を施行した6例の肺M.abscessus症例に対し,年齢,性別,発見動機,菌採取方法,病型,術前抗GPL-core IgA抗体価,術前化学療法,術前治療期間,手術適応,手術術式,手術時摘出組織の菌培養結果,術後入院期間,手術合併症,術後再燃再発の有無に関し検討した。これらの項目の一部に関しては,同時期に手術を施行した36例のMAC症例との比較検討を行った。〔結果〕手術に関連した大きな合併症は認めず,術死や在院死もなかった。6例のうち3例が術後1年以上を経過し化学療法を終了したが,現時点で6例とも再燃再発は認めていない。MAC症例との比較では,肺M.abscessus症例の術前治療期間の平均が5.5カ月とMAC症例より18.9カ月短く,統計学的にも有意差を認めた。〔結論と考察〕肺M.abscessus症に対する手術は安全で有効な治療手段と考える。また内科医が肺M.abscessus症に対してMAC症よりも早期に外科治療が必要と考えていることが示唆された。
著者
大森 正子 和田 雅子 西井 研治 中園 智昭 増山 英則 吉山 崇 稲葉 恵子 伊藤 邦彦 内村 和広 三枝 美穂子 御手洗 聡 木村 もりよ 下内 昭
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.647-658, 2002-10-15
参考文献数
15
被引用文献数
4

検診成績を利用し中高年齢者の結核発病予防の方法論と実行可能性を検討した。対象は50~79歳男女, 胸部X線で1年以上変化のない陳旧性結核に合致する陰影があった者 (440名) のうち, 住所の提供, 研究への同意, 事前の諸検査で問題のなかった29名となった。治験対象者を無作為に6カ月のINH服薬群 (14名), 経過観察のみの非服薬群 (15名) に分けた。服薬中副反応を訴えた者は6名 (42.9%), うち治療開始後2週以内に胃腸症状を訴えた2名 (14.3%) は肝酵素値に異常はみられなかったが服薬を中止した。副反応を訴えなかった者でも2名に肝酵素の上昇が認められた。その異常は服薬開始2カ月後から出現し, 長く継続した者でも服薬終了後には正常値に戻った。これまで追跡不能は3名, 1名は服薬終了時X線上活動性結核と診断, 1名は8カ月目に乳癌が再発, 1名は2.5年目に肺腺癌と診断。この他4例で陰影拡大が疑われたが結核発病は確認されていない。副反応, 偶然の事故等がかなり高率であり, 本事業を集団的に推進するには, 副作用の頻度とそれを上回る有効性を確認するより大規模な調査が必要である。それまでは個別の臨床ベースでの実施で対応し, 高齢者対策としては早期発見・治療に重点を置くべきだろう。
著者
鹿住 祐子 板垣 信則 大森 正子 和田 雅子 星野 斉之 御手洗 聡 菅原 勇 石川 信克 森 亨
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.891-896, 2007-12-15
参考文献数
16
被引用文献数
3

〔目的〕平成12年度(2000年)結核緊急実態調査時の慢性排菌患者におけるMDR-TBとXDRTBの頻度を調べる。〔対象および方法〕平成12年度結核緊急実態調査時の慢性排菌者1234例における結核菌434株を用いて薬剤感受性試験(小川培地使用の比率法,MGIT法,プロスミックNTM)を行い,MDR-TBとXDR-TBを決定した。被検株の条件は,1999年末現在保健所に登録されている結核患者のうち1999年の1年間に菌陽性であり,1998年1月1日以前に登録された患者とした。少なくとも登録されてから2年以上経過し,培養陽性だった患者である。〔結果・考察〕薬剤感受性試験が実施された434株のうちINHとRFPに耐性でMDR-TBと判定された株は321株(74.0%),そのうちの180株(56.1%)がLVFX耐性,かつ,KMあるいはAMKのどちらか(または両方)に耐性のXDR-TBであった。MDR-TB321名のうち,初回登録患者が165名,再登録患者は143名,不明が13名であった。XDR-TB180名の内訳は初回登録患者が95名,再登録患者は78名,不明は7名であった。初回登録患者では1990年代がMDR-TB94名(57.0%)とXDR-TB49名(51.6%)ともに半数以上をしめ,再登録患者では1960年代と70年代がMDR-TB62名(43.4%)とXDR-TB41名(52.6%)であった。日本で使用の少ないAMKの耐性頻度が高率だったのはAMKの使用によるものかSM・KMの交差耐性か解明できなかったが交差耐性を否定できない。
著者
大角 晃弘 吉松 昌司 内村 和広 加藤 誠也
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.90, no.10, pp.657-663, 2015

