著者
奥山 泰世 小池 充 佐々木 伸也 劉 斯宝 田村 正純 中川 善直 今井 章雄 冨重 圭一
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.228-234, 2016-09-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

バイオマスから従来のガソリンに含まれる炭化水素を製造することは,既存のガソリン供給インフラを使用でき,またエタノールよりも多量にガソリンにブレンドできる可能性があることから魅力的である。そのような中,我々は,セルロースからガソリン沸点範囲のオレフィンを製造する方法として,Ir–ReOx/SiO2触媒と酸触媒を用いたセルロースからのヘキサノール製造と,脱水触媒(H-ZSM-5)を用いたヘキセン製造を組み合わせた方法を提案した。我々はこれまでに,硫酸を用いたメカノキャタリシスによる前処理を施したセルロースを水素とともにIr–ReOx/SiO2触媒で反応させたところ,60 %の比較的高収率でヘキサノールが得られることを見出している。本研究では,1-ヘキサノール,2-ヘキサノールおよび3-ヘキサノールの脱水によって得られるヘキセン混合物の組成を明らかにし,そのヘキセン混合物のガソリンへの適用性をJIS規格に基づいて調査した。その結果,ヘキセン混合物は夏季でおおむね22 vol%,冬季でおおむね7 vol%までレギュラーガソリンにブレンド可能であることが分かった。よって,提案した製造経路で得られたセルロース由来のヘキセン混合物は魅力的なバイオ燃料の一つであると考えられる。
著者
伊佐 亜希子 藤本 真司 平田 悟史 美濃輪 智朗
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.395-399, 2011 (Released:2012-01-01)
参考文献数
19
被引用文献数
4 8

微細藻類の実用的な炭化水素抽出技術であるヘキサン抽出法,水熱前処理を付加したヘキサン抽出法,超臨界二酸化炭素抽出法,およびDME抽出法の4通りの抽出技術で,同一のボツリオコッカス属の藻類脱水ケーキ(水分含量70 %)から炭化水素1 MJを抽出した場合の投入エネルギーを算出した。4通りの抽出技術で,文献値から設定した条件における投入エネルギーは0.73~1.83(MJ/MJ-炭化水素)の範囲で回収エネルギーの70 %以上を占めていた。投入エネルギー低減の観点から各抽出技術の問題点と改善点を考察し,湿藻体から抽出効率を高めるための研究開発,抽出媒体のロス率を最小限にする装置設計,および熱回収装置や動力回収装置の効率を高める技術開発が重要であることを明らかとした。
著者
Goshtasp Cheraghian
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.85-94, 2017-03-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
63
被引用文献数
1 48

Static and dynamic adsorption have key role in chemical flooding process and they are important parameters in surfactant polymer degradation and decrease oil recovery. The effects of nano concentration on static adsorption of surfactant were investigated at variable condition polymer and surfactant concentration and nanoparticles are critical parameters influence the adsorption behavior at a flooding process. Surfactant polymer solutions and newly developed nanoparticles solutions were tested. The crude oil had a viscosity of 1320 mPa s at test conditions. In this paper, the role of nanoparticles in the adsorption of surfactant polymers onto solid surfaces of reservoir core is studied. The results which obtained by means of static adsorption tests, show that the adsorption is dominated by the clay and silica nanoparticles between the polymer molecules and the solid surface. Higher nanoparticles concentration leads to less adsorption, where the adsorption may decrease to 20 % of the adsorption level of surfactant polymer. The clay and Aerosil A300 nanoparticles in surfactant polymer solutions improved oil recovery by about the same amount. The clay, however, showed improved performance in comparison to Aerosil A300.
著者
角 茂 桐生 麻子 今川 健一 河合 裕教 蛙石 健一 皆見 武志 冨重 圭一 末廣 能史
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会 年会・秋季大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.42-42, 2009

天然ガスから石油代替液体燃料を製造するGTLプロセスの基幹原料となる合成ガス製造の高効率化を目指し、直接接触部分酸化触媒の開発を行っている。第37回討論会においてCeO2+ZrO2++MgO複合担体上で効率的に部分酸化反応が進行することを報告した。より高圧、高GHSVでの反応を実現するために、本触媒の利点を活かしたフォーム触媒の調製に成功し、2000時間の長時間反応を達成したので詳細を報告する。
著者
高橋 純平 森 聰明
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.262-267, 2006 (Released:2006-11-01)
参考文献数
20
被引用文献数
7 9

