著者
井上 大介
出版者
創価大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

メキシコ民衆文化としてのサンタ・ムエルテ信仰の特徴は、負のイメージが付与されたテピート地区という社会空間を含む従来の文化資源を流用しつつ、従属階級の信者に対し、特定のアイデンティティを提供し、既存の文化的カテゴリーを揺り動かすような動向を現出させていた。またその表象に関しては、グローバル、ナショナル、ローカルといった諸次元での語りが存在し、非常に流動的な言説によってカテゴライズされているといった特徴が抽出できた。同時にマイノリティ宗教の中にも正統・異端の区別が認識されており、組織化された動向はより社会的制裁と結びついているといった傾向が看取できた。
著者
池田 秀彦
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ドイツの新しい捜査手法のうち、特に①DNA鑑定、データベースの現状、②王冠証人立法、③通信傍受について調査、研究した。いずれについても、関係規定の立法史、立法内容、運用の現状について検討を加えた。また特に、②については、2009年の王冠証人立法(刑法46条b)では、犯罪解明に寄与した被疑者を不起訴とする訴訟法的対応を採用せず、刑の減免を以て報いる実体的対応を採用した経緯とその背景について詳細に明らかにした。また、2013年に王冠証人規定である刑法46条bが改正された経緯とその理論的根拠について検討を加えた。
著者
菅野 博史 ZHANG Wenliang
出版者
創価大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

張は、湛然の著作『金剛〓』、鮮演の『華厳経玄談決択記』、鳳潭の『金剛〓逆流批』などの解読を通じて、中国の天台宗も華厳宗もその根底に心性思想があり、しかもお互いに思想の交渉があることに注目し、主に鮮延と鳳潭の思想を中心として天台宗と華厳宗との交渉を検討した。「鮮延の性具善悪説」の中で、鮮延の心性説を考察し、澄観の華厳思想を継承しながら天台宗の性具善悪説を取り入れ華厳の心性説を改造したことを明らかにした。「鳳潭の中国華厳思想に対する批判と理論的意義」の中で、鳳潭は如何に澄観、宗密の華厳思想を批判し法蔵の華厳思想を堅持したかを考察し、澄観と宗密の「真心縁起」を否定し法蔵の「法性本空」の立場に立ち返ろうとした鳳潭の姿勢を分析した。「鳳潭と中国天台宗」の中で、山外家の華厳思想吸収の立場を批判し、智者大師の天台思想を守り、さらに「華天一致」の新説を打ち出した鳳潭の天台宗に対する認識を分析し、その思想的な価値と問題点を指摘した。以上の論文の中で心性問題をめぐって天台宗と華厳宗の立場の相違と思想の交渉を論じ、法性と仏性が一致するか一致しないかという問題をめぐって両宗が対立しながら、華厳宗が天台宗の思想を吸収し法性仏性一致の立場に変容した、という結論に到達した。さらにまた、華厳宗の心性論の変容を把握するために、中国で最初の『華厳経』注釈書である霊弁の『華厳経論』の「心」思想を考察した。霊弁の心性論の思想は、後の中国華厳思想に大いに影響したことを明らかにした。
著者
前川 一郎
出版者
創価大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、近年「ジンバブウェ問題」をめぐって先鋭化した「植民地責任」論と、これに対する戦後イギリス政府の対応とに着想を得て、イギリスの脱植民地化政策の特徴を明らかにすることである。本研究を通して、戦後イギリス政府が繰り返した植民地問題終焉論(「植民地支配の責任は終焉した」という言説)は、(1)戦後国際秩序における位置に拘泥されたイギリス政権中枢の国際社会観、その世界観に基づいた脱植民地化政策を反映したものであったこと、(2)それは同時にイギリス統治が植民地にもたらした負の現実やこれをめぐる記憶を封印する側面を伴っていたこと、(3)そうした経緯はそのまま過去に対するイギリス政府特有の歴史認識なり歴史観なりの表れと考えられることなどが明らかにされた。
著者
宮口 英夫
出版者
創価大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本年は、2008年に相模湾を直撃ならびに接近した台風13号(SINLAKU)について、台風接近時からの海洋環境と生物群集の動態を調査した。研究計画通りに試料採集を行うことができた台風13号(SINLAKU)について、台風接近時からの海洋環境と生物群集の動態を調査し、台風通過の生物生産に及ぼす影響を評価することを目的とした。台風最接近時には約100mm激しい豪雨が見られ、約10PSUの急激な塩分低下を引き起こした。栄養塩濃度は、台風通過直後に、本調査海域の同時期に見られる通常値に比べ、硝酸+亜硝酸は約3倍、燐酸は約3倍、珪酸は約7倍、増加した。台風に伴う豪雨-暴風によって、陸水の流入や海水の鉛直混合により栄養塩の供給が起こり、さらに、台風通過後5-7日後に、全栄養塩濃度の減少が見られ、植物プランクトン生産に栄養塩が使われたことが考えられた。クロロフィルα量は、台風通過直後は低い値を示していたが、3-5日後に、同時期の通常値に比べ約5倍の、最大値12mg m^<-3>を示した。クロロフィルα量の変動には10-180μmの大型植物プランクトンの分画が寄与していた。植物プランクトン群集構造に関しては、台風通過前は珪藻Skeletonema costatumが優占し、台風通過直後(8月19-20日)に珪藻S. costatum、Pseudo-nitzschia multistriata、Thalasionema nitzchioides、Leptocylindrus minimus、渦鞭毛藻Protoperidinium minutum、Prorocentrum gracileなど比較的多くの種で大部分を占めた。第1ピーク時にS. costatumが優占した後、S. costatumの減少に伴い、Chaetoceros tenuissimusが優占した。第2ピーク以降はLeptocylindrus danicusが優占した。以上のように、台風通過後の群集構造にはS. costatum、C. tenuissimus、L. danicusが大きく寄与しており、これら3種による優占種の変遷がみられた。MDSプロットによる解析の結果、A(8月16-18日;台風通過前、8月25-27日;最大細胞密度時)、B(8月19,20日;台風通過直後)、C(8月21日;低細胞密度1)、D(8月28日;低細胞密度2)、E(8月29-30日;細胞密度第2ピーク時)に分類された。台風通過に伴う植物プランクトン群集構造は、A→B→C→D→A→Eと変遷していったと考えられた。台風通過により、植物プランクトンの群集構造は、一時的に激変したが、約5日後には台風通過前の群集構造に戻った。過去観測した台風の結果と同様の傾向が見られた。
著者
碓井 健寛 諏訪 竜夫
出版者
創価大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

