著者
大和大峯研究グループ
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.287-300, 2005-09-25
被引用文献数
11

大和大峯研究グループは1970年以来,紀伊山地中央部の秩父帯・四万十帯を調査し,地質体区分を行ってきた.その区分に岩相層序区分単位である「層(Formation)」を用いたため,メランジュ相などで特徴付けられる付加体区分には不適切であった.本論文では,構造層序学の見地から区分単位として「コンプレックス(Complex)」を用いて,本地域の地質体を再定義し,必要に応じて模式地および地層名を変更する.本報告地域の秩父帯はジュラ紀中世(post-Toarcian)から白亜紀古世(Aptian)に,四万十帯は白亜紀新世(post-Cenomanian)にいずれも付加コンプレックスとして形成された.いずれも構造的下位へ形成年代が若くなる極性を示す.秩父帯形成後から四方十帯形成開始までの間には,時間間隙(約3000万年)がある.本地域の秩父帯と四万十帯は低角度の仏像構造線(大峯-大台スラストに相当)によって境される.この構造特性は,秩父帯と四万十帯の初生的な地質関係を示すものと考えられる.四万十帯形成後,四万十帯の地質構造を切る宇井スラストや平原スラストが生じ,四万十帯の付加体としての極性が乱された.さらに,東西方向・高角度の下多古川断層が形成され,北側の地質体が上昇した.中新世中期の火成活動と関連して,大滝-北角断層,入之波断層が生じ,各断層の東側の地質体が下降した.
著者
中川 登美雄 杉本 裕美
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.295-304, 2004-09-25

石川県加賀市の大聖寺層から産出したEchinarachnius microthyroidesに見られる捕食痕について研究した.捕食痕は産出した241個体中120個体から見つかった.捕食痕率はカシパンウニの大きさにより大きく異なり,長さ28mm以下の個体では22.0%であるのに対して長さ28mm以上の個体では69.5%であった.円筒型で2〜3mmの修繕跡のない小さな径を持ち,酸によるエッチングが見られ,複数の穴が開けられている個体は6.7%とまれであることからLiracassis japonicaのように殻高数cmのトウカムリ科巻貝による捕食痕と考えられる.ほとんどの捕食痕は完全で,反口側に開けられていることから,捕食者はカシパンウニの上部(反口側)から襲いかかったものと推定される.Echinarachnius microthyroidesはトウカムリ科巻貝により捕食され,波の影響により浅い海に集積したと考えられる.
著者
鴈澤 好博 紀藤 典夫 貞方 昇
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.379-390, 1995-11-25
被引用文献数
1

1994年7月12日に発生した北海道南西沖地震について,大規模な被災地域の一つである大成町平浜,宮野,太田地区で,野外調査および聞き取り調査を通して,地震と津波の自然科学的な側面,被災状況の実態を把握し,自然的な条件と人間の避難行動の相互の関わりを検討し,あわせて防災に関する提言を行った.津波は地震後,約5分から7分で西あるいは北西方向から浸入し,その高度は4m〜7m程度であった.また,津波による人的・経済的被害は地区により大きな違いが認められた.津波から人命を安全に守るためには,a)住民に「地震すなわち津波」の意識があること,b)地震後津波が襲来するまでの避難時間があること,c)避難経路および避難場所が確保されていること,d)防波堤などの対津波・高潮対策が十分であることが保証される必要がある.
著者
秋山 雅彦
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.3-8, 2009-01-25
被引用文献数
3

古気候の解析は,現在の気候を理解し,未来の気候を予測するために重要な役割を果たすことになる.後氷期とされる完新世は,間氷期とも位置づけられることから,現在の気候を理解するためには,間氷期の中で最もデータの多い最終間氷期の気候と比較することが重要である.それらの記録から,太陽の放射量のわずかな変動が地球の気候を大きく変化させることがわかってきた.そうなると,IPCC第4次評価報告で重要視されていない太陽由来の放射量の変化という自然要因を改めて検討し直す必要がある.太陽放射の周期的変化は,基本的には太陽活動そのものとともに,地球軌道によって規定されている.いわゆるミランコビッチ・サイクルである.現在の地球軌道は最終間氷期のそれとは異なり,約40万年前のMIS11ステージに類似しているという.したがって,太陽からの放射強制力という自然要因については,12.5万年前の最終間氷期だけではなく,MIS11ステージの気候変動と比較する必要があろう.
著者
小室 裕明
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.115-123, 1986-03-25
被引用文献数
1

本宿型陥没構造(cauldron)は,1.ドーム隆起,2.陥没形成,3.噴火,という形成過程をふみ,いくつかの陥没が討究する傾向がある.隣接する陥没盆地間の中心距離は,数km〜30km,平均して20km程度である.このように陥没盆地がある一定の距離を隔てて等間隔配列をするのは,それぞれの盆地に対応してマグマ溜りが深部の低密度の部分溶融層から浮上してきたためと考えられる. Rambergによる重力不安定の理論式にもとずいて,20kmの卓越波長を生じる条件を数値計算した.モデルは2層構造であり,上層/下層(浮上層)の比が,0.2, 0.5, 1.0, 2.0, 5.0, 10.0の6通りのケースを設定して,粘性係数比と肩摩の関係を求めた.その結果,卓越波長は,上層の厚さ(部分溶融層の深さ)にはほとんど無関係であり,部分溶融層の厚さに大きく影響される.20kmの卓越波長を与える溶融層の厚さは6km以下である必要がある.
著者
平澤 正規
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.63-64, 2002-03-25
著者
西田 和浩 山本 慎一 今岡 照喜 加納 隆 大和田 正明
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-34, 2002-01-25

オリオン290A型デジタルイオンメータを用いた珪酸塩岩石のフッ素定量を,蒸留操作なしに行った.岩石試料の溶融は,試料と酸化亜鉛および炭酸ナトリウムを混合して,電気炉を900℃の一定温度に保ち,30分間試料の溶融を行った.白金るつぼに直接蒸留水を加えてホットプレート上で2時間加熱することによって,内容物は,白金るつぼから容易に剥離でき,岩石試料中のフッ素を完全に回収することができた.イオン強度調整剤として,0.2Mクエン酸ナトリウムー0.2M硝酸カリウム溶液を使用した.この方法を用いて,いくつかの岩石標準試料のフッ素定量を試みた.それらの分析値は,推奨値および既報値と良い一致を示し,好結果を得た.また,インドのアラバリベルト,イースタンガーツベルト,ケララコンダライトベルトおよび東南極のセルロンダーネ山地メフェール花崗岩コンプレックスのフッ素定量を行った.ケララコンダライトベルト中のインシピエントチャーノッカイトのF含有量およびGa/A1比は,同一露頭中の片麻岩の値よりも高い.