著者
伊藤 進一郎 中村 宣子
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.262-267, 1984-07-25
被引用文献数
3

1976〜1979年の4年間, 東京大学農学部小石川樹木実験圃場において樹木の白紋羽病被害の発生状況について調査を行った。ヤマナラシの生枝による菌の捕捉調査および被害木の分布状態から本圃場には白紋羽病菌(Rosellini anecatrix)が広く分布していることが判明した。調査期間中に45科158種の樹木で発病が観察されたが, そのうち135種が未記録の新宿主であった。発病樹種のなかでは, トチノキ, ブナ, ウメモドキ等では被害木の発生本数が多かった。一方, コウヨウザン, シュロ, クマザサ等では, 土壌中で本菌の生息が確認された位置にありながらまったく被害が発生しなかった。被害は根元直径2cm以下, 樹高1.5m以下の幼樹に集中してみられ, 夏期に発生が多かった。本圃場では, 1960年代に導入改良ポプラ類の系統保存が行われたが, その際本病に罹病した根が未処理のまま残された。このときのポプラ植栽位置と今回罹病個体が集中して認められた位置とがきわめてよく一致するところから, これら罹病ポプラの残根が本圃場での白紋羽病の発生源となり, さらにそこから若齢の植栽樹に被害が拡大したものと推測された。
著者
梶原 幹弘
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.201-206, 1983-06-25
被引用文献数
2

異なる相対高での正形数λ_<0.1h>, λ_<0.3h>, λ_<0.5h>, λ_<0.7h>の変化を検討した。各正形数は, それに対応した相対幹曲線の回転体体積によって定まる。異なる年齢での二つの相対幹曲線を比較してみると, 基準とした直径の相対高の上と下とでは, どの場合でもそれらの相対半径の大小関係が逆転している。このために生ずる相殺作用が, 両者の正形数の差異を弱めることになる。このような効果は, 正形数の種類によって異なる。76年生のヒノキの例では, λ_<0.3h>で最も大きく, λ_<0.5h>でも起こったが, λ_<0.1h>やλ_<0.7h>ではほとんど認められなかった。これが, λ_<0.3h>やλ_<0.5h>, とくにλ_<0.3h>がλ_<0.1h>やλ_<0.7h>にくらべて相対幹形の変化の影響を受けがたい原因である。相対幹形の変化が大きい比較的若い年齢においても, λ_<0.3h>の変化はわずかであった。一方, この間にλ_<0.1h>は増加, λ_<0.5h>とλ_<0.7h>は減少を示した。その後, 相対幹形が安定するにつれて, いずれの正形数もほぼ一定となることがわかった。
著者
岩出 亥之助
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.387-391, 1938-07-10
著者
北村 博嗣
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.400-408, 1956-10-25

