2 0 0 0 OA 頸部聴診法

著者
大宿 茂
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.331-336, 2014-04-01 (Released:2014-04-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
山添 淳一 衛藤 希 尾崎 礼奈 倉田 理沙 湯川 綾美 祐田 明香 稲井 裕子 和田 尚久
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.218-225, 2020-12-31 (Released:2021-01-28)
参考文献数
20

高齢者のなかには自身の疾患に対し病識が浅く,問診時に重大な疾患を申告しない場合がある。安全に歯科医療を提供するには患者情報を詳細に収集し,リスクに配慮しなければならない。臨床研修歯科医師の医療面接時には肥大型心筋症と診断されていたことを申告されなかったが,歯科治療前に肥大型心筋症を発見し,リスクに配慮した歯科治療を行った症例を報告する。 患者は73歳の女性。近在の歯科医院より全顎的治療のため紹介された。長年,保存治療および固定性補綴治療を行い,メインテナンスを行ってきたが,義歯による治療が必要となり,大学病院歯科を紹介受診した。既往歴に肥大型心筋症があったが医療面接時には申告されず,高血圧症,脂質異常症のみ申告された。申告のあった既往は経過良好とのことであった。局所麻酔下での治療前に簡易モニタリングでバイタルサインと心電図を測定したところ,循環動態の異常が疑われた。処置を中止し,通院中の内科に対診したところ,肥大型心筋症が判明し,その後は当院循環器内科と連携し,観血的治療を含む包括的歯科治療を行った。 本症例では歯科治療前に全身状態をモニタリングすることで肥大型心筋症であることを認識し,リスクに配慮した歯科医療を提供した。重篤な合併症の予防だけでなく,患者と良好な信頼関係を構築し,義歯製作までの歯科治療が奏功したと考えられた。教育病院の老年歯科医療ではモニタリングによる全身状態情報の把握を徹底する重要性を再確認した。
著者
重本 心平 堀 一浩 宮島 久 小野 高裕
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.106-117, 2020-09-30 (Released:2020-10-25)
参考文献数
48

背景:低栄養は入院患者の回復に妨げとなるが,Nutrition Support Team(NST)における歯科医師の貢献の可能性は十分に明らかにされていない。 目的:嚥下障害が疑われる総合病院入院患者の栄養リスク状態に関連する要因を明らかにすること。 方法:2015年4月から2019年4月までに総合病院歯科口腔外科に嚥下障害の疑いで紹介された同院入院中の患者を対象とした。Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)を用いて,栄養リスク中等度/高度群(GNRI<92)となし/軽度群の2群(GNRI≧92)に分類し,残存歯/義歯による咬合支持域,義歯使用の有無,最大舌圧,咀嚼能力,反復唾液嚥下テスト,改訂水飲みテスト,嚥下内視鏡検査による兵頭スコア,意識レベル,食形態レベルとの関連について検討した。 結果:315名中285名が栄養リスク中等度/高度群と判定され,栄養リスクなし/軽度群と比べて有意に年齢が高く,女性が多く,義歯を使用していない者が多く,義歯を含めた咬合支持域は有意に少なく,咀嚼能率スコアと兵頭スコアも有意に低かった。また,常食摂取群では他の食形態群に比較してGNRIが有意に高かった。二項ロジスティック回帰分析の結果,低栄養状態と関連する項目は,年齢,非経口摂取,兵頭スコアであった。 結論:嚥下障害が疑われる総合病院入院患者の低栄養リスクにかかわる因子がわかり,そのなかに口腔に関する要因が含まれていた。
著者
関本 愉 松尾 浩一郎 片山 南海 岡本 美英子
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.118-126, 2020-09-30 (Released:2020-10-25)
参考文献数
40

