著者
松村 真木子 Makiko MATSUMURA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
no.16, pp.145-157, 2016-12

PCやスマートフォンの汎用化と、多様なSNSの登場によるインターネット社会の広がりとともに、インターネット上の個人情報に対する意識や評価が変化した。2000年から2016年8月までの新聞記事を分析し、その変化の経過をたどる。スパイウェアによって個人情報が抜き取られることは危険であると問題視されていた時代から、個人情報は、同意の上で収集するものであるとの個人情報保護法制を経て、匿名化すれば同意がなくても二次的に活用される時代になった。個人情報の利用とプライバシー保護との関係は、法律上で検討されるだけではなく、監督する政策側、利用する企業、提供する個人それぞれが、インターネットの仕組みを技術的に理解したうえで議論されることが望ましい。すなわち、同じ技術的理解の基盤に立ち議論をすることで、次の時代を創ることができるのである。
著者
布村 育子 Ikuko NUNOMURA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
no.15, pp.77-89, 2015-12

2015年6月、選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が公布された。この動きに連動する格好で、高等学校教育における生徒の政治的教養のあり方に関して、「政治の解禁」と「政治の抑制」との二つの相反する動きが存在している。近い将来、現場の具体的な個別の教育実践に関して、事件化や問題化される事例が生じてしまう可能性を否定できない。こした事件化や問題化をどう考えたらよいのだろうか。本稿では、まず教育公務員の政治的行為と政治教育に関する法制度の仕組みを確認する(第2節)。そのうえで、今後予想される事態の先行事例といえる1954(昭和29)年の教育二法の成立時の経緯を掘り下げて、ある性格をもった物語化の機制がそこで働いていたことを示す(第3節)。そこでの知見をふまえて、第4節では現在の政治教育解禁/抑制の動きを考察し(第4節)、近い将来に起こるかもしれない「事件化/問題化」をどう考えるべきかについて論じる(まとめ)。
著者
松村 真木子 Makiko MATSUMURA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
no.15, pp.165-178, 2015-12

インターネットが家庭に定着した2007年から2015年の時期における、子どもをめぐるインターネット環境の変化を、朝日、毎日、日経各紙の記事から分析した。通話のPHS時代、メールの携帯時代を経て、2013年から中高生は一気にLINEのスマホ時代に突入した。そして、子どもをトラブルから護るための対策であったフィルタリングが有効性を失った。メール時代から続く「即レス」(すぐに返事をすること)が、LINEのチャットで加速した。仲間はずれにならないために深夜までチャットに参加し、子どもたちは疲弊している。さらに、SNSで誰もが不特定多数に対し情報を発信し交流できる環境は、さまざまなトラブルに出会う危険性をはらんでいる。このような時代の実情をふまえて、まずネットの仕組みを理解させること、そのうえで子どもの心の成長に合わせて、子どもたち自身が、チャットの時間帯を含めてネットの安全な使い方を考えられるようなサポートが必要である。
著者
中村 牧子
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
pp.63-74, 2001-12

We analyze, using official data, the spatial mobility between three areas in Saitama Prefecture (Kawaguchi, Urawa and Omiya), and that from them to Tokyo. From this aspect we examine how these areas changed into the suburbs. It is usually thought that the suburbs are born into rural areas under influences of one city outside of them. But by these three areas the suburbs are born under influences not only of a large city but also of the local cities, and into such cities. Because they were cities, these three areas could offer many houses, through their urban planning and so on, to many newcomers' families and workers employed in the large city Tokyo, earlier than any other area around them. Because they were cities, they gathered people from neighborhood as much as they sent to Tokyo, and these flows of people have now amalgamated them into a new large city. These mean that the suburbs can be seen as the areas in which not only farmers and newcomers but also many other social classes different in previous residence, working place and occupation coexist and cooperate. This finding will be useful in solving the problems of human relations in the suburbs.
著者
古澤 照幸 張 英莉 村田 和博 平野 賢哉
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 経営学部篇 (ISSN:13470523)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.39-49, 2011-12

中国の裁判所と保険会社の2組織の従業員に権威に関する調査を実施した。権威についてどのようにとらえているか、上司と部下との間の権威の関係である権威勾配、上司や組織への忠誠心などを質問紙によって調査を行った。上司が威圧的であるととらえる者ほど(権威勾配が急であるほど)、面従腹背の傾向が強く、組織や上司への忠誠心が低いことがわかった。日系企業の現地化の際の「二重構造」の問題を権威勾配と関係付けて議論した。
著者
田中 道弘
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.173-181, 2005-12

