著者
三宅 康之 有安 早苗 広川 満良 椎名 義雄 郡 秀一 三宅 実甫子 吉沢 梨津好
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.151-155, 1996-03-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10

保存尿の免疫細胞化学的検索により, デコイ細胞がポリオーマウイルス感染細胞と断定し得た1例を報告する. 症例は15歳, 女性で, 神経芽細胞腫の治療経過中に尿中にデコイ細胞が観察された. 後日, 尿沈渣保存液中に保存しておいたデコイ細胞の免疫細胞化学的検索にて, ポリオーマウイルス感染細胞であることが証明された. 尿沈渣を保存することの重要性とその活用について述べる.
著者
鳥居 貴代 布引 治 甲斐 美咲 野田 定
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.604-611, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

性周期各相の子宮内膜変化について, 内膜細胞診と同時に施行された内膜組織診とを比較し, 性周期各相に対応する細胞集団および構成細胞の形態変化から組織構築を推定し得る細胞診断基準を求め, 内膜細胞診における性周期推定の応用を試みた.性周期は, 増殖期は前期・後期, 分泌期は前期・中期・後期にわけ, それぞれの特徴的所見をNoyesのDating the endometriumや五十嵐のEndometriogramを参考として10項目-(1) 腺細胞の核分裂 (2) 核の偽重層 (3) 核下空胞 (4) 分泌像 (5) 間質の浮腫 (6) 間質の偽脱落膜様変化 (7) 問質細胞の核分裂 (8) 白血球浸潤 (9) 腺管の蛇行 (10) 螺旋動脈-からなる診断基準を作成し, その有用性を検討したととろ, 個々の細胞所見のみならず被覆上皮, 腺管, 間質細胞などの組織構築をふまえた出現様式を判定基準に取り入れたことで, より組織診に近い診断が得られることがわかった.
著者
北澤 純 高橋 顕雅 西野 万由美 岡本 明子 宮元 伸篤 新川 由基 黒澤 学
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.136-141, 2018

<p><b>背景</b> : 外陰 Paget 病は外陰悪性腫瘍の 1~2%とまれな腫瘍である. 今回, 擦過細胞診にて外陰 Paget 病を推定しえた 2 例を経験したため報告する.</p><p><b>症例</b> : 症例 1 ; 82 歳, 女性. 2 年前より外陰部掻痒感, 発赤があり, 症状が増悪したため当院へ紹介され受診した. 外陰部の擦過細胞診では, きれいな背景に孤立性に N/C 比が高くクロマチン微細な小型細胞が散見された. 核小体が複数みられ, 軽度核形不整を伴う細胞も認められた. 集塊はみられなかったが, 相互封入像が認められた.</p><p>症例 2 ; 79 歳, 女性. 近医で子宮筋腫を認めたため, 当院へ紹介され受診した. 当科受診時, 外陰部に広範な発赤を伴う皮膚肥厚を認めた. 外陰部の擦過細胞診では, きれいな背景に N/C 比の高い小型細胞が孤立散在性に認められ, クロマチンは微細で核小体が目立っていた. 平面的な小集塊も 1 ヵ所あり, 細胞は N/C 比が高く, 核小体が目立ち, クロマチンは微細だった.</p><p><b>結論</b> : 外陰部病変の擦過細胞診で異型のある腺系細胞が認められたら, Paget 病も鑑別に入れた精査が必要である. また, 外陰擦過細胞診にてブラシを用いることで細胞採取数が増加し, 診断精度が向上する可能性が示唆された.</p>
著者
野木 才美 山崎 龍王 藤田 裕 小林 織恵 大田 昌治 小林 弥生子 梅澤 聡
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.369-373, 2012 (Released:2012-12-10)
参考文献数
8

