著者
吉見 俊哉
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.491-497, 2013
被引用文献数
1 1

5世紀前のグーテンベルク革命に比べられる今日のデジタル革命は,社会の記憶構造を大きく変化させる可能性がある。過去が消えなくなり,無限に集積されていく情報資源となりつつある。この情報資源を保存し,再利用可能にしていくには,以下の4点の基盤整備が重要である。第1は,新たな知識コンテンツの公共的再利用に必要な法システムの整備である。とりわけ著作権者や所有権者が不明な知的資源を公的に再利用できるようにすることが喫緊の課題である。第2に,新しい知識循環型社会のプロデューサーとなっていくことができる専門職人材の雇用を生み出す必要がある。第3は,日本やアジアの文化を世界に向けて発信・再活用していく基盤となるナショナルアーカイブの構築である。第4に,新しい知識循環型社会では,ローカルなレベルで「わが町・わが村・わが地域」の記憶を呼び戻していく開かれた仕組みが整備されていかなければならない。
著者
溝口 理一郎 古崎 晃司 來村 徳信
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.361-371, 2015

有用な情報をいかにして手に入れるかという問題は古くて新しい問題である。異分野交流の典型であるバイオミメティクスではそれが顕著に表れる。バイオミメティクスでは,生物が実現しているさまざまな機能を模倣することによって,これまでにない有用な機能を革新的な方法で実現することを目指している。しかし,生物学に不案内な工学者が生物に関する有用な情報を入手することは容易ではない。本稿では,そのような工学者を支援するための新しいシソーラスであるOntology-Enhanced Thesaurus(OET)に関する概要を解説する。OETは,オントロジーという一般的で抽象度の高い概念群を従来のシソーラスの上位に位置付けることによって,異分野間に存在するギャップを埋めることを目指している。オントロジーやシソーラスの解説も含めて,OETの構成やキーワード探索自体を支援するツールに関してわかりやすく説明する。
著者
有本 建男
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.814-830, 1995

19世紀は,第二次科学革命といわれるように,熱力学,電磁気学など科学知識について大きな飛躍があった。また,国民国家の成立と産業革命の拡大に伴って,従来別々に発展してきた科学と技術が融合し科学技術として確立した。これが,国家の軍事力や経済力の強化にとって重要な要素と認識された。このため,政府や企業が強力に科学技術を支援する制度や体制ができあがった。19世紀末から20世紀初めの政治経済の転換にあわせて,欧米主要国は科学技術の制度や体制を変革した。これは,21世紀をまじかに控えて我が国の科学技術の構造を変革するに当って貴重な教訓を提供する。今回は,19世紀の第二次科学革命の特徴,近代科学技術の発達の要因,その活動中心の国際移動について述べる。
著者
今中 陽子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.258-265, 2006

(株)電通の情報センターの歴史をひもとけば,戦前にまで遡(さかのぼ)ることができる。電通はコミュニケーションを業務としている会社であり,情報力をずっと重視し続けてきた。IT革命によるインターネットの普及やメディアの変ぼうは,情報の流通を大きく変え,電通の従来型の情報集積だけでは情報優位性を保てない状況になってきた。情報センターでは,1990年代後半から,情報センターの電子化を推進してきた。資料提供も蓄積情報を使ったサービスだけでなく,情報の先取りや2次加工レポートを作成し,社内Webを使って積極的な情報発信を開始した。社内外情報がコンパクトに詰まった「5555net」,社内研究レポート倉庫「K-navi」である。情報センターのミッションは, ・ 現場のさまざまなニーズに対応した情報 ・ 鮮度の高い情報 ・スピーディな課題解決のための情報 を現場に提供することであり,過去もそして現在も,人的情報サービスからデジタルサービスまで,求める情報に適した提供スタイルを追及し続けている。
著者
一ノ渡 勝彦 三輪 眞木子 本橋 秀世 松山 禎憲 井手 添貢
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.583-595, 1989 (Released:2012-03-23)
参考文献数
3

産業界における知的所有権への関心が高まっている現状を踏まえて, 昭和43年~62年まで20年間の特許の中から集合住宅計画に影響を及ぼす特許630件を抽出し, 集合住宅業界の技術動向を調査した。分析ツールとして, 大・中・小分類とキーワードから成る独自の分類体系を開発した。それを基に, 技術要素と達成課題, および出願人からみた出願傾向を分析した結果, 前者では住宅生産技術の変遷とほぼ一致する動向が, 後者では全体の2/3強をゼネコンと住宅関連企業が占める傾向が得られた。また, 調査対象特許をビジュアル化表現による冊子体の二次資料として編集し, 特許情報にアクセスしやすいツールを開発した。
著者
矢間 伸次
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.280-287, 2000 (Released:2001-04-01)
参考文献数
1

