著者
田畑 仁
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.12-24, 2017-01-10 (Released:2019-09-26)
参考文献数
86

従来のエレクトロニクスデバイスでは,室温(環境熱雑音)に対して十分に高いエネルギーを投入することで,高速かつ正確な演算を実現している.これに対して生体系の行う情報処理は,熱雑音(揺らぎ)を巧妙に活用することによって,処理速度は低速であるが,熱雑音と同レベルの超低消費エネルギーで確率的に動作している.この“揺らぎ”情報処理の鍵は,環境からの“熱”エネルギーを活用する点にある.これまで“厄介者”であった“環境中の雑音(揺らぎ)エネルギー”を生かす逆転の発想による生体に学んだ超低消費電力デバイスの実現が期待される.
著者
相馬 清吾
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.507-511, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)
参考文献数
22

物質中の電子構造を研究する強力な実験手法である光電子分光について,基礎的な原理と特徴を解説し,最近の重要な展開として手法の顕微化を取り上げる.10ミクロンの空間分解能を達成した最新装置について概説し,今までは見えてこなかったミクロの世界の電子構造について具体例を示しながら議論する.この顕微化によって光電子分光が測定可能な物質の種類は劇的に増える.新たに高度な電子状態分析を用いた研究展開を図る際に,本稿が手引きの1つとして役立てば幸いである.
著者
田中 昭二
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.940-948, 2000-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
7

低温超伝導現象に特有な実験結果が理解され,理論的完成に至る過程と,その応用について述べる.応用部門では線材とSQUIDがその主なもので,特に線材開発の歴史を簡単に説明する.高温超伝導については,その発見に至る過程と意義について説明し,その実用化に関する研究開発の現状について解説するとともに,その近未来の展望を述べる.
著者
福山 秀敏
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.472-479, 1992-05-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
32

銅酸化物高温超伝導体は,強相関系と考えられている.一方で,角度分解型光電子分光の実験によって,バンド計算と矛盾しないフェルミ面が観測されている.この二つの考え方は一見矛盾するように見えるが,強相関系では,励起エネルギーの大きさによって電子状態の特徴が本質申に異なることに注意すれば,それが解消すること,および,フェルミ面の形状をはじめとする低エネルギー励起が,強相関系に対する最も基本的なt-jモデルで記述されることがわかる.特に,現時点で重要な手がかりを与えている磁気的励起に関する実験と理論を比較することにより,ドープ量と温度の平面上での相図に対する統一的理解の可能性を探る.
著者
下村 明司
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.50-52, 2023-01-01 (Released:2023-01-01)
参考文献数
2

2 0 0 0 OA 熱電冷却展望

著者
青木 昌治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.215-228, 1957-06-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
村岡 克紀 内野 喜一郎 山形 幸彦
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.220, 2004-02-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
8

パルスレーザーのもつ高いパワーと時間的・空間的な高いコヒーレンスとを組み合わせて,ほかの手法では得られない独特のプラズマ計測法が発展させられてきた.本稿では,その最も代表的な手法であるレーザートムソン散乱法とレーザー蛍光法について,最近の動きを中心に報告する.
著者
金光 義彦
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.680-683, 2017-08-10 (Released:2019-09-26)
参考文献数
38
被引用文献数
1

有機無機ハイブリッド材料の1つであるハロゲン化鉛ペロブスカイト半導体は,太陽電池をはじめとしたフォトニクスにおける新しい機能性材料として注目されている.溶液法で作製できる高品質な半導体がもつ優れた光学特性について紹介する.
著者
高橋 克巳
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.484-490, 2022-08-01 (Released:2022-08-01)
参考文献数
25

デジタルツインコンピューティングは機能の技術開発が牽引(けんいん)してきたが,その未来像や影響に関しては,議論が世の中から注目され始めたところである.本稿は先行するAIやプライバシーの規律を紹介し,デジタルツインコンピューティングの課題を安全,インテグリティ,責任,ネットワークなどの側面から述べる.
著者
金谷 正敏 大谷 昇 高橋 淳 西川 猛 勝野 正和
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.642-652, 1995-07-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
86
被引用文献数
2