バイオマスからの水素製造システムを確立するために,Ni系水蒸気改質触媒を用いた流動床反応装置によりりんご搾りかすの高温水蒸気改質を行った。Ni系触媒はりんご搾りかすと水との反応を促進して水素を生成した。反応物と生成ガスの物質収支および原料の熱分析結果より,高温水蒸気改質反応において,Ni触媒ではりんご搾りかすの分解が先行し,その後分解生成した析出炭素が水と反応すると考えられた。析出炭素と水蒸気との反応を促進すると考えられるカリウムやカルシウム化合物をNi触媒に添加すると,りんご搾りかすの水蒸気改質におけるガス化率は顕著に向上するが,このような事実は上の考えと合致する。バイオマス水蒸気改質による高性能水素製造システムの開発にとって,析出炭素と水蒸気との反応を促進することが有効な方策になり得る。
著者
岡崎 進 住谷 秀一 工藤 和夫
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.159-166, 1978

前報<sup>1)</sup>において天然ゼオライトの一種であるクリノプチオライトを一定組成比のNaOHとNaClとからなる混合水溶液中に浸せきし, 沸点付近で加熱するという簡単な処理により Faujasite が得られることを見いだした。この Faujasite はいわゆるXおよびY型の合成ゼオライトの主成分であり, したがって上記の天然品の処理生成物は適当な金属イオンで交換すれば合成XまたはY型ゼオライトと同様に触媒として使用できる可能性がある。Faujasite の生成について著者らの発表後, Robson らがアメリカ特許 (U. S. 3,733,390, 出願 1971-7-1, 成立 1973-5-15)として出願した内容においても認められているが, 原料が安価で操作も簡易なことから実用的にかなり有利なことが期待される。<br>そこで, 前報<sup>1)</sup>に引き続いて, 本報ではイオン交換が実際にどの程度可能であり, またイオン交換したものがどの程度の触媒活性を示し得るかを検討した。そのため, まず前報の処理条件およびその結果の再確認をかね, 処理水溶液の組成を変え, 生成物の形態を調べ, <b>Table 1</b>の(2)ないし(4)のような条件下に Faujasite が得られることを確かめ (<b>Fig. 1</b>), 今後(2)の組成, すなわち天然ゼオライト1gに対し, NaOH, NaCl, H<sub>2</sub>O各0.53, 0.44, 2.58gで得られる生成物を標準試料ときめた。初めにこの試料を14種の金属イオンおよびアンモニウムイオンで常温でイオン交換したところ, 交換度は60~87%に達し, 本試料には残存無水ケイ酸およびそのほかの不純物を含有するのにかかわらず合成Yゼオライト<sup>4)</sup>とほぼ同程度の交換活性を持つことを認めた (<b>Table 3</b>)。このようにして得られたイオン交換後の試料の固体酸性を測定した結果 (<b>Table 4</b>) H<sub>0</sub>〓+3.3酸点の密度 (mmol/m<sup>2</sup>) はCe型を除き, 交換イオンの電気陰性度と直線的関係にある (<b>Fig. 2</b>) ことがわかった。固体酸性の大きいLa交換体を代表例としてとりあげ, ピリジン吸着後のIR吸収を調べた結果 (<b>Fig. 3</b>), 吸着水の分極によるB酸点のほか, 露出した金属イオンに基づく, いわゆる pseudo L 酸点<sup>6)</sup>が存在した。これは合成XまたY型ゼオライトのイオン交換体<sup>4)~6)</sup>においても認められた事実である。引続き, 比較的弱い酸点によっても促進される2-プロパノールの脱水反応, とかなり強い酸点を必要とするクメン分解をテスト反応として種々の金属イオン交換品の触媒活性を調べた。両反応に対する触媒活性はともに, 固体酸性と同様に, 金属イオンの電気陰性度と関連する (<b>Fig. 4</b>)。したがって, 両反応に対する触媒活性間にも直線的比例関係 (<b>Fig. 5</b>) が認められる。さらにLaイオンで交換したY型ゼオライトと, この処理により変成した Faujasite をLaイオン交換した資料の両者について触媒活性を比較した。この結果変成ゼオライトのLa交換体は合成ゼオライトのLa交換体に比べやや活性が低くなる。低くなる原因は, La交換量が合成ゼオライトに比べ少ないこと, すなわち本試料単位重量あたりのLa保持量が少ないことによると考えられる。実際にLa交換率すなわちLa保持量と固体酸量 (<b>Fig. 6</b>) および触媒活性 (<b>Fig. 7</b>) の間に直線関係が存在する。<br>以上のように前報<sup>1)</sup>の処理により天然ゼオライトから比較的簡単な処理により得られる Faujasite は合成ゼオライトに匹敵するイオン交換活性を示し, さらにこのようにして得られたイオン交換試料はかなり量の不純分を持つのにかかわらず合成ゼオライトからの相当試料に近い触媒活性を示すことがわかった。
著者
久光 俊昭 後明 和幸 丸山 文夫
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.479-484, 1993
被引用文献数
1