目的:今回われわれは,胃がん周術期患者における術前の口腔機能低下症(Oral Hypofunction, OHF)の罹患率および栄養状態との関連性について検討した。 方法:2018年6月から2020年3月までに当科に周術期口腔管理目的で受診した胃がん患者214名を対象とした。OHFの7項目を測定し,3項目以上が診断基準に該当した場合にOHFと定義した。また,2019年7月よりMini Nutrition Assessment(MNA)を用いて栄養状態を評価した。70歳未満を若年群,70歳以上を高齢群とし,口腔機能の測定値とOHF罹患率が年齢とがんのStageによって差があるか検討した。また,OHFの有無とがんのStageでMNA値に差があるかについても検討した。 結果:舌圧,咬合力,舌口唇運動機能の各値は,高齢群で有意に低かった。また,舌圧はStageの進行とともに低下していた。OHF罹患率は,若年群では25%であったが,高齢群では39%と高齢群で高い傾向にあった。また,Stage 2以上の患者では,高齢群で低舌圧,咬合力低下,舌口唇運動機能低下の該当率が有意に高かった。MNA値はOHF罹患者で有意に低値を示していた。 結論:胃がん周術期患者では,がんの病期によらず,70歳以上の高齢者で口腔機能が低下していることが明らかになった。また,がんのStageの進行とともに舌圧が低下していることが示唆された。OHFは栄養状態とも関連している可能性があり,術後栄養管理の一環として,周術期における口腔機能への評価と介入が必要と考えられた。
著者
寺田 泉 松山 美和 山田 博英 大野 友久
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.75-82, 2020-06-30 (Released:2020-07-23)
参考文献数
41

目的:緩和ケア受療進行がん患者の口腔内評価を実施し,生命予後予測と口腔内状況の関係を検証した。 方法:対象は,2017年11月から2018年7月の期間に,聖隷浜松病院に入院中の緩和ケア受療がん患者で,同意が得られた85名とした。基本情報はカルテから抽出し,口腔内の状態はOral Health Assessment Tool日本語版(以下,OHAT-J)と口腔機能評価表を用いて評価した。Palliative Prognostic Index(以下,PPI)を用いて,対象者を生命予後が3週未満と予測される群(以下,予後短期群)と,それ以上(以下,予後長期群)の2群に分け比較した。 結果および考察:対象者の平均年齢は65.6±13.2歳であり,予後長期群が62名,予後短期群が23名であった。OHAT-Jでは,口唇,歯肉・粘膜,唾液,口腔清掃の項目および合計スコアにおいて予後短期群で有意に悪化が認められた。口腔機能においては,すべての項目において予後短期群で有意な悪化が認められた。口腔粘膜など口腔乾燥が影響する項目に有意な悪化が認められたものと考えられ,口腔機能に関しては,Activities of Daily Living(日常生活動作:以下,ADL)や意識状態の悪化などの結果と推察された。 結論:生命予後予測と口腔内状況には関連性があり,予後短期群の口腔内状況は予後長期群よりも不良であることが示唆された。PPIによる予後予測は口腔内状況の把握に有用であることが示唆された。
著者
五月女 さき子 鳴瀬 智史 六反田 賢 澤田 俊輔 河岡 有美 兒島 由佳 柳本 惣市 梅田 正博
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.94-100, 2019-06-30 (Released:2019-07-24)
参考文献数
10

骨粗鬆症や悪性腫瘍の骨転移などに対してビスフォスフォネート製剤やデノスマブ製剤などの骨吸収抑制薬が広く使用されているが,薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)を発症することがある。MRONJに対して最近では外科療法の有効性が報告されるようになった。今回80歳以上の高齢者に発生したMRONJに対する治療法と予後について後ろ向きに検討した。3施設で加療を行ったMRONJ180例(80歳以上66例,80歳未満114例)の背景因子や治療法の差,予後の差,および治癒率に影響する因子について,Fisherの正確検定,One-way ANOVA,Kaplan-Meier法,Log rank検定,Cox比例ハザードモデルにより解析を行った。80歳以上の高齢者では骨粗鬆症で長期間骨吸収抑制薬が投与されている患者が多かった。治療法は年齢にかかわらずほとんどの患者で外科療法が選択されており,年齢による治癒率の差はなかった。治癒率に関連する因子として,原疾患(骨粗鬆症/悪性腫瘍),治療法(外科療法/保存療法),術前CTにおける骨膜反応の有無の3変数が独立した因子となっていたが,年齢は治癒率とは関連性はみられなかった。これらのことから,MRONJは年齢よりも原疾患やCT所見を主眼において治療法を選択することが望ましく,また若年者と同程度の予後が期待できるものと思われた。
著者
中澤 正博 森 宏樹 半田 潤 佐藤 輝重 小島 武文 大木 志朗 浜 洋平 戸原 玄
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.63-69, 2018-09-30 (Released:2018-10-27)
参考文献数
26

