著者
友竹 偉則 後藤 崇晴 石田 雄一 内藤 禎人 荒井 安希 清野 方子 渡邉 恵 市川 哲雄
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.309-319, 2018-12-31 (Released:2019-02-20)
参考文献数
23

顆粒が配合された歯磨剤では,その顆粒がインプラント周囲溝に侵入,残留することで,インプラント周囲組織の炎症を惹起する可能性が懸念される.そこでメインテナンス受診者において,歯磨剤の使用状況とインプラント周囲組織の状態を調査し,顆粒配合歯磨剤を使用した歯磨き試験を行い,インプラント周囲組織の炎症と顆粒の侵入に関して検討した.メインテナンス受診の55名,臼歯部に装着したスクリュー固定式の上部構造78装置を支持するインプラント145本を対象とした.上部構造周囲の歯垢付着とインプラント周囲粘膜の炎症の有無を評価した.顆粒配合歯磨剤の使用者では顆粒の残留を観察した.インプラント周囲粘膜の形態を計測した後,上部構造を再装着して顆粒配合歯磨剤を使用した歯磨き試験を行い,顆粒侵入の有無を確認した.観察調査と歯磨き試験から,周囲組織の炎症の有無とインプラント周囲粘膜の形態における顆粒の侵入の有無との関連について分析した.日常での顆粒配合歯磨剤の使用は19名で,6名14本のインプラントに顆粒が残留していたが,炎症の有無とは相関を認めなかった.顆粒配合歯磨剤を使用した歯磨き試験では55名中13名22本のインプラントで顆粒が侵入しており,炎症の有無と相関を認めなかった.本研究の結果から,歯磨剤に配合された顆粒がインプラント周囲溝に侵入して残留することと周囲粘膜の炎症との関連は少ないことが推察された.
著者
枝広 あや子 渡邊 裕 平野 浩彦 古屋 純一 中島 純子 田村 文誉 北川 昇 堀 一浩 原 哲也 吉川 峰加 西 恭宏 永尾 寛 服部 佳功 市川 哲雄 櫻井 薫
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-11, 2015-07-10 (Released:2016-12-02)
参考文献数
33

本文は,増加する認知症患者の背景と現状を鑑み,認知症患者に対する歯科口腔保健・歯科医療のあり方に関して整理を行い,現時点での日本老年歯科医学会の立場を表すものである。 日本老年歯科医学会は,高齢化が進むわが国で,高齢者歯科医療のあり方について積極的に取り組んできた。しかし,認知症患者に対する歯科口腔保健・歯科医療に対する取り組みは十分とはいえない。 近年,地域包括ケアがわが国の施策の中で重要なミッションの一つになっており,その中で“QOLの維持・向上”に対して歯科が大きな役割を果たす必要がある。そのためには,原因疾患や神経心理学的症状を理解し,病態の進行を的確に予測した継続的な支援計画と歯科治療計画を検討し,柔軟な対応を行うことが必要である。 本文で指摘した認知症発症と口腔との関係,認知症初期段階での早期発見への関わりの整備,歯科医療の意思決定プロセスの整備,歯科治療・口腔機能の管理などの指針の作成を科学的根拠のもとに進め,他の医療,介護・福祉関係者だけでなく,国民に十分な理解を得て,認知症患者の歯科的対応と歯科治療を充実させ,認知症患者のQOLの維持と尊厳保持を進めていくことが日本老年歯科医学会の使命と考える。そのために,日本老年歯科医学会は,日本老年学会,歯科関連学会と協働し,学際的および多職種と連携して認知症の諸問題の解決に取り組み,正しく必要な情報を社会に発信していく決意をここに示す。
著者
松香 芳三 萩原 芳幸 玉置 勝司 竹内 久裕 藤澤 政紀 小野 高裕 築山 能大 永尾 寛 津賀 一弘 會田 英紀 近藤 尚知 笛木 賢治 塚崎 弘明 石橋 寛二 藤井 重壽 平井 敏博 佐々木 啓一 矢谷 博文 五十嵐 順正 佐藤 裕二 市川 哲雄 松村 英雄 山森 徹雄 窪木 拓男 馬場 一美 古谷野 潔
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.281-290, 2013 (Released:2013-11-06)
参考文献数
3
被引用文献数
2 1

