著者
浜野 光年 青山 康雄 杉本 洋
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.401-407, 1976 (Released:2008-11-21)
参考文献数
30

(1)示差走査熱量計(DSC)を用いる熱分析法で,糖成分および,粉末醤油中の水分の吸湿状態が測定できた.水分(挙動)は, 50°C~80°Cにかけて1つの吸熱ピークとして観測された. (2)イオン交換樹脂で醤油より分画した,オリゴ糖,ヘキソースおよびペントースを含有する中性糖区分は,熱分析や吸湿曲線の結果から,相対湿度35~40%以上の領域で,粉末醤油の吸湿状態に大きく影響を与えていることがわかった. (3)各種糖成分をそれぞれ加えた粉末醤油は,+glucose≧+sucrose>+maltose>+mannose≧+galactose≧無添加粉末醤油>+soluble starch>+arabinose>+xyloseの順で平衡吸湿量が増加していた. (4)醤油中の酸性多糖類は,易乾燥性,高保水能を示し,品質上プラスに寄与する.その中に含まれる水は,粉末醤油や中性糖区分に含まれる水にくらべて,結合様式の強固な水であると思われる. (5)多糖の防湿効果を検討したところ,デンプン糖や酸化澱粉の構造の間隙に,粉末醤油中の易水分収着物質が取り込まれて,吸湿性が低下したと推定された.

1 0 0 0 OA ウイロイド

著者
松下 陽介
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.170-175, 2016-02-20 (Released:2017-02-20)
参考文献数
20

ウイロイドは最小の植物病原体であり,動物細胞からは検出例がないマイナーな存在である.また,環状のnon-coding RNA(ncRNA)という独特の構造である点においても特異な存在であった.しかしながら,近年,ncRNA, さらには200塩基以上のlong non-coding RNA(lncRNA)に関する研究が進展し,それらの生体内における役割や動態についても明らかとなっている.また,環状lncRNA(circRNA)が動物細胞から大量に見つかり,それらの役割についても明らかになりつつある.今後はウイロイドがマイナーな存在ではなく,自律複製能をもったcircRNAとして着目されることを期待したい.
著者
小菅 充子 森 洋子 山西 貞 渕之上 弘子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.259-262, 1978 (Released:2008-11-21)
参考文献数
2
被引用文献数
3 5

The aroma concentrates were prepared from the fresh tea flush of both var. Sayamakaori (a newly registered variety) and var. Yabukita (a popularized variety for green tea), and also from their made tea “Sencha.” Combined gas chromatographic-mass spectrometric analysis was performed on the four aroma concentrates, using a polar and a non-polar columns. By comparison of the chromatograms of “Sencha” from var. Sayamakaori and var. Yabukita, it was clearly recognized that the amount of nerolidol, cis-jasmone and indole were much larger in var. Sayamakaori than in var. Yabukita. On the other hand, linalool was much smaller amount in var. Sayamakaori of both fresh tea flush and “Sencha.” These facts seemed us to explain the aroma characteristics of var. Sayamakaori which is more heavier and lasting floral aroma.
著者
蓮沼 誠久 石井 純 荻野 千秋 近藤 昭彦
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.689-695, 2015-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
3

持続可能な社会へ向かうためには再生可能エネルギーが中心的な役割を果たすことが求められている.そのなかで,バイオマスから液体燃料やバルクケミカルを経済性良く,高効率で生産する技術の開発が期待されている.バイオマスとしては,安定的な供給が可能で,食糧と競合しないリグノセルロース系バイオマスの利活用が望まれている.本稿ではリグノセルロース系バイオマスからのエタノールの製造プロセスについて研究の課題と最新の知見を紹介するとともに,バイオプロセスによるバルクケミカル生産に関する最近の研究例についても紹介する.
著者
横塚 保 大下 克典 菊地 忠昭 佐々木 正興 浅尾 保夫
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.189-196, 1969 (Released:2008-11-21)
参考文献数
30
被引用文献数
4 4

(1) 液体培養により,わが国の麹菌工業に関連の深い種麹菌類およびその他の麹菌類約70菌株について,とくに注意を要する麹菌の生産毒と考えられるAA, KA, β-NPAおよびOAの生産性を検索し,それぞれのものは個々の菌株によって生産性に非常な差異のあることを知った.同時にX-1やNo. 48のように,それらの生産に関して特異的な菌株を野生菌の中から見いだした. (2) 固体麹中のAAの定量法として,銅塩を作り分離定量する新法を設定した. (3) AA, KA, β-NPAおよびOA生産菌の代表株をそれぞれ2,3株ずつ選び出し,それらを用いて固体麹(醤油麹)を作って,それぞれの生産量の経時的変化を求めた. (4) AAは経時的変化の結果,著しくAAを生産するX-1においてですら,わが国の麹菌工業で使用する通常の製麹期間では30mg/kg koji程度しか生産されず,毒性的問題量が3030mg/kg kojiであるのに比し,きわめて少なく,通常は全く問題にならないが,その性質から,味噌,味醂,清酒工業等においては考慮すべき点のあることを指摘した. (5) KAはその毒性も弱く,毒性的問題量が15,150mg/kg kojiであるのに比し,実際の固体麹中での生産量は最高時で約2001mg/kg kojiであリ,問題なかった. (6)β-NPAは比較的毒性が強く,水溶性であり,通常の製麹期間内に生産量が最高を示す点等,問題はあったが,その生産量は特異的な生産菌No. 48ですら最高15mg/kg koji程度であり,毒性的問題量が1515mg/kg kojiであるのに比し,きわめて少なく,しかも,β-NPA自体が代謝中間産物で,容易に生産菌の代謝系によって分解される点を考慮し,問題ないことを指摘した. (7) OAは固体麹中から検出されなかった,生産を考慮しても,それは330mg/kg koji以下であり,毒性的問題量が4545mg/kg koijであるのに比して問題はなかった. (8) いずれにしろ,わが国の麹菌工業にとって純粋食品の立場から,AA, KA, β-NPAおよびOAのごとき有毒成分を最初から生産しない種麹菌を使用することが望ましく,事実,そうしたものは幾らもあるから,それらを種麹菌とすべきで,今後の種麹菌選択の一項目としてこれらの生産性を考慮すべきであることを指摘した. (9) マウスを用いて醤油および醤油麹のエーテル抽出物について毒性試験を行ない,それらの無毒性を裏づけた.
著者
鈴木 宏典 藤原 雅也 三澤 亮介
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.358-360, 2010-05-01 (Released:2011-09-01)

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校で行なわれた本研究は,平成21(2009)年度日本農芸化学会大会(開催地 福岡)での「ジュニア農芸化学会」において“優秀賞”に選ばれた.配糖体色素であるアントシアニンの消長に焦点を当て,紅葉のプロセスをエネルギー(糖),光(可視光・紫外光),光合成能の観点から説明しようとする意欲的な内容の研究である.

1 0 0 0 OA 乱流を消す羽

著者
田谷 昌仁
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.219-221, 2017-02-20 (Released:2018-02-20)
参考文献数
2

本研究は,日本農芸化学会2016年度大会(開催地:札幌コンベンションセンター)の「ジュニア農芸化学会」で発表されたものである.発表者の研究内容は,鳥類の翼の形態と機能についての仮説を立て,検証することで翼の特定部位の形態が生物生態に関連することを見いだした研究である.飛翔・着地における乱流への対処に対する小翼羽の形状変化,さらにはその変化が鳥類の生態にまで及ぶことを検証したたいへん興味深い研究発表であった.