- 著者
-
前川 一郎
- 出版者
- 創価大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究の目的は、近年「ジンバブウェ問題」をめぐって先鋭化した「植民地責任」論と、これに対する戦後イギリス政府の対応とに着想を得て、イギリスの脱植民地化政策の特徴を明らかにすることである。本研究を通して、戦後イギリス政府が繰り返した植民地問題終焉論(「植民地支配の責任は終焉した」という言説)は、(1)戦後国際秩序における位置に拘泥されたイギリス政権中枢の国際社会観、その世界観に基づいた脱植民地化政策を反映したものであったこと、(2)それは同時にイギリス統治が植民地にもたらした負の現実やこれをめぐる記憶を封印する側面を伴っていたこと、(3)そうした経緯はそのまま過去に対するイギリス政府特有の歴史認識なり歴史観なりの表れと考えられることなどが明らかにされた。