<p>〔目的〕わが国における2011年の潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection: LTBI)登録者数は10,046人で,前年4,930人の約2倍になり,2012年には減少して8,771人であった。LTBI登録者数増加および減少の要因について推定することを目的とした。〔対象・方法〕2012年と2013年に,計2回の全国495カ所自治体保健所を対象とする,半構造式調査票を用いた横断的・記述的調査を実施し,2009年以降の接触者健診対象者数・interferon-gamma release assay(IGRA)検査実施状況・IGRA検査で偽陽性と考えられる事例等について情報収集した。〔結果〕IGRA検査実施者数・割合は,2009年から2012年まで増加傾向を認めたが,IGRA検査陽性者数・割合と同判定保留者数は,2011年に増加傾向を認め,2012年には減少していた。IGRA検査結果の信頼性に問題がある事例の発生を回答したのは,2012年調査で34保健所(8%)であった。〔考察〕2011年における接触者健診に関わるIGRA検査実施者数・同検査陽性者数は,より高齢者における増加傾向が大きく,LTBI検査対象者の年齢制限撤廃が影響したと考えられた。2011年のIGRA検査陽性者割合・判定保留者割合増加の理由として,医療従事者や高齢者等のより結核既感染率が高いと推定される集団に対して同検査を実施するようになったことや,IGRA検査法の変更により感度が上昇したこと等の可能性が考えられた。2012年におけるLTBI登録者数減少要因として,集団感染事例の減少等が推定された。〔結論〕2011年におけるLTBI登録者数増加要因として,IGRA検査実施者数増加・QFT検査法変更による陽性結果者や判定保留結果者増加等が推定された。2012年におけるLTBI登録者数減少要因として,集団感染事例の減少・感染性結核患者数の減少等が推定された。</p>
著者
鈴木 学 放生 雅章 小林 信之 篠原 有香 高崎 仁 吉澤 篤人 杉山 温人 工藤 宏一郎 豊田 恵美子
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.661-666, 2008-10-15
参考文献数
14
被引用文献数
2

〔背景〕わが国の結核罹患率は近年減少傾向にあるが,外国人結核は増加傾向(2000年5.1%から2003年6%)を示している。在日外国人登録数も年々増加しており,今後も外国人入国が増加することが予想される。〔目的〕当センターにて入院加療を行った外国人結核症を対象に,臨床的特徴について検討し,過去の報告と比較することにより,現在の外国人結核対策の問題点を明らかにし,今後とるべき対策についても提言を行う。〔対象〕当センターで2004年1月から2007年4月の間に結核症の診断にて入院加療を行った52症例を対象とした。〔結果〕男性29人,女性23人,年齢は31.8±8.8歳。出身国は中国,韓国が多く,有空洞症例は54%で,薬剤耐性は8.2%に認められた。治療完遂率は92%であった。〔考察〕以前の報告に比べて,耐性率は減少し治療完遂率は増加していた。治療完遂率の向上は日本版DOTSの推進,医療費の公費負担や言語の問題への対応など,社会全体的な体制の整備が大きく寄与したと考えられる。今後も結核蔓延国からの入国が増えることが予想されるため,新たな対策により,新規結核症を早期発見,早期治療することに加えて入国後の健康増進支援に努めることで罹患率の低下,治療完遂率の上昇を図るべきであると考える。