著者
松村 真木子 Makiko MATSUMURA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
no.17, pp.281-294, 2017-12

学習指導要領の改定が平成22年(2010年)に公示され、平成25年4月1日の入学生(2013年)から「情報と社会」「情報と科学」が導入された。2011年にLINEが登場すると、爆発的にスマホが浸透し、高校生をめぐるインターネット環境は劇的に変化した。本稿では、高校生が情報を安全に使うために必要となる項目を抽出して「情報と社会」の教科書を検討する。たとえば、自分が使う情報端末の管理、インターネットの仕組みと使い方、個人情報の保護、SNSの使い方、公開された情報は消せない、ネットいじめなどである。個々の項目について各教科書は丁寧に説明しているが、情報端末の仕組みやインターネットにつながる仕組みとインターネットの安全な使い方を関連づけて伝えていない。それぞれを別々に解説しているため、その関連性を読み解くのは難しい。情報機器やインターネットの仕組みと安全な使い方を関連づけて教えることで、高校生は情報を安全に使えるようになる。
著者
川勝 麻里 Mari KAWAKATSU
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
no.14, pp.226-211, 2014-12

キャラクターによるリミテッド・アニメーションから、日常に生きる人間らしい成長アニメーションへ。影響を受け続けた手塚治虫から宮崎駿はどのように卒業していくのか。七〇年代の手塚治虫的な、パターン化されたキャラクターが動くリミテッド・アニメーションの遍歴物語から、八〇年代の、等身大の少女が日常生活の中でリアルに動く成長物語へと、宮崎駿が脱皮していく過程を追いかけた。原作をどのように改変して成長物語が作られたかを分析。『ゲド戦記』の影響や、同時代の魔法少女アニメーションとの違いにも言及しながら、等身大の少女の〈成長〉を描いたところが、『魔女の宅急便』の面白さであると論じた。また、本作は『風の谷のナウシカ』に次ぐ〈魔法もの〉だが、ナウシカと比べて、職業によって生計を立てるという経済的部分がキキには付け加えられており、ナウシカになかった〈一人で生きるための〉手段として仕事する責任感が強められている。そうした「生きる力」は、宮崎がスタジオジブリの監督を通じて描き続けたテーマである。神格化されていない等身大の人間が悩む姿は、当時大流行した『魔法の天使 クリィミーマミ』の悩む姿も参考に作られていると考えられる。
著者
松村 真木子 Makiko MATSUMURA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
no.14, pp.113-125, 2014-12

ウィンドウズXPが2001年に登場してから12年を経て延長サポートが終了した。その間、一般ユーザーが増加し、高速通信の環境が整い、ブログ、SNSなど多様な方法で一般ユーザーが情報を発信するようになった。一方、一般ユーザーを標的にするウイルス、スパイウェアなど悪意の脅威が活発に活動し巧妙化した。2000年から2014年までの情報セキュリティに関する新聞記事を分析し、ウィンドウズXP時代のインターネット環境の変化を振り返り、一般ユーザーのセキュリティ意識がいかに啓発されてきたかを考察した。新聞は、一般ユーザーがインターネットを安全に利用するための知識を学ぶ重要な手段である。今後セキュリティ情報に、PCの構造やインターネットがつながる仕組みを基本的に伝えることを含めると、よりいっそうユーザーの理解が深まり、積極的にセキュリティ対策をとるようになる。
著者
杉浦 浩美 Hiromi SUGIURA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.99-106, 2016-12-01

On January 1, 2017, it will be made obligatory for companies to take measures to prevent maternity harassment at workplace. “The guidelines of the measures which employers must take in relation to the problems caused by the behavior toward pregnancy and childbirth at workplace” were publicly announced on August 2, 2016. In this essay, we consider the contents of the guidelines announced by the government and check what kind of acts are prohibited in the guidelines and what are not. This process shows that the guidelines does not cover some aspects and that the aspect not covered is essential.As a consequence of the public announcement of the guidelines, working pregnant women must have less difficulty to assert “the right to work and give birth healthily” and it must lead to the protection of the right. As to the aspect of the protection of the right, however our current society has a long way to go. The guidelines has to necessarily contain the viewpoint to reconsider working environment and way of working itself. We should discuss how to protect the right to work and give birth, rather than emphasize solely the prohibition of harassment.
著者
米山 徹幸 Tetsuyuki YONEYAMA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 経済経営学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University (ISSN:21884803)
巻号頁・発行日
no.13, pp.101-110, 2013-12