目的:本研究は,健常な後期高齢者を対象に,咀嚼能力の維持・向上を期待した簡便なトレーニング方法を検討することを目的とした。 方法:千葉県八千代市とその周辺地域在住の健常な後期高齢者30名(男性:9名,75~89歳,女性:21名,75~89歳)を対象とした。簡便なトレーニング方法としてガム嚙みトレーニングを1日3回30日間実施した。咀嚼能力は,グミ嚥下閾(ストローク),グミ嚥下閾(時間),咀嚼チェックガムで,嚥下能力は,反復唾液嚥下テスト(Repetitive saliva swallowing test:RSST)で,身体機能は,開眼片足上げで評価した。 結果:咀嚼能力はグミ嚥下閾(ストローク),グミ嚥下閾(時間),咀嚼チェックガムともに有意に向上した。嚥下能力に変化はなかった。身体機能は有意に向上した。 結論:ガム嚙みトレーニングを30日間実施することによって咀嚼能力や身体機能が向上したことは,ガム嚙みトレーニングが優れた機能訓練方法であることを示した。
著者
大内 謙太郎
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.96-101, 2017-09-30 (Released:2017-10-12)
参考文献数
22

前頭側頭型認知症(FTD)を有する患者に対して,亜酸化窒素吸入鎮静法にクラシック音楽の聴取を併用することにより,歯科処置を終了しえた症例を経験したので報告する。 患者は67歳,男性。義歯修理が予定されたが,連続する顎タッピングのために通常の治療は困難と判断され,全身疾患を有する患者の全身管理を専門とする全身管理歯科治療部へ紹介となった。既往歴として3年前にFTDと診断され,神経科精神科で外来加療中であった。 全身管理を担当する歯科麻酔科医が口腔内を診察したところ,患者は口腔内に飴玉を含んでいた。今回,口腔内の飴玉除去への拒否感が強く,また顎タッピングのために歯科治療の実施が困難であったため,亜酸化窒素吸入鎮静法とクラシック音楽の聴取を併用して精神鎮静を図り,3回の歯科処置を行うこととした。 1回目の歯科治療では,亜酸化窒素の投与開始3分後に飴玉を容易に吐き出した。2回目および3回目の歯科治療では,経鼻カニューラを装着したところ自発的に飴玉を吐き出した。亜酸化窒素吸入鎮静下で,顎タッピングなく3回の治療を終えた。 理解度の低い認知症患者に対しては,静脈内鎮静法や全身麻酔法が適応となる。前頭側頭型認知症患者の歯科治療において,亜酸化窒素吸入鎮静法を用いたところ,円滑に歯科治療を施行できたことから,亜酸化窒素吸入鎮静法も認知症患者の行動調整の一方法となりうることが示唆された。
著者
枝広 あや子 渡邊 裕 平野 浩彦 古屋 純一 中島 純子 田村 文誉 北川 昇 堀 一浩 原 哲也 吉川 峰加 西 恭宏 永尾 寛 服部 佳功 市川 哲雄 櫻井 薫
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-11, 2015-07-10 (Released:2016-12-02)
参考文献数
33

