著者
亀岡 弘 北側 忠次
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.389-393, 1976 (Released:2008-11-21)
参考文献数
9
被引用文献数
7 10

梅の果肉の水蒸気揮発性油の成分およびその組成比をTable IIIに,種子のn-ヘキサン抽出キスのカルボン酸および中性成分の組成比をTable IV に示す.これら組成比は,いずれもGLCの面積比から算出したものである. Table IIIから, 2, 3-ジメチル無水マレイン酸ならびに5-メチル-2-フルフラールなどフラン系化合物の存在が特徴的であり,特に2, 3-ジメチル無水マレイン酸は,炒ったコーヒーの揮発性成分として(8)確認されているかこのように梅の果実の水蒸気揮発性油に主成分として存在することは大変興味深い. Table IVから,脂肪酸がその大部分を占めるのは当然といえるが,ベンズアルデヒド,安息香酸,安息香酸エチルなど,芳香族化合物は微量存在することが認められた.これは以前,小竹ら(9)によって梅の花の香気成分として,ベンズアルデヒド,安息香酸,安息香酸ベンジル,ベンジルアルコール,イソオイゲノールを確認しているが,今回著者らが行なった研究と比較検討すると,花に存在していた成分が果実中にも存在することが認められることから,花と果実とではその成分が類似していることがわかる.これらのことから,花に存在した成分は,果実に移行するのではないか考えられ,これらの間には,なんらかの相関関係があるように思われる.なお,これら芳香族化合物およびフラン系化合物は,梅の果実の香気成分の1因を成しているものと考えられる.
著者
内田 瀬奈
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.703-705, 2014-10-01 (Released:2015-10-23)

本研究は,日本農芸化学会2014年度大会(開催地:明治大学)の「ジュニア農芸化学会」において発表され,銅賞を授与された.発表者は,脳も神経ももたない粘菌が,なぜ餌を見つけることができるのかということに疑問をもち,その解明研究に取り組んできた.得られた結果は非常に興味深いものとなっている.
著者
藤井 渉
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.568-574, 2016-07-20 (Released:2017-07-20)
参考文献数
28

近年注目を集めているゲノム編集技術は,従来では作製コストや労力を要したゲノム改変細胞・生物の作製を容易とし,その汎用性を拡張することで,生命科学における逆遺伝学的研究アプローチの加速化に大いに貢献している.農学分野でもさまざまな利用が進んでいるが,その一方で,今後解決すべき技術的課題が次第に明らかになりつつあり,応用分野によっては社会的議論を呼んでいる.本稿では,ゲノム編集技術の理解に必要な基礎情報や応用を解説するとともに,農学応用のための課題について提案する.
著者
稲葉(伊東) 靖子 齋藤 茂
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.841-849, 2008-12-01 (Released:2011-06-06)
参考文献数
30

脱共役タンパク質UCPは6回膜貫通型のミトコンドリアキャリアタンパク質で,動植物に広く保存されている.哺乳動物の褐色脂肪細胞では,膜内外に形成されたプロトン濃度勾配エネルギーをUCP1が積極的に解消することにより非震え熱産生が誘導される.ここ数年,UCP1遺伝子の進化に関する研究が進展し,脊椎動物の系統においてUCP1遺伝子の発熱性の機能が獲得された進化過程が明らかになりつつある.一方,熱産生における植物UCPの役割は不明な点が多いが,発熱植物のミトコンドリアにはUCPが豊富に含まれており,熱産生との関わりが注目されている.ここでは著者らの研究を中心に,熱産生における動植物UCPの役割と適応進化による発熱機能獲得の経緯について概説する.
著者
新原 立子 西田 好伸 米沢 大造 桜井 芳人
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.423-433, 1973 (Released:2008-11-21)
参考文献数
10
被引用文献数
3 2

(1) 製造中における手延素麺の水分含量は,梅雨期の“厄”において上昇して, 15%以上となった. (2) エーテルおよび水飽和ブタノールで抽出される脂質の量は,ともに貯蔵中に減少した. (3) 過酸化物価,カルボニル価は製麺時に上昇し,貯蔵中は15カ月間あまり変化せず,ヨウ素価,リノール酸の比率がやや増加する傾向がみられた.このように,素麺の脂質は酸化に対して安定であった.一方厄中の変化として,酸価の上昇がみられた. (4) タンパク質の溶解性はほとんど変化せず, 2回目の厄を越えた時点でやや減少した.アンモニア,アマイド窒素もほとんど変化はみられなかったが, 1回目の厄で10% TCA可溶の窒素量の増加がみられた.そして遊離のアミノ酸も, 1回目の厄で増加した.しかし油の酸化の始まる2回目の厄には,遊離のアミノ酸の減少がみられた.総アミノ酸には貯蔵中顕著な変化はみられなかったが, 2回目の厄後すべてのアミノ酸がやや減少した.また2回目の厄後,グルテンのデンプンゲル電気泳動図に変化が認められた. (5) 素麺からとれる湿グルテンの猛状が貯蔵中に変化し,生麺およびゆで麺の吸水率が低下した. (6) テクスチュロメーターによる測定では,ゆで麺のかたさが1回目の厄を越すことによって増加した.一方,凝集性は2回目の厄を越して初めて有意差のある低下が認められた.また粉末のファリノグラムも,貯蔵期間とともに変化した. ゆで麺の顕微鏡観察では,厄を越えた素麺はデンプン粒の膨潤が抑制されていることが観察された.