背景 : 今回われわれは, コルポスコピーおよび狙い組織診で異常所見を認めず, 子宮頸部擦過細胞診にて子宮頸部小細胞癌と診断しえた 1 例を経験したので報告する.症例 : 34 歳, 0 経妊 0 経産, 不正性器出血にて当院を受診した. 内診, 経腟超音波, コルポスコピー検査にても異常所見を認めず, 唯一, 子宮頸部細胞診で小細胞癌 ; (非常に小型で N/C 比の大きい, 核が濃染した異型細胞を認め小細胞癌を疑う所見) であったため, 狙い組織診を施行するも頸管腺の一部に扁平上皮化生を認めるのみで悪性所見を得なかった. 画像検査 (MRI) においても子宮頸部に明らかな腫瘤像を認めなかったために診断的円錐切除を施行したところ, 正常な扁平上皮組織下の間質部に, 浸潤性の小細胞癌を認めたため, 広汎子宮全摘+両側付属器切除+骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術を施行したところ, 摘出子宮に癌の残存を認めないものの, 骨盤リンパ節に 1 個 (1/42) 転移を認めたため, 術後補助化学療法を施行した. 以後 1 年 6 ヵ月経過するも再発傾向を認めていない.結論 : 小細胞癌は予後不良であり, 今回のように摘出子宮に癌が残存していなくともリンパ節転移を認めることがあり, 安易な妊孕性温存意義は危険であると思われ, その診断に細胞診が有用であったために報告する.
著者
平園 賢一 篠塚 孝男 伊藤 仁 川井 健司 堤 寛 長村 義之
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.37-41, 1995 (Released:2011-11-08)
参考文献数
5

今回われわれは, 子宮頸部の神経内分泌細胞癌2例を経験し, 検討したので報告する.症例は32歳と50歳の主婦. ともに子宮頸部Ib期の臨床診断にて, 広汎子宮全摘および所属リンパ節郭清施行後, 50Gyの外照射を行ったが6ヵ月から1年で血行転移を来し, 化学療法 (CAP) を施行したが効果なく術後2年足らずで死亡した. 細胞像は, 孤立散在性または集団状に出現し, いわゆる対細胞もみられた。細胞はリンパ球よりやや大きく円形ないしは楕円形で大小不同を認めた. 細胞質は乏しく裸核状のものも多く, 核クロマチンは中等度増量し粗大顆粒状, 核小体は著明ではないが出現する場合は数個認められた. 組織像は, 主に小型で未分化な腫瘍細胞が充実性シート状に配列し, 一部カルチノイドにみられるような索状およびロゼット形成が認められ, 腺癌病変も一部に認められた. また腫瘍細胞に一致してグリメリュウス, 神経内分泌マーカーであるクロモグラニンA, NSE, Leu 7, 上皮性マーカーであるサイトケラチン, EMAが陽性を示した. 電顕的には細胞質に神経内分泌顆粒が認められた.
著者
広瀬 隆則 山田 順子 山本 洋介 佐野 暢哉 日野 明子 古本 博孝 山田 正代 佐野 壽昭
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.233-237, 1997-03-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10
被引用文献数
4 4

子宮頸部にはまれに神経内分泌癌が発生することが知られている. 30歳, 妊娠29週の女性の子宮頸部に発生した小細胞性神経内分泌癌の1例を経験したので, 細胞所見を中心に報告した. 患者は不正性器出血を主訴として来院し, 頸部前唇にピンポン玉大の腫瘍が見出されたため, 広範子宮全摘出手術が行われた. 術後, 大量化学療法と末梢血幹細胞移植が施行されたが, 合併症のため約7ヵ月後に死亡した. 擦過細胞診では, 小型で裸核状の腫瘍細胞が壊死物質を背景に孤立散在性ないし結合性の弱い小集塊として認められ, 肺小細胞癌の細胞所見に類似していた. 組織学的に腫瘍細胞は, 胞巣状, 索状ないしリボン状に配列し, 多くの細胞でGrimelius法により好銀顆粒が証明された. 免疫組織化学的に, Chromogranin A, neuron specific enolase, synaptophysinなどの神経性マーカーが陽性を呈しており, 小細胞性神経内分泌癌と診断された. 本腫瘍は, 小細胞性扁平上皮癌や低分化腺癌との鑑別が難しいが, これらの腫瘍より進行が早く悪性度が高いので, 早期に診断し強力な治療を開始することが大切である. 診断上, 細胞診のはたす役割は大きいと考えられた.
著者
河野 美江 戸田 稔子 脇田 邦夫 高橋 正国 入江 隆 紀川 純三 寺川 直樹
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-3, 2001-01-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

目的:10代女性の子宮頸部擦過細胞診における異常例の頻度とその背景を知ることを目的とした.結果:松江生協病院産婦人科を受診した10代女性164例に対し子宮頸部擦過細胞診を行った. クラスIIIa以上の細胞診異常例は12例 (7.3%) にみられ, 11例がクラスIIIa, 1例がクラスIIIbであった. 細胞診異常例12例中4例が妊娠例であり, 性行為感染症が7例にみられた. 追跡が可能であった10例中7例では, 7~84ヵ月の間に細胞診判定が正常化した. クラスIIIbであった1例は子宮頸部円錐切除術で高度異形成と診断された.結論:細胞診異常例が高率にみられたことから, 10代であっても子宮頸部擦過細胞診を行うことが重要であると考えられた. また, 細胞診判定に際してはsexual activityが高い例では性行為感染症を含む炎症性変化に注意が必要であることが示された.
著者
岡田 裕之 松本 敬 森川 美雪 中平 隆志 大村 光浩 山本 浩嗣
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.321-326, 2002-09-22 (Released:2011-12-05)
参考文献数
11
被引用文献数
3 5