本文は,増加する認知症患者の背景と現状を鑑み,認知症患者に対する歯科口腔保健・歯科医療のあり方に関して整理を行い,現時点での日本老年歯科医学会の立場を表すものである。 日本老年歯科医学会は,高齢化が進むわが国で,高齢者歯科医療のあり方について積極的に取り組んできた。しかし,認知症患者に対する歯科口腔保健・歯科医療に対する取り組みは十分とはいえない。 近年,地域包括ケアがわが国の施策の中で重要なミッションの一つになっており,その中で“QOLの維持・向上”に対して歯科が大きな役割を果たす必要がある。そのためには,原因疾患や神経心理学的症状を理解し,病態の進行を的確に予測した継続的な支援計画と歯科治療計画を検討し,柔軟な対応を行うことが必要である。 本文で指摘した認知症発症と口腔との関係,認知症初期段階での早期発見への関わりの整備,歯科医療の意思決定プロセスの整備,歯科治療・口腔機能の管理などの指針の作成を科学的根拠のもとに進め,他の医療,介護・福祉関係者だけでなく,国民に十分な理解を得て,認知症患者の歯科的対応と歯科治療を充実させ,認知症患者のQOLの維持と尊厳保持を進めていくことが日本老年歯科医学会の使命と考える。そのために,日本老年歯科医学会は,日本老年学会,歯科関連学会と協働し,学際的および多職種と連携して認知症の諸問題の解決に取り組み,正しく必要な情報を社会に発信していく決意をここに示す。
著者
藤本 篤士
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.369-372, 2007-03-31 (Released:2011-12-05)
参考文献数
3
著者
服部 万里子
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.65-68, 2011 (Released:2012-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
4

It has been twelve years since Nursing Care Insurance was introduced in Japan. The population of Needed Long-Term Care exceeded five million in 2012, which is twice of that in 2000, the year the insurance started. The majority of them are over 85 years old. Care manager supports nursing-care service synthetically by assessing the need of Needed Long-Term Care and preparing plans for care.At care management, the condition of oral is hard to figure out just by seeing from outside and it is also difficult to let people open their mouths. This is the reason why the observation of oral condition is missed in many assessments of care needs. Most of the time both senior citizens and caregivers do not mention about their oral conditions unless they have pain or problems in biting. The problems of oral are gathered as“consumption ability”.In the research Hattori did in 2011, which objected care managers, the existence of dentistry in assessments was asked. Thirty-one percent answered that it is barely included and 33 percent answered that 10 percent of the assessments includes it. For the question, which asked about cooperation with dentists in the stage of care planning, 36 percent answered almost none and 52 percent answered that it is carried only for about 10 percent of the total case. It is clear that the cooperation with dentists and care managers is very little in the actual situations.It is required to not giving up eating by using mouths, to prevent infectious diseases by oral care and to position the management of tooth loss or conformity of artificial tooth.
著者
岩片 信吾 西 克師 河野 正司 石岡 靖
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.89-96, 1994-11-30 (Released:2014-02-26)
参考文献数
18

顎関節は, 加齢に伴い形態学的に変化することが知られている。しかし顎関節の形態的変化に対応した下顎頭運動の変化にっいては, これまで十分には明らかにされていなかった。本研究では高齢で, かっ歯の欠損が少なく, 咬頭嵌合位の安定した者の下顎頭の運動路を詳細に分析し, その変化の機構について考察した。被験者は, 60歳以上の高齢者10名 (60~79歳) とし, 対照は, 25歳未満の若年者11名 (19~24歳) とした。前方滑走運動及び側方滑走運動時の切歯点及び解剖学的下顎頭中央点における運動路の形態の特徴について分析した。その結果, 以下のことが明らかになった。1. 切歯点の運動路には, 高齢者と若年者との間に差が認められなかった。2. 前方滑走運動時の下顎頭運動路および非作業側下顎頭運動路の矢状面投影角は, 高齢者の方が, 若年者よりも小さい値を示した。また, 前方滑走運動時の下顎頭運動路の彎曲度は, 高齢者の方が若年者よりも大きい値を示した。これらの結果は, 高齢者では関節隆起後方斜面の平坦化が生じているという事象に対応していると考えられる。3. 作業側下顎頭の移動距離および非作業側下顎頭運動路の水平面投影角と彎曲度には, 高齢者と若年者との間に差が認められなかった。これらの項目は, 主に側頭下顎靱帯の状態と関係していると考えられることから, 高齢者でも咬合状態の変化が少ない場合には, 靱帯の変化は少ないことが示唆された。