著者
亀井 健史 榎本 雅夫
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.148-160, 1996
参考文献数
17
被引用文献数
1

地下水位の上昇に起因する地すべりに対し,効果的な対策工のひとつとして集水井工が挙げられる.集水井工の地下水位低下に及ぼす効果に関しては,経験的な設計値は設定されているものの,その定量的な評価手法に関しては確立されていないのが現状である.本研究では,砂および粘性土から構成される四つのモデル斜面を対象に飽和-不飽和浸透流解析を行い,集水井工が斜面内の浸透流挙動に及ぼす影響を明らかにし,集水井工の地下水位低下に及ぼす効果を検討している.その結果,降雨量,上流側方からの地下水流入量が異なる条件下で集水井工が斜面の安定性に与える効果をある程度定量的に明らかにしている.
著者
岡村 聡 稲葉 充 足立 佳子 新城 竜一
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.65-73, 2017

北部フォッサマグナ周辺の新第三系玄武岩類について,同位体組成と微量元素組成を検討した結果,マグマの起源物質とマントルウェッジの熱構造が漸新世から鮮新世にかけて変化することが明らかとなった.前期中新世玄武岩は,一部の玄武岩(切明玄武岩)を除き,HFS 元素に富み低<sup>176 </sup>Hf/ <sup>177 </sup>Hf 比,低<sup>143 </sup>Nd/ <sup>144 </sup>Nd 比を示すエンリッチした組成からなり,大陸縁辺を構成していた大陸下リソスフェアマントル起源と考えられる.中期中新世~鮮新世玄武岩は,HFS 元素に乏しく高<sup>176 </sup>Hf/ <sup>177 </sup>Hf 比,高<sup>143 </sup>Nd/ <sup>144 </sup>Nd 比を示す枯渇した組成であり,中でも中期中新世玄武岩は,インド洋MORB に類似の最も枯渇した同位体組成を示す.これらの枯渇組成マグマは,背弧海盆である日本海の拡大をもたらしたMORB 様アセノスフェアマントル起源だったらしい.漸新世~前期中新世のエンリッチしたマグマは,湧昇してきたアセノスフェアマントルの加熱によって,リソスフェアマントルが部分溶融して造られたと考えられるが,同時期に活動した枯渇組成の切明玄武岩の存在は,北部フォッサマグナにおいて,中絶リフト軸部に沿ってアセノスフェアの部分溶融メルトが生じたことを示す.各時代の玄武岩質火山岩類の化学組成は,異なるマントル物質の部分溶融に加え,スラブ堆積物の脱水作用や部分溶融メルトの影響を受けている.漸新世~中期中新世玄武岩類は,スラブ堆積物の高温部分溶融メルトの汚染を受けており,後期中新世~鮮新世玄武岩類は,ジルコンを残存固相とする低温部分溶融メルトによって汚染されたことを示唆する.
著者
鈴木 尉元
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.217-221, 2007
参考文献数
48
被引用文献数
1
著者
下総台地研究グループ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.155-173, 2011-07-25 (Released:2017-05-16)

茨城県南東部の行方・鹿島台地に分布する中・上部更新統の層序について検討した.堆積相解析に加えて,珪藻,有孔虫,貝化石の分析結果から,本地域の主に海成層からなる更新統は4つの堆積シーケンス(累層)に区分されることがわかった.隣接する茨城県稲敷台地および千葉県下総台地北部における層序区分との対応関係から,これら4堆積シーケンス(累層)は下位より,八日市場層,神崎層,上岩橋層,木下層に対比される.八日市場層上部層・下部層境界面,および上岩橋層中のラビンメント面の高度分布は,本地域の地質構造が西方への単純な同斜構造ではなく,相対的な隆起・沈降域をもつ"ブロック状"を示す.神崎層や上岩橋層の分布,層厚および堆積様式はこの構造に規制される.例えば,上岩橋層基底の大規模埋没谷(河川流路)はこの沈降域に沿い,上岩橋層上部層の層厚はこの沈降域で厚く,隆起域で薄くなる.また,上岩橋層の大型のフォアセット層理の発達する砂層もこの沈降域に分布しており,強制海退の進行とともに沈降域に向かって前進しながら形成したと考えられる.
著者
小村 和久 稲垣 美幸 西川 方敏 中西 孝 早川 和一 唐 寧 楊 小陽 飯田 孝夫 森泉 純
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.335-342, 2007-09-25 (Released:2017-05-16)