目的および方法:歯肉アメーバはミトコンドリアを持たない真核生物の代表であるアメーバ類に属し, 絶対嫌気的環境で寄生する. 歯肉アメーバ症28例を, 臨床病理学的および微細構造を含め細胞学的に検討した.結果:アメーバ虫体は小型染色中心を伴う核と, ライトグリーン淡染性, PAS陽性の細顆粒状の胞体を有しており, Giemsa染色では濃青色の細胞境界の明瞭な外質が認められた. また, 虫体は食胞を有し, 白血球を貧食する栄養型として存在していた. 虫体は放線菌に随伴して認められることが多かった.画像解析において, 虫体の最大径は9.3~37.5μm (平均18.2±5.0μm), 面積が51.0~360.1μm2 (平均175.6±68.3μm2) であった.微細構造学的に, 虫体における胞体の外質と内質が明瞭に区別され, 外質が細胞小器官に乏しく突起を有していた. 内質にはグリコーゲン顆粒と種々の大きさの食胞が多数みられ, 食胞内には変性した細胞などが観察された.結論:歯肉アメーバ症28例を臨床統計的にみると, 60歳代と50歳代に出現することが多く, それらが過半数を占め, 放線菌と共存していた. 細胞学的および微細構造学的検索では, 歯肉アメーバは食胞を有し, 白血球を貧食しており, 栄養型として観察された.
著者
岡田 基 松井 明男 米沢 千佳子 伊藤 雅文 柴田 偉雄
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.479-484, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
12

婦人科標本中に認められたいわゆるヘマトイジン結晶様物質 (以下ヘマトイジン様結晶と略す) について, 4年6ヵ月の問に当院を受診した41,274人, 標本件数116,360件を対象に検討した.35人 (45件) にヘマトイジン様結晶を認めた.35例の年齢分布は24歳から52歳 (平均38.7歳) であった.疾患内訳は, 腟部ビラン17名, 妊娠7名, 切迫流産4名, 異形成2名, 上皮内癌1名であった.ヘマトイジン様結晶の出現頻度は, 子宮腟部擦過で0.05%, 子宮頸管擦過で0.04%であった.結晶の出現様相は, パパニコロー染色で黄金色ないし黄褐色調に染色され, ロゼット状配列, 樹枝状配列を呈する集塊が主体で, 一部は散在性に楕円形結晶として出現した.大きさは1~341.5μ であった.大多数の結晶は, 組織球や好中球からなる炎症細胞集塊中に認められた.特殊染色ではPAS染色が陽性を呈したが, ほかの粘液染色, 鉄染色, ビリルビン染色は陰性であり, 免疫染色ではフェリチン, S-100蛋白, EMA陰性であった.以上の所見から婦人科標本中に認められたヘマトイジン様結晶は, ヘマトイジンとは異なる物質で, ヘモグロビン系の色素ではないと考えられた.
著者
杉田 直道 窪田 与志 生水 真紀夫 三輪 正彦 寺田 督 西田 悦郎
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.33-39, 1984-01-25 (Released:2011-11-08)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

妊娠ラットの膣内吸引Smear像, ならびに組織を作製し, 正常性周期各期における像と比較検討した.その結果妊娠第1日目はいわゆる発情期 (Estrus) に近い像で, 多数の精子と無核表層細胞が大部分を占め, 午後より角質層は剥離し白血球がしだいに多くなり, 2日目にはいわゆる発情間期 (Diestrus) に類似した像を呈した.しかし4~5日目以後, 膣上皮の増殖とともに腔腔に面する上層部より細胞の円柱化, 粘液形成化 (Muci丘cation) が起こり, 一般のDiestrusとは全く違った像を呈した.妊娠末期にMucificationはPeakに達し, その幅も7~10層になり細胞像でも円柱形粘液細胞の大きな集団として認められた.一般に妊娠初期ラットでは, そのSrnear像がいわゆるDiestmsに類似しているといわれるが厳密にはかなりの違いがあり, とくに粘液形成化が最も重要な点と思われた.ただし正常周期群においてもlate-Diestrusより粘液細胞は出現しており, 妊娠群との質的な差はあまり認められなかった.粘液形成化発生はEstrogenをBaseにしたProgesteroneの作用によると推定されるが, 副腎性Androgenによっても発現しており, また下垂体系のホルモンの関与を主張する報告もあり, そのメカニズムはいまだ判然としていない.今回方法において塗抹前の固定法を試みたが, 保存の良い細胞が多数採取されており臨床的にも応用されるものと思われた.
著者
野田 起一郎
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.226-230, 1972-10-30 (Released:2010-10-21)
参考文献数
10

