著者
仲里 猛留 坊農 秀雅
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.873-877, 2016-11-20 (Released:2017-11-20)
参考文献数
13

次世代シークエンサー(NGS: next generation sequencer)の活躍によって,さまざまな生命科学の謎が解き明かされている.マイクロアレイ同様,NGSから得られるデータも公共データベースに収めることが論文投稿の条件となってきており,そのデータ量は約3.2ペタバイトにもなっている(ペタは10の15乗).これまでよく用いられてきたBLASTなどの配列類似性による検索手段ではもはや歯がたたず,それぞれのデータの付帯情報であるメタデータをたよりに必要な情報を探し出すことになる.膨大なNGSのデータベースから効率よくデータを取り出し,自らの研究に活用する方策を紹介する.
著者
堀田 国元 佐々木 博
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.57-62, 2011-01-01 (Released:2012-01-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

栄養価が高くヘルシーな食品として国際的にも受け入れられている納豆(糸引き納豆)は,大昔から明治時代まで,大豆を煮て稲藁苞に入れて保温し,稲藁の付着菌による自然醗酵に依存するという不衛生で不安定な方法でつくられていた.この方法に代わる近代的製造法が確立され,世に普及したのは,明治時代後半に澤村眞博士(東大農芸化学)が納豆は一菌種(Bacillus natto と命名)の働きによってできることを解明したことと,大正時代に半澤洵博士(北大農芸化学科応用菌学講座の開祖)が行なった実学的研究と普及活動によるところが大きい.半澤教授は,納豆菌の純粋培養と衛生的な容器を使用することが納豆を安定してつくるためのキーポイントと見抜き,経木(薄皮)を容器に用いる半澤式改良納豆製造法を確立した.そして,納豆容器改良会を組織し,また雑誌『納豆』を刊行して納豆製造業者を直接・間接に指導し,納豆博士と綽名された.さらに,半澤博士の指導を受けた三浦二郎氏(仙台市)が醗酵温度調節のために通気孔付きの納豆室(文化室と呼ばれた)を考案したことによって,安定した大量納豆製造の道が拓かれた.本稿では,以上の経緯について辿り,近代納豆の実現における応用菌学の貢献をクローズアップする.
著者
品川 桃実 佐藤 結以 中村 祐希
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.356-357, 2011-05-01 (Released:2012-04-27)

本研究は,平成22 (2010) 年度日本農芸化学会大会(開催地 東京)での「ジュニア農芸化学会」において“優秀ポスター賞”に選ばれた.一般に,「黴(カビ)」という言葉から連想されるイメージはあまり良いものではない.しかし,カビのもつパワフルな能力が,私たちの食生活の豊かさに大きく貢献していることは言うまでもない.本研究では,カビを異なる視点から捉え,その芸術への応用の可能性を追究している.
著者
原 悠歌 井上 智香子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.650-651, 2011-09-01 (Released:2012-09-01)

本研究は,日本農芸化学会2011年度(平成23年度)大会(開催地 京都)での「ジュニア農芸化学会」において発表予定であったが,残念ながら東日本大震災によって大会が中止となった.日本農芸化学会和文誌編集委員会によって本研究を優れたものと選定し,掲載することとなった.市街化が進む水田地域における外来種ミシシッピアカミミガメの生態を明らかにしたもので,在来種への圧迫や食物連鎖のバランスなど生態系に与える影響を考察する上で重要な知見を得ている.
著者
和田 正 田中 彰裕
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.376-382, 2013-06-01 (Released:2014-06-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

筆者らは,スクロースをイヌリンに変換する酵素生産細菌 Bacillus sp. 217C-11 株を見いだすことに成功した.この酵素は,イヌロスクラーゼに分類される新規な糖転移酵素であることが明らかになった.また,酵素の反応条件を任意に選択することによって合成されるイヌリンの平均鎖長を制御できることもわかった.こうして作られたイヌリンは,植物由来のイヌリンに比べて水溶性が高く,食品加工特性に優れるものであった.近年では,脂肪に似た食感のゲルを形成する性質を利用して,油脂含有食品の低脂肪化のための素材としての利用が拡大している.
著者
小林 加奈理 長戸 有希子 青井 暢之 L.R. ジュネジャ 金 武祚 山本 武彦 杉本 助男
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.153-157, 1998-02-01 (Released:2009-02-18)
参考文献数
24
被引用文献数
60 65 3

L-テアニンは緑茶の葉中および抽出液中に含まれているアミノ酸の一種で,カフェインによる興奮を抑制することが知られている.また,ラットへのL-テアニンの経口投与により,脳内のセロトニンが減少し,カテコールアミンの増加ずることが知られている. L-テアニンは動物実験で安全なことがすでに確認されている. 筆者らはL-テアニン服用による脳波への影響について検討した結果,リラックスをもたらすことを確認した. L-テアニンの影響を不安程度の異なる精神状態で調べるため, MAS法に従って段階I(高不安域群)の4名と段階V(低不安域群)の4名の計8名の女子学生を被験者に選定した. その結果, L-テアニン200mgを含む水100ml服用によって後頭部・頭頂部にα波の出現が認められた.α波出現は服用後40分後に観測され,少なくとも2時間は持続すると考えられる.α波の出現によるリラックス作用は,段階Vの低不安域群より段階Iの高不安域群の方が優れていた. L-テアニン服用後,被験者は眠気を感じず,十分なリラックスを感じた.また,指先が暖かくなったとの体感を感じた被験者もいた. 今回の研究により, L-テアニンは新しいタイプの添加物として食品や飲料に応用される可能性が示唆された.今後はさまざまなL-テアニン含有食品についての効果を検討するつもりである.