本研究では、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連について検討した。従来の研究では、インターネットの利用時間による問題が重要視されてきたが、本研究では、インターネット上でのモラル(インターネット・モラル尺度)という新たな基準とを合わせて検討を行った。精神的健康の基準としては、病理的傾向に基づく自己愛(病理的自己愛)、時間的展望、自己肯定感の3つの尺度を用いた。 対象は、茨城県内の大学3校(国立大学2校、私立大学1校)と埼玉県内の大学1校(私立大学)の合計4校の学生、405名に調査協力を依頼し、有効回答397票を得た(男性240名、女性157名)。年齢範囲は18歳から28歳までであり、平均年齢は、20.1歳(男性20.3歳、女性19.9歳)であった。 本研究の結果、インターネットの利用時間が121分を超える大学生群では、他群と比べ"時間的展望"と"自己肯定感"の得点が概ね低いという結果が得られたものの、病理的自己愛について有意差は確認されなかった。一方、インターネット・モラルの低い大学生群は、高群よりも時間的展望、及び自己肯定感の各平均得点が低く、病理的自己愛の平均得点が高いことが示された。 これらのことから、大学生のインターネット利用と精神的健康との関連を検討する際に、インターネット・モラルは精神的健康と深く関わりがあるとともに、インターネット利用者の精神的健康に関する一つの基準となりうることが示唆された。
著者
布村 育子 陣内 靖彦 坂本 建一郎
出版者
埼玉学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、教員採用システムを多角的に捉えることを目的としてスタートした。2 年間の研究期間の中で、教員採用が市場化している傾向を、主として教育委員会へのヒアリング調査から明らかにした。第二次世界大戦後、教員養成と教員採用は、民主主義国家としての新たなシステムに基づいて策定された。しかし,現在の教員採用システムは、教員採用試験の透明性と公平性が強調されるシステムに変化している。このような「市場化」ともいえる動向は、結果として教師の自律性を失わせる状況につながっていくと思われる。
著者
小島 弥生
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.89-98, 2010-12

本稿では、エントリーシートへの記述を就職活動における自己呈示の1形態として捉えている。大学3年生の女子を対象に、本格的な就職活動を始める直前に志望している「働き方」を分類し、その志望の表現の仕方の違いによって模擬エントリーシートへの記述内容に質的な違いがあるかを探索的に検討した。就職活動直前に志望する働き方の表現形態によって、「具体的イメージ群」、「職務イメージ群」、「企業(ブランド)イメージ群」の3つのイメージ群と、働き方をイメージできていない「分類不能群」の4つに分けることができた。さらにエントリーシートや履歴書の書き方に関する準備活動(セミナーへの参加等)の経験の有無によって分析対象者を分けて検討した。特定の働き方をイメージできていない大学生にとって、準備活動を行うことが豊かな記述に結びつく可能性が示されたとともに、準備活動を型通りにしか行わないことが就職活動の流れを阻害する(エントリーシートの次の段階に進めない)可能性があることが示唆された。
著者
宮島 薫
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.273-281, 2010-12

新しい発想の官庁としての消費者庁が発足してはや1年が経過した。この間、これまで以上に情報公開や一般からの意見募集など後発の優位性を示すかのようなさまざまな取り組みがなされてきたが、現実の実務は、また立法はどのような動きを見せているのであろうか。民法の改正さえ既成事実として進行しつつある現在、本来的には一般消費者に一番身近であるはずの消費者保護関連法規はどのような役割を果たしているのかを注目すべき判決の検討を交えながら考察を進めようと思う。
著者
胡 志昂
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
pp.130-115, 2001-12

Luofuxing, the ancient text of Moshangsang which is one of the songs collected by the Han Yuefu (the Music Bureau of Han Dynasty), has been regarded as representative work of Han Yuefu, and has been loved by Chinese people. But it has a comic character, which makes itself obviously different from other old texts of Yuefu. It may be a result of adaptation added for harmonizing with the atmosphere of Place, during the process that the songs of Yuefu were brought from lower strata society to the court and were played at the banquets since Wei-Jin period. This article notices the adaptation through division and connection of words accompanied by wanderings and playing of music, and pursuits the character of the ancient text through various aspects related with the generating process of Luofuxing.
著者
伊野 連 Ren INO
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.15-28, 2020-12-01

ハイゼンベルクは、弟子フォン・ヴァイツゼッカーらと、様々な哲学的議論をおこなっている。晩年の対話篇的著書『部分と全体』(1969)から、プラトンおよびカントについての興味深い討論を検証してみる。
著者
松永 幸子 Sachiko MATSUNAGA
出版者
埼玉学園大学
雑誌
埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 = Bulletin of Saitama Gakuen University. Faculty of Humanities (ISSN:13470515)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.67-76, 2015-12-01

実際にこれから教師を目指す学生たち―教師の卵―はどのような意識を持っているのか?アンケートを基に分析し、今後の教師の有り方を探究し、また、教師に対する社会の意識改革の一助とすることが本研究の目的である。本学の幼稚園・小学校教員免許取得希望学生141名を対象にアンケート調査を行った。その結果、明らかになったことを順次提示した。学生の教職意識により、学生は、教師は厳しいだけではなく、基本的には優しい教師を求めていることが明らかになった。親身になって子どもの相談に乗るなど、距離の近い教師を理想の教師像としていた。また、さまざまな体験により広い視野を持つため、民間企業等での研修には非常に前向きな意識が見られた。このような若者の意識を、古い既存の価値観の中に押し込めるのではなく、時代とともに変化する教師像に対応するため、教師についての社会の意識をあらためる必要性があることが提案できる。