英国の証券規制は、長年にわたり、自治の伝統に根ざす金融街シティーの自主規制機関に基盤を置いていた。サッチャー政権のビッグバン直後に成立した1986年金融サービス法は、貿易産業省(DTI)を所轄の監督官庁として、1988年4月、証券投資委員会(SIB)のもとに業務分野ごとに専門の自主規制団体(SRO)を配置する自主規制制度を導入した。1997年10月、労働党政府の下で、金融業界の多岐にわたる自主規制機関を一元的に統一し、金融サービス全般を監督する市場監督機関として金融サービス機構(FSA)が発足する。翌年にはイングランド銀行(BOE)から金融機関の監督権限が移管し、さらに2001年に施行された2000年金融サービス・市場法によって、FSAの監督庁としての立場はいっそう明快となった。 ところが、2010年5月の総選挙で保守党と自由党の連立政権が発足すると、2007年末に破たんの危機に陥った住宅金融銀行ノーザン・ロックに始まる同国の金融危機で、「誰も負債水準を管理できず、危機がやってきても誰も責任の所在をわからなかった」という政権内の指摘から、イングランド銀行(BOE)、金融サービス機構(FSA)、財務省による三者共同の金融監督体制は機能しなかったとして、FSAを解体し、金融機関を監督する権限の大部分がBOEに移管することになった。2012年金融サービス法に基づき、2013年4月、FSAは廃止となった。 本稿は、各金融業界の自主規制監督を一元化するFSA発足の経緯を世界最古の相互保険会社エクイタブルの破たんを中心に検証する。
著者
奥山 忠信 Tadanobu OKUYAMA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 経済経営学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University (ISSN:21884803)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-13, 2017-12

物神性論の課題は、資本主義経済あるいは商品経済の特徴を、人と人との関係が物と物との関係になっていると把握し、その根拠を解明することにある。魅力的な課題だが、経済学がこの課題をどのように受け止めるかは確定していない。しかし、この課題は青年期のマルクスの疎外論や唯物史観に基礎を置くものであり、マルクスにとっては欠くことのできない課題であった。とはいえ、その理論内容の形成は、『資本論』を待たなければならない。今日の経済学にこの論理をどのように活かせるかを考察するには、何よりもこの難解な論理を解読する必要がある。本稿は、物神性論の解読という課題に対して、理論形成史を整理することでアプローチするものである。本稿の結論は、物神性論の課題自体は、初期マルクスの疎外論の中に明確に記されているが、その論理は、『資本論』とりわけ価値論の論証と価値形態論が確立することで同時に確立する、ということにある。
著者
松村 真木子 Makiko MATSUMURA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.165-178, 2015-12-01

インターネットが家庭に定着した2007年から2015年の時期における、子どもをめぐるインターネット環境の変化を、朝日、毎日、日経各紙の記事から分析した。通話のPHS時代、メールの携帯時代を経て、2013年から中高生は一気にLINEのスマホ時代に突入した。そして、子どもをトラブルから護るための対策であったフィルタリングが有効性を失った。メール時代から続く「即レス」(すぐに返事をすること)が、LINEのチャットで加速した。仲間はずれにならないために深夜までチャットに参加し、子どもたちは疲弊している。さらに、SNSで誰もが不特定多数に対し情報を発信し交流できる環境は、さまざまなトラブルに出会う危険性をはらんでいる。このような時代の実情をふまえて、まずネットの仕組みを理解させること、そのうえで子どもの心の成長に合わせて、子どもたち自身が、チャットの時間帯を含めてネットの安全な使い方を考えられるようなサポートが必要である。
著者
奥山 忠信 Tadanobu OKUYAMA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 経済経営学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University (ISSN:21884803)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-13, 2015-12

過労死問題やブラック企業問題など、長引く不況と国際競争の激化の中で、わが国の労働条件は悪化している。本稿では、労働力の特殊な性格を踏まえて、労働時間に対する原理的な考察を行った。労働力の回復の条件は、極めて弾力的であり、長時間労働や労働内容の強化の問題は、市場の論理では解決できない問題を多く含んでいる。労働者の闘いや国家による労働者の保護が不可欠な問題と言える。