著者
中島 敦司 養父 志乃夫 櫛田 達矢 永田 洋
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.69-75, 1997-05-16
参考文献数
18
被引用文献数
6

サザンカを3月18日にビニールハウスへ搬入し4月18日に再び自然の野外に移した。フラッシュの終了した5月8日に, 半数の個体に対して緩効性肥料(10-10-10)を1個体当り20g 施し, 5月12日, 6月11日, 7月11日, 8月10日, 9月9日の各日に, 18時間日長に調節した18℃恒温または25℃恒温のグロースチャンバー内か蛍光灯下の圃場に移したところ, 花芽の形成は5月12日に25℃および野外-長日に移した区で早くなった。また, 花芽の形成割合と土用芽の発生割合は負の関係にあった(γ=0.78)。さらに, 発育を続けている花芽を着生したままの葉芽は頂芽, 側芽ともに二次成長することはなかった。土用芽は同一節位上に形成された花芽が発育しなかったか, 形成された花芽のすべてが落下したか, 花芽を形成しなかった頂芽においてのみ認められた。そして, 開花率と土用芽の発生割合の間には有意な負の相関が示された(γ=-0.53)。この結果, サザンカの花芽と葉芽の発育および展開は相互に抑制する関係にあると考えられた。
著者
倉田 益二郎
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, 1939-11-10
著者
谷本 丈夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.155-160, 1976-05-25

前報に引き続き, アカマツ苗木の庇陰下での生長経過をしらべた。3月7日に処理を開始し6月9日, 7月27日, 9月13日と11月14日に苗を掘り取り幹, 根, 葉の量などを測定した。苗高は生長期の前半は処理による差は少なかった。後半の生長は冬芽の伸長によるものであるが, 弱い庇陰区ほど生長がよかった。地際直径は早い時期から弱い庇陰区ほど生長がよかった。当年の針葉の平均の長さと旧葉も含めた個体あたりの葉の合計の長さはともに庇陰区のほうが対照区よりも大きかった。それぞれが最大となる庇陰の程度を相対照度であらわすと, 針葉の平均の長さは6月9日57.7%, 7月27日56.6%, 9月13日と11月14日は40.0%, 個体あたりの葉の合計の長さはそれぞれ59.7%, 61.1%, 60.4%, 60.4%と計算された。庇陰処理の影響は苗の部分でちがい, 全重量に対する葉の重量比は6月9日に庇陰の程度が強いほど小さかったが, 7月27日, 9月13日には庇陰処理区内で最大となり, 11月14日には庇陰の程度が強いほど大きくなった。幹の重量比はどの時期とも庇陰の程度が強くなるほど増加した。根の重量比は幹と反対にどの時期も庇陰の程度が強くなるほど減少している。平均個体重, 葉重はどの時期も庇陰の程度が弱いほど生長がよかった。
著者
佐藤 敬二
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
林學會雑誌
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.299-300, 1932-04-10
著者
酒井 昭 石川 雅也
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-20, 1979-01-25

亜高山または亜寒帯性針葉樹の冬芽は-30〜-40℃の温度範囲で枝条原基のみが凍死することが知られている。このことは枝条原基がこの温度範囲まで過冷却後細胞内凍結をおこして死ぬ可能性を示している。このことを確かめるために, 針葉樹の冬の芽の示差熱分析を行なった。亜高山または亜寒帯性モミ属の冬芽は-5〜-8℃で外部芽鱗が凍結したのち, 枝条原基は約-30℃まで過冷却した。また, 芽から枝条原基, その直下にある厚角組織およびそれらの外側をとりまくうすい内部芽鱗をとり出し熱分析したところ, 枝条原基は約-30℃まで過冷却した。しかし, 開舒20日前の春の芽の枝条原基は-15℃までも過冷却しなかった。暖帯性モミ(A.firma)の冬芽の枝条原基は, その凍死温度である-20〜-22℃まで過冷却した。しかし, トウヒ属の冬芽では-5〜-8℃での外部芽鱗の凍結につづき, または少しおくれて枝条原基が凍った。カラマツ属の冬芽の示差熱分析では, 葉原基の凍結に由来すると思われる多数の小さい熱の放出が認められた。温帯性落葉広葉樹と異なり, 針葉樹の枝の木部では-30〜-40℃までの過冷却は認められなかった。
著者
柴草 良悦 木俣 聰彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.393-397, 1976-11-25

芽の内部構造の変化からトドマツの自発休眠の開始時期を調べ, また1975年11月7日(自発休眠中)と12月22日(他発休眠中)に採取したトドマツの芽の原基体をα-ナフタレン酢酸(NAA)を添加したMS培地で無菌的に培養して, NAAに対する生長反応から休眠の深さを洞察しようと試みた。自発休眠は, 葉原基およびクラウンの完成後, 9月中旬に始まると考えられる。12月22日に採取した芽の原基体の葉原基は, 11月7日に採取したものより盛んに発達し, また11月7日より12月22日においては, より低濃度のNAAで葉原基は発達した。また, 培養した芽の原基体の軸長は, 低濃度のNAAにおいてわずかに大きかった。クラウンの下部の切り口面より発達したカルスは, 11月7日と12月22日の間でその形成において差は認められなかったが, 両区とも高い濃度のNAAにおいてよかった。培養の際, 他発休眠中の芽の原基体は自発休眠中のものより, 軸や葉原基の上部の細胞伸長の点で, NAAに対する反応が著しかった。
著者
猪瀬 光雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.224-228, 1983-06-25
被引用文献数
1
著者
浅川 澄彦 猪熊 友康
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.331-335, 1961-10-25
被引用文献数
1