福島県喜多方営林署内天然生キリ材について圧縮強さ, 曲げ強さ, 及び比重等を調べた。その結果を前に調べた新潟県産人工植栽林の材と比較しながらまとめると次の如くになる。1)圧縮及び曲げ試片より求められた平均年輪幅をみると福島は平均7.58mm, 新潟19.1mmで新潟は福島の2.5倍に及ぶ。更に辺材部と心材部がどのような年輪幅で構成されているかをみると, 両地方の材共に心材部の方が年輪幅が広い。つまり, 幼令の時に大きな年輪幅を形成し壮老令になるに従い狭い年輪幅を造るが, 新潟県産の場合は生長のよい時に平均18〜19mm以上の年輪を, 福島産の場合は7〜8mm以上の年輪を多く造つている。2)各試片の平均年輪幅とその試片の比重との関係をみると年輪幅の増大と共に比重は低下する。一般環孔材と逆の関係であるが柔細胞が多いための影響と考えられるが今後明らかにしたいまた前報した新潟産のものと合わせてみると平均年輪幅17〜19mm付近に最小の比重を与えるものと推定され, それ以上年輪幅が広くなると比重は逆に上昇する(第5,6図参照)。3)福島産材の気乾比重は0.30,新潟産材のそれは0.25で福島の方が高い。これは福島の年輪幅が狭いことおよび同一年輪幅でも福島の方が比重が高いことに原因がある。辺心材間比重の大小は福島産材と新潟産材とで少しく異なるが両者同一程度か, あるいは心材の方が高い。心材部は年輪幅広いものを多く持つているが(広いものは比重が小さい), 同一年輪幅でも心材の方が辺材より比重が高いために広い年輪を持つ心材が高い比重を示す結果となる(第7図参照)。4)圧縮強さを求めた福島産材は大約250kg/cm^2,新潟産材は200kg/cm^2で福島の方が強い平均年輪幅が大きくなると圧縮強さは減少してくる。これは比重と関係のあることで福島産材のように年輪幅割合狭くその増加と共に単純に比重が減少してくる場合は圧縮強さも単純に減少してくるといえるが, 新潟産材のように年輪幅が極端に広くなり, 比重が年輪幅に対し複雑に変化する場合は, 圧縮強さの変化も複雑となり, 平均年輪幅17mm付近で一旦圧縮強さの谷を出現し, 以後年輪幅の増加と共に強さの上昇をみる(第9図参照)。5)比重と圧縮強さの関係はσ_<12-15>=9・γー25で表現した。ここにσ_<12-15>は含水率12〜15%の時の圧縮強さ(kg/cm^2)γは試験時の比重の1O0倍値である。6)辺材と心材の圧縮強さを比較してみると, 心材は辺材と同程度或いはそれ以上の強さを持つている。心材の年輪幅は広いものが多いが同一年輪幅でも心材の方が比重高く圧縮強さが高いためである(第8図参照)。7)曲げ試験の結果は, 福島産材曲げ破壊係数450kg/cm^2曲げ弾性係数560×10^2kg/cm^2新潟産材曲げ破壊係数370kg/cm^2,曲げ弾性係数530×10^2kg/cm^2であり(第3表参照)福島の方が強い。8)比重と曲げ強さの関係は直線式を適用しσ_<11-17>=20・γ-156とした。ここにσ_<11-17>は含水率11〜17%の曲げ破壊係数kg/cm^2,γはその時の比重の100倍値である。9)年輪幅により曲げ強さが変化するが年輪幅の増加と共に直線的に強さが低下するとみられる(第17図参照)。新潟産材の場合は比重あるいは圧縮強さの時と同様に年輪幅17mm, 付近で一旦曲げ破壊係数の下降をみて以後再び上昇をみる。10)辺材と心材で曲げ強さの差はない。このことは新潟産材についてもいえたことである。比重あるいは圧縮強さと同様に同一年輪幅でも心材の方が曲げ強さが高いことが関係している。11)曲げ弾性係数σ_Bと比重γの関係式は, σ_E=210000γ-7900と与えられた。
著者
堀 高夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.233-241, 1979-07-25

この報告では, 集材架線において, 荷上索を操作して荷重を上下する際に, 荷重が軌索・荷上索に及ぼす衝撃作用を理論的に解明することを試みた。ここでは架空索の基礎理論として放物線索理論を採用した。またモデル架線として, タイラー式架線を原型とするものと, ホイスティングキャレッジ式架線を原型とするものとをとりあげ, 理論解析の対象とした。これらのモデル架線を軌索・荷上索(後者のモデルでは巻上索)・搬器・荷重よりなる一つの系と考え, その上下運動のみに着目し, まず系の位置エネルギーおよび運動エネルギーの算定式を与え, ラグランジュの運動方程式を適用することにより, 荷重の動的作用を決定するための微分方程式を誘導した。ついで荷重の動的作用が過大でない場合に対して近似理論を誘導し, 軌索および荷上索または巻上索に対する衝撃係数を直接求めるための近似式を与えた。また数値計算結果から, 衝撃係数について架線の諸条件・荷上げ用ドラム操作上の条件等との関係を検討し, その性格を明らかにした。
著者
八巻 一成 広田 純一 小野 理 土屋 俊幸 山口 和男
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.219-226, 2000-08-16
被引用文献数
7