環境放射能の観点から能登半島地震発生前後の放射能関連のデータの解析を試みた.解析したのは,輪島市西二又地区で採取した大気浮遊塵中の210Pb,輪島沖50kmに位置する舳倉島のラドン濃度,地震発生後の4月21日から西二又地区で連続測定を実施した空間γ線レベルの3項目である.その結果,地震発生約3週間前から大気浮遊塵試料のラドンの娘核種210Pbの濃度が増加し,地震直前にピークに達した後に低下に転じ,約2週間後にほぼ平常値に回復していたことが分かった.舳倉島のラドンには地震の影響は見られなかったが,西二又における空間γ線レベルはラドンに由来すると考えれる高い値が約6週間後も続き5月中頃に平常値に戻ったことが明らかになった.
著者
小寺 春人
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.293-300, 2015-09
著者
大和大峯研究グループ 岩橋 豊彦 奥田 尚 佐藤 浩一 竹内 靖夫 南浦 育弘 八尾 昭
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.11-26, 2002-01-25
参考文献数
31
被引用文献数
11

入之波地域の地質は,構造的に上位から下位に向かって秩父帯の三之公層(ジュラ紀中世前期頃)・北股川層(ジュラ紀中世中期-後期)・奥玉谷層(ジュラ紀新世前期)・黒石層(ジュラ紀新世中期-後期)・大普賢岳層(ジュラ紀新世中期-後期)・山葵谷層(ジュラ紀新世後期)・高原層(白亜紀古世前期)・,四万十帯の伯母谷川層(Albian-Cenomanian)・赤滝層(Turonian-Campanian?)と重なり,各地質体はスラストで境される.今回新たに報告した三之公層・北股川層・奥玉谷層・黒石層はメランジュからなる地質体であり,付加コンプレックスの特徴を示す.当地域の秩父帯は,ジュラ紀中世から白亜紀古世に至る付加過程で形成された一連の地質体で構成される.秩父帯の各地質体は低角度のスラストで境され,地帯を境するような高角度の断層はない.また,黒瀬川帯の存在を示すような地質体や岩石も見いだされない.秩父帯は,大峯-大台スラストを境してナップとして四万十帯の上に衝上している.南北性の高角度断層である入之波断層を境して,西側の地質体が上昇している.
著者
Boris I. VASILIEV Ivan V. YUGOV
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.185-196, 2006-05-25 (Released:2017-07-14)

35年間におよぶ海洋地質研究にもとづいて,太平洋の基本構造を解明し,もっとも信憑性のある太平洋の起源論を提案する.太平洋巨大海盆の基本構造は,3つの地質-構造ステージからなる.第1ステージは,始生代にさかのぼる超塩基性岩類(塑性流動を履歴)と変成岩類に代表され,それぞれ,海洋島火山岩中の包有物として産出し,海溝・断裂帯・海台などに露出する.第2ステージは,三畳紀〜ジュラ紀を中心とする海洋性トラップ層(層状塩基性貫入岩類と玄武岩類のコンプレックス)であり,海盆下のほぼ全域に伏在する.第3ステージは,海盆底や海山・海台を構成するジュラ紀後期〜現世の火山岩類と堆積層であり,ブロック運動による深海化を記録する.太平洋巨大海盆は,地球最大のユニークな地形-地質構造であり,おもに苦鉄質な地殻をもつ.(1)その原型は,地球-月システムをうみだした約45億年前の天体事件によって形成され,その後,(2)周縁の大陸から数10億年間にわたって供給された厖大な量の陸源物質が,海盆底の火山噴出物や伏在する超塩基性岩類とともに変成-溶融し,少量の酸性岩類を形成した.さらに,中-新生代における全地球的海洋形成作用にともなって,(3)三畳紀〜ジュラ紀を中心に海盆のほぼ全域にトラップ層が形成され,(4)ジュラ紀後期にはじまるブロック沈降による深海化と火山活動-堆積作用が現海盆の複雑な地形-地質構造を形成した.
著者
小滝 篤夫
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.17-24, 2004-03-25
参考文献数
9