クロマツとアカエゾマツのタネについて, 発芽における光感性をしらべた。いずれのタネも, 赤色光の短時間(30分)照射によつていちじるしく発芽が促進される。このような光の效果は, 0.2%の硝酸カリによつて部分的におきかえられる。クロマツのタネの発芽は, くりかえし照射したほうがよく促進される。いずれのタネの場合にも, 赤色光による效果は赤外光照射によつてうちけされるが, その程度は, タネをまきつけてから赤色光をあてるまでの時間, および赤色光をあててから赤外光をあてるまでの時間によつてことなる。クロマツ・アカエゾマツのタネを冷処理すると, 発芽するのに光を必要としなくなることがしられているが, 冷処理されたタネには赤外光照射による阻害があらわれないから, 光化学反応を中心とした光感経路にかわりうるようなほかの経路が, 冷処理のあいだにすすんだものとかんがえることができる。クロマツとアカエゾマツのタネは, 冷処理をうけると光にたいしてちがった反応をしめすようになるが, そのうちでもっともいちじるしいものは, アカエゾマツの冷処理されたタネの場合で, 赤外光によってかえって発芽が促進されるようになる。
著者
梶原 幹弘
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.50-55, 1989-02-01
被引用文献数
4

現実の幹曲線が相似であれば完満度は等しいとみなし、現実の幹曲線を直径方向、樹高方向ともに樹高分の1に縮めた一種の相対幹曲線における直径の減少度を完満度と定義することを提案した。この相対幹曲線は正常相対幹曲線とこれに対応する形状比とに分解でき、前者の後者に対する商として与えられる。多くの伐倒木での測定値を用いて、スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツの同齢林における完満度の変化を調べた結果、次のことがわかった。1)幹の上部では完満度の経年変化は比較的小さかったが、一定の樹齢までは幹の下部で完満度が著しく大きくなった。2)高い度管理状態のものほど完満度が大きかった。3)スギにおける密度管理状態による完満度の差は、樹種間におけるそれよりも大きかった。4)完満度の垂直的変化のパターンには樹種間における差異が認められた。これらの結果からすると、ここに提案した完満度の定義と表現は実用的に有効であるといえる。
著者
森口 喜成 後藤 晋 高橋 誠
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.161-169, 2005-04-01
参考文献数
99
被引用文献数
2

採種園研究に分子マーカーが利用されることにより, 従来技術では制限のあった採種園における構成クローンの同定, 園外からの花粉混入率, 自殖率, 次代に対する各構成クローンの花粉親としての寄与率に関する知見が急速に蓄積されつつある。これらの研究から, 数%程度の誤植, 30%以上の花粉混入率, 5%以下の自殖率が多くの採種園で一般的であることが示された。また, 報告された構成クローンの花粉親としての寄与率は, いずれも均等交配から著しく偏っていた。これらの知見から, 1)採種園構成クローン以外の混入個体を除去するために, 分子マーカーを用いてクローンの配置確認を行う, 2)花粉混入率を低下させるために, 同樹種の少ない場所に採種園を造成する, 着花促進, SMP処理などによって空中花粉中の園内花粉の割合を大きくする, 3)自殖率を低下させるために, クローンあたりのラメート数を少なくする, 4)均等交配を実現するために, 各クローンの雄花着花量を均等化する, 開花期の著しく異なるクローンを除去する, といった遺伝的管理が重要だと考えられた。
著者
佐藤 創 鳥田 宏行 真坂 一彦 今 博計 澁谷 正人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.307-312, 2009-10-01
被引用文献数
1 7

2004年台風18号により風倒被害を受けた,北海道美唄市内の防風保安林の風倒要因を解析した。この台風による最大風速は21m/sであった。調査を行った防風林はヨーロッパトウヒ,カラマツ,シラカンバ,ヤチダモ人工林である。防風林に21箇所の方形区を設定し,各個体の胸高直径と「根返り」,「幹折れ」,「無被害」別の被害状況を記録した。また,深さ別の土壌の硬さを簡易貫入試験機により測定した。さらに,樹種別に風倒被害の異なる要因を知るために,幹を側方に引き,根返りを発生させる際の最大抵抗モーメントを測定した。数量化2類による解析の結果,カラマツが最も被害を受けやすく,次いでヨーロッパトウヒ,シラカンバ,ヤチダモの順に風倒被害を受けにくくなった。胸高直径は30cmをピークに被害を受けやすかった。被害の種類については,カラマツとシラカンバは根返りしやすく,ヨーロッパトウヒは幹折れしやすかった。土壌の硬さは被害にあまり影響していなかった。根返り抵抗モーメントはヤチダモ>シラカンバ≒カラマツ≒ヨーロッパトウヒとなり,樹高や葉量の違いとともに,樹種別の風倒被害の違いを引き起こす要因となっていると考えられた。