家庭ごみ有料化は,導入後に減量効果が失われるというリバウンドが問題だと指摘されているが,実際には明らかでない.本稿は家庭ごみ有料化の減量効果,および資源ごみの代替促進効果の長期での持続性を明らかにするために,計量経済学のパネルデータ分析を用いて検証した.その際にデータ選択の恣意性を可能な限り排除し,推定結果の頑健性を保証するために複数のモデルによって確認した.その結果,ごみ排出量のリバウンドはわずかながら存在するものの,長期の減量効果はほとんど失われないことが明らかになった.また,資源ごみの長期の分別促進効果は,有料化導入後の経過年数が経つにしたがって逆に強まることがわかった.
著者
森 幸雄
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、2つの異なる地域のシンボル性について考察している。ひとつは居住する住民や周辺の人々の性質が反映するようなシンボル性であり、もう一つは空間そのものに付与されているようなシンボル性である。このうち、前者については実証的な研究をおこないやすいが、後者については実証的な研究が容易ではない。しかし、後者については、住民や地域をとりまく状況が変化していく中でも維持され続けていく地域のシンボル性をとりあげることで研究できると考える。都市景観をめぐり浮上してきた都市イメージや地域シンボル性にまず注目した。都市景観の整備は多くの都市で重要な施策となっているが、その過程で都市イメージや地域シンボル性が重要な問題となってくる。そうしたものが住民・行政などで共有されていて都市景観の整備が進む場合もあり、逆に大きな差異から対立が生じる場合もある。金沢の「こまちなみ」づくりは、共有されるシンボル性を生かしている例であり、京都の新JR京都駅や鴨川の架橋計画などでは差異がある場合をよく示している。さらに、シンボル性を考えるうえで注目したのは護国神社である。明治から現在まで、何度かそうしたものをめぐる社会的価値体系が変化するなかで、所在地や建物の構造を変えながらも、現在まで維持され続けてきたものが少なくない。そうした変遷から、都市内での地域シンボル性の変化が読み取れる。また、都市伝承のなかでの「異人」の存在も注目される。当該都市の住民にしか知られていないが、実在の人物が「異人」として伝承されている場合があり、地域シンボル性を具現するものが具体的な人物となっている点が興味深い。
著者
梅村 又次 中川 清 伊藤 繁 斎藤 修 熊谷 文枝
出版者
創価大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