広禁制帯幅半導体シリコンカーバイド(SiC)は,耐環境用デバイスやパイスーデバイス用半導体材料として,また, GaNなどの基板としても注目されている.従来, SiCバルク単結晶の育成は困難であったが,最新の改良型昇華法成長め研究開発により,大口径バルク単結畠成長が可能になった.6H形および4H形SiCの単結晶が成長できるようになり,数々のデバイス試作が行われている.結晶性改善においては種々の欠陥の中でデバイス作製上問題となるマイクロパイプ欠陥の低減も進展している.本稿では,進展著しいバルクSic単結晶研究の現状と今後の課題を述べる.
著者
森島 邦博
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.950-955, 2017-11-10 (Released:2019-09-26)
参考文献数
20
被引用文献数
1

2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響により炉心溶融が起きた福島第一原子力発電所は,現在,廃炉へ向けたさまざまな取り組みが進められている.その中でも宇宙線に含まれるミューオンがもつ極めて高い物質に対する透過力を利用することで大型構造物の内部を非破壊で可視化する技術(宇宙線ミューオンラジオグラフィ)により,原子炉内部の様子の一端が明らかになった.本稿では,筆者らが進めてきた原子核乾板による宇宙線ミューオンラジオグラフィの観測から得られた知見と現状を紹介し,原子炉底部の可視化の実証試験を進めている浜岡原子力発電所における最近の研究についても述べる.
著者
渡辺 俊哉 呉屋 真之 石出 孝
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.11, pp.659-667, 2022-11-01 (Released:2022-11-01)
参考文献数
50

レーザー加工は,高速かつ非接触の加工方法として幅広く製造現場に適用されている.レーザーのビームモードはシングルモードとマルチモードに分けられる.シングルモードは,集光性が良く微細加工などに適しているものの,高出力化が難しく発振器のコストが高いことから,これまで加工分野ではあまり普及してこなかった.マルチモードはシングルモードより集光性は劣るものの大出力化が可能であり,レーザー加工に広く適用されている.近年低コストの高出力シングルモードレーザーが市場投入されてきており,加工分野への適用も進められている.本稿では,レーザー加工に適用されるレーザー発振器,レーザー加工技術の開発の経緯,特徴について,事例を交えて解説する.
著者
十倉 好紀 永長 直人
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.124-130, 2015-02-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
37

磁性体中のスピン渦構造(スキルミオン)は,1原子層当たりでも多数個(102〜104)のスピンから成るが,その特有のトポロジーのために安定なナノ粒子として振る舞う.MnSiなどのカイラル(掌性)構造をもつ磁性体で,2009年にそのスキルミオン格子配列が中性子回折で,そして翌年に個々のスキルミオンが電子顕微鏡で実空間観察されて以来,スキルミオンは多くの関心を集め,その発現理論,材料探索,デバイス機能設計などの研究が進行中である.特に,室温でのスキルミオン観測,材料組成によるスピン渦のサイズや向きの制御,微小電流によるスキルミオンの駆動,マイクロ波整流効果の発見など,新デバイスの実現を期待させる成果も次々と報告され始めている.本稿では,その基礎学理から出発し,最新のスキルミオン研究成果を紹介し,次世代デバイスへの応用の展望を述べる.
著者
黒澤 忠弘
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.509-513, 2022-08-01 (Released:2022-08-01)
参考文献数
12

放射線は,その特性を生かしてさまざまな分野で活用されています.特に放射線治療や診断といった医療分野,また非破壊検査や滅菌といった工業分野で幅広く利用されています.これら放射線の利用においては,放射線の発生源のみならず,放射線の計測技術も重要な要素となっています.本稿では,医療,工業分野における放射線利用の現状や将来の展望,またそれぞれに必要となってくる放射線計測について紹介したいと思います.
著者
関野 敏正
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.1340-1343, 2001-11-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
1

インピーダンス測定は,電子回路,電子部品,および電子部品材料の特性評価において重要である.インピーダンス測定には,LCRメーターやインピ-ダンス・アナライザーと呼ばれる測定器が一般的に使用されている.ここでは,インピーダンス測定の基本と測定器の原理を説明し,実際の測定における注意点について解説する.