著者
新居 久也 牧口 祐也 藤井 真 上田 宏
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.855-869, 2010 (Released:2010-11-01)
参考文献数
53
被引用文献数
3 4

シシャモの産卵遡上の知見を蓄積するために,超小型の電波発信機の体内装着が魚体に及ぼす影響を水槽実験により検証した。さらに,装着魚(鵡川産の雄 14 個体)の河川内行動を受信機により追跡した。装着魚と非装着魚の間に,泳力,産卵行動,生理学的ストレス指標値に差はなかった。河川内では,平均遡上速度が 3.8~17.8 cm/sec であり,流心部を避けて遡上した。定位箇所は,流速が遅く(60 cm/sec 以下),倒木等のカバーが存在した。小型の遡河回遊魚であるシシャモの遡上行動が初めて連続的に解析された。
著者
大下 誠二 後藤 常夫 大塚 徹 槐島 光次郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.15-22, 2011 (Released:2011-03-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1 4

本研究は,東シナ海におけるウルメイワシの成長や成熟特性を求めたものである。月別の体長組成から年齢毎に正規分布を仮定して平均体長を求め,成長曲線を推定した。その成長式は BLm=244.8[1−exp {−0.10(m−0.55)}] で表された。ただし BL および m は被鱗体長とふ化後月数である。鱗による年齢査定と耳石による日齢査定からも本結果を裏付けた。生殖腺を組織学的に検討し,産卵期間は 12 月から 6 月であり,産卵期間中に複数回の産卵を行うことが明らかとなった。成長式と体長・成熟率の関係から推定して雌雄とも満 1 歳から産卵もしくは排精することがわかった。
著者
古丸 明 堀 寿子 柳瀬 泰宏 尾之内 健次 加藤 武 石橋 亮 河村 功一 小林 正裕 西田 睦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.621-629, 2010 (Released:2010-10-11)
参考文献数
16
被引用文献数
4 6

シジミ属(Corbicula)の種判別を目的とし,日本,中国,朝鮮半島産 4 種(C. japonica, C. fluminea, C. largillierti, C. leana)と不明種 (C. sp.) mtDNA16S rDNA の配列(437 bp)を比較した。ヤマトシジミ C. japonica と淡水産シジミ類間の塩基置換率は平均 5.98%(5.26-6.41%)で判別は容易であった。日本産と朝鮮半島産ヤマトシジミ間の置換率は低かった(0-1.14%)が,ハプロタイプ頻度の相違から産地判別は可能であった。
著者
木村 稔 三上 加奈子 干川 裕 森 立成 笠井 久会 吉水 守
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-5, 2006 (Released:2006-01-31)
参考文献数
10
被引用文献数
11 13

ウニ内臓からの腸炎ビブリオ Vibrio parahaemolyticus(以下本菌)除菌を目的に,ウニを電解海水で蓄養し,生殖巣,消化管及び内容物を含む内臓の本菌生菌数ならびに一般生菌数を測定した。本菌を 3 % 食塩水に懸濁し電気分解した場合,有効塩素濃度が 0.23 mg/L,1 分間の処理で 99.99% 以上殺菌された。有効塩素濃度 0.76 mg/L の電解海水でキタムラサキウニ Strongylocentrotus nudus を 1~2 日間蓄養した場合,大量の糞が放出され,本菌生菌数や一般生菌数が一桁以上減少した。
著者
宮嶋 俊明 岩尾 敦志 柳下 直己 山崎 淳
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.8-17, 2007 (Released:2007-02-06)
参考文献数
24
被引用文献数
4 4

京都府沖合海域において,駆け廻し式底曳網に仕切網と選別網(目合 600 mm)を取り付け,ズワイガニを網外に排出し,カレイ類を漁獲するための漁具の開発を行った。漁獲物とズワイガニの分離は選別網で行い,効率的な分離を行うためには,底網から選別網までの高さを維持することが重要であった。本漁具を用いた試験操業では,ズワイガニの 74~98% を網外に排出し,アカガレイの 67~88%,ヒレグロの 57~70% を漁獲することができた。本網は甲幅 100 mm 以下のズワイガニの分離に対して有効であった。
著者
今 攸 安達 辰典
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.673-680, 2006 (Released:2006-07-27)
参考文献数
42
被引用文献数
4 3

若狭湾沖に生息する最終未成体齢と若い成体(最終脱皮後<4 年)のズワイガニが持つ卵巣卵数は,共に甲幅と正の相関にあり,前者の卵数は後者の 62.8% と少なかった。これは卵巣発達時における体サイズの違いが原因しているとみられる。初産ガニと若い経産ガニ(1.5~<4 年)が持つ腹肢付着卵数も,共に甲幅と正の相関にあったが,前者の付着卵が未成体の卵巣に,後者の付着卵が若い成体の卵巣に由来していることから,前者は後者の 66.3% であった。高齢の経産ガニ(>4 年)が持つ両卵数は,甲幅との間に有意な関係が認められないうえ少なかった。
著者
小金 隆之 浜崎 活幸 野上 欣也
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.161-164, 2005 (Released:2005-07-15)
参考文献数
12
被引用文献数
12 14

ズワイガニ幼生の適正飼育水温を明らかにする目的で,ふ化幼生を 1L ビーカーに収容し,水温 10, 12, 14, 16℃ で飼育した。第 2 齢ゾエアまでの生残率は各水温区とも 90% 程度の値を示したが,16℃ 区ではそれ以降に大量減耗がみられた。第 1 齢稚ガニまでの生残率は 14℃ で最も高い値を示した。各齢期までの発育日数は水温の上昇にともない指数関数的に減少し,発育日数の変動係数は 14℃ 区で小さい傾向があった。以上のことから,ズワイガニ幼生の適正飼育水温を 14℃ 程度と結論付けた。
著者
飯田 貴次
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.632-635, 2005 (Released:2005-08-24)
参考文献数
12
被引用文献数
5 5
著者
北川 えみ 北川 忠生 能宗 斉正 吉谷 圭介 細谷 和海
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.146-150, 2005 (Released:2005-07-15)
参考文献数
15
被引用文献数
5 2

1988 年にオオクチバスフロリダ半島産亜種が放流された池原貯水池では,1996, 1997 年の遺伝学的調査においてフロリダ半島産亜種由来のミトコンドリア DNA(mtDNA)をもつ個体の割合は 56.8% であった。今回(2003 年)再調査を行った結果,本亜種由来の mtDNA をもつ個体は全体の 86.7% となり,前回調査より有意な増加がみとめられた。また,近畿地方の池原貯水池とは別水系の湖沼(津風呂湖,宝ヶ池,深泥池)からも本亜種由来の mtDNA をもつ個体が検出された。