「新潟県100年の生活史」研究は、日本人の生活構造の諸側面には、都市と農村との間に多大な格差が存在するとの仮定のもとに出発したものである。「地方の時代」といわれる現在、各地域の社会・経済構造の基礎ならびに、その影響を様々な角度から分析することは、各地域の今後の発展の方向づけをする上で極めて重要であると考えられる。新潟県は、その地理的、地形は、歴史的現況等から、細分化して考える必要がある。そこで、本研究では、西日本型とも言われる佐渡地域、最も新潟県らしい湛水田稲作単作地帯満原地方の新潟市、そして山村の豪雪地帯にある漁沼の三地域に焦点を当てた。そして、研究成果として以下四点の論文を中心に報告書をまとめた。1.初等教育の普及と教育の成果(梅村又次)2.新潟県における食生活の変遷(熊谷文枝)3.人口変化の歴史的パターン(斎藤修・中川清)4.戦前期新潟県経済の位置(伊藤繁)これらの論文により、生活史の分析が、歴史的横の側面と、地域的縦の側面の双方からのアプローチが同時になされなければならないことがわかっている。そして、分析結果をもとにして、地域の住民が、幸せであると感じつつ余生を過ごせるような環境作りに励むことが必要である。それは、この研究の対象地域である新潟に対してのみ言うのではなく、日本全域に対して言えることである。その様な点に生活史研究の意義があろう。換言すると、多角的に生活水準の諸側面の歴史的推移を研究することにより、その生活史のダイナミズム分析が可能となる。地域社会を歴史的、かつ総合的に分析することは、日本の他地域・全体との係りの中で把える事を可能にし、地域社会の将来の総合的システム構築への施策となろう。
著者
板垣 有記輔
出版者
創価大学
雑誌
創価経済論集 (ISSN:03883027)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-15, 2000-09

株式などの危険証券を対象にした,その資産の将来価値が,その対象とする原資産の将来価格の動きに依存して決まる派生証券の価格付けについて,次の諸仮定(Jarrow and Turnbull [14],p.34)を置いて,考察する.仮定1市場は完全で,取引費用,ビッド・アスク・スプレッド,証拠金,空売り制限,税などの取引摩擦はない.仮定2市場参加者は,取引相手から債務不履行をこうむるなどのカウンター・パーティ・リスクに遭遇することはない.仮定3市場は競争的で,市場参加者は価格受容者として行動する.仮定4市場参加者は,少ない富よりも多い富を選好する.仮定5価格は,リスクなしで確実に利益を生むという裁定取引機会を排除するように,迅速に相互に調整される.派生証券の価格は,その派生証券の将来収益の,その派生証券が対象とする原証券の将来の価格変動を表わす確率の下での平均値を求め,それを安全証券の利子率で割引いた現在価値に等しいと一見思われるが,実はそうではない.ある確率が存在して,その下で安全証券をニュメレールとする原証券の相対価格(割引価格)の将来値の期待値を,その相対価格の現在値に等しくさせるとき,すなわち原証券の相対価格にマルチンゲール性をもたらすとき,その確率を同値マルチンゲール測度という.われわれは,派生証券のペイ・オフと全く同じペイ・オフを原証券と安全証券を適当に組み合せたポートフォリオを構成することによって複製できるという完備市場を想定する.この完備市場で無裁定であれば,派生証券の価格は,同値マルチンゲール測度の下で計算した派生証券の将来ペイ・オフの期待値を,安全証券の利子率で割引いた割引現在価値に等しいことを,複製ポートフォリオの構成法を提示しながら,証明する.逆に,同値マルチンゲール測度の下で,原証券と安全証券の市場で裁定取引機会がないことも明らかにする.本稿の組み立てはつぎのとおりである.1金融証券の市場価格のダイナミックス2資金自己調達的ポートフォリオ3同値マルチンゲール測度4無裁定条件5複製ポートフォリオの構成6派生証券の無裁定価格
著者
佐瀬 一男
出版者
創価大学
雑誌
通信教育部論集 (ISSN:13442511)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.47-60, 2003-08
著者
川島 清
出版者
創価大学
雑誌
創価教育研究 (ISSN:13472372)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.55-107, 2003-03