森林レクリエーション計画においては, 利用ニーズに合った多様なレクリエーション体験の提供が重要な課題である。本研究では, このような視点からレクリエーション空間の計画, 管理のあり方を示したROS(Recreation Opportunity Spectrum)を取り上げ, わが国の森林レクリエーション計画における有効性を探った。まず, わが国における森林レクリエーション空間の実態とレクリエーション計画システムの現状を考察し, 課題を明らかにした。つぎに, ROSの成立過程, 基本概念, 計画作成プロセス, 適用事例について解説し, ROSとは何かを明らかにした。最後に, わが国の森林レクリエーション計画における意義および役割を検討した。その結果, ROSの特色であるレクリエーション体験の多様性という視点が非常に有効であると考えられた。
著者
奥泉 久人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.293-302, 1993-07-01
被引用文献数
2

九州地方のスギさし木在来品種は, 成立の古さ, 種苗の由来などによって7系統に分けられている。林木の遺伝育種の研究機関に育種母材料として集植されている7系統57品種計323個体の材料を用い, 各品種内の構成クローン数を調べた。アイソザイムは, ポリアクリルアミドゲル垂直平板電気泳動法で9酵素種, 12遺伝子座の分析を行った。3遺伝子座(Gdh, Got-2,Pgm-2)については変異がなく, 9遺伝子座(Shd-1,Shd-2,6Pg-1,6Pg-2,Dia-3,Mnr-1,Got-1,Lap, Aap-1)では, 複数の遺伝子型が検出された。これらのアイソザイムの遺伝子型の違いにより, クローンの識別を行った結果, メアサ系統の品種のうち, 2品種は複数クローン品種であった。また, ホンスギ系統, アヤスギ系統, ヤブクグリ系統, オビスギ系統, 在来実生由来系統, 吉野スギ由来系統に分類されているそれぞれ2,5,1,15,4,9の品種が, 少なくとも2〜8クローンから構成されている複数クローン品種であった。
著者
高橋 邦秀
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, 2003-02-16

北海道で編集をお引き受けして早くも3年がたってしまいました。編集委員会では当初,表紙デザイン,審査の促進,短報審査方法の改善などいくつかの課題を扱ってまいりました。これらの課題については会員,論文審査をお願いした方々,編集委員諸氏のご協力によってなんとかハードルを越えることができました。最後まで残っていたのが「特集」企画でした。この特集については,その目的,内容,他誌(とくに森林科学)との仕分け等について論議してまいりましたが,編集委員会としてはまだ明確な方針を示せるほど議論が煮詰まっておりません。しかし,特集の中身としては,1.境界領域研究,時代を先取りするような課題,既存分野についての問題提起などに関するレビューや論文数編からなるものとする,2.コーディネーターから企画書を提出していただき,編渠委員会で承認後,コーディネーターと担当編集委員に論文等の取りまとめや調整をお願いする,3.論文等については投稿規定に従い審査を行う,4.特集企画は年2回を目標とすることなどが,編集委員会で了承されています。当面はコーディネーターを編集委員からお願いし,掲載内容について会員諸氏のご意見をいただきながら,よりよいものにするように編集委員会として検討していきたいと考えています。第1回目の特集は「森林レクリエーション研究の展開」です。森林レクリエーションが多くの人々の意識には刷り込まれつつあると思いますが,研究としてどのような切り込みをしていくのか,本特集がこれからの研究展開の起爆剤となることを期待しております。2回目の85巻3号では「天然林施業に貢献する生態学」を予定しています。今後,特集内容を充実させ,会員拡大へも波及させることができるようテーマや内容を検討していきたいと思いますので,会員各位の積極的なご提案を編集委員にお寄せいただくようお願い致します。