著者
大野 源広 田崎 和江
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.298-309, 2000-09-25 (Released:2017-07-14)
被引用文献数
2

高温環境である平湯温泉,おばこ原の湯には3種のバイオマット(白色,茶色,緑色)が存在する.これらのバイオマットは水温,pH,Eh,DO,光および温泉水の流れの変化に伴い,上流部から下流部に向かって色調が白色→茶色→緑色へと変化する.白色バイオマットは主として大鎌型細菌から構成され,硫黄を濃集するのに対し,茶色バイオマットは多量の桿菌および少量の糸状菌で構成され,水酸化鉄を濃集する.また,緑色バイオマットは糸状菌から構成され,カルシウムを濃集し,方解石を形成する.すなわち,バイオマットの色は生息する微生物種と形成された生体鉱物を反映している.その中でも高温環境下に存在する大鎌型細菌は夾膜の表面に雁行状に硫黄の結晶を成長させる特徴がある.
著者
徳田 御稔
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
no.45, pp.3-4, 1959-12-23
著者
中澤 圭二 鈴木 一久 志岐 常正
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.139-154, 2011
参考文献数
28

1874年デ・レーケにより南山城の不動川上流に作られた石積み堰堤は1953年の南山城水害の際決壊し,下流に大災害をもたらした.その時池を埋積した78年間の地層の露頭が出現し,翌年京都大学学生実習として実測地形図と柱状図が作成された.その資料を検討し,埋積過程を考察した.堆積層は下位よりユニットI〜Vに区分される.ユニットIは堰堤建設以前に堆積した土石流堆積物である.ユニットIIは堰堤建設直後,池上流の浅い水域を急速に埋め立てた含礫粗粒の花崗岩質砂質堆積物が主体である.前端が急斜し段丘状地形を作るが,ユニットIIIはその下流側の深い水域を埋め立てたシルト・細粒砂などの細粒堆積物が主体である.顕著な2枚の礫質粗粒砂層が含まれるが,これらはユニットIIの砂層と同様洪水に伴う水中重力流堆積物と考えられる.ユニットII,IIIの堆積により池の奥行きは70mに減少し,当初200mあった池の6割が10数年で埋め立てられた.これは1887年頃の古い見取り図とほぼ一致する.この上を覆う2回の洪水堆積層がユニットIVである.この堆積層は縮小した水域ではデルタの前置層,底置層的な堆積に移化する.その後堤体は破損し,木製用水樋の腐朽と相まって漏水により水位は1m以上低下した.段丘化した埋め立て地は侵食の場となった.この時期の顕著な洪水堆積層は連続性の悪いユニットVの細〜中粒砂層のみである.池はシルト・極細粒砂でゆっくり埋め立てられ,堰堤決壊時には奥行きは2-30mになっていたが,集中豪雨により右岸の用水樋付近が決壊した.また粗粒砂層と過去の洪水との比定も試みた.ダム湖の6割近くが埋積された1887年ごろまでに発生した大きな洪水は4〜5回であり,粗粒堆積層とおおむね対応する.
著者
丸山 茂徳
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.255-270, 1979

四国東部秩父帯の沢谷緑色岩岩体は古生代末の海底火山体である.火山体は上部石炭系東浦層上に形成され,多数のフィーダーダイクは火山体中心部及び下位の東浦層中に観察される.第I期にはアルカリ玄武岩が活動し,2つの循状火口丘をもつ火山を形成した.その後小休止期を経て2つの火口丘のうちの1つの上に新期火口丘が形成されたが,マグマの組成は第I期のそれよりもアルカリが少なく海洋性ソレアイトに似た組成であった.噴出物量は第I期680km<sup>3</sup>,第II期20km<sup>3</sup>である.火山活動と同時に火山体周辺では砂粒サイズの酸性物質が堆積しそれらは再動ハイアロクラスタイトと火山体縁辺部で互層する.火山体が基盤から3.7kmの高さまで成長した時に頂部は海面上に現われ,礁性石灰岩と火山岩礫岩層が頂部の周辺に形成された.火山体を構成する枕状溶岩は最小径/最大径比で第8図の様に分類される.マトリックス比,急冷による割れ目の発達度,気泡の上部濃集度,ガラス皮殻の厚さは上述比の増大に伴い大になる.ハイアロクラスタイトはマトリックス占有率により幾つかのタイプに区分できるがその値は枕状溶岩の最大値10%に比べてハイアロクラスタイトの最小値は約30%であり両者の断絶は次の様な成因を意味している.枕状溶岩流はその前面でピローを生産し,既製のピローを敷いて前進する.ピローは同時に溶岩流の上面においても溶岩岩脈を通路として形成され,結果として生じたピローパイルは安息角の10°を越える.火山活動の小休止期にそのパイルは崩壊しハイアロクラスタイトを形成する。火山体は三波川変成作用の低温部と思われるパンペリー石アクチノ閃石相の変成作用を受けた後,上昇し現在はその頂部を含めた断面を四国東部秩父帯に露出している.
著者
遅沢 壮一
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.321-326, 2009-09-25
被引用文献数
2

The 2008 M6.9 Iwate-Miyagi Nairuku earthquake generated a reverse-fault surface rupture that was observed at the Aratozawa dam site area. This faulting reactivated a normal fault formed by late Miocene caldera collapse. The earthquake triggered numerous and voluminous landslides in the hanging wall of the fault, upstream of Aratozawa dam.