シェールオイルを水素化精製する際の脱ヒ素前処理反応器に適した反応条件と触媒を選定するため, 2種類のモリブデン-ニッケル-アルミナ触媒と1種類のγ-アルミナの脱ヒ素活性を評価した。その結果, 石油精製に使用されている通常のモリブデン-ニッケル-アルミナ触媒を使用し, 300°C, 2.0 LHSVの比較的温和な条件にて水素化処理することにより, 原料油中に含まれるヒ素の90%以上を除去できることが判明した。<br>さらに, 上記触媒の一つを使用してシェールオイルの水素化精製を130時間行ったが, その間での触媒活性は安定していた。使用後の反応器内部におけるヒ素の分布を調べた結果, 除去されたヒ素のほとんどが触媒上にあり, 排ガス中には検出されなかった。ヒ素の沈積量は触媒床上部で多く, 下方に行くに従って減少した。一方, 触媒床最上層から取り出した触媒ではヒ素が粒子外表面から内部に向かって減少しているが, 2層目からの触媒では粒子の外部から内部まで比較的均一に分布していた。このような分布の変化は, ヒ素化合物の反応速度と拡散速度の違いによって生じると考えられる。したがって, 前処理反応器の上部には適度な活性を有し, 細孔径および粒子の外表面積/体積比の大きな触媒が適している。また, 予想される運転終了時でのヒ素の蓄積量に比例して, 触媒上の金属担持量を増やすべきである。
著者
秋鹿 研一
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.112-122, 1994
被引用文献数
1

メタンの酸化カップリング反応の反応機構の特徴を分かりやすく示し, 触媒設計に役立つ速度式を提案し, 他の研究と比較して論じた。<br>反応を(1)酸素分子の表面活性化, (2)表面酸素によるメタンの脱水素, (3)メチルラジカルの酸化, (4)メチルラジカルのカップリングによるエタン生成の4過程に分け, 定常状態法を用いた速度式を導いた。第3過程は, 本来は100以上のラジカル素反応からなるものを"Magic number <i>x</i>"を用いることにより一つの式で与えたものである。この取り扱いによりこの反応の特異な選択性支配 (高温, 低酸素濃度, また触媒の比表面積の小さいほどC<sub>2</sub>化合物選択率が高い等) を説明することができた。<br>この方法は転化率の低い条件で種々の触媒の反応結果を統一的に比較し, その特性を明らかにするのに役立つが, 触媒設計が終わり, 高転化率での反応操作設計のための速度式としては, むしろべき乗型の経験式の方が簡便で有用であることを指摘した。
著者
山本 博志 栃木 勝己
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.117-122, 2007 (Released:2007-07-01)
参考文献数
13
被引用文献数
3 5

環境化学的な観点から環境ホルモン等の極性化合物の室温付近での蒸気圧の推算は非常に重要である。蒸気圧の推算にはClausius-Clapeyron式を改良した様々な蒸気圧式が知られている。これらの式は沸点以上では非常に精度が高いが,1 Pa~100 Pa付近の低圧で極性物質の蒸気圧を精度よく推算できる蒸気圧式は知られていない。そこで蒸気圧が沸点や臨界定数の多項式で表せると仮定して,その係数を算出するプログラムを作成した。そのような非線形方程式の係数の組合せは多数存在しグローバルミニマムの解を見出すのは難しい。我々はこの係数を算出するのに遺伝的アルゴリズムを用いた。多項式展開型の蒸気圧式の係数をこのプログラムを用いて決定し,極性化合物の低圧領域に適用したところ,Riedelの蒸気圧式よりも低圧領域で優れた推算式が構築できた。また,蒸気圧の補正係数として重要な偏心因子を,Edmisterの偏心因子より精度が高く推算する式を構築した。