成熟期・衰退期における製品開発に必要なのは創造力である。創造力を生み出すには情報の収集・整理・分析が必要とされる。つまり,創造力とは情報を構造化することである。我々は課題を解決する手段は身に付けている。しかし,課題を見つけ出すことは不得意である。研究には実験研究と調査研究がある。コンセプトの良い研究テーマが見つかるまで実験研究をやるべきではない。じっくりと調査研究を繰り返し続けることである。調査研究には課題を解決する目的調査と課題を見つける探索調査がある。このレポートは探索調査に使うためのデータベース作りを述べたものである。併せて,各自の創造力を共有し伝承する知的プラットホームの構築を提言するものである。
著者
治部 眞里 長部 喜幸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.40-48, 2015-04-01 (Released:2015-04-01)
参考文献数
7

国家基幹技術(国家戦略コア技術)策定に資するエビデンス提供のため,新しい指標に基づいた特許技術の現状俯瞰を試みた。今回は,JST指標テクノロジーフロント,ジェネラリティー・インデックス,占有率という手法により,国家戦略コア技術の候補について検討した。
著者
木村 考宏 櫛田 達矢
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.204-212, 2015
被引用文献数
3

J-GLOBAL knowledgeは,文献,特許,研究者などさまざまな科学技術情報をセマンティックWebに適合した記述モデルであるRDF(Resource Description Framework)で記述し,RDFの問い合わせ言語であるSPARQLにより検索することを可能としたサービスである。今回その中の化学物質データ(日化辞RDFデータ)をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスCC BYのもと一般公開した。またNBDCと連携して,標準的なオントロジーを用いた日化辞RDFデータの変換,化学物質データベース間のマッピング情報を取り扱うUniChemへ日化辞データの提供を行い,日化辞を含む国内外の主要な化学物質データベースを対象としたSPARQL検索やデータのマッシュアップを可能とした。さらに日化辞をハブとしてライフサイエンス系データベースの化学物質情報を統合する基盤の整備を行った。
著者
木村 考宏 櫛田 達矢
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.204-212, 2015
被引用文献数
3

J-GLOBAL knowledgeは,文献,特許,研究者などさまざまな科学技術情報をセマンティックWebに適合した記述モデルであるRDF(Resource Description Framework)で記述し,RDFの問い合わせ言語であるSPARQLにより検索することを可能としたサービスである。今回その中の化学物質データ(日化辞RDFデータ)をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスCC BYのもと一般公開した。またNBDCと連携して,標準的なオントロジーを用いた日化辞RDFデータの変換,化学物質データベース間のマッピング情報を取り扱うUniChemへ日化辞データの提供を行い,日化辞を含む国内外の主要な化学物質データベースを対象としたSPARQL検索やデータのマッシュアップを可能とした。さらに日化辞をハブとしてライフサイエンス系データベースの化学物質情報を統合する基盤の整備を行った。
著者
荒川 紀子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.32-39, 2007 (Released:2007-04-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

COUNTERは,電子ジャーナルやデータベースなどを購読している図書館等に対して,各ベンダーがその機関からの利用量を報告する際に準拠することが推奨されている国際的な基準である。JSTの電子ジャーナルサイトJ-STAGEでは,購読機関向けの利用統計提供サービスを始め,2006年末に日本発のサービスで初めてCOUNTERに準拠した。J-STAGEは出版者に代わって第三者の立場で統計を配信するという立場にあり,また,無償公開の雑誌も多いため,いかに購読機関を扱うかが最大の課題であった。本記事では,J-STAGEに利用統計提供サービスを導入するまでの経緯とその利用方法を紹介する。
著者
今野 穂
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.334-342, 2006

札幌医科大学総合情報センターは2006年4月,附属図書館と附属情報センターの統廃合により新設された組織である。当センターは北海道立の機関の使命として学内所属員はもとより,北海道内に在住する地域医療従事者の学術コミュニケーション活動を支援することを目的としている。目的達成のために当センターが取り組む事業は,医学医療情報発信のための学内ネットワークなどのインフラ整備や学術コンテンツシステムの整備をはじめさまざまなものがあるが,学術コミュニケーションの推進の点において特に旧附属図書館が実施してきた文献情報提供支援を重要な事業として位置付けている。本稿では当センターが実施する文献情報提供による地域医療従事者サービスについて学術ポータルシステムPIRKAの概要を交え,報告するとともに,今後の文献情報提供支援の推進において当センターが取り組むべき課題について述べることとする。