田倉山火山は,スコリア丘と溶岩台地からなる.溶岩は下位から小倉・衣摺・田倉山溶岩の3種に区分され,スコリア丘は田倉山溶岩流出後に形成されたことがわかっている(田倉山団研1984).スコリアの風化が進んでいるため,スコリア丘の層序をスコリア中の重鉱物組成によって確立することは困難であったが,新たにスコリア中に残る鉄-チタン鉱物の化学組成の分析を行ない,田倉山溶岩とスコリア丘を構成するスコリア層を対比した.また,JR夜久野トンネル工事のボーリングコアや工事中の露頭から得た試料により,溶岩の基盤岩の形態を検討した結果,田倉山団研(1984)が述べた基盤岩の高まりは見られないことがわかった.
著者
間島 信男
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.174-175, 1994-03-25
著者
久保田 喜裕 山崎 興輔 飯川 健勝 吉越 正勝
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.455-464, 2006-11-25

2004年10月23日の新潟県中越地震において,長岡市悠久山地域の被害要因に関する疑問を解明するため,補充調査を行った.その結果,以下のことが判明した.(1)一般に地盤が良いとされる段丘地でなぜ被害の集中域がみられたのか:住宅が集中する段丘面上にふたつの谷状凹地を確認したが,被害はこの谷状凹地の谷底や斜面の盛土地に集中した.とくに谷頭など,傾斜地の盛土部で顕著な被害がでた.被害要因として,この谷状凹地を埋積した沖積泥質堆積物や盛土が低い方へ変位したことが考えられる.(2)沖積盛土の大規模住宅地でなぜ被害が偏在したのか:損壊家屋は隣地との境界に設けられた水路(かつての水田の用排水路)脇に多かった.宅地地盤は北西側に0.7/100程度傾斜しており,被害は盛土が厚く深い水路(約1m)がある下流部に集中した.このような水路には一様にフタがない凹地空間となっている.被害要因として,傾斜した地盤に地震時の過剰な土圧が発生したため,盛土が水路・側溝の凹地空間へ押し出し,家屋とともに変位したことが考えられる.大規模な新興住宅地の開発は,今後ますます沖積低地へ向かうと思われる.沖積低地でも微傾斜地や,深い水路や側溝がある宅地地盤には,地震動による過剰な土圧の発生に耐えられる盛土の土留め擁壁や水路・側溝の側壁の耐力強化,グレーチングやコンクリート製のフタの設置といった,地盤の変位を抑える対策が不可欠である.
著者
田崎 和江 野村 正純 馬場 奈緒子
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.389-400, 2007-09-25
被引用文献数
1

2007年3月25日9時41分にマグニチュード6.9の地震が石川県能登半島を襲った.その地震のため1〜2週間電気や水道が止まった.住民は近所の井戸,湧き水,山水を注意深く使用した.なぜならば,地震後のそれらの水は,泥などで色が変化し,pHも硫酸イオンのために中性から酸性に変化し飲料不可になった井戸水があったからである.一方,地震から2ヶ月後の6月初旬,石川県七尾市中島町において、亀裂や陥没等々の地下構造の変化のため,海水が水田に浸透し稲が枯れる塩害が発生した.塩害が発生した水田を始め,周辺の用水路,貯水池の水を現地で測定したところ,pH8を示し電気伝導度(EC)も高い値を示した.また,塩害を起こした水田の土壌と稲を蛍光X線分析により定量分析をおこなったところ高濃度の塩素のほか典型的な塩害現象を示すNa,S,Feが高濃度に検出された.