- 著者
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原 博
- 出版者
- 公益社団法人 日本農芸化学会
- 雑誌
- 化学と生物 (ISSN:0453073X)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.6, pp.412-419, 2008-06-01 (Released:2011-04-11)
- 参考文献数
- 70
- 被引用文献数
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カルシウムは,有機物を構成する C,H,O,N についで体内に多く含まれる元素であり,体を支える骨の主要成分である.カルシウムの摂取量が,身長の重要な決定因子ともいわれる.『日本人の食事摂取基準—2005年版』では,推定平均必要量は示されていないが,成人の目標量として男女とも600~650 mg/日が策定されている.カルシウムの主な供給源は乳製品や小魚,大豆などであるが,現在の食事ではこれらは減少傾向にある.厚生労働省の平成15年国民健康・栄養調査によると,カルシウム平均摂取量は先の目標量に対して,20~29歳が最も低く,男性73%,女性74%であり,かなり低い摂取レベルにあるといえる.将来,骨粗鬆症など骨疾病の大幅な増加が危惧される.筆書らは,主にカルシウムの腸管吸収の研究を行なっているが,本稿ではまず,その背景ともなる,カルシウムの体内での役割や恒常性維持機構を,新しい話題を含めて解説した後,カルシウムの腸管吸収機構やそれを促進する作用を有する食品成分に関する研究を紹介する.