- 著者
-
松本 達郎
- 出版者
- 公益社団法人 日本農芸化学会
- 雑誌
- 日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.5, pp.300-303, 1957 (Released:2008-11-21)
- 参考文献数
- 15
1) 山羊の第一胃ガスを午前11時と午後3時とに採取して分析し,飼斜摂取前後のガス組成の変動の模様,並びに飼料の種類を変えた場合のガスの変化について検討した.実験Iでは1日1回,午後1時に麩と乾草とを給与し,実験IIでは終日繋牧して青草を自由に摂取せしめた.実験IIIでは1日1回,午後1時に麩と乾草に少量の青草を添加して与えた. 2) 第一胃ガスのうち,CO2は飼料摂取後急激に増加するが,空腹時には減少する.CH4の生成は徐々に継続的に行われる.従って採食後のCO2/CH4の比は採食前の値の2~3倍に増加する. 3) 実験Iでは第一胃ガス中に多量のH2が存在し,そのパーセンテージは採食前と採食後の値がほとんど同じであった.即ち採食後急激に増加するCO2の生成と平行して, H2の生成も急増していることを示すものとして注目された.然し実験II及びIIIではH2は全く存在しないか,存在する場合も極めて少量であった. 4) 1日1回飼料を給与した実験I及びIIIでは,午前と午後の第一胃ガスの組成は,かなり著しい変化を示したが,終日繋牧して自由に青草を摂取せしめた実験IIの場合は,第一胃ガスの発生は終日盛に行われ,その組成は午前,午後ともにほとんど同じであった. 5) 青草の摂取は第一胃ガスの生成を盛にする.その原囚の一つは,青草が唾液の分泌量を増加させ,唾液中の炭酸塩に由来するCO2の生成量を増加させる為であると推論された.