- 著者
-
丸山 宏二
- 出版者
- 日本繁殖生物学会
- 雑誌
- 家畜繁殖学雑誌 (ISSN:03859932)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.3, pp.145-154, 1991-09-25 (Released:2008-05-15)
- 参考文献数
- 32
マストミス Praomys(Mastomys)couchaの膣垢周期と発情周期の連関性を検討し,膣垢により判定した発情周期および妊娠期の各時期における血漿progesterone濃度の消長を追究して以下の成績を得た.1.成熟非妊娠マストミスの大半(70%)の発情周期では,多数の白血球と有核細胞から成る膣垢(LN期)が6~9日間隔で1~3日間にわたり出現した.LN期の2日前には小型の有核および角化細胞に白血球の混在する膣垢が,前日には有核および角化細胞のみから成る膣垢がそれぞれ観察され,LN期出現後は白血球主体の膣垢に移行した.排卵検査の結果,LN期出現の2日前,前日および1日目は,それぞれ発情前期(PE),発情期(E)および発情休止期第1日目(D1)に相当するものと判断された.2.PEおよびEが各1日,Dが5日間から成る7日周期中の血漿progesterone(P)濃度は,E以後増加してD1に頂値となり,D3には基底値に減少し,7日周期で形成された発情周期黄体からのP分泌は3日以内に減退することが知られた.3.Dが11~13日間持続する長周期のD7のP濃度は高く,7日周期D1の1.8倍で,この動物の示す長周期が偽妊娠である可能性が示唆された.4.妊娠中の血漿P濃度は,妊娠1日目から5日目にかけて増加し,以後7日目にかけて減少して12日目までは低く推移したが,13日目以後胎盤徴候の出現に一致して再び増加し,15~19日目にプラトー値に維持された後,分娩日にかけて急減するという二峰性の変化が観察された.