目的:(社)日本補綴歯科学会は病態とその発現機序の把握に基づく適切な補綴歯科治療を国民に提供するために,補綴歯科治療における新たな病名システムを提案した.これは患者に生じている「障害」を病名の基本とし,この障害を引き起こしている「要因」を併記して病名システムとするものであり,「A(要因)によるB(障害)」を病名システムの基本的な表現法としている.本研究の目的は考案した方法に従って決定した補綴歯科治療における病名の信頼性と妥当性を検討することである.方法:模擬患者カルテを作成し,(社)日本補綴歯科学会診療ガイドライン委員会で模範解答としての病名(以下,模範病名)を決定した.その後,合計50 名の評価者(日本補綴歯科学会専門医(以下,補綴歯科専門医)ならびに大学病院研修歯科医(以下,研修医))に診断をしてもらい,評価者間における病名の一致度(信頼性)ならびに(社)日本補綴歯科学会診療ガイドライン委員会による模範病名との一致度(妥当性)を検討した.結果:評価者間の一致度を検討するための算出したKrippendorff’s αは全体では0.378,補綴歯科専門医では0.370,研修医では0.401 であった.Krippendorff’s αは模範病名との一致度の高い上位10 名の評価者(補綴歯科専門医:3 名,研修医:7 名)では0.524,上位2 名の評価者(補綴歯科専門医:1 名,研修医:1 名)では0.648 と上昇した.日常的に頻繁に遭遇する病名に関しては模範病名との一致度が高かったが,日常的に遭遇しない病名は模範病名との一致度は低い状況であった.さらに,模範病名との一致度とアンケート回答時間や診療経験年数の関連性を検討したところ,相関関係はみられなかった.結論:全評価者間の一致度を指標とした本病名システムの信頼性は高くはなかったが,模範病名との一致度の高い評価者間では一致度が高かった.日常的に遭遇する補綴関連病名については模範病名との一致度が高かった.以上から(公社)日本補綴歯科学会の新しい病名システムは臨床上十分な信頼性と妥当性を有することが示唆された.
著者
兒玉 直紀 築山 能大 有馬 太郎 市川 哲雄 窪木 拓男 佐久間 重光 新谷 明喜 高津 匡樹 津賀 一弘 坪井 明人 中野 雅徳 成田 紀之 波多野 泰夫 藤澤 政紀 船登 雅彦 鱒見 進一 松香 芳三 皆木 省吾
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.222-227, 2009 (Released:2012-03-29)
参考文献数
8

目的:顎関節症患者に対する受診ごとの診療時間に関する報告はない。今回,大学病院顎関節症外来ならびに一般開業歯科医院を対象に顎関節症のスプリント治療に要する時間について調査を行い,その特性を明らかにすることを目的とした。 方法:大学病院顎関節症外来14施設および一般開業歯科医院33施設にて2か月間の調査を行った。スプリント治療を選択された顎関節症患者を対象に,スプリントの種類,各診療内容および要した時間を調査項目として施設間で比較検討した。 結果:1回当たりの診療時間に関して,大学病院顎関節症外来受診患者(以下,大学群と略す)のほうが一般開業歯科医院受診患者(以下,開業医群と略す)に比べて有意に長かった。また,初診時の診療時間についても大学群のほうが開業医群に比べて長い時間を要した。しかし,スプリント装着および調整に要する時間について有意差は認められなかった。 結論:顎関節症患者の1回当たりの診療に要する時間は両施設ともに比較的長時間であることがわかった。スプリント装着に30分以上要する割合は大学群においては44%であり,開業医群においては22%であった。スプリント調整に20分以上要する割合は,大学群においては48%であり,開業医群においては33%であった。
著者
檜原 司 後藤 崇晴 柳沢 志津子 中道 敦子 市川 哲雄
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.33-47, 2017-06-30 (Released:2017-07-26)
参考文献数
40

本研究では身体的フレイルとオーラルフレイルに着目し,被験者自身が自覚する兆候の実態をアンケート調査を用いて検討した。アンケート調査に同意が得られた1,214名を対象とした。本研究は徳島大学病院臨床研究倫理審査委員会の承認を得て行った。身体的フレイルに関連する質問項目として,体重,疲労感,握力,活動量,歩行速度に関する5項目を,オーラルフレイルに関連する質問項目として,咀嚼や嚥下機能に加えて,残存歯,唾液,舌の機能に関する7項目を設定した。質問項目は4段階で評価させ,得点が高いほど虚弱傾向が強くなるように設定した。身体的フレイルに関連する総得点は,男女ともに60歳代が最も低く90歳代が最も高い値を示し,女性の場合60歳代の得点は70歳代と比較して有意に低い値を示した。オーラルフレイルに関連する総得点は身体的フレイルの得点と比較して,年齢階級が上がるごとに漸増する傾向が認められた。オーラルフレイルに関連する質問項目に関しては,一様の増加傾向を示す項目が多かったが,そのなかでも食べこぼし,嚙めない食べ物に関する項目の得点において,虚弱傾向を示す3点,4点を示す被験者数はともに50~60歳代間で有意に増加した。以上の結果より,オーラルフレイルにとっては50~60歳代が一つの重要な年代であり,特に「食べこぼし」や「嚙めない食べ物」に関する評価は重要である可能性が示唆された。
著者
市川 哲雄 誉田 栄一 矢儀 一智 南 憲一
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

アンケート調査でフレイル得点もオーラルフレイル得点も年齢とともに一様の増加傾向を示した.歯が悪いこと,唾液,食べこぼしがフレイル得点に関係していた.食生活と摂食行動は 40歳以降で適正な方向に推移した.オトガイ舌骨筋断面積と開口力,舌圧,嚥下の持続時間に比例し,筋量と咀嚼・嚥下機能との関連性が示された.咬合支持喪失群においては,速筋化が見られた.生体電気インピーダンス分析で,上腕と咬合力に相関が,舌圧は認められなかった.以上の結果,筋量関係が最も有効であり,バイオマーカーとしても筋量を示す指標が重要であり,当初予想した速筋,遅筋等の運動速度については指標になり得る知見は得られなかった.
著者
市川哲雄 [ほか] 編
出版者
医歯薬出版
巻号頁・発行日
2016
著者
市川哲雄編
出版者
医歯薬出版
巻号頁・発行日
2006