The process of squamous metaplasia in the uterinecervix might be discussed more properly in contextwith inflammation, regeneration or repair for itsinitiation may be related to the inflammatory process. On the other hand, squamous metaplasia maybe initiated by non-inflammatory stimuli such aschronic irritation of a physical nature or by chemicalirritants. Althorgh the process of squamous metaplasia is extremely common in the uterine cervix, itis not usually regarded as a change which necessarilyantedates development of cancer. However, some of the chemical stimuli which initiate squamous metaplasia are also capable of inducing cancer in theuterine cervix of the experimental animals.Squamous metaplasia can be arbitrarily subdividedinto: 1. reserve cell hyperplasia, 2. immature squamous metaplasia, 3. premature squamous metaplasia and 4. mature squamous metaplasia. The cellularchanges which can be related to each of them havebeen presented.
著者
牛島 倫世 山川 義寛 高越 優子 加藤 潔 岡田 英吉
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.280-284, 2009 (Released:2011-03-18)
参考文献数
12

背景 : 子宮内膜間質肉腫はまれな疾患で予後不良であり, 術前診断は困難である. 子宮内膜細胞診・組織診が診断の契機となった 1 例を報告する.症例 : 52 歳, 4 回経妊 2 回経産, 50 歳閉経. 主訴は不正性器出血. 経腟超音波で子宮体部に径 5.5 cm の腫瘤を認めた. 子宮内膜吸引細胞診陽性であり, 内膜生検にて間質細胞に著明な核異型と核分裂像を認め, 子宮内膜間質肉腫が疑われた. CT で腫瘤は辺縁が不均一に造影され, MRI では T2 強調像できわめて不均一であり, 出血性壊死を疑わせる所見であった. 病変は子宮内に限局しており, 腹式単純子宮全摘術・両側付属器摘出術を施行した. 病理所見では, 子宮内腔に広茎性ポリープ状腫瘤を認め, 多くの核分裂像を伴った多形性の腫瘍細胞からなっており, 脈管侵襲を認めた. 免疫染色では CD10, vimentin に陽性, cytokeratinAE1/AE3, SMA, S-100, ER に陰性であり, high-grade endometrial stromal sarcoma と診断された.結論 : 本症例では免疫染色を含む細胞診, 組織診が子宮内膜間質肉腫の診断に有用であった.
著者
阿倉 薫 畠中 光恵 向井 みどり 坂井 雅英 綾田 昌弘 岡本 茂 古川 順康 弥生 恵司
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.31-36, 1995 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15

原発性乳癌119例について, 核DNA量 (DNA index=DI) と癌細胞の核の大きさ, 核の異型度, 細胞診の判定, リンパ節転移, t因子との関連性について検討を行った. DIの測定は新鮮摘出腫瘍を用い, 末梢リンパ節をploidy standardにした. その結果, hypoploid (DI<1) が6例 (5%), diploid (DI=1) が39例 (32.8%), aneuploid (DI>1) が62例 (52.1%), multiploidが12例 (10.1%) であった. 術前穿刺吸引細胞診標本 (Pap. 染色) から癌細胞50個の長径を計測し平均を求めた, 最小は6.3μm, 最大は13.9μmで2倍以上の差が認められた. 核異型が軽度な症例は12例, 中等度は44例, 高度は51例であった. DIと比較してみると軽度異型はdiploidが多く, 異型が高度になるにしたがってaneuploidが増加した.術前の細胞診判定はpositiveが107例, suspiciousが10例, negativeが2例であった. 悪性と判定できなかった12例のうち11例はdiploidであった. 乳癌細胞の核の大きさとDIは正の相関がみられ, DIが大きくなるにつれて核は大きく, 異型も強くなり細胞診の判定は容易であった. しかしhypoploid (DI<1) やdiploid (DI=1) の癌細胞は大部分が小型で異型に乏しく, 細胞診で正確に判定できない症例が多かったが, 倍率1,000倍で詳しく観察することによって正診できる症例が増すと思われた. リンパ節転移はhypoploid (DI<1) とdiploid (DI=1) は少なく, aneuploidとmultiploidは多く, 有意差が認められた (p<0.05). DIとt因子については有意差は認められなかった.
著者
飯塚 真理 宇井 万津男 伊吹 令人 城下 尚 倉林 良幸 堀越 美枝子
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.439-445, 1996-09-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

今回われわれは, 子宮内膜増殖症のホルモン療法後妊娠し, 分娩後に子宮内膜癌に進行した1症例を経験したので報告する.症例は23歳, 0妊0産.月経不順.1991年5月, 不正性器出血を主訴に来院した.子宮内膜の肥厚がみられたため内膜細胞診と組織診を施行し, 異型増殖症と診断された.未産婦であり, 挙児希望があったため, ダナゾール療法を開始した.3ヵ月後, 内膜組織診で桑実形成性腺腫性増殖症と診断され, 大量黄体ホルモン療法を施行した.その間, 内膜細胞診と組織診を再検したが悪性所見はみられず, 4ヵ月後, ホルモン療法を中止し, 排卵誘発を行った.3ヵ月後に妊娠が成立し, 1993年2月正常分娩となった.1年後, 内膜細胞診と組織診で異型増殖症と診断され, ホルモン療法を再開した.4ヵ月後, 内膜組織診で高分化型腺癌, 間質浸潤陽性と診断されたため, 1994年8月, 準広汎子宮全摘術+両側付属器摘出術+骨盤リンパ節郭清術を施行した.現在まで, 異常なく経過している.
著者
千綿 教夫 中島 玉恵 佐藤 伸子 石田 禮載 杉下 匡 天神 美夫
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.583-588, 1981-07-25 (Released:2011-01-25)
参考文献数
26

子宮頸部Verrucous carcinomaは, 扁平上皮癌の稀有な一亜型である. 疣贅状腫瘤形成著明な悪性進展, 頻回の再発傾向, しかも稀な局所転移と, 全くみられない遠隔転移, コルポ診上の明らかな浸潤癌像に対し, 細胞診陰性, しばしば過少診断される生検組織診上の良性判定など, 特異な臨床像をもっている.50歳4妊2産婦の子宮頸部にみられた本症の1例を報告した. 細胞診には, 軽度の核異常細胞以上の悪性像は認められないが, 炎症, 悪性所見をみない比較的きれいな背景のなかの大きさ, 形状に全く統一性を欠いた無数の角化片, 真珠形成, 角化細胞, 中層型細胞の細胞質内空胞の存在, および頸部擦過細胞診と頸管内擦過細胞診とが全く同様な角化の強い所見であったことなどは, 留意すべき点であろうと思われた.
著者
花見 恭太 大澤 久美子 扇田 智彦 森 茂久 得平 道英 黒田 一 田丸 淳一 糸山 進次
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.111-115, 2008 (Released:2010-10-08)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

背景 : RA 治療に MTX を使用した症例に悪性リンパ腫の発生することが知られている. 今回われわれは, MTX を用いた RA の治療中に発生した CHL 2 例を経験したので報告する.症例 : 症例 1 は 50 代女性, 6 年間の MTX 治療後, 右腋窩リンパ節の腫脹がみられ, 生検が行われた. 症例 2 は 60 代男性, 1 年間の MTX 治療後カリニ肺炎を発症, その後右鼡径部および左頸部リンパ節の腫脹がみられ, 左頸部リンパ節生検が行われた. 2 例ともに捺印細胞診では, 小型のリンパ球, 組織球などを背景に著明な核小体を有する大型の HRS 細胞を散在性に認めた. 組織学的にも HRS 細胞が散見されたが, それらは免疫組織学的に, 症例 1 では CD30 と CD15 が陽性, CD20 陰性, 症例 2 では CD30, CD79a が陽性, CD20 が一部の細胞に弱陽性, CD15 が陰性を示していた.結論 : 細胞学的には典型的な CHL の像であったが, 本 2 例は臨床経過を踏まえると, WHO 分類で免疫不全関連リンパ増殖症の亜型として分類される MTX 関連リンパ増殖症に相当するものと考えられた. また, 免疫組織学的に症例 1 は通常の CHL のパターンであったが, 症例 2 は Hodgkin-like LPD と診断すべきだったと考えられた. このような症例は複雑な臨床経過をたどることが多く, 診断には疾患背景をよく理解したうえでの総合的な判断が必要と考えられた.